【神様にお願い☆ 12】


[TOP] [検索] [管理]


ニセモノ&イロモノ多発ですが、大目に見てやって下さいませ〜(爆)
神様にお願い☆ 12  
 
12





何が起こったというのか…。
何でこんな事になったのか…。

さっきまではあんなに幸せで、穏やかだったのに…。

自分は縛られ、ムヒョは妙な光に包まれ、身動きのとれぬ状態で池の中に沈められてしまって…。




「そんな…!やだ…、やだよ、ムヒョ…、むひょぉ…」

池の畔に膝をつき、ロージーは懸命に深緑の水面を見つめた。
「おい、んな近付くと危ねぇぞ」
グイと、縛られた腕を恵比須に掴まれ引き上げられる。
涙で滲む視界に、けれど、映る二人は笑みすら浮かべて…。
「何でこんな事するんですか?」
「おやおや、どうしたんだねぃ、坊や?悪い龍神様はあたしが片づけて上げたんだから、泣かなくていいんだよ、ねぃ?恵比須の?」
「へぇ、若!」
クックと笑う五嶺の言葉に、ロージーはブンブンと頭を振った。
「わ、悪くないです!ムヒョは全然悪くなんて…っ!」
ボロボロと零れ、周囲に散る涙。
苦しくて、悲しくて、怖くて堪らなかった。
池の中に沈められてしまったムヒョを思えば、どうなったのか…考えるのも怖くて……。
「悪くない?だけどねぃ、帝はそうは思ってないようだよ?」
パチンと扇を鳴らし、五嶺が言う。
「…帝…?」
それは、あまりにも久しぶりに聞いた単語…。
ロージーの脳裏に、まだ年若い帝の顔が浮かんで…。

ケンジが…?
ケンジが…ムヒョを悪い龍神だって…言ったの?
ボクを連れ戻すように…この人に頼んだ…?
…そーゆーこと…なの…?
何で…?

愕然として自分を見つめてるロージーに笑みを深め、五嶺は閉じた扇で軽く首を叩いた。

「さぁて…、お前さんを一番高く買い取ってくれるのは何処だろうねぃ…?」

「え…?」
「右大臣も左大臣も、お前さんが生きてるって分かって大騒ぎさ。あたしに殺せって言ってたけどねぃ…殺しちまったらそこで終わりだろう?生かしときゃもっと金になる…」
「…どういう…こと…ですか…?」
「どういうことですか?やっぱコイツ、全然自分の立場が分かってなかったんだな…気の毒なこった」
バカにしたように笑う恵比須。
ロージーはすっかり混乱して、目の前の二人を交互に見る。

「お前は邪魔だったんだよ。右大臣家にとっても、左大臣家にとっても。帝はお前に首っ丈だったからな」

「……帝が…ボクに…?ボクが…邪魔だった…?」
ほとんど面識のなかった右大臣と左大臣。
いつだって優しかった帝。
かつて自分の暮らした御殿の風景が、頭の中一気に蘇った。
何もかも分からなくなりそうな程混乱しながら、それでも、思考は徐々に色々なことをハッキリとさせて…。

ケンジはボクが好きだったの?
だから、ボクは右大臣と左大臣にとって邪魔で…。
それで…ボクは…追い出されたの…?

そうだ…龍神様はムヒョだった…。

そうだよ…。
ムヒョはボクのこと怒ってなんかなかった…。
ボクがみんなと違うから怒ってるなんて…。
ボクがいるせいで雨が降らなかったなんて…、そんなの…全部ウソだったんだ……。

「……酷い…」
涙が溢れ出す。
龍神の生け贄になろうと決意をして御殿を飛び出し、一人で暗い森の中を歩いたあの日…。
怖くて、不安で堪らなかった、あの時の気持ちを思い出して…。
「ふぅん、やっぱり…帝に恩を作るってのが、いっとう魅力的かねぃ…?」
「そうですねぇ、若。龍神を退治し、帝の意中の君を連れ戻したとあらば、若のお名前は一層上がるというもの♪右大臣家も左大臣家も、文句など言えぬでしょう」
「やはり、そうかねぃ♪」
悲しみに打ちひしがれているロージーを余所に、誰に渡すかを話し合う五嶺と恵比須。
そんな3人の耳に、パシャン…と、水音が跳ねた。

