+ フンドシ一枚あればいい。 +

page; 1 / 5


傾向; 典芬




「スーさん、おかえ…って……、お、おひゃあああ〜〜〜〜っっっっ?!?!?!」

酒場から戻ったスウェーデンを見るなり、フィンランドは大きな目を更に大きくして叫んだ。
「な、な…ななな……っ…」
開いた口が塞がらないとはこのことか…。
だって、目の前にいるスウェーデンときたら、家を出た時に着ていた筈の装備は跡形もなく…、
代わりに身につけている物と言えば、股間を隠すただ一枚の布…そう、布…!!!!
鍛え抜かれた肉体に目映く映えるその白布には、黒く力強い筆文字で一言、
『漢』と、魂の叫びが刻まれている。
「何ってカッコしてるんですかぁーーーーっっ!!!!」
顔を覆うべきなのか、それとも、いっそグーで殴るべきなのか、
どうしていいのか分からずに、ただそう叫ぶが、スウェーデンの方は完全酔っ払いモードで、
へろ〜んと呑気そうに頷いた。
「ん〜、フィン〜、たでぇま〜」
「ちょ、スーさん!お、重…おひゃああ〜〜〜っっ」
ぎゅむーっと抱きついてきたスウェーデンにのしかかられ、
フィンランドは支えきることが出来なくて…。
そのまま、真後ろに倒れ込みそうになるが、そこは流石の旦那様。
べろんべろんに酔っぱらいながら、それでもフィンランドを潰しては大変とばかり、
途中でクルリと身体の位置を入れ替える。
「さすけね?」
ドスンと尻餅をつくように玄関先に座り込みながら、
抱えたままのフィンランドに尋ねるスウェーデン。
フィンランドは呆れたように溜め息をついた。
「それはボクのセリフですよ!」
「そ?」
「そうですよぉ、も〜、こんなに酔っぱらって……」
「ん、すまね」
「お酒を飲むのは構いませんけど、飲み過ぎはダメです!身体に悪いですよ!」
「んだなぃ」
唇を尖らせて咎めるフィンランドに、けれど、スウェーデンの方はスリスリなんて
頬をすり寄せたりして…。
「……スーさん、ちゃんと聞いてます?」
フィンランドが疑わしげに尋ねれば、彼は「ん」と頷き、
「おめ、本当…めんげぇなぃ…」
心底満足そうに呟いた。
「も、もーーーっ!全然聞いてないんだから!僕、酔っぱらいは嫌いですよ!」
ぷうっと頬を膨らまし、そう言ってみる。
いつもなら、途端にガァン!とショックを受けるスウェーデンだが、
今日はしれっとした顔で…。
「ん、俺ぁ酔ってなんかねぇど?」
酔っぱらいの定番なセリフを吐いた。
「酔ってるでしょーーっっ!こ、こんなカッコで帰ってきてぇ…!」
言いながら、ついつい下に目をやれば、スウェーデンもまた下へと目をやって…。
引き締まった腹の、その下を隠す白い布に、ああと小さく呟いた。
「これ…街で流行っでんだと。ど?」
「ど、ど?じゃないですよぉ!もう!いいからちゃんと服着て下さい!風邪引きますよ?!」
「…みんな似合うって言ってくれたんだげんぢょ…」

「………みんな?」

スウェーデンの一言に、ぴくりと頭のネコ耳が反応する。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 次のページへ>> 




 ■ リストに戻る   ■ TOPへ戻る