+ ウレシハズカシ☆踏破試験 +

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傾向; 典芬・西ロマ・米英

 
1.




「それでは、踏破試験の概要を説明する!」

バッシュのキビキビとした声が、晴れ渡った空に高く響く。
踏破試験はその別名の通り、学園を遠く離れ、他国の島を借りて行われるのが習わしだ。
その開催地は毎年変更され、今年の舞台はイギリス領の外れにある島で…。
海岸線の一部はリゾート地として開発されているが、その奥には手つかずの自然が広がっており、山あり谷あり猛獣ありという、なかなかうってつけの試験会場であった。

この島で、試験は3日に渡って行われる…と言っても、初日の今日は現地までの移動と説明だけで、実際の試験は明日からである。

…のだが、説明をするバッシュの前には、ガルデローベのコーラル生全員が、後ろにはパール生のトリアス3名、教職員数名、更に何故だか来賓のお方々まで…かなりの大人数がズラリと揃っていた。


う、わあ〜〜!
わああ〜〜〜わあああああ〜〜〜〜!!!!!


「この踏破試験は、2人一組のペアでゴールを目指すものである!距離は直線で100キロ。ローブの使用は不可とする。装備の中には………」
これから行われる試験について、かなり重要な諸々の説明をしているバッシュ。
だが、そんなものは何一つ、ティノの耳には届かなくて………。
今日はもう何度、心の中で叫んだか…。
だって、先程からずっと、ビシビシ突き刺さって来る、痛い程に鋭く熱い視線…。
ティノはそちらを見るどころか、顔を上げることすら出来ず、ずっと俯きっぱなしで…。
何で何でどうして〜?と焦りまくり、ソワソワしていれば、ツンツンと軽く背中をつつかれた。

「ねぇねぇ、スウェーデンの王様、さっきからずーーっと、ティノのこと見てるね♪」

フフフ〜と何やらとても嬉しそうな顔で、コッソリそう言うフェリシアーノ。
そう…。
教職員の後ろにズラリと居並ぶ来賓の中には、何故だかしっかりベールヴァルドの姿もあったのだ。
そして、例によって例の如く…彼の瞳はじじじぃっとティノを見つめているから…。
「そ、そんなことないよっっ!!!!」
「いや、あれはまさに、ロックオン☆って感じだぞ!」
「うんうん、すっごいよね!ビーム出そうだもん!」
「ああ、本気で穴でも開きそうだ…って…いや、ああ、そうか!ズバリ開けたいのか…」
「うっわ〜〜!アルったらエッチ〜!」
きゃー☆なんて喜ぶフェリシアーノの横で、ティノは「穴?」と首を傾げた。

スーさんが穴を開けたい?僕に???

「お、隊員Bは分かってない様子でありますぞ!隊長!」
「君はホントに純真オトメだな♪からかい甲斐があるのかないのか…」
きょとんとしているティノにニヨニヨと笑い合う二人。
「えーっ、ちょっと何なの、二人とも…」
「フフ〜、隊長殿、ティノはまだまだお子様でありますな☆」
「うーん、今度ちゃんと教えておかないと、彼が可哀想なんだぞ」
「え〜…もうホントに何なの?僕がお子様だとスーさんが可哀想って…、そもそも…スーさんが僕に穴なんて…………って……」
むむーっと顔を顰めてブツブツ呟き、そこでようやくハッと気が付く。

「お、おひゃーーーーっっ☆な、ななな、何て事言うのーーーーーっっっっ!!!」

アルフレッドの言葉に、思わず叫んでしまえば、みんなの視線が一斉に集まった。
「何事だ?ティノ、一体どうしたのであるか?」
バッシュの鋭い問いかけに、ティノは顔を真っ赤に染めて…。
「あっ、あああの、い、いえ、何でも…ない、です…。すみません……」
消え入りそうな声で、そう呟いた。
「アルフレッドとフェリシアーノも煩いのである!この踏破試験は、遠足などと呼ばれているが、実際には毎年リタイアする者が多数出る過酷な試験なのだ。浮かれ気分で臨めば思わぬケガもしよう。皆、心してかかる様に!」

あああ、もうもうもう!アル君とフェリ君のバカぁ〜〜〜っっ!!
スーさんが見てるのに…!!!!
っていうか、穴…って、穴…、穴………!!!!
スーさんが、そんな…あ、開けたいだなんて……何て事を…っっっ!!!!!
そんな事あるわけないじゃないかーーーっっ!!!!!

言われたことの意味が、分かってしまった自分も自分だと思うが。
とにもかくにも、こんな場だというのに、うっかり『ソノコト』をよくよく考えてしまいそうになって、ティノは真っ赤に染まった顔を俯かせた。
すると、その落とした視線の先に、フッと影が差して…。

「フィン、なじょした、おめ?」

よく覚えのある、そして、ティノが聞きたかった声が上から降ってきた。
「へ……?って、おひぇっ?!す、スーさんっっ?!?!?!え?え?何で、あれ?あれ?ええええ??」
いつの間にやら目の前にいた人物に、飛び上がりそうな程驚きながら、ティノは慌てて周囲を見回す。
気付けば、どうも少し前に散会したらしく、テントを張る準備をする者や、二人のように話をしている者など、バラバラで…。

え、えぇえええええ〜〜〜っっ?!?!?!
い、いつの間に…?!
って、みんな酷いよ!!!!!声掛けてくれないなんて〜〜〜っっ!

置いていっちゃうなんて酷い!と思うが…。
散会と同時に、真っ直ぐティノを目指して来たベールヴァルドの気迫が恐ろしかったのだから仕方がない。
しかも、親友達にしてみれば、気を利かせたつもりなのだから、感謝されこそすれ、酷いと恨まれる覚えはないのである。

ってゆーか!!!!
ち、近いっっ!
近いですよぉ!スーさぁんっっっっ!

「…顔、赤いんでね?」
そんなことを言いながら顔を覗き込んできたベールヴァルドに、ティノはぎょぎょっとして思わず後ずさった。
「い、いえ、あああの、へ、平気ですっっ!」
「そ?」
顔が赤くなってしまうのも、こんなにドキドキしてしまうのも、全てベールヴァルドのせいだというのに…。
本人はそんなこととは露知らず、酷く真剣な顔でティノの様子を伺う。
「はいっ!あ、あの、すみません、僕…向こう、行きますねっ!準備しなくちゃ…!」
「ん、そっが」

わ〜〜んっ!
ぼ、僕ったら何て勿体ない事を…!!!!
折角、折角、スーさんが話しかけに来てくれたのに!
ああ〜でもだって!全然、心の準備がさ〜〜!
スーさんが視察に来るなんて思ってなかったし…!
久しぶり過ぎて、何かまともに顔見れないってゆーか…!
ああ、でもでも、ホントはもっとちゃんと話したりしたいのに…!!!!!
うううう………スーさぁん〜…。

チラリと振り返れば、じっとこちらを見ているベールヴァルドと目があって…。
「っっ!」
ティノは勢い良くぺこんっとお辞儀をすると、みんなの元へ駆けていった。



+   +   +   +   +

ってことで、踏破試験が始まるのでございます!
フィンとスーさんが同じところにいるって素晴らしい!!!!

つか、どんなに熱視線向けられても、自分は片想いだと思っているフィン。
きっと、スーさんは誰に対してもジーって見ると思ってるんだぜ!
オ マ エ だ け だ !!!!


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