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10☆
「あー、こりゃまたえらい立派におなりで♪」
成長したムヒョを見るなり、ヨイチは訳知り顔でニヤニヤと笑った。 「あ、あの…、プランツって…突然成長したりするものなんですか?」 「んー、まあ、たまにあるな。っつーか、そもそも、成長はするモンなんだ」 生きてるわけだしと、ロージーとムヒョを奥へ招き入れながら、ヨイチは説明をする。 「ミルク以外のものやっちまうとか、育てる環境が安定してないとか、そんなんで育っちまうってのはよくあるんだけどな、ムヒョみたいに高級なプランツになると、持ち主の複雑な感情も理解出来るから…」 「出来るから?」 ニヤニヤ笑っているヨイチに、ロージーは怪訝な顔をした。 「持ち主の愛情に含まれる機微をね、感じ取って成長しちゃうワケだ♪で、何かのきっかけがあると、爆発的に変化を見せる、と」 「…何かの…きっかけ?」 「ムヒョのこと、変に意識して避けたりしたんだろ?」 お見通しだよん☆なんておどけながら、ヨイチは軽くウィンクをする。
そ…そういえば…ちょっと避けたりしちゃった…。 あのせいなの??
かあああっと頬を染めて俯くロージー。 「ま、こーなっちまったらもうメンテナンスも出来ねェからさ。責任はちゃんととらなきゃだぜ?ロージー♪」 「せ、責任…!」 かああああっと、ますます赤くなってしまうロージー。 もう本当に全てを知られているようで、いたたまれないのだが…。 「フン、言う相手が逆だゾ、ヨイチ」 そんなロージーの思いを知ってか知らずか、ムヒョが唐突に会話に入ってきた。 「ん?あ、そっか?」 「そうダ」 「ムヒョ…?」
「安心しロ。オレが責任取ってやる」
ぎゅうっと、背後から包み込むように抱きしめられる。 「む、ムヒョ!」 「オメェは何も心配しなくていいゾ」 これがプランツの言うことか、と…ヨイチは苦笑してしまうのだが、ロージーの方はぽわわ〜んとなってムヒョに身を委ねた。
ムヒョったら…ムヒョったら、本当格好いい…vv ちっちゃくても格好良かったけど…、やっぱり大きくなると、もっと頼れそうっていうか…。
「うん、幸せになろうね、ムヒョ…!」 今でも十分に幸せだけど、なんて…。 完全に二人の世界に突入しているムヒョとロージー。 今、見つめ合っている瞳には、互い以外に映る物はないのだろう。 「オ〜イ、お二人さ〜ん?そーゆーのは帰ってからやってくれ〜い」 「え?あ…、す、スミマセン!」 「あ?そうか…居たのか、ヨイチ…」 「ムヒョ!お前なぁ!」 ひっで〜!と唇を尖らせて。ヨイチが文句をつけようとした時だった。
「む……ムヒョ…なのかい?」
そう、少ししわがれた声が、店の入り口の方からかけられたのは…。 全員の視線が入り口へと向けられる中、一人の老人が静かに店内を進んでこちらへとやってくる。 そう、老人といってももう差し支えないだろう。 そんな外見の人物は、けれど、とても大柄で……。 若干、片足を引きずってはいたが、背筋はしゃんとし、年齢を予測するのは少し難しいようだった。 「ペイジ…」 ぽつりとムヒョが呟く。 「お、いらっしゃい!」 ヨイチもまた知った顔であるらしい。 明るく気安くそう声をかけて…。 「えと…、ムヒョ?知り合い…なの?」 ドキドキと鼓動が早くなる。 プランツ・ドールであるムヒョに、人間の知り合いが居るなんて、おかしな話だ。
まさか………この人じゃないよね…?
ペイジって、ムヒョは呼んだし…。 前の持ち主の人はエンチューって名前だって言ったもん。 ヨイチさんと同じくらいだって…。 だから、平気だよね…、違うよね…?
