マルククつれづれ語り
 
 
 
30 (Mon) Jan 2006 [no.139]
 
 
穴だらけのヘヴン☆8

 
 
 
「聖堂騎士団員ククール」

極力冷たく聞こえるようにそう呼べば、ククールは一瞬ビクリと身を竦めて…。
それから怖ず怖ずとマルチェロを見つめた。
整った顔には大きな絆創膏が1つ。
他にもあちこちに小さな傷が付いている。

「何で呼ばれたのか、分かるかね?」

「……ケンカを…」
口の中を切っているのか、モゴモゴと言いかけ、顔を顰めるククール。
それに眉を顰めて…。
「今月に入って三度目だそうだな」
マルチェロはそう言いながら、室内にいた他の団員達に目で退室を促した。
団員達がぞろぞろと部屋を出て行く。
全員が退室し、ドアが閉まるのを見送ってから…マルチェロは席を立った。
ククールが神妙な顔つきで見上げているのに溜息をついて…。
「全く…」
「ごめんなさい…」
顔を顰めてみせれば怖ず怖ずと謝罪を口にする。
まるっきり子供の顔になっているのが可笑しくて堪らないのだが、ここで笑ってしまうわけにはいかない。
マルチェロはなるべく難しい顔になるよう気をつけながら、ククールをジッと見つめた。
「何のつもりかね?ケンカ騒ぎなど…」
「…だって…」
「だってではない」
「………」
ピシャリと言われ、唇を尖らせるククール。
だって、兄貴、アイツが悪いんだよ、と…そう言う声が聞こえそうな顔だった。

全く、困った奴だな…。

マルチェロは内心苦笑しながら、弟に手を伸ばした。
ぶたれるとでも思ったのか、ククールが一瞬身構えるが、その手は大きな絆創膏の上を触れるか触れないか程度に撫でただけ…。
「こんなに傷を付けて…」
咎めるように言いながら、素早く視線を走らせ、怪我の様子を確かめる。

顎の右側に擦り傷。
唇も切った後があり、左頬には小さな切り傷が3つと擦り傷が少々。
ほお骨の少し上に小さなアザが1つ。
絆創膏の貼られた右頬はやや腫れている。
手にもいくつかの傷。
恐らく、服の下にはもっと多くの打撲傷があるのだろう。

いずれも大したことはないと判断ながら、それでも、今までこんなに傷の付いたククールを見た事はなかったので…、マルチェロは落ち着かない気持ちになって顔を顰めた。
「大きなケガをしたらどうするつもりなんだ?」
「……ごめんなさい…」
団長としてではないその言葉に、ククールは素直に謝る。
それに少し表情を和らげて…。
「回復呪文もまだ覚えていないのだろう?」
「うん、あとちょっと…なんだけど……」
「全く…」
正直に頷く弟に、マルチェロは短い回復呪文を2回程唱えてやった。
柔らかで温かな癒しの光が、目映く室内を照らし、スウウと白く残光を残しながら消えると、もうククールの顔はいつもの通り。
傷1つない、綺麗で滑らかな肌に戻っていた。
「あ…」
驚いたように目を見開き、自分の身体を見回してから…。
「兄貴、これ…ホイミなんて……?」
ククールは信じられないと言った面持ちでマルチェロを見上げた。
「本当なら癒してやるべきではないのだろうがな…」
甘いなと、自分自身に溜息が漏れる。

団長として、本来ならば厳しく接しなくてはならないのだろう。

怪我の痛みもまた反省に繋がるはずなのだから。
ククールとケンカをした相手とて、怪我をしているはずなのだから。
本来ならば、放っておかねばならないのだ。

だが………。

やはり、兄としては…放っておく事など出来なくて……。

「兄貴…あの、ありがと……」
「ククール」
モジモジと礼を言う弟をジイッと見つめて、マルチェロは静かに名を呼んだ。
「はい…」
「ククール、ケンカをするなとはいわん」
「へ?」
「だが、怪我はするな」
「…………」
大真面目な兄の顔を、弟は少し間の抜けた顔で見つめる。

「……ソレ…、団長命令…ですか?」

「団長命令なら、騒ぎを起こすな!だろう」
「…じゃあ……兄貴として?」
「そうなるな」
フウと溜息を付きながら頷いた兄に、ククールはぱああっと顔を輝かせた。
「兄貴ってば、兄貴ってば、オレが怪我したらやなの?」
ウッソー、オレすんごい嬉しい!と飛び跳ねんばかりの勢いでそう聞いて、そのままぎゅうとしがみついてくる。
「こら、ククール…」
離しなさいと頭を押すが、ククールは逆にギュウギュウと腕の力を強めて…。
嬉しそうに幸せそうに笑いながら、
「オレ、怪我しないようにすんね!」
なんて…。
「そんな安請け合いをしていいのか?」
これには、思わず苦笑いを浮かべてしまうマルチェロ。
だが、
「うん、オレ頑張るよ☆」
ニコニコニコニコと満面の笑顔でそう言うククールは、可愛い以外のナニモノでもないから…。
ゴロゴロと懐いている弟に腕を回し、そっと抱き締めた。


−−−−−−−−−−−−−−−−

そのままちゅーして喰っちゃえ!とか、思わず拳を握りしめてみたりしつつ。。。
お兄様の理性が保つか保たないかは、次回であります。
チャイム鳴っちゃったしね…帰らないとね…(爆)

 
 
 
27 (Fri) Jan 2006 [no.138]
 
 
穴だらけのヘヴン☆7

 
 
ククールが15になり、騎士に上がった年の春…。
マルチェロは聖堂騎士団の団長になった。

異例のスピード出世。
最年少での団長である。
周囲の騒ぎようは、それはもう大変なもので…。
前任者からの引き継ぎや、教会関係及び近隣諸侯への挨拶等に追われ、マルチェロの毎日は前にも増して多忙を極めた。

そんな頃………。


「団長、ククールの奴がまたケンカ騒ぎを起こしまして…」

団員の1人が、何やら言いにくそうに…そんな報告をしてきた。
読んでいた書類から目を上げ、その団員を見る。
「……また、ということは…何度か同じ事をしていると言うことかね?」
「はい。今月はこれで三度目でして…」
「原因は?」
「…私はよくは知らないのですが…、そう大したことでもないようで…」
「ケガなどは?」
「両者とも軽い打撲程度ですので…お耳に入れる程の事でもないかとは思うのですが…」
「いいや」
『下らない報告で恐縮なのですが…』と言う団員に、マルチェロはキッパリと首を振った。
「私はこの聖堂騎士団に、かつての威信を取り戻したいと常々考えていたのだ。その為に、団員やこの修道院関係者の行動を把握しておくことは非常に大切な事と考えている。君の報告は決して下らないモノなどではない。今後も、何かあった際は必ず報告をして貰いたい」
真面目な顔で、真面目な口調で、淀むことなく。
『特にククールについては』と付け加えるのだけは飲み込んで。
マルチェロは団員に向かい軽く笑いかけた。
「よろしく頼むよ」
「はっ!」
何やら嬉しげな様子で姿勢を正し、ビシリと敬礼する団員。
「フム、しかし…ククールの件は見過ごせんな…」
マルチェロは団員から書類へと目線を戻し、小さく呻った。
全くしょうのない奴だと思うのも本当であるが、やはり、それよりも久々にゆっくり顔を見れそうだと、それを嬉しく思う気持ちの方が強くて…。
不必要に笑ってしまわぬよう気をつければ、眉間に深いシワが刻まれる。
それを誤解したのだろう。
「はっ!わ、私の方から厳しく叱って、二度とこの様な事がないようにさせますので!」
団員が慌ててそう言った。
マルチェロはふと考え込むような顔をして…。
それから小さく頭を振ってみせる。

「いや、見せしめとしても良い機会だろう。私の部屋に来るようにと伝えてくれたまえ」

「はっ!」
再びビシリと敬礼し、団員は一礼すると団長室を出て行った。
恐らく、さほど時間を空けずにククールが部屋を訪れるだろう。
そう思うと、溜まっていたはずの疲れや何かが、スーッと消えてなくなるようで…。

「…ケンカなどとは…全く、困った奴だ…」

言葉とは裏腹に、クスリと笑いながら…。
マルチェロは読んでいた書類にサラサラとサインをした。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

とゆことで、ちょろりと続き。
今日はもうじき早退するので、ホントにサラリとだけ。。。

今回、お兄様サイドなので、ククの思ってる事とか敢えて書かない方向で行っているのですが、いろいろと思いを馳せちゃって自分で身悶えしております。
可愛いモンな、ククールはよぅ!(><///)

前回、兄貴って呼んでいいって言われたから、それからは一生懸命『兄貴、兄貴』って言ってそうだなとか。
マルチェロさんの周りをウロチョロしたいのに、なかなか出来なくて「うーー!」ってなってたりとか。
いろいろ一喜一憂するとこ考えたりすると、もー、マジで、やってらんねぇ可愛さだぜ!!!!

