【ハッピーバレンタイン ’06】


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ニセモノ&イロモノ多発ですが、大目に見てやって下さいませ〜(爆)
ハッピーバレンタイン☆ ’06  
 
 
 
 

 
「…クソ…、ロージーの奴……」

心底面白くなさそうに、けれど何処か情けない感じで呟いて…ムヒョは足音も荒く階段を降りると、そのまま歩道を数歩進んで振り返った。
「………」
見上げた先には自分の事務所。
何でオレが出てこなきゃなんねぇんだと、そう思えば面白くないモノを感じる。
戻るべきではないだろうか。
そもそも、あそこの主は自分なのだから。
だが、
「!」
窓にチラリとロージーの姿が見えた気がすると、ムヒョの身体は勝手に、一番近い街路樹の陰に隠れて…。
そこからソロリと事務所を窺えば、ロージーは窓を開けて通りを見回し、溜め息を付いている所だった。
恐らく、ムヒョを探しているのだろう。
しょんぼりとしたような表情で…キョロキョロと…。
「………」
もう涙は拭いたようだ。
その事を遠目に見て取り、ムヒョは溜め息を付いた。

悪いことをした、と…一応は思っている。

大体、最初にマズイかなとは思ったのだ。
だが、まあいいか、と…。
そう思ってしまった。
そんな自分の軽率さにも腹が立つのだが…。
だが、それでも…。
何も、泣いて怒ることはないだろうと思って…。

たかが菓子の一つや二つ…。
どうせ、オレのモンじゃねぇか…。
日にちなんかに拘りやがって…くだらねぇ…!

ムカムカと思いながら、同時に、やっぱり謝ろうカナなんて思ったりもする。
ロージーが絡むと、いつもその途端に…自分の気持ちは収束の付かないモノとなってしまい、コントロールが効かなくなってしまうのだ。

『ムヒョはボクの気持ちなんか全然分かってないんだから!』と…。

そう言って泣いた顔を思い出せば、チクチクと胸が痛む。

「…クソ…面白くネェ…」

むむむと、ムヒョが顔を顰めて呟いたそんな時…。
見覚えのある人影がビルの階段を昇って行くのに気付いて…。
「何だ…?ヨイチじゃねぇか……遊びに来たってのか?暇な奴…」
後ろ姿にそう呟く。
階段を昇って行く足。
そして、暫くの間…。
窓の外をぼんやりと見つめていたロージーが、ハッと部屋の中を振り返った。
続けて、ガラガラピシャリと窓が閉まる。
「………」
今戻るのがタイミング的にはいいかも知れぬとそう思い、ムヒョは街路樹の陰から飛び出すと、そのまま階段を駆け上がった。

謝るべきか、素知らぬフリをするべきか…。

そんなことを迷いつつ、取り敢えず、ドアの向こうから聞こえてくる会話に耳を澄ませる。
こんな風に相手の機嫌を窺う等、かつての自分には考えられなかったことだ。

「…で、怒ってんのか」

クックと笑うヨイチの声。
どうやら、ムヒョが居ないことの理由を説明されたらしい。
その楽しげな声に、ムカッとしつつ…。
ムヒョはロージーの様子を窺う。

「だって!勝手に食べちゃうなんて酷いですよね?」

…チッ。まだ怒ってやがる…。

プリプリという擬音が聞こえてきそうな声音に、顔を顰めて…。
入るかどうするかと迷っていれば、会話の続きも聞こえてきた。

「でもさぁ、それって…明日ムヒョにやるヤツなんだろ?だったらそんな怒らなくてもさぁ…」

そうだそうだ!
たまにはいいこと言うじゃネェか!ヨイチ!

