【神様にお願い☆ 3】


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ニセモノ&イロモノ多発ですが、大目に見てやって下さいませ〜(爆)
神様にお願い☆ 3  






目を覚ませばフワフワと柔らかな布団にくるまれていて…。
「…??」
目に入った遠い天井。
そこに描かれた美しい幾何学模様をぼんやりと眺めて、しばらくの間…。
ロージーは自分が今何処にいるのかが分からなかった。
明らかに、自分の部屋ではない。
「…ん〜…と……?」
戸惑うまま半身を起こして周囲を見回していれば、幾重もの薄布の向こうに何やら動いている明かりが見える。
それは段々とこちらへ近づいてくるようで…。
「あのう…」
誰か居るのだろうと声をかければ、
「お目覚めですか?」
そう返事が返ってきた。
澄んだ女性の声。
優しそうなその響きにホッとする。
「はい、あの…ここって……何処でしたっけ?」
エヘヘと誤魔化し笑いを浮かべつつ尋ねれば、相手も少し笑ったようだった。
徐々に縮まる距離。
けれど、足音も人影もない。
あれれ?と、ロージーは暗がりに目を凝らした。
「よくお休みになられてましたね」
声はすれども姿は見えず。
松明のようなその明かりはフワリフワリとこちらへ近づいてくる。
薄布を避けもせず、スイッと通り抜けるかのようなその動き…。
「あ…あの……あなたは…そのぉ……」
何処をどう見ても、人の姿が見えないことをようやく理解し、ロージーはやや身構えてその明かりを見つめた。
「あら、驚かせてしまいましたね」
声はあくまで愛想がいい。
「私はほんの十年前に、この池へ身投げした女でございます。六氷様にこうして魂を拾っていただき、それからずっと仕えさせていただいてるんですよ」
「え…?」

じゅ、じゅうねんまえ??
身投げ???
魂を拾って貰った????
そ、それって……つまり……。

幽霊って事?と内心ぎょぎょっとしながら…。
「あの……じゃあ…あなたは…、その、身体は…もう?」
混乱するままそう問えば、明かりはゆらりと揺らめいた。
「ええ、ここで実体を持つ人間はあなた様だけです」
「え?ってゆーことは…他にも…あなたみたいな人がいるんですか?」
「そう多くはありませんが…。気になられるようでしたら…」
明かりはそう呟き、ゆらゆらと揺らめいてその姿を変えた。
薄ぼんやりしつつも美しい女性の姿へと…。

よ…余計に幽霊っぽい…っ!
でもでも、怖い人じゃないみたいだし!
だ、大丈夫、大丈夫!
大丈夫…だよね…?

「私の名は白妙…。六氷様より、ロージー様のお世話をするようにと言いつかっております。何かご希望がありましたら何なりとお申し付け下さい」
「は、はあ…」
ドキドキしながら頷いて…ロージーはあれ?と思った。
池に身を投げたという白妙。
それは恐らく、何かしらの願を掛けての行動だろう。
生け贄になるつもりで来たロージーと、立場は同じ筈である。
だというのに、何故、自分の世話をさせるのだろうかと…。
「では、ロージー様、お食事になさいますか?湯浴みになさいますか?」
不思議に思っていればそんなことを聞かれ、そこでハッとする。

湯浴み…?
そ、そうだ!ボク…ムヒョに…!

夕べ、ムヒョにされたこと…。
現実だとは到底思えない、濃密な時間…。
思い返せば、それだけでゾクゾクとするようで…。
ロージーは慌ててブンブンと頭を振った。
「あ…あの、それで…、ムヒョは?」
今顔を見るのは何だかもの凄く恥ずかしいと思い、ロージーはムヒョの所在を尋ねた。
だが、
「六氷様は都へお出かけになられました」
返ってきた答えには、ホッとするよりも何だか拍子抜けして…。
「え?都へ……?」

あ、ひょっとして…!
雨を降らせに行ってくれたのかな?