とゆことで、ククールは可愛いよね、お兄ちゃんになって苛めたり愛でたりしたいよね、とか…そんな事を思いつつ、また来週〜☆
 
 
 
25 (Wed) Jan 2006 [no.137]
 
 
穴だらけのヘヴン☆6



「……ククール…」
溜息混じりに名を呼んで…マルチェロはそっと手を伸ばした。
ククールが一瞬、ビクリと身を竦める。
だが、その手がポンと頭に置かれると、驚きと喜びの入り交じった表情を浮かべて、兄を見て…。
マルチェロはそんな弟の瞳を見つめながら、軽く頭を撫でた。
そして、
「そんなことはない」
そう告げてやる。

随分、大きくなったが…それでも、まだまだ子供だな…。

背も伸び、ふっくらとしていた顔も細くなって、随分と大人びてきたと思っていた。
だが、こうして側でよく見れば、その顔にはまだ幼さが残っていると…シミジミそう思う。

困ったものだな……。
この愛おしさは…一体どうしたものか……。

「私がお前に口煩く注意するのは、決してお前が疎ましいからではない」
「ホントに?」
青い瞳に浮かぶ期待と不安。
それに笑いかけて…。
「ああ、本当だ。わからないかね?私が何故…お前にばかり注意をするか…」
マルチェロは頭を撫でていた手を降ろし、そうっと頬を撫でた。
「……オレが…弟…だから…?」
身内だと思うから注意するの?と…。
そこに込められているのは愛情ですか?と…。
そう聞きたいのだろう。
いつも、ククールがそれを聞きたがっている事を分かっていて、答えてやらなかった。

答えてしまったら……きっと、歯止めがきかなくなると…そう思うから…。

今ですら、姿を目にする度に放っておけず、口を出してしまうのだ。
それを愛情故だと伝え、ククールが納得してしまったら……。
恐らく、自分はククールの行動全てに口を出し、常に目の届く場所に置いて………。
終いには何処まで行ってしまうやら…。
そして、それを良しとする自分と、しない自分とがいるからこそ……。

全く…困ったものだな………。

マルチェロはククールの問いかけにただ笑いかけ、肯定も否定もしなかった。
ククールはそれを今度は良い意味に取ったらしい。
その顔に嬉しそうな、はにかんだような笑みが浮かぶ。
「…あの、あのさ…?」
もじもじと少女のような恥じらいを見せながら、マルチェロを見上げるククール。
「何だね?」

「あの…、兄貴って…呼んでもいい…ですか…?」

きっと…。
ずっと…。
いつか、言いたかったのだろう。
ククールが自分をこっそりとそう呼んでいたのは知っていた。

「…ああ、二人の時ならば、な」

クスリと笑いながら頷いてやれば、ククールはぱあっと顔を明るくして…だが、スグにプウッと膨れてみせると、
「それくらい分かってます〜!オレだってちゃんと場をわきまえるってこと位出来るんだから…!」
そう言って唇を尖らせる。
ますますもって子供にしか見えないその表情。
「ほう、そうかね?」
「そうだよ!子供扱いして〜!」
「事実子供だろう」
サラリと言えば、ククールはウッと言葉に詰まって…。
「そ、それはそうだけど…これでもちゃんと成長してるんだから!日々!」
ブツブツと、何やら恨めしそうにしつつそう言うのが可笑しい。
「ほう…そうか、なら日々精進したまえ」
マルチェロはクスクスと笑ってしまいながら、ポンと肩を叩いた。
薄く…まだ柔らかな肩…。
「………」
ククールが僅かに顔を赤らめて俯く。
「どうした?」
その様子を不思議に思って尋ねれば、
「…あの…、ありがと……あにき…」
ククールは俯いたままボソボソとそう言った。
それから、照れくさそうに笑って、クルリと背を向ける。
「じゃ、オレ、戻ります!」
「ああ、そうか…そうだな」
エヘヘと嬉しそうに、けれど恥ずかしそうに笑いかけられて、何やら気恥ずかしさが移ったような気になって…。
バタバタと慌ただしく出て行くのを、止める事もなく見送る。
そしてそのまま、パタンと閉じる扉を見つめて…。
「…しまったな…」
マルチェロはハッとして短く呟いた。

髪を切らせようと思っていたのに……。
スッカリ忘れてしまったではないか。

ドアを見つめたまま眉根を寄せ、僅かに顔を顰める。
フウと小さな溜息。
「…まあ、いいか…」
あの長く艶やかな銀髪を、マルチェロだとて嫌いなわけではないのだから。
陽の光の中、柔らかに跳ねた髪のその様子を思い出して…。
マルチェロは、フ…と笑うと、仕事に戻った。


−−−−−−−−−−−−−−−

ああ、また暫く間があいてしまいました…。。。
覗いて下さってる方には本当にスミマセンです。

今日は午後から書類作成が忙しく、見直してる時間が全然………。
きっとおかしな文が山程だナ…と思いつつ、あんまりにも更新ナイので、もうこのまま行っちゃえ!(爆)
あんまりにもあんまりだと泣きたくなったら直すかもしれません(苦笑)

何か、花でも飛んでそうな雰囲気に、ひええええ(汗)と思いつつ…。
もうちょっと書きたいので続けようと思っております〜。
よろしければまた覗いてやって下さいませ☆
 
 
 
17 (Tue) Jan 2006 [no.136]
 
 
穴だらけのヘヴン☆5

 
 
長い銀髪が緩やかな弧を描いて…陽の光にキラキラと輝きながら、視界を流れていった。
聖堂と宿舎の間の広場…。
午後の柔らかな日差しが差し込む中を、数人の騎士見習い達と共に駆けて行くククール。

「……ククール…」

マルチェロは足を止め、弟を呼び止める。
背後で軽やかな足音が止まり、振り返る気配…。
それを僅かに顔を向けて見やれば、青い瞳は悪びれた風もなく、真っ直ぐにマルチェロを見つめていた。
「はい、何でしょう…マルチェロ副団長殿?」
「ちょっと来たまえ」
「…はい」
短い返事に潜む、嬉しげな響きは決して気のせいではない。
振り返ってその顔を見れば、きっと『してやったり』と言わんばかりの表情をしているに違いない。
マルチェロはこっそりと溜息をついた。

全く…困ったものだ……。

後から付いてくる軽い足音を聞きながら、副団長の肩書きと共に与えられた部屋へ…。
バタンと背後で締められるドア。
マルチェロは大きなデスクへと真っ直ぐに歩き、振り返らぬままに足を止めた。

「ククール」

コツンと軽くデスクを叩いてから…。
出来るだけ怒っている風に聞こえるよう、ゆっくりと名を呼ぶ。
「はい」
「髪を切れと何度も言っているはずだ」
「……」
「そう難しい事を言っているとは思わんが…これで何度目の注意だと思っているのかね?」
「………」
ククールは答えない。
いつだってそうだ。
マルチェロが振り返り、自分の目を見るまでは絶対に返事をしない。