「オメェら…ソイツにごちゃごちゃ下らねェ雑音聞かせてんじゃねぇゾ…」

一斉に注目の集まる中、池の中央にムヒョの姿があった。
半身を水中に沈め、未だ光に包まれたまま…それでも、顔からは光が消えている。
「ムヒョッ!」
「ちっ、しぶといねぃ…!」
「でも、まだ術は解けてませんぜ、若!今の内に!」
「ふん、長居は無用ってこったねぃ!」
グイと、恵比須がロージーの腕を引いた。
「やっ、やだぁっ!ボクは何処にも行かないっ!ここにいるんだ!ムヒョの側に…っ」
「あっ、コイツ!立て!」
その場にしゃがみ込んで抵抗するロージー。
「ソイツを放せ」
未だ術に捕らわれたまま、それでも何処か余裕の表情でムヒョは五嶺へそう言った。
「やなこったね」
「ふぅん?どうしても連れてくってーんなら、オレを殺した方がいいんじゃねェのか?」
面白くなさそうに問えば、五嶺はまた扇をパチンと鳴らして笑った。
「それもイヤだねぃ。神殺しで祟られるなんざ、あたしはまっぴらご免さ」
「成る程」
「じゃあ、行くよ。ほら、言うことをお聞き」
背の高い五嶺がロージーを引き上げるようにして連行する。
「やだっ、やめて下さい!いやだ…、ムヒョ!むひょぉっ!」
泣き叫ぶロージーの声に、けれど、ムヒョの口からはヒッヒと小さな笑い声が漏れた。

「…ナら、仕方ねぇナ…」

「うわああああっ?!?!」
続いて響いたのは恵比須の悲鳴。
「恵比須っ?!」
何事かと振り返る五嶺の視線の先で、恵比須はズルズルと見る間に池に向かって引きずられて行った。
「な…っ?!」
バシャァン☆
高らかに響いた水音。
池に落ちた恵比須は必死に藻掻く。
一体何事なのかが理解できず、パニックすら起こしかけて…。
「っぷ、ぉ…ぷ…っ」
暫し唖然と溺れている恵比須を見つめ、五嶺はそれからキッとムヒョを睨んだ。
「ま、まさか…お前っ!」
「ヒッヒ♪どうしてもロージーを連れていくというなら…、オレは代わりにコイツを頂こうと思ってナ♪」
恵比須の身体には、いつの間にやらムヒョの尻尾が巻き付いている。
「何を…っ!」
「代価としては相当ダロ?」
「ふっ、何であたしが…部下の一人ぐらい…。別に…」
「…ふぅん?ただの部下か?」
「………っ」
笑みを含んだムヒョの声に、五嶺が言葉を失くす。
見つめ合う両者を、ロージーは不安そうな面持ちで見比べることしか出来ないで…。
「ご、りょ…さまっ、オレ…なん、か…っ、かまわずっ!」
バシャバシャと跳ねる水音の合間、苦しげながらもそう言う恵比須。
「オレなんかに構わず、か…。ヒッヒ、健気なこった…」
五嶺は忌々しげに唇を噛み締めた。
「く…っ」
「なぁ、人間ってのはどれくらいで溺れ死ぬんだったっけナ?」
何処か楽しげな顔で。
からかうような声で。
ムヒョは言いながら、恵比須の身体を時折深く水中へと引き込む。
「…が、ぶっ、ぅ…ばっ、んぶ…っ」
苦しげな喘ぎ。
宙を掴もうと藻掻く腕。
水面へ上がる顔は段々とその色を悪くして…。
「む、ムヒョ…ぉ…」
ムヒョは、まさか恵比須を殺してしまうのだろうか?と…。
ロージーは不安に騒ぐ胸をぎゅっと押さえた。
自分の為にやっているのだと…それは分かる。
ムヒョは悪戯に他者の命を奪うようなことはしない。
だから、本当に殺してしまったりはしないはず…と、そうは思う。
思うが、それでも目の前で人が溺れている様を見るのは怖くて…。
ガクガクとロージーの足が震え出し、それがまた五嶺の焦りを煽る。