「あの、白妙さん…、あなたのお願い事は…ムヒョは叶えてくれたんですか?」
龍神であるというムヒョ。
本当に願いを叶える力があるのかと…気になれば、聞かずにはいられない。
「ええ、六氷様のお力があれば私たち人間の望みを叶えるなど容易いこと。ロージー様の願いも、きっと程なく成就されますでしょう」
そんなロージーに、白妙はニッコリと笑って請け合った。
「そうかな…だと、いいな…」

そしたら、みんなが助かるんだもんね。
帝も…喜ばれるだろうし…。

ロージーの脳裏に、子供の頃からよく見ていた帝の笑顔が蘇る。
ここへ来てまだ一日も経っていないと言うのに、何だか妙に懐かしい。
帝も、御殿も…。
「ロージー様?」
「あ、えと…じゃあ、まずは湯浴みを…」
思わずぼんやりとしてしまって…。
不思議そうにかけられた声で我に返り、ロージーは慌てたようにそう答えた。






窓の外は不思議な世界が広がっている。
ゆらゆらと揺れる、薄い緑のような青のような…。
何か澄んだ、けれどそこにあるのは確実に空気ではない物…。
遙か上空は白く見え、射し込む光が筋になって見えている。

「そっから外に出ようなんて考えるなヨ?」

不意に背後からそう声をかけられ、ロージーは弾かれたように振り返った。
いつの間に戻ってきたのか、室内にはムヒョの姿がある。
「ムヒョ!」
「外に見えてんのは池の水だからナ。出たら死ぬゾ」
「あ…、そうなんだ…」
何と返事をして良いか分からず、ただこくこくと頷けば、ムヒョはスタスタと近づいてきて、ロージーの顔を覗き込んだ。
そのままちゅっと…軽く触れ合う唇と唇…。
かあと頬を染めるロージーに、少し表情を柔らかくして。

「雨、降らせて来たゾ」

ムヒョは簡潔にそう告げた。
「ホント?!もう?!」
弾かれたように自分を見つめるロージー。
「オレは嘘は言わねェ。都は今大雨ダ」
「わぁ〜!すごい!ありがとう、ムヒョ!」
輝かんばかりの笑顔で礼を言われ、ムヒョはドキドキしてしまう。
ムヒョにとっては雨を降らせることなど造作もないこと…。
天に昇り、雷雲を呼ぶ。
ただそれだけでいいのだ。
いや、だからこそ、普段自然を操るようなことは滅多にしないのだが…。

「まあ、ずっと日照り続きだったからナ、一日ばっかじゃそれ程意味はねェだろーが…」

こんなにも喜ぶものか、と…。
自分自身のための望みではない筈だ。
都に雨を降らせて欲しいなど…。
それなのに、こんなにも喜ぶのかと…。
少し新鮮な驚きを覚えて言えば、
「あ…明日も…降らせてくれる?」
ロージーは勢い込んでそう尋ねてきた。
「何?」
「……ダメ、かな…?」
必死に見つめる瞳。

同じ人間の願いを、二度も叶えたことはこれまでに一度も無い……。

叶えてもいいものか…と、ムヒョは少しの間思案した。
雨が降らないのは、他の神々の間で決められたことなのだろう。
そこにどんな意味があるかは分からないが、人間の信仰心が神の力の源である以上、人間を全滅させるようなことはあり得ない。
だから、ムヒョが手を出さずとも、雨はその内に降るはずなのだ。

だが…。

「…雨を降らせて欲しいなら……どうすんだ?」

ニイッと笑みを浮かべ、ムヒョはそう尋ねた。
真剣に見つめていたロージーの瞳が大きく見開かれる。
ムヒョはロージーの願いを叶えてやりたかった。
本当は、見返りなど無くてもかまわない。
ロージーが望むなら、ただそれだけで…。
他に理由など、いらない。
だが、それでは他への示しが付かないから…。
ムヒョのそんな思いは露知らず、ロージーは僅かに視線を逸らして…それからまた、怖ず怖ずとムヒョを見つめた。

「あ、あの…、また、ボクをあげる…で、いいの?」

真っ赤に染まった顔で、いかにも恥ずかしそうに言われ、クスリと笑みが漏れる。
「ああ、上等だナ」
着物の袖から出た白い手を取り、その甲に口付けて…。
ムヒョは満足そうにヒッヒと笑った。



+  続く  +   2を読む   +




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生け贄ロジ話その3。
あたしはつくづく、寵愛系が好きだなぁとか思いながら…。
しかし、この龍神ムヒョはロジの事大好きですねぇ。

あたしはいつもいくつかの話を同時で進行させるのですが、今回程、どの話もラブラブってのはないのではないかと…。
(てか、何かエロばっか書いてる気がしたけど…何と何だろう…これじゃないのねぇ…???)
ムヒョロジって愛に溢れすぎてると思うよ(笑)
 2006/07/17(月)/23:01:14  No.28



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