困ったクセをつけてしまったな…。

眉を顰めて溜息を1つ。
「ククール…」
振り返ってやれば、ククールは少し表情を明るした。

………本当に…困ったヤツだ…。

「…だからぁ…、いやですって…オレも何度も言ってると思うんですけど…」
上目遣いにマルチェロを見上げ、モゴモゴという。
「ちゃんと結わいてるし…、別に規則違反でもねーじゃん」
「言葉遣いが悪い」
「……規則違反でもないと思うのですが…」
「よろしい」
フウと、今度はハッキリ溜息を付けば、ククールはプウと頬を膨らませた。

「何で…オレだけダメなんですか?」

そう尋ねられたのはこれで何度目だろうか…。
マルチェロはククールの欲している答えを知っている。
だが、いつもそれを与えてやる事はしないで……。
「目立つからだ」
素っ気なく言い、クルリと背を向けた。
「…別に…目立ってるつもりはないんですけど…」
ククールは諦めない。
痛い程背に刺さる視線を感じながら、マルチェロはそれに気付かぬフリでデスクの上の小物をいじる。
「だが、結果的に目立っている」
「…そんなの……オレのせいじゃない…」
「ククール、お前は…もうじき騎士に上がるだろう。そうなれば、今よりももっと人前に出る事が多くなる」
「だから、何…?」
拗ねたような声。
子供のような言葉。

ああ、本当に困ったものだ…。

何を聞いても、何を見ても…可愛いヤツだと感じてしまう。
ククールをまた側に置けるようになってから、特にそれが顕著だ。
そんな自分に苦笑を漏らして…。

「私はお前にあまり人目について欲しくないのだ」

正直に言えば、ククールはそれをあまりいい意味には取らなかったようだ。
「……それって…オレが…ダメなヤツだから?」
しょんぼりとした声が怖ず怖ずとそう尋ねる。
マルチェロはクスッと小さく笑うと、弟を振り返った。
「いいや」
「じゃあ、何で?オレが出来の悪い弟だから、人に知られたくないって…そう思ってるんじゃないの?あ、兄貴は…っ」
ククールはそこまで言って声を詰まらせる。
縋るように見上げる瞳…。

兄貴、か…。

ククールの言葉を胸の内で反芻して…。
マルチェロはふいに胸を過ぎった感慨に、目を細めた。


ククールがまだ幼くて…マルチェロがまだ騎士になっていない頃…。
兄弟という事実を、自分のせいで兄が屋敷を追い出された事を知ったククールは、それまで懐いていたマルチェロから距離を置くようになった。
幼心に衝撃だったであろうその事実。
ククールが何を思い、何に傷ついたのか…、それを聞いてやる事もなく…。
マルチェロは騎士になり、ククールと顔を合わせる事は殆どなくなって……。

そして、そのまま5年も………。

そう。
あれから、もう5年……。
マルチェロは20歳に、ククールは13歳になっていた………。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ウチの兄弟は7歳差設定になっております。
(ちょびまるだけ6歳差なんですが)

出会った時、ククたん5歳、お兄ちゃん12歳で。。。
いや、あんな大人げないキレッぷりを披露してくれたお兄ちゃまなので…小学校6年生くらいが妥当?と思ったのでした(笑)
やっぱ二人揃ってると進みが早いな〜♪
ウフフ♪と思いつつ…。
 
 
 
16 (Mon) Jan 2006 [no.135]
 
 
穴だらけのヘヴン☆4



さて、とりあえず、どうしたものか…。

本棚から一冊の本を抜き出し、その黒皮の表紙をソロリとなぞる。
聖人について書かれたその書物…。
マルチェロはその表紙を、暫くの間見つめて…。
それをまた書棚に戻した。
そして、本を選びながら、思案する。

やはり…オデイロ院長にお話しするのが無難か…?
ボクが直接捕まえて話をするより、間にオデイロ院長を挟む方が穏便に済むだろうな。

父親代わりの老人の温和な顔を思い浮かべて頷きながら…。
赤銅色の本の背をなぞって…。
それは、神々の国について書かれた本のようだった。
マルチェロの瞳は興味なさげに次の本へと移る。

ククールに見張りをつけたいな…。

早くから上を目指していたマルチェロである。
足場を固める必要がある事は勿論理解していたし、元々持ち合わせていたカリスマ性のお陰で、人望はあった。
騎士見習いの中では常にリーダーを務めてきたし、協力してくれそうな同僚、後輩の顔もスグに何人か思い浮かぶ。
だが、そうは言っても事が事だけに、慎重さが欠ければそれこそククールの身が危なくなるわけで…。

「……アイツ…は、ちょっと危ないかな…むしろ、アイツの方が…」

思いついた人物を頭の中で検討し、うーんとマルチェロは呻った。

後数年……。

今は見習いのマルチェロも、直に正式な聖堂騎士となる。
騎士になって数年もすれば、肉体的にも成長し、ククールの身の安全を脅かす輩などものともしなくなるだろう。
だが、今はまだ成長途中だから…。
ククールを守る等と言っても、様々な脅威があるのが事実なのだ。

………このまま…暫くほっとく方が良いのかも知れないな…。
遠ざけておく方が…。

ククールをなるべく先輩騎士達の目につかぬようにした方が良いだろうと…、そう思い、頷く。
今までのようにマルチェロの周りをウロウロさせておくのは、リスクが高いから…。
見習い達の中では上の位置にいたマルチェロも、騎士になれば、また一番下からのスタートだ。

…別に。
我慢など、少しの間の事だ…。

指先に触れた濃紺の本…。
それは兵法を説いた書物で…。
マルチェロはそれを引き抜くと、本棚から離れた。


−−−−−−−−−−−−

眠い…と思いつつ、ちょっとだけ続きなど。

成長途中のマルチェロ様…。
何てのか、子供の世界から大人の世界に出る時とか、子供ってだけで軽く見られたりっての、あるじゃないですか。
特に、聖堂騎士団は猛者揃いって事で、自分の強さにはそれなりに自信のあるマルチェロさんでも、身体の出来上がっていない子供の時は、やっぱ大人の騎士とかにはイロイロ負けちゃうわけで…。
そーゆー、その時の限界のようなものに腹を立てたりしてそうだな、と。。。
マルチェロさんは常に先を、上を見ている人なので、今の自分ってものを結構きちんと把握してそう。
努力如何でどうにかなる事と、どうにもならない事(時間しか解決手段がないような事とか?)とかも。

まあ、そーゆーのを書きたいなと思ったわけですが。。。

あんまり楽しくなかった…(爆)
ので、次はもう偉くなったとこでも…(笑)
 
 
 
11 (Wed) Jan 2006 [no.134]
 
 
穴だらけのヘヴン☆3

 
 
ククールが来てから、マルチェロは自分でも驚くくらいに強くなった。

全ては、ククールを守るために…。

類い希なる容姿を持った弟を、誰の毒牙にもかけさせぬ為には、他の誰よりも強くなる必要があったから。

元々、努力は嫌いじゃない。
力も嫌いじゃない。
だから、手に入れた力を使うことにも躊躇いなんてない。

だが、めきめきと力を付けて成長し、マルチェロが騎士見習いから正式に騎士に上がろうとしていた頃…。
ある日、唐突に…。

ククールが、その様子を変えた。

いつも変わらず向けられていた、あの輝かんばかりの笑顔が消えた。
マルチェロと目が合うと、辛そうな、怯えたような顔をして……。

「ククール?どうかしたのか?」

問えば、フルルと首を左右に振り、何か用があると言っては自分から離れてゆく…。
そんな事を何度か繰り返した。
何故なのか……。

思い当たるフシは、ただ1つだった。

ククールは、恐らく自分たちの関係を知ったのだろう。

マルチェロが腹違いの兄である事を…。
そして、自分が生まれた為に、屋敷を追い出されたのだという事を……。



 +    +    +


タタタッと軽い足音を残して、ククールが廊下を駆けて行った。
まだまだ幼いその後ろ姿…。
少し伸びた髪は肩につくくらいの長さで…ククールの動きに合わせ、サラサラと揺れている。
それを、複雑な心境で見送り、マルチェロは溜息をついた。

