+ 手紙を書くよ! +

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傾向; 典芬




毎年、6月が近付くと、フィンランドはソワソワしてしまって…。
スウェーデンの欲しそうな物はないか、必要としている物はないかと懸命に日常を探り、似合いそうな物は…とか、何か素敵な贈り物はないかとか、懸命にあちこちを探す。
そして、それでも選びきれなかった場合、

「スーさん、スーさん、お誕生日…何か欲しい物ありますか?」

直接、尋ねる事になるのだが…。
「おめ」
「ってゆーのはナシで!何か他の物!」
間髪入れずのリクエストは予想通りの物だったから、フィンランドはあっさりキッパリ却下する。
途端、ガーンッ☆と大きく顔を歪めるスウェーデン。
その反応も予想通りだった筈なのに、フィンランドはビクゥと大きく身を竦めた。
「おひゃあああっっ!い、いや、あの、だってほら、それって去年も一昨年もその前も、ずっとずっとずーっと同じじゃないですか!だからその、今年くらい違う物をって!」
アワアワアワと言い繕い、ね?と小首を傾げるのに、スウェーデンはムゥと呻る。

「……んだげっちょ、おめ以外に欲しい物なんで、思い付かねぇんだども…」

「す、スーさんったらっっっっ!!!!」
ひえええっと大慌てでスウェーデンの口を塞ぎ、周囲を見回すフィンランド。
ここは世界会議の会場で、今は休憩時間とはいえ、周囲には沢山の人が居るのだ。
だが、幸いな事に、誰も今の言葉を聞いてはいなかったようだった。
「そ…そーゆー事は、二人きりの時に言って下さい!」
フィンランドはホッと息を吐くと、咎めるようにそう囁く。
「そ?」
「そうですよ、もう!」
真っ赤に顔を染めているフィンランドが、あまりにも可愛らしいから、スウェーデンはぷすりと笑った。

「んだら…、手紙がえぇなぃ」

「え…?てがみ?」
スウェーデンの言葉は意外で…フィンランドはきょとんとしてしまう。
「手紙…ですか?メールじゃなくて……紙の??」
「んだ」
「……ええと…?」
スウェーデンとフィンランドは一緒に住んでいる。
同じ屋根の下…どころか、同じ部屋を使い、同じベッドで眠る生活をしているのだ。
言葉でも、行為でも、直に気持ちを伝えられる距離で、何故今更手紙なのか…。
もしかすると、スウェーデンは何処かへ出張にでも出るのかも知れない。
しかも、手紙を出す程の間…。

「………スーさん…、何処か……お出かけ…するんですか?」

不安になって尋ねてみれば、彼はプルプルと首を振った。
「んでね」
その答えにホッとする。
「んでねぇげっちょ、おめがらの手紙が欲しい」
「そうなんですか…」
ふーん?と首を傾げ、
「ええと……ラブレター…ですか?」
ふと気が付いて、そう尋ねる。
「ん?でねぐとも構わねぇげっちょ…」
何となく面白そうな顔をしたスウェーデンに、フィンランドはかあと頬を染めた。
空色の瞳は『書いてくれる気があるのか』と聞いていたから……。

うわわ!僕ってば、何聞いてるんだろう!
そんな、ら、ラブレターだなんて…!!!

「わ、わかりました!じゃあ、僕、スーさんにお手紙書きますね!」
早口にそう言えば、スウェーデンはぷすりと笑って…。
「よろしぐ」
そう、一言……。
それが何やらとても嬉しそうに見えたから……。
「はい」
頑張ろう!なんて思ってしまう。

でも、そっか…、お手紙か〜…。

「………」
何書こうかなぁなんて呟いているフィンランドを、心の底からめんげぇと思いながら、スウェーデンはコッソリと息を吐く。
もっと理由を問われるかと思っていたのだ。

…こっだら近くにいで…。

手を伸ばせば触れられて……それを嫌がられたりもしねぇで……。
幸せだって実感もあっで…。

そんでも、まだ…、もっと…っで……。

フィンの頭ん中も、胸ん中も…全部、俺で埋めてみでぇ……なんで…。
みっだぐねぐて…、本当、言えたもんでねぇなぃ…。

「でも、もっと他に……って、ちょ、スーさん?!?!ど、どうしたんですか?」
ボボボッと顔を赤らめているスウェーデンに気付き、フィンランドはパチクリと瞬きをする。
「何でもね」
プイと逸らされる顔。
耳まで赤くなっているスウェーデンに、何を考えたんだろう?!なんてドキドキしながら…。
「えっと、ほんとに…?本当に、ラブレターじゃなくても平気ですか?」
期待されてるのはそこじゃないかと思い尋ねるが、スウェーデンは小さく首を振って…。
「ん」
さすけね…なんて言ってくれるが、それは何だかとっても納得出来ない。
だから、

「ほ、本当の本当にですか?あの、スーさんがどうしてもって言うなら、僕、頑張りますよ?スーさんのお誕生日のプレゼントなんだし!!!」

フィンランドは懸命にそう言った。
すると、その途端、ブッ☆と、何かを吹き出すような音がしたのは、二人の背後からで…。
え?と思って振り向けば、そこにいたのは眉毛の元ヤン紳士、イギリスさん…。
「あー…いや、その…、悪ぃ…。聞く気はなかったんだけどよ……」
彼は、盛大に吹き出したらしい紅茶を拭いながら、アワアワと謝る。
「イギリスさん!ダメですよ、お邪魔しては!」
その横から現れ、イギリスの腕を引く日本。
「え……」
「まあまあ、本当にすみませんねぇ!さぁさっ、どうぞ気にせず、続きを!」
どこかのおばちゃんみたいな口調でそう言って、満面の笑顔で……。
「え……、あ………」
その後ろには、何だ何だと注視する世界各国の皆々様…。
フランスとイタリアが、ニヨニヨとニコニコとしているのも目に入る。
日本とハンガリーが、何やら盛り上がっているのも……。

ぼ…ぼく、今…何て………。

言った言葉を全て思い出すまでもなく、とんでもない誤解をされたと分かるから…。
フィンランドは真っ白になって………。
更に、

「…フィン、そーゆー事は、二人きりの時に言ってくなんしょ」

面白がっているのだろうスウェーデンに、ぷすりと笑いながらそう囁かれ、今度は真っ赤に染まるのだった。




☆続くんだぜ!☆


+   +   +   +   +


てことで。

スーさんは手紙をご所望なのです☆
フィンちゃんが一生懸命お手紙を書く話はまた後日…ということで。

ツッコミ所満載ですが、とりあえず、スーさんおめでとう!!!!!!で誤魔化すんだぜ!(爆)


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