ヨイチの言葉に思いっきり賛同するムヒョだが、室内には僅かな沈黙が降りて…。
何だ?と怪訝に思っていれば、

「………ムヒョのじゃないです…」

ロージーがポツリとそう言った。
「へ…?え?え…?ち、違うの?」
思いもかけないその言葉に、戸惑うヨイチの声。
ドアの外にいるムヒョも、あまりのことに愕然として…。
ポカンと、口を開けドアを見つめてしまう。

ムヒョが食べてしまったお菓子は、どう見てもバレンタイン用に作られたモノだった。

ハート型のチョコレートのケーキ。
バナナとチョコと生クリームでデコレーションされた、店で売っていてもおかしくないほどの出来映えの……。
てっきり、自分のために作られた物だと思っていた…。
疑いもしなかった。

まさか、まさかロージーが、自分以外の誰かのために、バレンタインのケーキを作るなど…。

「…そんなに…意外なんですか?」

クスッと小さく笑うロージー。
「あ、何だ、冗談??」
何処かホッとしたヨイチの声。
何だか、自分が二人居るようだ。
尤も、自分はそんなに素直に感情を表しはしないけれど…。
「別に冗談じゃないですよ」
「ホントに、違うワケ?てか、じゃあ…誰の?」
「このビルの、オーナーの方なんですけど…」

オーナーだぁ?

ムヒョの脳裏に浮かぶ、ビルのオーナーの顔…。
それは、歳を取った白髪の…。

「ババアじゃネェか!」

「頼まれて…」
思わず、ドアを開けてそう叫んでしまった。
「あ…★」
「ムヒョ?!」
「ムヒョ?お前…そこにいたのかよ?」
2人の視線が刺さるのにいたたまれない気持ちになる。
が、ムヒョは開き直ってフンと胸を張った。
「い、今帰ってきたトコだ!そしたら話し声がするから…」
「聞いてたの?何処から?」
「その態度だと、お前のじゃネェって辺りだろ?」
「ウルセェ!」
「あ!反省の色が見えないなぁ!」
ぷうっと頬を膨らませるロージー。
ヨイチがニヤニヤと笑う。
「謝った方がいいと思うぜぇ?人のケーキ食っちまったんだろ?」
どうせ、自分のだと思って食ったんだろ?と言われ、言葉に詰まる。
「…………」
「ムヒョ?たとえムヒョに上げる為に作った物でも、勝手に食べちゃうってのはナイんじゃない?」
「クソ、ウルセェな………あー、悪かったヨ」
顰め面でもごもごと…、それでも一応謝罪するムヒョ。
「うん」
ロージーはニッコリと笑った。


+   +   +   +


「……で。何だってオーナーのばあさんなんかの為にケーキなんざ作ってたんだ?」

ムヒョが半分食べてしまったケーキでお茶をして、ヨイチは帰っていった。
ロージーは新しいケーキを焼き始めている。
キッチンに満ちる甘い香り。
イソイソと準備をしているロージーを眺めながら、ムヒョは尋ねた。
やはり、どう考えても面白くない。

「んー?何かね、周辺のビルのオーナー達と会合があるとか何とかでねぇ。その時に出したいから作ってくれないかって頼まれたの。そういえば…何でボクがお菓子作るのとか好きなの知ってたんだろうねぇ…?」

「知るか」
唇の下に指を当て、首を傾げたロージーに一言そう言って。
ムヒョは近くにあったマンガを開いた。
取り敢えず、ケーキを作ってた理由は分かった。
だが、それでもやはり、面白くはない。

そんなばーさんの為のだったら…何もあんな泣いて怒る必要ねーじゃねーか…。
まあ、コイツは何でもかんでもスグ泣くけど…。

ムムムと、何だか唇がへの字になる。
「…ムヒョ、どうしたの?何かムズカシイ顔してるよ?」
まくっていた袖を直しながら、ロージーがソファへとやって来た。
「元々こーゆー顔だ」
マンガで顔を隠すようにしながらぶっきらぼうに言うが、ロージーは隣に座ると、わざわざ覗き込むようにして…。
「……何か…怒ってるの?」
怖ず怖ずと聞く。
「怒る理由があると思うのか?」
「それは…、分からないけど…」
ギロリと睨めば、困ったような顔…。
それがまた、面白くなくて…。
ムヒョはプイと視線を逸らすと、実際は一コマも読んでいないマンガの誌面に顔を向けた。
「ねえ…、ムヒョ……」
「何だ」
「……あのね…」
何だかハッキリしないロージーに、再び視線を向ける。
すると、ロージーはかあっと赤く顔を染め、もじもじとしながら…、