ホントに…一体誰だ?
余計な事を言ったヤツは…。
大体、何故ボクがククールに避けられなきゃならないんだ。
逆だろう、普通…。

面白くない物を感じながら、踵を返して書庫へと向かう。
面白くない。
非常に面白くない。

ククールが自分を避ける事が…ショックだった。
ククールが自分に怯える事が…ショックだった。

そして、そんな事にショックを受けている自分に驚き、腹が立って……。

でも、それより何より…やはり、ククールが傷ついている事に腹が立つ。

ククールを傷つけられた。
何ものからも守ってやると…そう決めたのに…。

込み上げた怒りと悔しさに、ギリ…と唇を噛み締める。

昔から優秀だったマルチェロは、妬み嫉みの類にはもう慣れっこで…。
まだ10代半ば程の年頃ではあったが、既に、不条理な悪意等には負けぬ精神面、肉体面の強さをも手に入れつつあった。
言いたいヤツには言わせておけばいいと…。
下らない奴らの下らない言葉なんて、どうでもいい、と…。
どうせ…自分は何も、失う物などナイのだから。
何も恐れはしない。
そう思って、脇に目など振らずに突き進んできた。
何も怖い物などなかったのだ…ずっと…。
だが…、ここへ来て、アキレス腱が出来てしまった事を感じて…。
「…………」
面白くなさそうに、書庫の扉を見つめる。

今まで、当たり前の様に向けられていた、笑顔と信頼…。
それがいつしか自分にとって、とても大きな物になっていた…それを知る。
ククールと過ごす時間が…、ククールの見せる明るい表情が、思う以上に自分を癒してくれていたのだ。

今回の事など、まだ小さな事だ…。
だがもし…この先、ククールを失うような事があれば…………。

木製の扉を押せば、それはギ…と小さく軋んで開いた。
静かに廊下へと流れ出す、書庫独特の匂いとひんやりとした空気…。
誰もいない室内に歩を進めて…。
コツコツと響く靴音に、心地良い静寂を感じる。
マルチェロは部屋の中央まで歩くと、小さく呪文を唱えた。
途端、ボボッと小さな音を立て、壁に掛けられたランプへと次々に火が灯る。
薄暗かった室内を明るく照らし、赤々と燃える炎…。
それに満足そうな笑みを浮かべ、それを生み出した自分の手を見つめて…。

「……強く…ならなければ…」

マルチェロは低く呟いた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

メラゾーマの使えるマルチェロ様…。
(あ、今回の話で使ってるのはメラ程度ですよ!まだお子様ですから!お兄様)
きっと練習したのだろうと思うわけで…。
使えるようになった時はきっと嬉しかったりしたんだろうな、とか考えてみたり。

もっとちゃんと考えたいなぁ…この話…と思ったりするので、いつか書き直して本にしたりするかもですが…どうかな。
何かちゃんと二人の成長とか追いたいなぁ…。
でも、こんなニセモノでいいのかって話なんですけど。。。(苦笑)
 
 
 
05 (Thr) Jan 2006 [no.133]
 
 
穴だらけのヘヴン☆2



サラサラした銀色の髪。
サファイアのような瞳。
唇もほっぺたも、触れたくなるような淡い桜色で…。

小さくて柔らかそうなククール……。

天使のような…人形のような…可愛いククール…。

ボクの…弟……。


「………おとうと…か…」

ポツリと呟いた自分の声に目が覚めて…。
マルチェロはゆっくりと瞼を開いた。
薄暗い室内…ぼんやりとした視界に、暗い天井が映る。
ノソリと身を起こせば、布団の中で温まっていた体が外気に触れ、寒さを感じた。
季節は少し前に秋を過ぎ、冬へと一気に突き進んでいる、そんな頃で…。
早く着替えないと風邪を引くな…と、マルチェロは急ぎ身支度を始める。

…ククールは……ちゃんと起きてるかな…。

修道院の朝は早いから…。
慣れぬ者には辛いよなと、そんな事を思って…。
ハッとして、首を振る。

な、何でボクがアイツの心配なんか…!
弟なんて…そんなの…、アイツが勝手に後から生まれて来たせいで、ボクと母さんは追い出される事になったのに…!
あんなヤツ…心配なんかしてやる事ないんだ!

着替え途中のシャツの上から、金のネックレスを握りしめる。
それは、あの屋敷から持ってきたただ1つの物…。
自分たち母子を追い出した父親の顔を思い出し、マルチェロは唇を噛み締めた。

だが…。

その憎い父親の顔をかき消すように、昨日初めて見た弟の顔が浮かんで……。
縋るような大きな瞳でマルチェロを見つめ、花のような笑顔を向けるのに、ほんわりと心が温かくなる。

「………くそ…ボクは…騙されないぞ…」

小さく呟いて…。
マルチェロはモソモソと身支度を整えた。



  *    *    *


「あ!マルチェロさん…!」

礼拝を終え、広場に出ると少し離れた所からそう言うのが聞こえて…。
それからパタパタと軽い足音が近づいてくる。
振り返るまでもなく、相手はククールだ。

「マルチェロさん!」

可愛らしい子供の声に呼ばれ、マルチェロは少し迷った挙げ句に振り返った。
妙な緊張がある。
それが忌々しい。
だが、ここで無視をする必要も別にないし…と、そう思って…。
「マルチェロさん、おはようございます!」
「…おはよう、君は…ククール、だったね」
元気な挨拶に、マルチェロはそう言って微笑んでやった。
途端、ぱああと。
ククールの顔には輝かんばかりの笑顔が浮かんで…。
マルチェロに会えて嬉しいと、それが全体の雰囲気からビシビシと伝わってくる。
もし、ククールに犬の尻尾でも付いていたら、今は千切れんばかりに振っている…なんて感じだろう。

く…。
な、何でコイツはこんなにも人懐っこいんだ!

ククールは昨日の私服ではなく、地味な修道士見習いの服を着せられていた。
だが、それでも、天使のような愛らしさは少しも損なわれる事がなく……。
逆に、少し大きめに作られたその服が、一層の愛らしさを引き出しているようで……。
マルチェロはハッとして周囲を見回した。
思った通り。
広場にいる騎士や見習達の多くが自分達に注目している。
そりゃこれだけ可愛ければな…と思うのと同時に、コイツはボクの弟だぞ!という気持ちが湧いて…マルチェロはぎゅっと拳を握りしめた。

「昨日はよく眠れた?」

そう語りかけながら、軽く背中を押し、歩くように促す。
「…うん」
「ここの生活は最初は大変だと思うけど…きっとすぐに慣れるよ」
「はい!」
もしここでククールを1人にすれば、誰に何をされるか分かったものではない。
ククールの身の危険を敏感に察知したマルチェロは、一刻も早く安全地帯へ避難させなければ!と群衆の中に視線を走らせた。

居た!あそこだ!

そして、目指す人物を発見すると、ククールの背に手を当てたまま歩いて……。
何も分かっていないククールは、ただニコニコとマルチェロに押されるまま歩いている。
「修道院の中は案内して貰った?」
「はい。まだ覚え切れてないけど…大体、分かりました」
そして、そのまま、オデイロ院長の元まで……。
「おはようございます、オデイロ院長」
「おはようございます!」
「おお、マルチェロにククール…二人ともおはよう、良い朝じゃな」
マルチェロとククールが兄弟である事を知っているオデイロは、二人が仲良くやって来た事にハッキリと喜びを表した。
「院長、ククールに修道院の規則など説明してやりたいのですが…」
「うむ、そうしてやってくれると助かるのう」
見習いの中でも将来を有望視されている、勉強熱心で何事も優秀なマルチェロ…。
そうでなくとも、ククールとは血の繋がった兄弟なのだ。
このマルチェロの申し出を、オデイロが無下に却下する様なはずは、当然のことながら皆無だった。

よし!
これで、ボクがククールと一緒にいる口実が出来た。

仲良き事は美しきかな等と呑気に呟いているオデイロの前…マルチェロは心の中でガッツポーズをする。
とりあえず、これで当面は守ってやる事が出来るだろう。

修道院は男ばかりの世界……。
弱い・可愛いは格好の餌食と決まっている。
閉鎖され、様々な事が抑制された不健康な世界だからこそ、こんな歪みも生じるのだ。

「マルチェロさん…、よろしくお願いします」

嬉しそうにそう言ってぺこんとお辞儀をしたククールに、ニッコリと笑って…。
ククールはボクが守る!と…。
マルチェロは決心したのだった。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ニセモノ警報発令中。ブーブー☆みたいな感じでどうしようかな…とも思いますが、ちょっと気分が乗っているので、このまま暫くユメを見ようと思います〜!
よろしければ、お付き合い下さいませ。
てゆか、

