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6.
『おいおい、アイツら笑えるぜ〜』 『悪霊だって♪ムヒョは神様なのにね〜』 『あ?オメーらダロ……悪霊なんぞと言われてんのは…』 その様子を近くで眺めるカラス2羽にネコ1匹。 端から見れば相当奇妙な組合せなのだが、この2羽+1匹に気付いている者は誰もいなかった。 『ま、何にしても、あの娘はいい目を持ってるね』 ボク達に気付くなんて、とエンチューが感心したように言いかければ、その声を遮るように…、
「もーー!お兄ちゃん、お姉ちゃん!」
誰かがそう叫びながら走ってきた。 「あれ?キッド君…!」 慌てたように駆けてきた少年を見て、ロージーは目を丸くする。 それはクラスメイトの一人だったのだ。 しかも、最近転校してきたばかりの…。 その少年は、バリバリ外人さんな名前と容姿を持ちながら、日本生まれの日本育ちで…。 よく外人に間違われるロージーは、勝手に親近感を持っていたのだった。 「ごめんね〜、ロージー君!」 キッドはロージーに平謝りすると、アイビーとミックを見上げた。 「もう、二人とも!学校でそーゆーことするのはやめてって言ってるでしょ!」 「何だ、キッドのダチかよ」 「あら、そうなの?」 肩を竦め、一応ロージーから離れながらも、反省の色は見えない二人。 「え…、この人達、キミのお姉さんとお兄さんなの?」 そう言えば似てるかも…?なんて、ロージーはキョロキョロと3人を見比べてしまう。 「うん、ホントにごめんね、ビックリしたでしょう?」 キッドは本当にすまなそうにロージーに微笑んだ。 「あはは、ちょっとは…。あ、でも平気だから、気にしないでね」 「ありがとう!」 本当はものすごーーくビックリしたのだが、こうもすまなそうに謝られては、冗談でもそんなことを言うわけには行かず…。
……悪霊って……冗談…だよね?
なんて、ドキドキしながら…。 「じゃあ…またね、ロージー君」 「あ、うん…」 グイグイと姉兄の背を押しながら、ロージーに微笑むキッド。 それを、大変だなぁと見送っていれば、
「でも、憑いているのは本当よ」
アイビーにボソリと言われて……。 「え、ちょ……憑いてるって…、悪霊って……そんなぁ〜…」 不安げに自分の後ろを見る。 賑やかな姉弟達が居なくなり、渡り廊下にはロージー一人…。 突如訪れた静寂に、恐怖は一層色濃くなる。 「うう……ウソだって言って欲しかったのに〜…」 ロージーは恐がりなのだ。 夜中のトイレも、怖いテレビも、怪談も、勿論お化け屋敷だって大っ嫌いだ。 「ボク、どうしたらいいんだろ……お祓い…して貰った方がいいのかなぁ…」 涙まで浮かべて心細げに呟けば、ふいに聞こえる猫の声。 「え…?」 小さなその鳴き声に、きょとんとして見やれば…足下には何故かムヒョの姿が…。 「むひょ…?ええっ?!?!何で何で?どうやってここに来たの?」 恐いなんて気持ちは何処へやら、一瞬で驚きに塗り替えられて。 ウソウソ?!?!と、その場にしゃがみ、マジマジと黒猫を見つめる。 『あんなアホ共の言うことなんか気にすんナ』 「ムヒョ…、ボクのこと追い掛けて来たの?」 『オメェにゃ悪霊なんざ憑くワケがねぇんダ。心配しなくても平気だゾ』 ロージーが話しかければ、必ず返事をするように鳴くムヒョ。 抱き上げれば、ペロリと頬を舐められて…。 ロージーはクスクスと笑った。
「お留守番、寂しかったの?しょうがないな、ムヒョったら♪」
ウフフ♪なんて言って、ちゅっとキスをするロージー。 先程までの泣きべそは何処へやら…。 すっかりご機嫌になって…。
『ねえ、いつも思うけど…あのズレまくった会話って、アレでいいの?』 『あー、いんじゃねー?ムヒョは気にしてねーみたいだし…、っつーか、通じてなくてもラブラブだしなぁ…』
頭上にはガアガアと鳴くカラス2羽。 腕の中には黒猫。
そして、そのすぐ側にもう一匹……。
人ではないモノが潜んで………。 それは、誰に気付かれることもなく、ガサガサと小さく植え込みを揺らすと、そのままフッと姿を消した。
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先週、更新忘れたSSの続きでございます。 ちょっと短いのですが;;;
キッドとロージーは仲良しさんだといいと思います。 つか、今書いてる原稿の方でもミックとか出てくるので、私は案外コルトロウ姉弟が好きなんだな。。。とか。
ちなみに、今更ですが 『』内のセリフは、ガーガーとか、ニャーとかナーとか、人間様にはそれぞれの鳴き声で聞こえています。
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2007/09/10(月)/15:23:12
No.67
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