「……く、やめろ!恵比須を放せ!」

「ヒッヒ♪オメェこそ、ロージーを放すんだナ♪早くしねェと、本当にコイツ死ぬゾ?」
五嶺は言われた通りにロージーの戒めを解くと、どんと背中を押した。
「…とっとと行け」
「え…、ぁ…ムヒョ…っ!」
ムヒョは捕らえていた恵比須を五嶺に向かって放り投げ、駆け寄ってきたロージーの身体にスルリと尻尾を巻き付けると、そのまま水面を滑らせるようにして池の中央へと引き寄せる。
「恵比須!」
「金輪際、ロージーのことは忘れるんだナ。そうすりゃ今日のことは見逃してやる」
「……諦めないと言ったら…?」

「そん時ゃ都を破壊する。帝も大臣共も皆殺しダナ」

龍神様の怒りに触れりゃ、そんくれぇ当然ダロ?と不適に笑って…。
キッパリハッキリ少しの淀みもなく、ムヒョはそう言い放った。
ハーッとため息を付く五嶺。
「ああ、まったく……馬鹿馬鹿しいねぃ…。とんだ骨折り損だよ…」
悔し紛れか、本当に馬鹿馬鹿しくなったのか…。
「…若…申し訳、ございません…」
五嶺の漏らした呟きに、未だ苦しげに息を付きながら、恵比須が謝る。
そんな恵比須を、五嶺は少しの間見つめて…。
「……この阿呆めぃ…」
それから、そっと苦笑混じりに呟いた。




「ムヒョ、大丈夫?」
五嶺と恵比須の姿が見えなくなるまで、森の奥へと視線を向けていたロージーが、おもむろにムヒョを見つめてそう尋ねた。
「あ?オレは平気に決まってんダロ?」
「良かったぁ…!ボク、ムヒョが死んじゃうんじゃないかって…すごく、すっごく怖かったんだよ…!」
ぎゅううっとムヒョにしがみつき、そう言って泣くロージー。
ようやく安心したのだろう。
良かったと何度も呟きながら、濡れた頬をすり寄せて…。
「…オレは龍神様だゾ?んな簡単に死ぬかよ」
ヒッヒと苦笑しながら、ムヒョはそんなロージーに口付けた。

『ここにいる』と…。

自分の側にいると…。
泣きながら叫んだロージーに、愛おしさが止まらない。

都に連れ帰られるのを嫌がって泣いたロージー…。
帝の元に戻ることを選ばなかったロージー。

もう、本当に自分のものなのだ、と…そう思えば、震えそうな程の幸福が胸を満たして…。

「もう、誰にも手出しはさせねぇ…だから、安心して側にいろ」
そう言えば、ロージーは嬉しそうに笑って頷いた。
「うん、ムヒョ…ホントに無事で良かった…」
「オメェこそナ…。さ、もう中に入んゾ」
すっかりびしょ濡れダと、顔を顰めて笑い、ムヒョはロージーを抱えると池の中へと入っていった。




+  続く  +   11を読む  +




+  +  +  +  +  +  +


ウチはムヒョロジでゴリョエビなのです。
エビたんエビたん騒いでたのはトーマス戦の時だけだったので、もう知らない方の方が多そうですが…(笑)
ちなみに、この部分を考えたのはその頃だったのですね。
なので、そうだ!ゴリョさんとエビたんを出そう♪とかウキウキ思ってたのですが。
もはや何時の話だ…ってくらい時間経ってますねぇ。。。フ…。。。

てか!最後の部分でムヒョがロージーを抱えてとか書いてますが。
この話のムヒョは大人バージョンではなく通常バージョンです。
でも、ほら、今池の中にいたし。
ムヒョは龍神なので!
何でもオケなのよ〜!と(笑)

しかし、元々池の中に棲んでるんだから、心配しなくても死なないよ…とか…、ロジは思わなかったんだろうか(苦笑)
 2007/02/08(木)/14:19:35  No.46



*--HOME--*

[TOP]

shiromuku(hu2)NOTEBOOK version 1.22