新年明けましておめでとうございます!
昨年中は、遊びにいらして頂きましてありがとうございました。
本年も、ぼちぼちと頑張ってゆきたいと思っておりますので、どうぞお気が向いた折りにでも、覗きに来てやって下さいませvv
 
 
 
27 (Tue) Dec 2005 [no.132]
 
 
穴だらけのヘヴン☆


 
もしも………。


もしもあの時…。


もしもあの時、あの手を取って……、たとえ…形だけだったとしても、怒りを飲み込んでいたら……。


そうしたら、どんな風になっていたのか……………。



+ + + + + + + + +



一瞬、雷に撃たれたような衝撃が頭の先から足の先まで、一気に走り抜けて……。
ククールと名乗ってニッコリと笑ったその少年を、マルチェロはマジマジと凝視した。

「………!」

これが…。
この子が…。
コイツが………ククール…!

「そうか……君が……ククール…」
喉に張り付いたような、掠れた固い声で呟く。
ククールは僅かに首を傾けてマルチェロを見上げた。
長い前髪がサラリと揺れ、その奥で青い瞳が不安げな色を浮かべている。

コイツが……ボクの…弟……。

グッと拳を握りしめて……。
マルチェロはそれからニコッと笑って見せた。
「ごめん、さあ、行こうか」
少し屈んで宙に差し出されたままの手を取れば、ククールは僅かに戸惑いを残したまま、それでもぎゅうっとマルチェロの手を握りかえす。
その柔らかで温かな感触。
軽く引けば、後を付いてトコトコと歩く。
チラリと見やれば、自分を見上げたままの瞳とぶつかって…。
何故か…。
ククールは嬉しそうに…人懐こそうな微笑みを浮かべた。
「…あの…」
「何?」
「…おにいちゃ…ううん、あの、あなたの名前は何て言うんですか?」

ククールの言いかけた『お兄ちゃん』という言葉に…ドキリと鼓動が跳ねる。

「…ボクは…マルチェロだ」
「まるちぇろ…さん…」
ククールがまた笑う。

どうして…。
どうして…コイツは……こんなにも可愛い顔をしているのだろう…。
どうして…コイツは……ボクを見てこんなに嬉しそうに笑うのだろう…。

「…どうして…」
「え?」
「いや…、ここがオデイロ院長のお部屋だ」
いつの間にここまで来たのだろう…と、内心少し驚きながら、マルチェロは水の上に立てられた一風変わった建物の前で足を止めた。
「わあ、可愛いですね」
ククールがそう感想を漏らす。
最初に会った時の心細げな、不安そうな様子はもう微塵もなく、完全にマルチェロを信じ切った様子で…。
無邪気な笑み。
繋いだままの手。
温かな物が胸に満ちるのをどうしていいか分からなくて…。
とにかく、オデイロに引き渡せばいい。
そう思って見張りの騎士に声を掛けるが、オデイロは丁度席を外しているとかで…。
「…中で待っているといい」
僅かの間逡巡し、マルチェロはククールを1人で待たせる事にしてそう言った。
「え…」
途端、曇る表情。
大きな瞳が縋るように見上げてくる。
子犬のようなその表情に、胸を痛みが襲って…。

う……。
な、何だこの罪悪感みたいなモノは!

「い…院長はお優しい方だから…心配しなくても平気だよ」
「うん……うん…、でも……」
ジワリと滲む涙。
いつの間にやら、きゅっと服を掴まれていたりするのだが、その仕草もまた妙に可愛らしくて…。

可愛いと認めてしまえばいいのかもしれない。
ククールは本当に可愛いのだから。

だが、それはどうも引っかかるモノがある。

他人には到底理解の出来ない葛藤に苦しみながら、マルチェロが言葉に困っていると…。
「おやおや、これはどうしたのじゃ、マルチェロ…?」
天の助けのように現れるオデイロ………。
「院長!!!新入りの子を案内して参りました!名前はククールです、でわ!ボクは用がありますので!!!」
「マルチェロ?」
「まるちぇろさん〜〜」





逃。。。



かくして………。

マルチェロはオデイロへとククールを押しつけると、そのまま後ろを振り返ることなく退散したのであった…。


−−−−−−−−−−−−−−−−

とゆことで。
最初に出会った時、もしもマルチェロさんがもちょっと大人の(笑)対応をしていたら、どんな感じになったかねぇ…とゆー妄想SSなど…。
仲良くしてんのが見たいの!
振り回されてる位のが見たいのよ!
とゆかんじで。

続けるか続けないか…って感じなんですが、明日大掃除なので、書いてる時間ナイだろうなぁ…と思うと、次回は年明け臭いので、続かない気もします…(爆)
 
 
 
24 (Sat) Dec 2005 [no.131]
 
 
。。。Christmas Carol ・2 。。。


マルチェロの話では、昼食後、本を読んでくつろいでいると、ふいに何やらとても眠たくなったらしい。
そして、その眠気に身を任せ、うつらうつらと微睡んでいると、どこからともなくオデイロが現れたという…。
サンタのつもりなのか、真っ赤な服を着て…。

『マルチェロや、ほれ、クリスマスのプレゼントじゃ』

そう言って、ツリーを一つ、どん☆と置いて…。
笑いながら…また、何処へともなく消えていった。
そして、目を覚ましてみれば、院長の置いた場所に、夢で見たのと同じクリスマスツリーがあったのだそうだ。


「…全く信じがたい話ではあるが…私も院長なら…と思ってな…」

「へ〜、院長元気そうだった?」
「ああ、お元気そうに見えたな……いや、もう亡くなられているのに変な話だが」
普通に訊ねられ、つい答えてしまって…。
慌てて言葉をつけ加えたマルチェロに、ククールはクスリと笑った。
「サンタのカッコまでして来てくれるなんてさ、よっぽど心配されてんな…」
オレ達さ、と…言いながら賑やかなツリーを見つめる。
兄の夢に現れ、それを置いていったオデイロの姿は容易に想像できて…。
懐かしさからか、ふわりとした優しい気持ちで胸が温かくなるのを感じた。
そして、それはマルチェロもまた同じなのだろう。
「…そうだな…」
頷きながら、ツリーへと向けた瞳は優しく柔らかく…。
「じゃ、そんな院長の思いに応える為にも、パーティはちゃんとやんなきゃだな♪オレ、ケーキとシャンパン買ってくる♪」
そう言ってみれば、マルチェロも満更ではないように笑った。
「…なら、七面鳥でも焼くか…クリスマスと言えば、だろう」
「おーっ!いいね〜♪」
じゃあ、買い物に行こう、と…二人で笑いあって…。
コートを着込んで、ルーラでびゅんとサザンビークまで。
街ではバラバラに行動し、ククールはケーキを買って、シャンパンを買って、ついでにこっそりとプレゼントなんかも買って…、そしてまた合流し、さあ戻ろう…そんな時。

ひらりと、天より舞い降りる、白い雪の一片………。

「…冷えると思ったが……雪か…」
フワリフワリと降りてくるそれを見つめ、マルチェロが呟く。
白く上がる吐息。
緑の瞳は穏やかで…優しくて…。
「この分だと積もりそうだな…」
早く帰るぞと、自分を呼んでくれるのが嬉しい。
冷たく冷えた石畳を小走りに駆け、マルチェロの斜め後ろへと追いついて…。
「……ね、兄貴…」
ゲートに向かって一緒に歩きながら、ククールはポツリと話しかけた。
「何だ?」

