【神様にお願い☆5】


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ニセモノ&イロモノ多発ですが、大目に見てやって下さいませ〜(爆)
神様にお願い☆5  








ムヒョは結局戻ってこなかった。
眠れなくなってしまったロージーは、あれからずっと窓から外を眺め、過ごしている。
変わることのない色…。
変わることのない景色を…ただ、ぼんやりと…。
「何かお持ちしましょうか?」
白妙が時折そう声をかけてくれるが、ロージーはにっこり笑って首を振った。

待つことは馴れているし、一人でいることも、長い時間をただぼんやりと過ごすことも、馴れている。

むしろ、一人で居る事に安心すら覚えて…。
「あ……そっかぁ…同じ事なんだ…」
ふと気付き、ロージーは小さく呟いた。

都では帝を待っていた。
帝のために生きていた。
ここではムヒョを待っているのだから…。
ムヒョのために生きればいい。

「うん…そうだ、きっとそれでいいんだ…」

『オレのモンだ』ってムヒョも言ったんだし、と…。
そう思えば、何だかホッとする。
正直、都を出てからずっと、どうしていいか分からなかったのだ。
龍神の所へ生け贄として身を捧げよう、なんて…そんなことを思って御殿を抜け出したものの…。
自分で何かをすると決め、実行した事なんて今まで一度も無かったから…。
だから、本当はとても怖かったのだ。
初めて飛び出した外の世界…。
暗い森も、大きな池も、怖くて怖くて堪らなかった。

でも、龍神様はムヒョだったし。
池の中には御殿があったし。
怖い事なんて何一つ無かったんだけど……。

でも…さっきの怒ったムヒョは怖かったな…。

睨むように見つめた青い瞳を思い出し、ロージーは慌てて頭を振った。
怖いイメージなんて、残さない方がいい。
これからずっとここにいなくてはならないのだから…。
「……これ…片づけた方がいいのかな…」
手にした着物を見つめ、呟く。
多分そうなのだろう。

ムヒョは考えるなと言った。

思い出すなと、懐かしむだけ無駄だと…。
だからきっと…これは無い方がいい。

これを見れば、ロージーはどうしても帝を思い出してしまうから…。
「でも…、捨てなくても…いいよね…?」
捨てなきゃダメなのかな…と。
自問すれば、胸が痛んで…。
ダメだと思いながら…ロージーはまた溢れ出す涙をどうすることも出来なかった。







「よっ!なーに苛ついてんだ?」

龍神の池へ戻ってきたムヒョに、そんな声がかけられた。
「…ヨイチ…何しに来た」
池の畔に生えた木の枝に、一人の青年が腰掛けている。
「挨拶だねぇ、久しぶりに会ったってのに。ま、相変わらずってゆったらそれまでだけど」
「用がねェなら帰れ」
「用ならあるよ」
歯を剥いたムヒョに、別の声が別の方角からかけられた。
「エンチュー、オメェもか…」
声のした方を見やれば、そこにもまた青年が一人…。
先程の青年が黒髪に黒い着物なら、こちらの青年は白銀の髪に白い着物で…だが、二人とも同じように頭には二本の角が生えている。
「もうちょっと歓迎してよ、相変わらずだね、ムヒョは…」
エンチューと呼ばれた青年は、肩を竦めて言うと、ひょいと枝から飛び降りた。
逆側で、ヨイチもまた同じように枝から飛び降りる。
「用って何だ」
「分かってるでしょ?雨…何で降ったのかなって…」
「そ。様子見に来たワケだ」
探るような二つの視線から、ムヒョはぷいっと顔を背けた。
「…別に。気まぐれダ」
素っ気なく言いながら、すたすたと歩き出せば、ヨイチとエンチューはその後をピッタリとついて来る。
「まーたまた♪気まぐれでそんなことしたことねーだろ」
「また人間の願いを叶えてあげたんでしょ?」
「分かってんなら来ることねーダロ…」
フンッと鼻を鳴らしたムヒョに、二人は顔を見合わせにやりと笑いあった。
「だって、珍しいじゃん?同じ願いを2回も叶えるって☆」
「今までナイよねぇ〜?どうしたのかな〜って気になるでしょ?」
「詮索好きの暇な鬼どもめ…」
ムヒョが面白くなさそうな顔をするのが面白いらしい。
二人はクスクスと笑う。
「それに、先一昨日から…あの子居ないんだよねぇ」
「ムヒョがしょっちゅう見に行ってた人間だろ?ロージーとかゆー金色の頭の可愛子ちゃん♪」
「そうそう、病気で死んだとかでもナイみたいだし…何処行ったのかな〜って…気になっててさ〜」
ムヒョ、知らない?なんて…。
白々しく尋ねられ、ムヒョは思い切り顔を顰めた。
以前から、度々ロージーの様子を覗きに行くことでからかわれていたのだ。

