薔薇色★学園天国 ボクをデートに連れてって その1
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1.
「ウフフ♪エヘヘ♪ふんふ〜ん♪」
その日は朝からずっと…。 何処までも上機嫌な笑い声と鼻歌が、寮の一室に響いて…。 「たらったら〜ん♪」 クルクルとその場で二三度回転し、ロージーはぽんっとベッドに身を投げた。 ばふーっと布団に沈み込み、またクスクスと笑う。
「おい…いい加減鬱陶しいぞ、草野…」
深々とため息をつき、ソファから声を掛けるのは同室のマリル。 読んでいる分厚い本から顔を上げ、眼鏡をグイと押し上げて…迷惑そうに顔を顰める。 「だぁってだってぇ♪すっごいと思わない?」 「……お前のその喜びようのがよっぽどすごいんじゃないか?」 「え〜、でもでもだって、明日は六氷先輩とデートするんだもん♪二人で、海に!」 きゃ〜♪なんて、自分で言って自分で歓声を上げているロージーに、マリルはまた溜め息を付いた。 「それ、もう30回くらい聞いた」 「も〜、マリルったら大袈裟なんだから!30回も言ってないもん!でもでも、すごいよねぇ〜♪ちゃんとデートなんだもん♪えへへへへ♪嬉しいな〜♪」 「あ〜、分かった分かった…全く…」 バタバタとベッドを海に見立てて泳いだりしているロージーに三度溜め息を付き、マリルは読書を諦めてソファを立った。
ったく、デートくらいで、そんなに嬉しいかねぇ…。 大体、付き合いだしてもう3ヶ月くらいになるだろ…? それでなくとも、毎日顔逢わせてるってのに…、よくまぁ、こんだけ喜べるよな…。
学園始まって以来の天才と誉れ高き『ムヒョ』が、特に目立つ所のない、むしろ勉強で言えば落ちこぼれの部類に入るだろう『ロージー』と付き合っているというのは、この学園関係者であれば知らない者はいないほど有名な話である。 3ヶ月くらい前から始まったこの二人の関係…。 結構進展してそうに思っていたが、デートで喜ぶ辺り、実はまだまだなのだろうか…なんて。 ついつい勘ぐってしまうマリル。
…六氷先輩って、強引だから手が早そうなイメージあったけど…案外、奥手なのか? いや、まあ、草野がお子ちゃま過ぎって話もあるけど…。
「あっ、オイ!ベッドの上で跳ねるな!もう遅いんだぞ!怒られるだろ!」 ポヨンポヨンと、ベッドの上で弾み出したロージーを慌てて止めるマリル。 時刻はとっくに10時を過ぎているのだ。 こんな時間に騒いでいたら、その内ギンジ辺りが怒鳴り込んでくるだろう。 「えへへ♪だぁって、嬉しいんだもん♪」 「嬉しいのは分かったから!明日早いんだろ?早く寝ろよ、もー!」 「え〜ワクワクして眠れないよ〜」 「何処の子どもだ!お前は!」 アホかーー!と怒鳴られるのさえ可笑しくて、ロージーはケラケラと笑った。
+ + + + +
「おっはよー♪ムヒョ!」 翌日、ロージーは前夜にも増してのニコニコ笑顔で、ムヒョの部屋へと赴いた。 ノックもせずにイキナリドアを開けるのは、ムヒョが二人部屋を一人で使っているのと、寝起きが非常に悪い為、学校のあるときでも、休日でも、ロージーが迎えに行くより早くに目を覚ましていることがないからだ。 だからいつも、ロージーは真っ直ぐにムヒョのベッドへと歩み寄る…のだが…。 この日は、いつもとは違って…。 「ム〜ヒョ、朝だよ♪起・き・て♪起き…て…えっ?!」 近付いたロージーの腕を、布団から伸びた手がガシッと掴んで…。 そのままグイッと強い力で引き込まれ、ベッドの中へと押し倒された。 「ええっ?!わっ、あ…、起きて…たの…?」 「ああ、昨日早かったからナ」 ヒッヒと笑うムヒョ。 本当に、今朝は早くから目が覚めていたらしい。 この時間の彼にしては珍しく上機嫌な事から、それが分かる。 「…あっ、ま、待って待って!ダメったらぁ」 そのままキスを…と近付く顔をグググと押しのけて、ロージーは叫んだ。
「今日は、デートでしょ!」
