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2.
『誰なの…?』
ロージーにそう問いかけられる夢を見て、ムヒョはハッと意識を戻した。 身を起こせば、何処だか分からぬ山の上。 雲が遙か下に見えている。
「………クソ鬼共…」
ムヒョはムッツリと呟いた。 ロージーのあんな夢を見たのは、鬼達がやいのやいのと煩く騒いだせいだと思うから…。
『誰なの?』
自分を見て、不思議そうに尋ねるロージーなんて…。 思い出せば、ゾクと震えが走った。
夢ではない。 あれは記憶だ。
そう、同じ魂でも……同じ記憶を引き継ぎはしないから…。
否、一部は引き継いでいることもある。 だが、全てではない……。
だから、生まれ変わる度に、ロージーはムヒョを忘れている。
否、そのロージーは、まだムヒョと出会ったことがないのだから仕方がないのだ。 出会っていない者を『忘れられる』ワケがない。 そう…生まれ変わったロージーは、ムヒョを『知らない』…それが正しい。
「今更後悔なんざ…格好悪ィ事この上ねぇナ……」
ズキと走った胸の痛みに、忌々しい思いで舌打ちして…。 ムヒョは遙か彼方まで続く雲海を眺めた。 いろいろなことが面倒で、いろいろなことにクサクサしてしまう。 池に戻ればきっと、またあの煩い鬼達が、どうするつもりかと聞いてくるのだろう。
確かに、それも無理からぬ事だった。
ムヒョやエンチュー達にとっては、十年、二十年など瞬く間に過ぎ去る。 だが、人間にとってはそうではないのだ。 人の命は長くてもせいぜいが百年…。 そんな彼らからすれば、十年や二十年はとても長い月日だ。
もう…十七か………。
ぼんやりと、ムヒョはロージーに思いを馳せる。
フワフワの金の髪。 明るい茶色の瞳。 白い肌。 柔らかで、優しくて、甘くて…。
アイツ…このままオレと出会わなけりゃ、違う人生ってのを送んだよナ……。
最初の時は運命だった。 出会うべくして出会ったのだと、ムヒョはそう確信している。 だが、幾たびも転生を繰り返す内に、何やら疑問を感じて………。
ムヒョは生まれ変わったロージーを迎えに行き、池の中へとさらって行く。
そう、家族やその他の物全てから引き離して…。 ロージーがそれまでに歩んだ人生、育んだ記憶の全てを強制的に捨てさせて、自分の元に連れてくるのだ。
それは果たして良いことなのだろうか…?
ムヒョを愛し、永遠に共にいることを望んだのは最初のロージーだ。 最初のロージーは生け贄になる事を自らの意志で決め、ムヒョの元へ来た。 だが、それ以降の…転生したロージーは、ムヒョのことを知らずに生まれ、知らずに育つ…。 そんなロージーが、いきなり現れたムヒョに連れ去られる事を望んでいるわけがない。
ムヒョはずっと同じムヒョのままだが、ロージーは生まれ変わる度、違うロージ−なのではないか…。
前世は前世、現世は現世なのではないだろうか…。
連れ去った後のロージーは、ゆっくりとムヒョに心を開き、やがて愛し、また永遠に共にいることを望んで…死んでゆく…。
終わりよければ全て良し…なんて…。 そんなことでいいのだろうか? 果たして、それはロージーにとって本当に幸せなことなのだろうか…?
今のロージーが生まれる間際、ふとそんなことを思ってしまったら、どうにも迎えに行くことが出来なくなって……。 そして、十七年もの時が経ってしまった。 ハアと溜め息が漏れる。
「……ひとまず………顔くれぇは…見に行くかナ……」
どうするかは、それから決めてもいいだろう、と…。 ムヒョは呟くと、山の上から飛び立った。
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実は…生まれ変わりとかクローンとかって、ちょっとどうよ…と思う方です(え;)
だってだって〜、よくよく考えてみると、何か酷いよなとか思うじゃないですか〜。 つか、自分だったら「前世から決まってた」とか言われたら絶対頭に来るもの。。。 (海馬さんみたいに「非ィ科学的!」だの「古代妄想」だのとは言わないが…。てか、非ィ科学的が辞書登録されててちょっと笑った今…w)
でも、やっぱ女の子なので!!!(…子?) 前世からの宿命とかってのには、乙女的ときめきがね!あるよね?!(>v<///)
とゆことで、ついつい考えちゃうのでした♪(好きなんじゃん、結局…)
ウチのムヒョは何やら考え込んじゃう事が多いですね。 原作では、悩んだり迷ったりはロジの役目なのですが。。。 …まあ、見れないからこそ見たいってとこなのかな…?とか思いつつ。
まだまだ暫く続きます〜。
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2007/07/26(木)/17:31:08
No.62
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