そう…実際、何度…あの御殿を覗きに行っただろう。

ロージーが初めて連れてこられたあの日から…ムヒョは何故か気になって…。
最初は、あの金の髪が珍しいからかとも思った。
それか、あまりにもドジで危なっかしいので、目が離せなくなったのか、と…。
「……チッ…」
泣き虫で、事ある毎に泣いていたロージーが、帝と一緒の時だけは、いつも楽しそうに笑っていたことを思い出し、ムヒョの顔がますます険しくなる。
「あれ?何かホントに面白くなさそうな顔だね…?」
「何だ?お前んトコじゃねぇの?」
「いや、中に居る」
「…の割に、嬉しくなさそうじゃない?」
ムヒョの短い言葉に、エンチューとヨイチはぱちくりと瞬きをした。
その不思議そうな顔がまた気に入らなくて…、ムヒョはジト目で二人を睨む。
「オメェら…何で、んな意外そうな顔してんダ?」
「だって…」
「愛しのロージーちゃんが居るなら、もっと『人生バラ色!』ってな顔しててもいんじゃねーの?」
なあ?ねえ?と顔を見合わせる二人。

「ああ?愛しの?何言ってやがんだ!」

んなワケねーだろーが!と叫んだムヒョをマジマジと見つめ、二人はまた互いの顔を見やった。
どう見ても、ムヒョは照れて言っているようではない。
これって…もしかして…?と、交わした視線の間で、同じ思いが伝わる。
「ムヒョ?まさか…自分で分かってない…?」
「何をだ?」
「お前、ロージーが好きなんだろ?」
「あ?何でオレが…!」
思い切り顰められた眉。
怪訝そうなムヒョの顔に、ヨイチとエンチューの顔には驚きの表情が浮かんで…。
「何でって…お前…だって…!」
「好きだから2回も願い事叶えちゃったんでしょ?」
ちょっとちょっと〜!と。
呆れ半分驚き半分みたいに言われ、ムヒョは違う!と声をあげた。

「違ぇ!オレは…ただ、雨くらいでアイツがあんまり喜ぶから…っ!」

そうだ。
ロージーがあんまりにも嬉しそうに笑うから…。
凄い凄いと喜んだから…。

そう思った途端、ドキンと鼓動が跳ねた。
大きな大きな音を立てて…。

ロージーが喜ぶ事なら、何だってしてやりたいと……あの時、確かにそう思った。

最初はただ…自分のモノになる喜びだけ…。
生け贄なんて形で手に入るとは思わなかった。
ずっと、眺めていただけで…気にはしていたけれど…。
手に入れようなんて思ったことはなくて……でも、それが手に入ることになったから…。
だから、とにかく気が急いて…『喰う』なんて言って抱いたのだ。

ドクドクと鼓動が高鳴る。

好きなのだろうか…ロージーを…。

ロージーを思えば、いつだって心の中がほんわりと温かくなった。
ロージーが笑えば嬉しくて、もっと笑ってくれたらと思った。
ロージーが泣けば、何故か苦しいと感じるし、帝のことを思っていると思えば、とてもイライラして…。
外へ帰りたいのではないかと、帝が好きなのではないかと、そう思う度、すごく気分が悪くなる。
傷など付くはずのない胸の中、何故こんなにも痛いと感じるのか…不思議で………。
最近おかしいと思っていたのだが…それは…もしかしたら…全部……。

「………ロージーが…好きだから……なのか?」

オレが?と…信じられないような面持ちで…呆然と、ムヒョはそう呟いた。



+   続く   +   4を読む   +




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龍神ムヒョさん、恋の自覚がありませんでした(え)

エンチューとヨイチは鬼の子です。
風神・雷神とかでも良いのですが。
まあ、そんな設定はあってもなくてもか…と思い、敢えて書くことは避けましたが。。。(爆)

また近い内に更新出来たらな〜とか思っておりますが、よろしければ読んでやって下さいませ☆
 2006/09/14(木)/17:51:14  No.32



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