不安にざわめく胸。 一度は収まった筈の、前の持ち主に対しての不安が、急に甦って……。 「ロージー、ペイジだ」 「やあ、君がムヒョの選んだ『ロージー君』だね、話はヨイチ君から色々聞いているよ」 ニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべて顔を覗き込まれても、ロージーは戸惑いの視線を返すことしか出来なかった。 「…どうした?別に怖がるこたぁねぇゾ?」 不安げなロージーの様子に、ムヒョが怪訝な顔をする。
だってだって…怖いよ、ムヒョ…。
「………」 「おや、驚かしてしまったかな…?」 やや困惑気味な笑みを浮かべるペイジに、ロージーはますます何を言っていいか分からなくなって…。
きっと違うと思う。
この人物は、ムヒョの前の持ち主ではない。
だが、もしかしたら…。 もしかしたら、何か関係があるのではないかと…。 そう思えば、怖くて…。
「ロージー、この人はムヒョの…何てゆーか、師匠みたいな人だ」 何となく事情を察したのだろう、ヨイチがそう助け船を出した。 「…え…?師匠?」 思いも寄らぬ言葉に、きょとんとしてしまう。 「ほら、前に言ったろ?幽霊退治☆」 「あーーーっ?!ええっ?!?!ゆ、ユーレー退治の師匠なんですか??」
ユーレー退治なんて、そんなのまるっきり忘れてたーーー!!!!
大きく大きく目と口を開けるロージー。 そういえば、そんな衝撃の事実があった。 翌日の『前の持ち主』話のショックで、スッカリ記憶から飛んでしまっていたが…。 ロージーはアワアワして三人を見比べる。
ムヒョは霊感が強くて幽霊退治をしてるって言ってた…。 それで、この人がその師匠なの? ってゆーか、師匠って…何? 幽霊退治の師匠って…一体何?!?!?!
「チッ。ヨイチ、テメェ…言うナっつったろーが…!」 「え〜、だってだってぇ、ロージーちゃんが怖〜いお顔で詰め寄って来たんだもん〜♪」 ムヒョの青い瞳にギロリと睨まれ、ヨイチはプリ〜ンとブリッ子ポーズでそう言った。 「わああ…!あのあの、いつもムヒョがお世話になってます!す、スミマセン、ボクちょっとビックリしちゃって…」 「いや、いいよ。プランツに知り合いがいるなんて、普通、有り得ないことだからね。驚くのも無理はない」 慌てて非礼を詫びるロージーに、ペイジはパチンとウィンク一つ。 さして気にしてないと言う風に笑ってみせる。 「それに、師匠だなんて言っても実際は、ボクがムヒョの力を借りているとゆー感じでねぇ」 「そ、そうなんですか?」 ロージーは、へえ〜と感心してムヒョを見た。 幽霊退治等と言われても、いまいちピンとは来ないのだが、それでも、人が頼ってくるくらいだからすごいのかなぁと…。 そして、ムヒョがすごいと言われるのは嬉しいから、エヘヘなんてついつい笑みが浮かぶ。 だが、 「ロージー、ちょっと…」 急にヨイチに呼ばれて…。 「はい?」 一瞬きょとんとしたロージーだが、ペイジを見ているムヒョの真剣な表情に、何となく状況を理解した。
これって……お邪魔…ってこと…?
「ムヒョの服とか、新しく揃えないとだろ?」 口実だと分かり切っているセリフを、それでも明るく言うヨイチ。 それにおとなしく頷き、店内をついて歩きながらも、ロージーは何だか釈然としなくて…。 「…お仕事の話…聞いちゃダメなんですか?」 尋ねれば、ヨイチは困ったような笑みを浮かべた。 「まーほら、いろいろあるからナ」 「……いろいろ、ですか…?」 「いや、ほら、あるだろ?職業上のヒミツみたいのがさー、やっぱ!な?」 どうも、何かを誤魔化そうとしている気がする。 そうなのかなぁ…と、半信半疑に思いつつ、チラリと視線を向ければ…。
「…実は、ちょっと…やっかいな件でね…」
聞こえてしまった微かな声。 先程までとはうって変わって真剣なペイジのその声と言葉に、ロージーの胸を再び不安が襲った。
+ 続く + 9を読む +
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ラブラブお惚気ムヒョロジって楽しいなー♪とか思いつつ書いてたんですが、この二人は原作でも普通に惚気てますよね(笑) 原作の、何気ないやり取りや表情に見え隠れする互いへのラブオーラを、少しでも真似したい物だと思うのですが。。。 まー、同人屋なので、その辺隠す必要ないモンね!とか思うとどうにもオープンになります(爆) 隠れてる方がエロい気がするんだけどな。。。 何もなくてもほんのりエロい話が書けるようになりたいなぁ。←エロエロ言わずに色気があるとか書け…あたしよ…
えーと、次は龍神の方かな。 また水曜か木曜辺りの更新かなと思いますが。 よろしければ、読んでやって下さいませ☆(^-^)
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2006/11/15(水)/17:19:50
No.39
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