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8☆
望めば、いくらでも繰り返される愛の言葉…。 口付けも、抱擁も、微笑みも、同じこと。 望めば、望むだけ与えられる。
でも、気付いてしまったから…。
それからは、ムヒョの口付けが…何か…熱い気がして…。
もっともっと…欲しいとか…。 違う所に……欲しい、とか…。 思うようになって…。
こんなの…おかしいと思うけど…。
ザアアア…と。 止めどなく湯の流れ出るシャワー。 そのシャワーの水音の合間に、別の水音が混じっていた。 やや粘りけのあるような…淫らな水音が…。
「はっ、ぁ…はぁ…、は…ぁ…あ…っ」
荒い呼吸。 速い鼓動。 先端を強く擦れば、身体の奥で荒れ狂う熱い衝動がせり上がってきて…。 「あっ、ぁあ…っ、はぁあ…んっ、ん…んんっ」 思考が真っ白に染まる。 ブルブルと背を走る震え。 立てた膝に力が入り、爪先が少し床から浮き上がった。 「んんん…っ!」 声を殺そうと、唇をきつく噛み締めるが、それでも喉の奥から洩れてしまう、甘さの混じった声…。 大きく震えたその痙攣さえ、押さえるように力を込めて…。 「ぁ…は…ぁ…ぁあ…あ…っ」 ロージーは自らの手を濡らした欲望に、深く深く息を吐く。
ムヒョ、ムヒョ…と、心の中にはムヒョの顔…。
けれど、こんな自分は本当には絶対に見せられない…。 ムヒョにだけはこんな浅ましい想いを、淫らな自分を知られたくない、と…そう思っていて…。
湯気で曇った鏡に薄ぼんやりと映る自分を見つめ、何だか情けなくて涙が出た。
「なに…やってんのかな……ボク………」
最悪だ…、と小さく呟き、また深い溜め息を付く。 流れ行く水に吐き出した欲望も洗い流して…。 怠い身体を…。 虚しさと後ろめたさで重い胸を…。 引きずるようにノロノロと、バスルームを出て…。
「どうした?」
そして、ロージーがため息をつきながら部屋へと戻れば、既に眠っていたはずのムヒョが待っていた。 ギクリと身が竦む。 「ムヒョ…起きてたの?」 「今、目が覚めた」 「そう…」 ドキドキと胸が騒ぐ。
ムヒョはどのくらい前から目を覚ましていたのだろう? ずっとここで待っていたのだろうか? バスルームの前まで来たりはしてないだろうか?
もしかしたら、あの淫らな水音を、声を…聞かれていたのではないかと、そう思って…。
自分のしていたことを、知られているのではないかと思って…。
ムヒョの目が見れない。 目を合わせたら、浅ましい自分の欲望が全て見透かされてしまうような気がした。 「平気か?顔が赤いゾ?」 心配そうなムヒョの声。 「えっ、へ…平気だよぉっ!ちょっと長くお湯に浸かりすぎちゃっただけだから…!さ、それより早く寝ないと!ね、ムヒョ!」 顔を覗き込もうとするムヒョの横を素通りして、わざと明るく笑う。 「ロージー…」 「ん?なぁに?どうしたの?」 かけられた声に振り向いて、ぶつかった瞳にドキリと鼓動が跳ねた。 思わずサッと、視線を外す。 途端…。 グイと腕を強く引かれて…。 この小さな身体の一体何処にこんな力があるのかと、驚く程強く…。 「ちょっ、な…ぁあっ?!?!」 わわわっ?!?!と、慌てる内にもバランスは崩れ、ロージーはその場に膝をついた。 「いった…ぁ、ムヒョ?」 強かに打ち付けた両膝に涙目になって…流石にムヒョを見上げる。 少し上にあるムヒョの顔…。 何か言いたげに見えたその顔は、あっと言う間に近付き、唇が覆われた。 「な…っん、ふっ…ンン?」 えええ?と、驚きに目を見開く。
それは、いつものキスとは異質のものだった。
深く合わせた唇の間、小さな舌が入り込んできて…。 まず、歯列を辿るように…。 そして、口内を探るように…。 更に、舌を絡め合うように…。 「ふ…っ、ぅん…っ」 舌先が触れ合う度、ゾクゾクとしたモノが、背筋を走る。 突然の深いキスに驚きながら、それでも押しのけることは出来ずに…ロージーはムヒョのパジャマをぎゅうっと掴んだ。 たった今、一度吐き出したばかりの熱…。 けれど、それが再び燃え上がり始めたのを感じる。
夢を見ているのかもしれない。
ムヒョからのこんな深いキスは、とても現実とは思えないから。 あまりにもムヒョを望みすぎて、おかしくなってしまったのかもしれない。
ぼうっとしてきた頭の中でそんな事を思い、ロージーの胸は痛んだ。 だが、それでもいいと思う。
これはきっと夢…。
でも、夢だからこそ欲望に正直でもいいのだと…。 そう思えば、一層身体の中の熱は増すようで…。 「…むひょ…っ、むひょ…好き、大好き…っ」 離れた唇で喘ぎながら想いを告げ、ロージーは今度は自分から唇を重ねた。 最初それに驚いたようだったムヒョは、直ぐさま答えを返し、逆に主導権を取り返そうとするように…。 そして、思うままに激しく、貪るような口付けを交わす。 「ン…ん、ふ…っ…は……ン…」 濡れた音と息継ぎの度に漏れる声。 力の抜けてゆく身体。 だが、ふと気付けば、その身体を包み込むように抱く腕があって…。 ぼやけた頭に「あれ?」と、疑問符が浮かんだ。
あんまり寄りかかったら…倒れちゃう……はずじゃ…?