んもう、ムヒョッたら!と唇を尖らせるロージーに、ムヒョはきょとんと心底不思議そうな顔をする。 「あ?」 「あ?じゃないよぉ!海に行くんでしょ♪」 ムヒョがとぼけていると思って、ロージーはぷうっと頬を膨らませた。 だが、 「海?何ダそりゃ…?」 怪訝そうに眉を顰めるムヒョは、どう見ても芝居をしているようには見えない。 本気で、心当たりがないようで…。 ロージーは大きく目を見開いた。 「だ、だって…、ムヒョ、言ったよ?」 「何をダ?」 「だってだって、昨日…っ!」
デートしたいって言ったら、うんって頷いてくれた…。 海に行きたいなって言ったら、ああって…。 お弁当持って行こうねって、約束だよって…。
「…分かったって…頷いてくれたのに……、覚えてないの?」
傷ついた瞳で見つめられ、ムヒョはばつが悪くなって視線を逸らした。 しまったナとも思う。 昨日は週に一度のペイジの特訓があって、とても疲れていたのだ。 ロージーが部屋に来て、暫く話していた事は覚えているが、その内容はまるで覚えていない。 ただ、喋っているロージーの声が耳に心地よくて…もっと聞いていたかったから……ムヒョは頭には入らないその会話に相槌を返して……。 いつだって、ロージーは他愛もないことを一人で話している。 ムヒョの口数が少ない分を補うかのように…。 そして、それは毎日起こる些細な出来事がほとんどだったから…よもや、今日どこかへ出かける約束を交わしていた等とは…。 「………」 困ったように顔を顰めたムヒョに、ロージーは落胆の色を濃くして俯いた。 「………」 どちらも無言で、少しの間…。 室内には何とも気まずい空気が充満して…。 やがて、ロージーは身を起こすと、ムヒョを押しのけるようにしてベッドから降りた。 「オイ、ロージー…」 「……ムヒョは、ボクの言う事なんて…いっつもちゃんと聞いてくれてないんだね…」 「んなこたぁ……たまに…だけダ…」 そんなことはナイ!とは言い切れず、変な所で正直に言ってしまうムヒョ。 ロージーが振り返り、少しだけ笑った。 それは今までに見たどんな笑顔とも違って…とても悲しげで…。 「おい…」 ムヒョの胸にズキリと鋭い痛みが走る。 そしてまた…。 ドアへと歩いて行くロージー。
今、呼び止めて謝れば、許してくれるだろうか…。
そんな思いが胸に浮かぶ。 だが、普段から『謝る』なんて事は殆どないことだったから…。 ムヒョは何と言えばいいか分からなくて…。 そうこうしている内に、ドアが開き、ロージーは出ていってしまった。 静かに閉められた筈のドアの音が、けれど、ムヒョの耳にはとても大きく響いて…。
その後は、ただ、静寂だけが………。
+ 2へ +
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とゆことで、突然始まりました☆
新しいお話は学園モノでございます! ムヒョとロジはもう出来ちゃっております(爆)
や〜、ロージーに『六氷先輩』って言わせたいだけで生まれました(笑) (SNSフレであるRさんが、コメとかで先輩って仰るのですが、それに萌え萌えしたのでしたvvv)
オンラインの話は、書きたいトコだけ書けばいいじゃん!が基本のワタクシ。 まさしくそんな感じで、始めてみました。 ここからぼちぼち、進めたり遡ったりで、学園のイメージを作っていけたらなと思っております。 よろしければ、お付き合い下さいませvv
てか、どうも六氷先輩は大きいムヒョなイメージですねぇ…。 ちっちゃいナリで超先輩ってのが書きたかったんですが。。。 ワタクシ的に、通常ムヒョのがイロイロ達観してて、大きいムヒョのがイロイロ青い気がします。 ムヒョって、底が知れないトコが魅力なんですがねぇ…。 大きくなっちゃうと、年相応ないろんなイメージが出て来ちゃうのかな。。。
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2007/05/02(水)/17:14:50
No.50
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