【魔法にかけられて 4】


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ニセモノ&イロモノ多発ですが、大目に見てやって下さいませ〜(爆)
魔法にかけられて  4  

4.





「……オイ、王子ってコレか?」

テレビを付けた途端、画面に現れた典型的な王子ルックの人物を指し、ムヒョは呆れたように尋ねた。
突然、マンホールから飛び出して来たという『王子様』は、その場にいた水道管工事の作業員に、剣を突きつけたらしい…。
その後、バスに飛び乗り、屋根に剣を突き刺して往来の真ん中で止める…なんて珍事件を起こした為、ニュースに報じられたのだ。

「わあ!王子様!やっぱりボクを探しに来てくれた!」

何度も繰り返し映る画像を見て、ロージーが目を輝かせて喜ぶ。
「…アホだナ、コイツ。バスを怪物と勘違いしたらしいゾ」
ムヒョはフンと小さく鼻を鳴らすと、バカにしたように呟いた。
何やらよく分からないが、ロージーがジイッと画面に見入っているのが面白くない。
「そりゃあ、こんな物の中に人が沢山いたら、怪物に捕らえられてるって思っちゃうよ!王子様は勇敢だから、放っておけなかったんだよ!」
「…ああ、成る程…。アンダレーシアとやらにはバスがねェワケか」
「うん、ナイよ?他の…馬が引かない馬車もナイし…」
勇敢ねぇ…なんて、含みのあるムヒョの声には気付かずに…。
ロージーはバスの周囲を走る車の画像を指して不思議そうに言う。
「…………」
ロージーだけならいざ知らず、王子の格好をした男まで現れたのだ。
しかも、片方は御伽の国のお姫様的言動をして、動物達を操り…、もう片方は町中で剣を振り回し、バスを怪物と間違えて退治して………。

いろいろな認識やら常識やらが、明らかに違う人間が二人…か…。
いやいや、だが、だからってお伽の国から来たってのは……流石に………。

「う〜〜っっ、この赤いのはすっぱいね〜〜っ!!!」
炊き立てのご飯を梅干しで食べて…ロージーが思い切り顔をしかめた。
「ああ、そりゃ梅干しっつーんダ…。っつーか、よくメシなんか炊けたな…」
「えへへ♪小鳥さん達が教えてくれたの♪これ初めて食べるけど、美味しいね♪」
「……便利ダナ…」
「みんな親切でしょ♪」
ロージーはニコッと笑って頷く。
そして、もくもくと食事を続けて………。

「…で?王子を探しに行くのか?」

沈黙が落ち着かず、ムヒョは尋ねた。
すると、ロージーはきょとんとした顔でムヒョを見て、それからううんと首を振る。
「王子様が迎えに来てくれるんだから、ボクは待ってなきゃ」
「……ほー…」

成る程、古典的なお姫様らしい発言だナ。
冒険は王子の物…、お姫様は待っているだけ、か…。

「そんじゃオメェの今日の予定はナシか?」
考えるまでもなく、ナシであろうとは思うが、一応聞いてみる。
「予定?うん、ないよ?」
「………」
小首を傾げてきょとんと見つめる様が、何故こんなにも胸を騒がせるのか理解出来ない。

ロージーの紅茶色の瞳が、何やら期待に満ちて輝くと、それに応えたくなってしまう。
何を期待されているのかなんて、分かりもしないのに、だ。

「……オレと一緒に来るか?」
「うん♪」
何処になんて説明してもいないのに、ロージーは躊躇うことなく頷いた。
「ボク、昨日のコウエンに行きたいな」
「…気に入ったのか?」
間髪入れずにされたリクエストに、そう尋ねれば、
「お花を摘んで、王子様に花冠を作って上げるの♪きっと喜ぶよね♪」
ロージーはニッコリ笑って、パチリと手を叩いた。
「ダメだ」
ムヒョは即座にそれを却下する。
「え、何で?」
「公園の花を摘むのは禁止だからナ」
ムヒョの言葉に、ロージーは心底驚いたような表情を浮かべた。
「この国の王様は随分と横暴なんだね」
「……あー……まぁナ…」
この国に王は居ない等と言えば、説明が面倒そうだと思い、ムヒョは曖昧に言葉を濁した。



+   +   +   +   +


結構広いんダナ…。

スキップしているロージーの後ろをのんびりついて歩きながら、ムヒョは公園の広さに驚いていた。
中央公園なんて名前の通り、街のほぼ中心部にあるこの公園…地図を見てそれなりに理解していたつもりだが、実際に訪れてみると、その広さは改めて感心する程で……。
ムヒョの勤める協会本部からは通りを挟んですぐ目の前だというのに、これまで殆ど足を踏み入れたことがなかった事に気付く。

「ねえ、ムヒョ、可愛いお船があるよ!」

パタパタと駆け寄ってきたロージーは、キラキラ輝く瞳でそう言うと、ムヒョの手を引っ張った。
成る程、目の前には大きな池…。
陽光輝く水面に、何艘かのボートがそれはそれは優雅な様子で浮かんでいる。
「…………乗りてェのか?」
「うん♪」
ニコニコと何の疑いもない笑顔を向けられると、イヤだとは言えなくて…。


数分後には、二人は池の中にいた。


「わぁ〜、見て見て、お魚さんがいるよ☆こんにちは♪」
「…あんま池ん中覗いてると落ちるゾ」
寄ってきた池の鯉と話し始めたロージーに、ムヒョはとりあえずそう注意する。
「お魚さんがムヒョに、珍しいですねって言ってるよ」
「あ?」
「何かね、新聞でムヒョのこと読んだんだって」

…………魚がどうやって新聞読むって……?

