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「オイ」 掛けられた声に視線を上げれば、いつの間にか、ムヒョの顔がすぐ近くで……。 メールを打つのに一生懸命だったから、ボクはムヒョが目の前に来ていたことに、気付いてもいなかった。
「ついでにナナにも送っとけ」
「え…っ、な、何を?」 そう聞いたボクは、よっぽど驚いた顔をしてたんだと思う。 だって、ムヒョが一瞬、不思議そうな顔をしたから…。
でも、ホントに心臓が止まるかと思うくらいビックリしたんだもの! ムヒョはたまにこんな不意打ちをするけど、すごく心臓に悪いよ。 いつかその内、ホントに心臓が壊れちゃうかもしれない。
そんなドキドキを何とか落ち着かせようとしているボクの懸命な努力なんて、全く知らないであろうムヒョは、ちょい、と携帯を指さした。 「メール」 ポツリと告げられた言葉に、自分が今何をしていたかを思い出して…。 「あ…っ!メールか…そっかそうだよね!うん、分かった!」 ボクは慌てて頷いた。
ってゆーか、近いよ、顔! 何でこんな近くにいるのさ!
かああっと、顔が火照るのが分かる。 こんな…、銀杏婦人から逃げてるなんて非常事態の真っ最中で、しかも、すぐそばにギンジさんが居るんだもの。 何かされるなんて事はないと思う。 ナイとは思うんだけど……ムヒョの気配はまだ近いままで…。 ちょっとでも動いたら、頭とかぶつけそうな程の位置なんだもの。 何だか体温とかまで伝わってくるみたいで、すごく…熱い気がする。 このまま、メールを打ち終わるまで見てるつもりなのかな、なんて気になりながら…。
ああもう、本当に…! 顔が近いだけで、何でこんなにドキドキするんだろう。 ドキドキして熱くて、息まで苦しい。
携帯のボタンを押す指が震えてしまうのに、また焦って…。 「あ、あ、間違った…!」 小さく呟きを漏らせば、クスリと笑われた。 思わずチラッと見てしまえば、バッチリと視線が合う。 笑みを含んだ青い瞳。 「早くしろ」 そんな短い命令も、何故か笑みが混じってて…。 何が面白いのさ!人の気も知らないで〜!と思いながらも、画面に目を戻し急いでメールを送信する。 ディスプレイに表示される『送信しました』の文字。 「送ったよ!」 ホッとして顔を上げれば、フワリと風が動いて…。 温かさが動いて…。 「そうか」って呟きが、真正面からする…なんて…。 思った時には、温かで柔らかな感触が唇に触れていた。 「……っ、…な……っ!」 スグに離れていったムヒョの唇は、ハッキリと笑みの形に上がっている。 青い瞳も楽しげなまま。
また! またこんな不意打ちして……っ!!!
ドキドキのあまりに目眩すら覚えながら。 「ちょ、ちょっと!ムヒョったら!」 ギンジさんがいるんだよ!と小声で言えば、ムヒョはヒッヒと笑って、また…。 今度は額に口付けられた。 「幽李で見えねェ」 「見えないって…もし見えたら…」 そう言いかけたボクの声が聞こえたのだろう。 幽李がニッコリ笑って、親指を立てた。
…今の『アロッ』ってゆーのは、きっと大丈夫って意味なんだろうな……。 ってゆーか、幽李に見られてるのはいいんだ…ムヒョ……。
何だか妙な疲労感を覚えて溜息を付くが、ムヒョは「ホラみろ」とばかりに笑っている。 悪戯っぽくて、得意そうで、楽しげなその笑顔…。 ホントに…すごく楽しそうで……。 何だかもうイロイロと、どうでもよくなってくるんだけど…。
「……ボク、その内心臓麻痺で死んじゃうんだから…!」
咎めるような言葉と共に、お返しだよ!なんて…。 まだ近い顔にちゅっとキスを返したら、大きな瞳は一層大きく見開かれ、それからすぐ…また楽しげに笑った。
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えーと…この話は昨年3月頃、SNSの日記に蓮華さんが描かれたイラストを見て、勝手に送りつけた話だったりします。 (だってすんげー可愛かったんだよ〜!!!ロジのドキドキが伝わってさvvvこのときめき!書きたい!!!!!!ってすごく思ったんだものvv)
ちなみに……。
メールより電話の方が早いんじゃない?なんて…。。。 こんな緊急事態中にのんびりメールで連絡とか、あり得ないよね…とか、一応気付きましたが、まあ……いいことにしました☆(ちょっとマテ!)
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2008/08/28(木)/16:34:24
No.87
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