あれれれ?と…。 目を開ければ、そこにあったのは見知らぬ男の顔…。 自分よりも大きな、黒髪の…。 「?!?!?!」 ロージーはぎょっとして、力の入らぬ腕を思い切り突っ張ろうとした。
「ん…なっ、や…っ、だ、誰〜〜〜っっっ?!?!」
叫べば、目の前の男は思いきり眉を顰めて自分を見つめる。 「…あ?ロージー、オメェ何言って…」 「ムヒョ?ムヒョは?ムヒョォ〜、何処行っちゃったの〜〜〜っ?!?!」 「何言ってんダ、オメェ…オレはここに…」 「ヤダヤダ!!!離してぇ〜っ!痴漢!ああ〜ん、ムヒョォお〜〜っ!」 「ウルセェゾ!オレだっつってんだろ!テメェいい加減黙れ!」 「む…っ、も…が…っ」 再び封じられた唇。 藻掻く身体を押さえ込まれ、ロージーは何が何だか分からなくなって…。
何で何で何で〜っ? これって一体どーゆーことなの?? 今、オレだって言った? でもでも、ボクのムヒョは、ちっちゃくて可愛くて優しいんだもん! 怒鳴ったりしないし、こんな乱暴なキスしないもん! それにそれに…ムヒョは、ムヒョは…っ!
混乱しきった頭でグルグル考えていれば、 「……おい、泣くナ…」 なんて、困っているような声がかけられた。 ぎゅうっと瞑っていた目を開ければ、ぼろぼろと涙がこぼれ、揺れる視界に覗き込んでいる濃い青の瞳が映る。 「ぅ…っ、ふ…え…っ」 「オレだ、ロージー。ちょっと成長しただけダ。だから、泣くナ…」 ゆっくりとした優しい囁き。 顔中に落とされる、あやすような宥めるようなキスはいつものそれと同じで…。 「……ぜんぜん…ちょっと、じゃナイじゃない…」 混乱が少し落ち着き、ロージーは咎めるようにそう言った。 その言葉に、ムヒョはホッとしたように表情を和らげる。 「あ?まあ…そりゃ、栄養過多だったんだロ?」 ヒッヒと笑って…。
『プランツの最高の栄養は持ち主の愛情』
そんな事を、いつかヨイチに言われた。 つまり、ロージーの愛情が強すぎた為、ムヒョはこんなに大きく成長したというのだろうか…。 「で…でも、何で?プランツを溺愛してる人なんていっぱいいるでしょ?それに、何で今突然…?」 「さぁナ、オレだって気付いたらこうなってた。その辺は明日にでもヨイチに聞くんだナ」 「え…」
ヨイチさんに……って、何か聞くの恥ずかしいんだけど…。
肩を竦めて言ったムヒョの言葉に、プランツ屋の主人の顔を思い浮かべるロージー。 きっと、ニヤニヤと笑ってからかうだろう、と…想像するのはあまりにも容易だ。 「んなことより…」 モジモジしてしまうロージーにクスリと笑って…ムヒョは涙の滲んだ目元に口付けた。 「あ…、ムヒョ…」 覗き込んでくる青い瞳…。 頬に添えられている大きな掌。 包まれているような感じがして、何だかドキドキする。 僅かに目線を伏せれば、ちゅっと優しく唇が重ねられて…。 「…ン…ん…」 何度も、何度も…。 繰り返される甘い口付け。 到底ホントとは思えない、と…そんなことを思いながら…。 ロージーの身体はゆっくりと、ベッドの上へ倒された。
+ 続く + 7を読む +
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とゆことで。 ウチのムヒョロジさんはいつもチュッチュしてますねぇ…恥ずかしい人達!(違) ホントはロジがもっと積極的で、ムヒョをリードするとゆーエッチになだれ込むのだったんですが、途中で我慢出来ず、書き直しとなりました。
従順良い子ちゃんなムヒョはねー、どーも書いてて身体が痒くなったですよ……(−△−;;;)
えー。続きはまだエロ風味ですが…読んで頂けたら嬉しいです〜(汗)(汗) 龍神の方よりこっちの方の更新が先かな…?
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2006/10/11(水)/16:20:16
No.35
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