「今日…ボクの部屋で…寝よう?」

なんて言って……。
思わず、マジマジと見つめれば、バッと両手で顔を覆った。
「………」
「…イヤ…?」

………んなワケ…ねーだろが…。

思わず無言になってしまったのは、思わぬセリフに心底驚いたから。
だってそれは、ロージーからの初めての誘いだったのだ。
いつだって、半ば奇襲のようにして、そーゆー流れに持って行っていた。
だから、本当は…ロージーはイヤかもしれないと…自分に付き合っているだけかもしれないと……どこかで……。

「ムヒョ?」
「んなの……夜まで待つこともねーだろ」
ガシッと、掴んだのは青いリボンタイ。
「え?」
それをグイと引き寄せ、強引に口付ける。
「ン、ちょ…ちょっと、ま…っ」
ロージーが慌てて言うが、そこはそれ、いつものことなので。
ムヒョは気にも留めずに口付けを続ける。
だが、
「だぁ〜めったら!」
体格で勝るロージーに、ガバッと引き剥がされて…。
「な…っ」
文句を言おうとしたムヒョの鼻先に、ビシッとロージーが指を突きつけた。

「ムヒョ!ボクはね、今、ケーキを焼いてるの!だから、今はダメ!」

「な…んだとぉ?そんなモンほっときゃいーだろーが!」
「焼き直しになったのは誰のせい?」
「…っ!」
「ボクは早く片づけて、今日はムヒョとゆっくり過ごしたいなって思ってたんだよ?」
資料作成とかだって頑張って早く終わらせたのにさ〜!と恨みがましい視線を向けるロージー。

だ…だったら、先にそー言やいーじゃねーか…!

心の中ですら、言い返す言葉にはいつもの強さも迫力もなく…。
なまじ、自分に非があると認めてしまっているだけに、立場の弱いムヒョ。
おまけに、ロージーの怒った理由はその辺にもあるようだと分かれば、尚のことムリなど言えようはずもなくて……。

「だから、ちゃーんと夜になるまではダメだからね!」

「ぐ……クソ…!」
ビシッと言われた言葉に、ムヒョは呻ることしか出来ずに…。

そして、そんなやり取りの末…。
お仕置きよろしくオアズケを喰らうムヒョなんて、実に実に珍しい光景が出来上がり…、時刻は夕焼け小焼けの17時を回って…。
夜にはまだあともうちょっと…なそんな時間、ムヒョはやっぱり何だか面白くなく、ロージーは何だか可笑しい気持ちで…。

ラブラブでイチャイチャで甘〜い、なんていうバレンタインには、まだちょっと遠そうな二人なのでした☆



−−−−−−−−−−−−−−

『そして、バレンタインの夜は甘く甘〜く更けて行くのでした☆』ってのが、海闇でのバレンタイン話では定番の締め文句だったので。
最後はそれにはちょっと早いってな意味を込めて。。。
来年はエロエロになってたらいいナ(え)

 2006/02/14(火)/17:46:52  No.15

…何だかイロイロ間違ってるねぇ…。  
見直してみたら何かイロイロ間違ったりしてますナ。
とりあえず、誤字を一個だけ直しました。

つか、スッカリ書き忘れてますが(え)
ムヒョ用のチョコは勿論とっくに準備してあるのです。

まあ…、書かなくても、そんなん当然だよね!って思われてる気もしますが………。
むむ…。。。ソレは絵で描きたいな…。うむむ。。。
どうなるかな…??
 2006/02/15(水)/13:54:31  No.16



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