「あのさ、オレの神様ってさ、オデイロ院長じゃないかと思うんだよ」

秘密を打ち明けるような、ひそりとした声。
チラリと視線をくれれば、思ったよりも真剣な青の瞳が自分を見上げていたので…。
「……ほう?」
冗談事ではないらしい、と頷いて…先を促す。
「だって、オレの願い事叶うようになったのって最近だもん☆」
ククールの願いはどうせ自分の関係する事に決まっていると…マルチェロには分かっているから…。
だから、敢えてどんな願いかとは聞かずに…。
ただ、クスリと笑って…成る程と呟いた。

「院長が神様か…それなら…私も信じられそうだな……」

「だろ?」
「ああ…」
この弟は自分が祈らなくなったことを気にしていたのだろうか…。
そう思い、マルチェロは苦く笑った。

本当はとうの昔に…。
神への信仰心など…消え去っていたのだ…。

そう、屋敷を追い出され…母が死んだその時に…………。

神が何だと…そう思ってからずっと……。

ああ、オデイロ院長も憂えてらしたな……。
あの方は私の本心を知ってらした…。
私の祈りが形だけのものであると見抜いていた…。

「兄貴…?」

黙ってしまったマルチェロの顔をククールが覗き込む。
寒さによってバラ色に染まった頬…。
絵に描いたように美しい弟を見つめ、マルチェロはフッと微笑んだ。
面白いものだなと思う。
神などいないと思う、そもそもの原因になった弟が、もう一度信仰を取り戻すことを願っているのだ。
そして、その言葉を素直に聞き入れようとしている自分を感じて…。
その変化を面白いと思う。
生まれてからこの方…こんなにも穏やかな時が、かつてあっただろうか…。

今更…神の存在を信じる気にはなれんが………。
そうだな、院長と……お前ならば……。

祈りと…感謝を……捧げられるな…。

「…さ、遅くなるな…帰るぞ」
降り続く雪を見上げ、そっと息を付いてから…傍らのククールへと手を差し出す。
「うん」
ククールは虚を突かれたように一瞬だけ、きょとんとしたが、直ぐにニッコリと笑ってその手を取った。
凍てつく寒さに家路を急ぐ人達の中、自分たちもまた家へと帰るために…。


*−−−−−−−−−−−−−−−−*

クリスマス話、間が空いてのアップとなってしまいましたが、何とかイヴですね☆
トップ絵も折角なので変更しました。
26日になったらこの話の下にでも貼っておこうと思いますが。。。

ま、とにかくそんな感じで、皆様メリークリスマス☆です!
良いクリスマスをお過ごし下さいませね(^−^)
 
 
 
20 (Tue) Dec 2005 [no.130]
 
 
。。。Christmas Carol 。。。


※この話は和解後、二人が一緒に暮らしている設定で…ヨロシクです〜☆



「うわ…、これどーしたの?!」

居間の暖炉の脇にはクリスマスツリー。
色とりどりの小物が飾られ、何とも賑やかで楽しげなそれ…。
今朝まではなかったそれに目を丸くしながら、ククールは兄を見やった。

「………貰った…」

マルチェロは何やら微妙な表情でそう呟く。
語尾に『…のか?』なんて言葉が付いたような気もしたが、気のせいかも知れない。
まあ確かに、兄が自分でコレを買い求め、嬉々として飾り付けたなんてことは、まずないだろうと思うが…。
「貰った…って…誰から?」
ククールは怪訝な顔で当然の質問をした。
「…………」
マルチェロは顔を顰め、唇を真一文字に結んで…どうも答えたくないようなその様子…。
「…オレに…言えないような人…?」
「そんなことはない」
質問を変えれば、今度は即答が返ってきた。
それにホッとしながら…。
ククールは困った顔で、ツリーに飾られた天使の人形をつつく。

自分が留守にしたのは僅かに半日…。
その半日で一体何があったのか…。
誰がこんな物をくれたのか。
何故兄は言いたがらないのか…。

考えたところで分かる物でもない。
「…まあ…兄貴が言いたくないなら…ムリには聞かねえけど…」
溜息を付きながらにそう言うと、マルチェロはムム…と呻って…。
それから、

「……お前は…奇跡というモノを信じるか…?」

眉間にシワを寄せ、真面目な真面目な表情でそう訊ねた。
「へ?奇跡…?」
きょとんとして鸚鵡返しに呟くククール。
その真っ直ぐに見つめる薄青の瞳から、マルチェロは僅かに視線を逸らした。
ガラにもない事を言って、照れているのかも知れない。
「…まあ、そりゃ旅の間にもいろいろあったし……信じてるよ、この世には不思議な事いっぱいあるって」
で?奇跡が何?と先を促せば、マルチェロは更に言いにくそうな様子で……。

こんな歯切れの悪い兄貴ってのも珍しいよな…。
つか、クリスマスツリーにどんな奇跡があんだろ……?

「………ならば…」
「うん?」
言い淀む兄を珍しい気持ちで眺めながら、ククールは頷く。
マルチェロは少し迷いを見せたものの、それでも覚悟を決めたらしい。
逸らしていた視線を戻して真っ直ぐにククールを見つめ、そして…、


「ならば、このツリーが…オデイロ院長の下さったモノだと言ったら…お前は信じるか?」

そう訊ねた。
兄の口から出た思いもかけぬ言葉に、ククールの瞳が大きく見開かれる。
一瞬の沈黙…。

「信じるよ」

やがて、ククールはクスリと笑ってそう答えた。
その言葉に、今度はマルチェロの瞳が見開かれる。
「アンタがんな冗談言うワケねーし…。オデイロ院長だったらいかにもって感じじゃん?」
明らかに驚いている兄の様子が可笑しくてクスクスと笑ってしまいながら、そう言えば、マルチェロもまた納得したように、そして、少しばかり安心したように表情を和らげた。

−−−−−−−−−−−−−

ウチの院長はいろんなモノをくれますな…。
死んでから…(笑)
だってきっと、心配してるって思うんだもの〜。
ククたんよりマルチェロさんをきっと心配してるよね…。

とゆことで。
ククとマルに幸せなクリスマスを過ごさせ隊☆な、ナナセなのでした〜(何じゃそりゃ)
 
 
 
19 (Mon) Dec 2005 [no.129]
 
 
。*・。.・ ヒトヒラノ雪 7 ・.。・*。




カツカツカツカツ…と。
足音も高く、修道院の廊下を歩いて…。
マルチェロはオデイロの部屋へと向かっていた。
腕には豪華なドレスで飾られたククールを抱きかかえている。
すれ違う者が皆、驚きの表情を向けていることに気づきながら、それを居心地が悪いとは思わずに…。

そうだ。
何を気にすることがあるものか。
私はここのルールなのだ。
ククールに不自由な思いなどさせる必要はないし、私自身、コソコソ隠れる必要などない!

わははははと心の中で高笑いすら響かせて…。
院長の部屋の扉を勢いよく開け中に入る。

「…聖堂騎士団長マルチェロ、御前に参上いたしました!」

「…マルチェロか、どうしたのかの?」
元気に声を掛けて室内を入ってきたマルチェロに、オデイロがフサフサとした眉を僅かに上げ、不思議そうな顔をした。
「は。実は、地下の書庫にて調べものをしておりましたところ、書棚の奥に隠し部屋を発見いたしました」
「ほう?隠し部屋とな?」
マルチェロの言葉にオデイロが興味深げに身を乗り出す。
「はい、いずれの代かは分かりませんが、要職にあった者が寄付の一部を隠していたようにも見受けられます」
「…ほう、それは…穏やかではないのう…」
「美術品や財宝など、かなりの量がありますので…内々に調査させようと思っております。状況が分かり次第、またご報告させて頂きます」
キッパリとした口調で報告するマルチェロに、オデイロはううむ…と重々しく呻いて…。
それから、マルチェロの陰に大人しく立っている少女に目を留め、表情を和らげた。

「…して、そのお嬢さんは…もしや、プランツ・ドールかの?」


「御存知でしたか?」
言われた言葉に驚き、マルチェロがオデイロとククールを交互に見る。
「ほうほう、やはりか。プランツ・ドールとは…久しぶりに見たのう、おお、おお、これは見事な品じゃな。さぞ名のある職人が育て上げたのじゃろう」
オデイロがニコニコと笑いかければ、ククールも僅かに表情を明るくした。
だが、マルチェロに見せるような輝かんばかりの笑顔は見せない。
あの心を溶かすような笑顔を見れば、院長もククールここに置いて良いと言ってくれるのでは…と密かに期待していたマルチェロは、それに内心焦りを感じてしまう。
聖堂騎士や修道士達には絶対的な権限を持つマルチェロだが、こと、父親代わりのこの修道院長に対してはどうにも弱くて…。
もし、院長を説得出来なければ、その時は自分も隠し部屋でも作ってククールを育てよう等と…そんな事まで考え、頭の中で図面まで引いていたり……。
「ククールという名だそうです。隠し部屋の中で見つけまして…」
「成る程成る程…。それで、選ばれたというわけじゃな…」
オデイロはホッホと笑うと長いヒゲを撫でた。
「プランツは神秘の人形じゃ…、持ち主の愛情を失えばたちまちに枯れてしまう…大切に育てるのじゃよ。まあ、お前なら心配する事もなさそうじゃがな」
「え…は、あの…よろしいのですか?」
オデイロの言葉に、マルチェロは思わずポカンとしてしまう。

大切に育てろ……?

