【魔法にかけられて 1】


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ニセモノ&イロモノ多発ですが、大目に見てやって下さいませ〜(爆)
魔法にかけられて 1  
※この話は、映画『魔法にかけられて』のネタバレを含みますので、ご注意下さい!

1.





魔法律協会本部の入り口に、先程から”誰か”が座り込んでいる。

その人物が、人混みに揉まれながらずーっと通りを流されて来て、そしてついには弾き出された……一部始終を、ムヒョは窓からじぃっと眺めていた。

だって、とても目を引いたのだ。

何せ、その人物が着ているのは、一目でウェディングドレスと分かる純白のドレスで…。
これがまたヴェールこそないものの、人間3人分は優にある幅の、本当に古風でゴージャスなドレスなのだ。
そんな白くて大きな物が、眺める通りを流されて来たら、誰だって思わず注目するだろう。
そしてまた、ムヒョは溜めに溜めたデスクワークに飽き飽きしていて、ストレッチがてら席を立って窓辺に寄った…なんて、丁度そんな時だったから、これこそまさにドンピシャとも言えるタイミングで…。
デスクを離れてもう10分以上も、その人物が一体何なのかを見定めるべく、見物していると言うわけである。

…何か言ってんナ…。

タンポポみたいな黄色い頭がきょろきょろと左右を見て、大きく身振り手振りで懸命に何かを訴えている様子を見て取り、ムヒョは窓を開けた。

「…どなたか…お城に…、道を……あの、お城はどちらの…」

雑踏に紛れ、微かにしか聞こえない声は、どうやら道を尋ねているようだ。

城…?
ふーん…、ドレス着て城に行きてぇってか…?
春先ってのはおかしな奴が多いが…こりゃまたスゲェな…。

何やら、可笑しさよりも、哀れさを覚える。
じいいと眺めていれば、少女は玄関脇の花壇の縁に腰を下ろし、盛大なため息をついた。
上から眺めているムヒョには、その人物の顔は見えない。
だが、それでもハッキリと分かるほど、意気消沈しているのが伝わる。
ションボリとして足下に視線を落としている彼女…。
真っ白なドレスの裾は、きっと通りを流されてくる間に汚れてしまっているのだろう。
「…………」
顔を見るまでもなく、その少女が美しく可憐であると…何故かそんな気がするからこそ、余計に可哀想な気がして…。
「………アホか…」
一瞬、胸を過ぎった思いに、ムヒョは顔を顰めて窓から離れた。


何とかしてやれねェか…なんざ、あり得ねぇダロ……。
何考えてんダ…。


デスクに戻り、僅かに頭を振ってから、書きかけの書類に意識を戻す。
それは半月も前にこなした依頼の報告書だ。
現在の協会で最強の執行人と称えられ、ひと月に相当な量の仕事をこなすムヒョだからこそ、その後の事務処理もまた相当な量で……。
こんな時は流石に、助手を雇おうか…なんて事も思う。
周りにも煩く言われているのだし、事務補助としてでも一人雇えば、そんな周囲の雑音もいくらかは解消されるかも知れない。

ま…、んな奇特な奴ぁ、そうそういねェだろーがナ…。

ムヒョの助手に志願してくるのは、その殆どが名声目当ての者だ。
『最強の執行人の助手』という肩書きが欲しいだけ…。
幾度か行った選考試験で、その手の手合いにいい加減うんざりしてしまったムヒョは、助手は取らないと協会側に告げ、一人で仕事をこなしている。

「……無断背後浮遊及び殺人未遂………生前被害者と交際していた男で…」

ぶつぶつと呟きながら、指定のフォーマットを埋め、名前を書いてハンコを押す。
それに、先にまとめておいた添付書類一式を重ね、ホチキスでバチンと留めて、処理済みの箱の中に放り込んで…これでまた一件終わり。
あと、14、5件だ。
「…メンドくせぇ……」
はーっと深いため息をつき、また窓の方を見やる。

あの白いドレスの少女は、まだいるのだろうか…、と。
どうしているだろうか…、と。

気になる。
とても気になる。
「………クソ」
新しい書類を目の前にしながら、どうしても窓の方が気になって、ムヒョは小さく舌打ちすると席を立った。
窓辺に寄って下を覗けば、白いドレスはまだ花壇の隅…。
普通なら、可愛い少女(あくまでイメージ)が一人で…、しかも途方に暮れた様子で座り込んでいたりすれば、誰かしら声をかけるものであるが…。
この少女の場合、何しろ格好がすごいので…。
その上「お城」だの「馬車」だのと言っているのだ。
一般の感覚を持った人間なら、まず関わらないだろう。

ジジイかエンチューでもいりゃあ、呼んでくんだろーがナ…。
明後日まで出張だったか…。

ジジイとはムヒョの上司であるペイジのことで、エンチューは同期の執行人だ。
物好きでお人好しなあの二人なら、迷わず声をかけに行っていただろう。
ムヒョはウムムと呻る。

「関係ねェダロ!放っとけ!見るナ!忘れロ!」と言う声と「そんなに気になんなら、声かけに行きゃいーダロ!メンドくせェ…」と言う声が、頭の中で言い合いをしている。

っつーか、声かけてどーすんダ…。
城も馬車も知らねーダロ。
それに、もうじき警備の奴に見つかって追いやられんダローし…。

そうダと思いながら、何故かもの凄く落ち着かなくなってくる。
ここを追いやられたら、あの少女はまた、通りの人波に乗って…、弾き出されるまで流れ続けるのか…なんて…。
「………別に……知ったこっちゃねー…」

その内、誰か親切な奴が声かけてやんダロ……。

そうダそうダと、思うのだが、何故だか更にモヤモヤグルグルと胸が騒ぐ。
知り合いでもない所か、今現在顔も見えていないような人物が、何故こんなにも気になるのか、全くもってワケが分からないのだが、それでも、気になるものは気になるのだから仕方がない。
チラリと時計を見やれば、もうすぐ昼になる頃で…。

「……ついでダ……メシ食いに行く……」

誰も聞いてなどいないのに、ぽつんとそう呟いて…。
ムヒョは執行服を羽織ると、部屋を後にした。




◆2へ続く


+   +   +   +   +

とゆことで。プリンセスなロジのお話です〜。
とか言いつつ、ムヒョさん主役な感じですね。
しかも、まだ顔も見てない!
『白いドレスの少女』とか書いてますが、紛れもなくロジです。
ムヒョのプリンセスはロジしかいませんから!(笑)

つか、特に女の子にしようとは思ってないんですが…女の子の方がいいんでしょうか……。
ま、どっちでもいいやね、だってロジだもの。ってのが、私的正直な所です(どうよそれ;)
2がもう出来てるので、今日か明日かでアプするつもりでいます☆

この話も暫く書きそうなので、お付き合い頂けると嬉しいです(^v^)
 2008/03/27(木)/13:59:21  No.78



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