思い切り不審そうな顔をするムヒョだが、ロージーはまた鯉の話を聞いて、今度は不思議そうに首を傾げた。
「ねえねえ、お魚さんがね、デートですか?って言ってるんだけど、デートって何?」
ぱちくりと瞬きをして、本当に不思議そうなその声と表情。
「な…っ☆」
思わずポロリとムヒョの手からオールが落ちた。
だが、そのオールは池の中に沈んで行くことなく、流れて行くこともなく、逆にぷかぷか浮いたまま近づいてきて……。
見れば、数匹の鯉がオールを背に乗せて泳いでいる。
「わあ、ありがとうvv良かったね、ムヒョ」
「…ああ………」
魚からオールを受け取ってニコニコと微笑むロージーに、ムヒョは複雑な面持ちで頷いた。

「それで、デートって何?」

再び問うロージーの瞳が、何故か真っ直ぐに見れない。
そうか、デートに見えンのか…なんて思ってしまえば尚更で、気温が2度くらい上昇した気さえする。
デートなんて単語ひとつでここまで動揺することがあろうなど、今まで思いもしなかった。
「で…、デートくれぇ、オメェもしたことあんダロ?その…王子サマとやらと……」
ムヒョを知っている人物が聞けば、何事かと思う程、徐々に不明瞭に消えて行く言葉。
だが、ロージーはそんなムヒョの態度よりも、言われた事の内容の方が、余程不思議だったらしい。
大きく瞳を見開いて、ムヒョをジイッと見つめた。
「王子様と?」
「だから…、一緒に出かけたり、食事したり…そーゆーんダ」
「ナイよ?」
ううんと首を振られ、今度はムヒョの方がポカンとして、その顔をマジマジと見つめてしまう。
「ねェのか?一度も?」
眉を顰め、念を押すように聞くムヒョに、ロージーは大きくウンと頷いた。
「……王子とはいつ出会ったんだ?」
「えーっと、一昨日☆」
明るく元気なロージーの返答。
ムヒョは目と口を大きく開けて…。
「あ????オメェ…昨日…結婚式だったとか言わなかったか?出会って翌朝結婚???」
何じゃそりゃーー!と思わず叫ぶ。
「そうだよ?何かおかしいの??」
「いや、待て…。オレの聞き方が悪かったのか?王子とは元々知り合いだったのか?親が決めた許嫁とかなのか?」
矢継ぎ早の質問をパチパチと瞬きをしながら聞き、ロージーはそれからウウンと首を振った。
「ボク、ずっと夢見てたんだよ☆いつか王子様がやって来て、ボクに運命のキスをするの。それで、二人は永遠に幸せに暮らすんだvvv」

「………あり得ねェ…」

ニッコリ笑ってウットリ夢を語ったロージーに、ムヒョは沈痛な面持ちで一言そう言った。
「え?」
「あり得ねーダロ、そんなん。出会って一日で結婚して、永遠に幸せに暮らす?アホか!」
大きく見開かれたロージーの瞳に、よした方がいいと思いながら、それでも言葉は口から出てしまう。
「ダメなの?どうして?」
「どーしてもこーしても…オメェ、ソイツのことちゃんと分かってんのか?結婚しちまって、運命の相手じゃなかったって分かったらどーすんだ?」
「…だって……分かるもの…」
「どうやって?」
「……だって……運命だもん…!目が合ったその時に分かるんだもん!王子様は運命の人なんだもん!」
ぎゅうっと握りしめられた白い指先。
大きな瞳いっぱいに溜まった涙。
小さな唇が震えている。
しまった!とムヒョは思った。
泣くナと言おうとして口を開くも、ロージーの瞳からは大粒の涙がポロポロと落ちてしまう。
「……っ」
罪悪感がズキズキと胸を苛むが、それと同時に、もの凄く面白くない物も感じて……。

「………悪かっタ…」

それが何故かを理解し、目眩を覚えながら…、ムヒョはボソリと謝った。





◆5へ続く
◆3を読む


+   +   +   +   +


随分と間が空いてしまいました…orz
ちょっと映画の内容忘れてるんですけど…まあ、そのまま書くつもりだったワケじゃないし、いいか…とか。。。
てか、映画だと、公園のシーンでは「まんまディズニーランドじゃん;;:」と思うようなパレードが繰り広げられるのですが、アレは文で書いても面白くないのでやめました。
代わりにボートでおデートです。
つか、ムヒョとロジの場合、いかにロジが女の子なカッコしてても、遙かにちっちゃいムヒョがボート漕ぐってのは、傍目にとても奇妙なんではないかと思いますが(笑)
でも、六氷様なので、きっと難なく漕いでスイスイ快適なボート遊びになるのではナイでしょうか…vvv
………いや、普通だったら絶対やんないと思うけどね。。。(苦笑)
 2008/05/15(木)/16:30:15  No.86



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