「ん?何がじゃね?」
いつもキリリと引き締まった顔をしているマルチェロが、珍しくも間の抜けた顔をしているのが可笑しくて…。
オデイロは長い眉の下で、目を細くした。
「修道院内で…プランツドールを育てるなど……」
「別に構わんじゃろう…何か問題があるのかね?」
「…いえ…」
最初からダメだろうと思い、どうにか丸め込めないかと、ダメだった場合はどうするかと、そんな事ばかり考えていた分、今の事態をにわかに信じる事が出来ない。

これはユメではないだろうか…。
本当に良いのだろうか…。

うーむと心の中で呻っていると、ふいに、きゅっと…。
ククールが手を握ってきて…。
見やれば、マルチェロを見上げ、ニッコリと微笑んだ。

「…ククール、良かったな…ここにいられるぞ」

言えば、嬉しげに微笑んだまま、スリとマルチェロの腕に頬をすり寄せる。
「ほっほ、懐いておるのう…実に良い笑顔じゃ…」
「あ、いや、これは…」
自分にだけ笑いかけるククールに、内心ギクリとするが、オデイロは片手を上げ気にしなくて良いと示した。
「プランツドールは持ち主にしか懐かんのじゃ。その笑顔こそが選ばれた者の特権じゃな…」
「そうなのですか…」
感心したようにククールを見るマルチェロに、頷きながら…。
「大切にするが良いぞ、プランツの純粋な笑顔はきっと忙しいお前の心を癒してくれよう」
オデイロは温かな瞳を向けて……。


かくして…プランツドール・ククールは、マイエラ修道院で正式に暮らす事となったのだった。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

明日辺りは違う話で!!!(え)
あんまりにも間空きすぎて、書きたい物が何処か霞の向こうへ消えてしまいました……(爆)

次は和解後マルククで、クリスマスな話を…。
ほのぼのと書きたいな〜とか思っております〜!
 
 
 
17 (Sat) Dec 2005 [no.128]
 
 
いつか天使の降る空へ・8



意識が…戻らない…だと………?

青白い顔で横たわるククールを前に、マルチェロはただジッと、その様子を見つめていた。
霊体が完全に離れるのを待って、浄化をかけたのだ。
本来ならばすぐに意識が戻るはずだった。
だが、何故か…ククールはあれ切り目を醒まさずに……。
ただ昏々と…眠っているかのように倒れたままでいる。
その様を、霊を浄化したその場に立ちつくして眺めていたマルチェロは、やがて短い溜め息を付くと、ククールの側へと歩み寄った。

「おい」

短く、声をかける。
だが、ククールは全く反応を返すことなく…。
「…ククール」
名を呼んでも、ピクリともしない。
マルチェロは仕方なくその場に屈むと、ククールの身体を揺すった。
「おい、起きろ」
だが、それでもククールは眉一つ動かすことはなくて…。
「おい、いつまで寝ている気だ」
ぺしぺしと軽く頬を叩く。
だが、それでも…………。

何故だ…?
完全に意識を失っている…。
死んでは…いないが………。

胸に耳を押しあて、弱い鼓動を聞いて…ホッとした自分に腹を立てる。
「……何故、この私が…こんな疫病神など…」
心配など、するはずがないと…ムッとしたように思って…。

そうだ。
いっそ死んでくれれば清々する…。

そう胸の内で呟き、じっと蒼白な顔を見つめる。
血の気のない整った顔は…まるで人形のようで……。
そっと触れてみれば、その肌の冷たさにゾクリとした。
そして、それにまた、いらだちを覚えるマルチェロ…。
死んでくれればいいと…思っている筈なのに、と。
苦く思いながら…。
同時に感じているのは、失う事への恐怖だった。

何だというのだ…。
羽が生えたかと思えば、霊に取り憑かれ、今度は死にかけているだと?
お前は…何処まで私の手を煩わせれば気が済むのだ…。

ぎゅ、と唇を噛み締める。
さっきの霊が、ククールの魂を捉えて離さないのだろうか…。
そう考え…また忌々しい気持ちを感じて…。

「…コレは……私のものだ…」

マルチェロの喉から低い呻きが漏れた。
眠ったままのククールへ手を突きつけ、小さく呪文の詠唱を開始する。
緑の瞳は静かに、やや冷たく、弟を見つめて…。
返せ、と…その思いを強く込めて…。
「…ザオリク…」
唇から漏れたのは蘇生の呪文。
マルチェロの手のひらに生じた魔法の光がキラキラと輝き、ククールの身体を包んだ。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

さて。たいへんお久しぶりの更新であります〜が、ククたん意識不明中です。
そういえば、ウチのククは前にも死にかけてますね…。
(そして、あの時もお兄ちゃんが助けてくれたんだった…)
てか、実際のゲーム中でもウチのククは死にやすく…トロデ王に『きっとカルシウムが足りないのじゃ』とか言われました…シクシク(爆)
いや、それはいいとして。。。

この天使話。
後2回くらいで終わるといいな〜とか思っております。
年内に終わるかどうかって感じですが、よろしければお付き合い下さいませ☆
 
 
 
07 (Wed) Dec 2005 [no.127]
 
 
。*・。.・ ヒトヒラノ雪 6 ・.。・*。

 
 
しかし…。
現実問題として困るな…。

マルチェロは手近な箱の上に座り、ううむ、と呻いた。
今朝は修道士見習いの格好をさせ、とりあえず見張りの目をごまかしたが、そう何度も使える手ではない。

今朝の見張りがお喋りなら今頃は噂になっているだろうな…。
私が子供を抱きかかえて歩いていたなど…。

ククールは今、マルチェロの膝の上に頭を載せ、すやすやとお昼寝中だ。
その天使のような寝顔に、ふっと心癒されながら、それでも現実を思えば心は重く沈んでしまう。
調べものに来ていた昨日はともかくとして、今日などサッパリ仕事をしていないのだ。
ぱっと思い浮かべただけでもいくつも上がる、処理待ちの様々な仕事に、マルチェロは深いため息を付いた。

やはり、無理なのだろうか…。
プランツを育てるなど…。

団長室に居させるにしても、掃除に入る者には見つかってしまうし、ここに置き去りにするのは、気がかりで仕方がないと思う。
いっそ、院長にでも預けたらどうだろうと思うが、それもやはり気に掛かってしまいそうだった。
それに、何処に置くにしても、生きている以上は世話をしなければならないのだ。
日に三度のミルク。
日に一度の砂糖菓子とトイレとお風呂。
どんな格好をさせるにしても、マルチェロが何処に行くにも子供を連れて歩くなど、噂になるのは必然で…。
それが、たとえ少年の姿をさせても、この見目の麗しさでは……。

私は決してそんなやましい考えは持っておらん!と、いくら言ったところで、誰も信用などはせんだろうな……。

「ま…る…?」

本日何度目かのため息を深々と付くと、それで目を覚ましたのか、ククールが青い瞳を開けてじっとマルチェロを見上げていた。
「ああ、すまんな…起こしてしまったか?」
ククールはふるふると首を振ってから、そっと、自分の頭を撫でているマルチェロの手を掴む。
そして、スリと頬をすり寄せて…。

