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8.
お…、ロージー…。
授業中、ふと視線を向けた窓の外。 下級生達の団体が、ぞろぞろと移動して行くのが見えて…。 その中にロージーの姿を見つけ、ムヒョの目は吸い寄せられた。 空は重い雲が立ちこめ、どことなく暗い。 だが、何故かロージーの周囲だけは、明るく見える気がして、ムヒョはそんな自分に内心苦笑してしまう。
その内、花でも舞って見えるかもナ…。 ま、舞ってても違和感ねェ気はするが…。
眺めていれば、何やら楽しそうに笑っているロージー。 何を喋っているのか、何がそんなに楽しいのかと、どうにも気になる。
ありゃあ同室のヤツだったか…。 あっちは委員のヤツ…。 斜め横のもよく一緒にいるナ…。 手前のは知らねェ顔だが……その隣は見たことあるナ…。
挙げ句、一緒にいる面々をチェックしたりなんかして…。 そのまま飽きずにジイッと眺めていれば、ふと、ロージーの視線が上を向いた。 そして、ムヒョを見つけるとニコッと笑って手を振る。 「………」
「『かわいーなー…』とか思っちゃってんだろ〜?」
ふっと表情を和らげた瞬間…。 まさにそんなことを思ったその瞬間に、横からズバリと言われ、流石のムヒョもギクリとして…。 振り向けば、ヨイチとエンチューがニヤニヤ笑いでこちらを見ている。 「んなガン見してっと、ロージーちゃんに穴あいちゃうぞぉ?」 「うんうん、ムヒョの熱視線なら焦げたりしそうだよね〜」 「………」 『んなワケあるか!』と言いかけたムヒョだったが、ここで何を言ってもからかわれるだけだと思い直し、ただ顔を顰めるに止まった。 「でも、ホント可愛いよな〜」 「手、振り返してあげればいいのに〜」 「…ウルセェ」 「あ!ほらほら、行っちまうぞ?」 「あーあ、こっち振り返ってるよ〜?」 ムヒョ冷た〜い!なんて。 わざとらしく言われてムッとしながら、ムヒョがもう一度『煩い』と口を開き駆けた時…。 ポコポコポコッと響く、軽い音と軽い衝撃…。
「授業中よ?3人とも!」
3人の後頭部を襲ったのは丸めた教科書で…。 あっと思えば、いつの間にやらすぐ側に、リオが呆れたような顔で立っていた。
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「さっき、手を振ったの…見えました?」 昼食を口に運びながら、じいっと見上げて尋ねるロージー。 少し上目遣いのその顔がまた可愛らしくて、ドキリとしながら…。 「ん?ああ…」 そりゃ、ずっと見てたからな…とは、まさか言えず、ムヒョは曖昧に頷く。 途端、にこにこ〜っと嬉しそうな顔をして…。 「ムヒョの教室あの辺りだなーって思ったら、ムヒョが見えたから…何か、凄いなって…」 えへへと、はにかんで笑うのがこれまた可愛らしい。
「…楽しそうだったナ」
つい、そう言ってしまって…ムヒョはハッと口をつぐんだ。 まるで咎めるかのような口振りになってしまった…。 それが、妙に気まずく感じられて…。 だが、 「うん、それが…可笑しかったんですよ〜!」 ロージーは気に留めない様子で、クスクスと笑いながら、あの時のあの場での会話を説明する。
さっきは薬草学の授業で、薬草園に向かう途中だったらしい。
「…それで、ギンジさんとマリルが絶対違うって言ってるのに、ミックは全然譲らなくて〜、何かもうどう見てもおかしいよ〜って感じなのに、いいんだ!って…。でも、ビーカーに入れて混ぜ合わせたら、色がどんどん変わって来ちゃってぇ、その内ぶくぶくって泡だって来ちゃったからもービックリで!そしたらマリルが…」
ギンジ = 委員の奴 マリル = 同室 ミック = 斜め横にいた奴か…?
ロージーの話を聞きながら、登場人物チェックなんぞをするムヒョ。 誰の名が何度出てきたか、なんて…無意識にカウントして…。
…マリルが多いのは同室だから仕方ねェとして……。
「…ムヒョ?ボク、お喋りしすぎ?」 ふいに言葉を切って、ロージーがそう尋ねた。 何やら心配そうな顔をしているところを見ると、どうやら随分と不機嫌な顔になっていたらしい。 「あ?…いや、そんな事はねぇ」 「ホント?じゃあ、何か気に障ること言っちゃった?」 「いや、そーゆーんでもねぇ」 クスと笑えば、ロージーは首を傾げる。 「何でもねーから心配すんナ」 そう言いながら、胸の内では苦笑して…。
このみっともない程の独占欲を、もし口にしたら…コイツはどんな顔をするだろうか…。
誰も側に寄せたくない。 誰の声もこの耳に入れさせず、誰の姿もこの目に映させず…。 そう、いつも自分だけ……。 ロージーが認識するのは自分だけであればいい。
そう…本気で思っている。
どっか閉じこめでもすりゃ、その願いが叶うってか……? 相当やべェな…、オレも……。
「…今日は先に帰れ」 「あ、ペイジ先生の特訓の日ですね!」 ああ、と頷けば、ロージーは少し考えるように小首を傾げた。 「どした?」 「…あの…、ボク…、待ってちゃダメ?」 「あ?」 「あ、ううん、何でも…っ」 ぷるるっと首を振るロージーをじっと見つめて…。
「………2時間くれぇかかんゾ?」
ムヒョはそう言った。 途端、ロージーがパアッと顔を輝かせる。 「いいの?待ってても?」 「本気で2時間待つつもりか?」 「うん♪だって、一緒に帰りたいんだもの♪」 「なら、待ってロ」 「うんっ♪」 ヒッヒと笑うムヒョに、ロージーもエヘヘと笑って頷いて…。
けれど、ムヒョの特訓が終わった時、ロージーの姿は何処にも見あたらなかった。
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さて、前回ついにムヒョさんは本懐を遂げて…、何やら『オレのモノ』度が高まっているようです。 つか、メロメロ過ぎじゃね?とか思うのですが…。 途中何度ツッコミ入れたかったことか!(笑) ムヒョさんったらもう末期だよね。 ロージー溺愛症候群? ん、でも、ロジもムヒョ熱愛症候群の末期患者だから大丈夫か!(何が)
ええと。 ロジの同級生はリリマリ双子博士とミッくんとギンちゃんです。 こっちもイロイロ書きたいのですが…。 それはまあ、この学園シリーズの別の話ででも。。。
とりあえず、恋は嵐。はもうじき終わる予定であります☆
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2007/08/22(水)/15:14:52
No.64
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