どうしたの?と。
大丈夫?と。

訊ねられているような感覚。
手のひらに感じるほのかな温もりに心が癒される。
だが、それは同時に、マルチェロの胸に堪らない切なさを呼び起こさせて…。

「お前は何故、私を選んでしまったのだ…?」

気づいた時にはそう訊ねていた。
ククールの瞳が僅かに見開かれる。
「私が触れたあの時…目を覚まさなければ……もっと、相応しい者の元へ行けたであろうに…」
ククールがもし、目を覚まさず、ただの人形のままで居たならば…。
他の美術品と一緒に、どこかの貴族の元へ売り飛ばしたに違いなかった。
「ここでは…私はお前に美しいドレスを着せてやることも出来ない…。外を自由に連れ歩くことも…遊ばせてやることも出来…。こんな風にコソコソと隠れて居なければならんのだぞ」
言葉は、苦しげに切なげに。
呻くように…。

「お前は…私を選んで良かったのか?」

間違いではなかったのかと…。
訊ねれば、ククールはニッコリと笑ってマルチェロに抱きついた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

人形なので。
基本的にほっといて大丈夫なようなのですが……あれは育て方次第なのか…性格なのか…。
大人しい子なら何時間でも座ったままとかで居るようですよね。
ククは聞き分けの良いタイプのようなので、言えばじっと待ってそうだけど…。
でも、お兄ちゃんは徹底的に世話をしていたい模様ですね★
(こーゆーとこ完全主義っぽい。あの人A型だろうな…変に拘り、シッカリしてそうで抜けてる…。ちなみにあたしもA型ですが、最近A型だと思われなくなりました… ←良いのか悪いのか…)
まー、そーゆーのって最初だけじゃない?って話もあるんですけど(爆)

つか、ホントにとにもかくにもククールがククールでないので、話が進むにつれて辛くなってくる…(爆)
明日辺りから成長させようかな…。。。

さて。
今から内部監査に行って来ます〜!
タイムアップだ!(汗)
 
 
 
05 (Mon) Dec 2005 [no.126]
 
 
。*・。.・ ヒトヒラノ雪 5 ・.。・*。

 
 
「マルチェロ様、どうかされましたか?」

ツカツカと急ぎ足で廊下を歩いてくるマルチェロが、修道士見習いの子供を抱えているので…。
一階の廊下で見張りをしていた団員は、不思議そうな顔で声をかけた。
それに、
「…ああ、丁度いいところにいた。これを院長にお渡ししてくれ。それと、私は今日も地下の書庫にいる。昼には一度部屋に戻るので、用がある場合は部屋の方へメモを置いてくれればいい。皆にもそう伝えてくれ」
スラスラと考えていた言葉を並べ立てて…マルチェロは白い封筒を差し出す。
「は!了解致しました!」
団員はビシリと敬礼をすると、それを受け取り、急いで院長の部屋へ走り出した。
その背を見送って…。
「…ふむ、上手くいったようだな…」
マルチェロは小さく呟くと修道士見習いの服に身を包んだククールを抱え直す。
それから足早に廊下を横切り、地下への階段を一気に駆け下りた。
この時間なら、地下の見張りは申し送り事項の確認で尋問室へと集まっている筈だ。
その隙に、奥にある書庫まで行ってしまえば、後はもう安心…。

しかし…、サイズの合う物があって良かったな…。

やれやれと思いつつ、
「すまんな…、綺麗な服を着せていてやりたいが……。それはここでは都合が悪いのだ」
すぐ近くにある青い瞳を見てすまなそうに言えば…。
ククールはニコリと軽く微笑み、顔を押しつける。
その仕草に、

『側にいられれば何でもいい』

そう言われたような気がして…。
マルチェロは込み上げる愛おしさに、ぎゅっと…。
ククールを抱きしめている腕に力を込めた。


+ + + + +


「さあ、ここまで来ればもう大丈夫だ…」

好きにしていて良いぞ、と言えば、ククールは嬉しそうに笑って…。
けれど、マルチェロの側に寄り添ったまま、離れる素振りは見せなかった。
そんなククールの様子を、可愛いヤツめなどと少し嬉しく思ってしまう。

ああ、全く…何という体たらく…。
この私が…聖堂騎士団を統率しているこの私が…少女の人形相手にデレデレしているなど……。
いや、だがしかし!
可愛いものは可愛い!
愛しいものは愛しいのだ!!!!

半ば開き直ったように、自分自身を納得させるように、そう強く心の中で呟いて…。
マルチェロは、ククールの入っていた箱を、がさごそと探った。
大きな大きな箱の中には、大小のトランクがいくつか入っている。
その一つを開けてみれば、中にはブラシやリボン、人形といった物がぎっしりと詰め込まれていた。

「ほう…いろいろな物があるな……ほら、人形が出てきたぞ」

人形に人形遊びをさせるというのも不思議なものだ、とチラリと思いながら。
マルチェロは箱の中から取り出した人形をククールに手渡した。
磁器の肌にガラスの瞳…。
それは、一目見て人形だと分かる、典型的なアンティークドール…。
柔和で愛らしい顔をした、なかなかに見事な品であるが、無機質なその肌の感触と、ククールの滑らかでほのかに温かく柔らかな肌を、マルチェロは無意識の内に比較してしまう。

やはり……人形だ等とは思えんな……。

一晩経って、ククールの色艶は昨日よりも増したように見えた。
薄暗いこの部屋の中でも、キラキラと輝いているようにすら見える。

昼の光の中、青空の下で遊ばせてやれたら、その姿はさぞかし美しく輝くのだろうな…。
こんな建物の中ではなく……。
自然の中で…もっと自由に……。
……いや、本来はそういう物なのだろうな…。
貴族の屋敷で…何不自由なく……窮屈な思いなど知らずに育てられる物なのだろう…。

ふと思ったそんな考えを、ククールはまるで分かっているかのようだった。
マルチェロを見上げ、ニコニコと笑って…。
きゅっと手を握ると、その唇を小さく動かす。
そして、

「……ま…、る…?」

聞こえたのは、途切れ途切れの声…。
けれど、それが自分を呼んだものだと…自分の名を呼ぼうとしたのだと…マルチェロには分かったから…。
澄んだその声と、自分を呼んだククールに堪らなくなって…。
「ククール!」
マルチェロはぎゅうとその細い身体を抱きすくめた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−

マルチェロ団長様のプランツククとの触れ合い記録(笑)
ククたん『マル』と、お兄ちゃまのお名前をちょっぴり憶えました☆
てか、プランツクク男の子にしたかったんですけど……そのエピソードを挟んで良さげな雰囲気がナイ……。。。(爆)
何か、今の状態だと、男の子って分かった途端に扱いがぞんざいになりそうじゃない??
どうしよ〜…うーんうーんと思いつつ…。

とりあえず、明日に続くのであります☆
 
 
 
04 (Sun) Dec 2005 [no.125]
 
 
いつか天使の降る空へ・7

 
 
二日前…。

聖堂騎士団に丘の上のとある貴族から、除霊の依頼が舞い込んだ。
塔の一つに幽霊が住み着き、夜な夜な屋敷を徘徊するのだという。
よくよく話を聞いてみれば、その怪現象はひと月以上も前から起こっており、今まで話が聞こえてこなかったのが不思議なくらいで…。

だが、マルチェロは知っていた。

その貴族に良からぬ噂があることを…。

悪い噂は広まりやすい物だが、この貴族の噂はさほど広まってはいなかった。
それというのも、その屋敷に仕える使用人達が皆、遠い異国から連れてこられた者達ばかりだったからで…。
周囲の町や村の人間ともほとんど交流がない為、屋敷内の情報が外へ漏れる機会がなかったのだ。
マルチェロがその噂を聞いたのは、本当に偶然が重なってのことである。

『あの貴族は何処かへ行く度に新しい使用人を連れてくる…』

船着き場で耳に挟んだ、そんな噂話…。

そんなに沢山の使用人をどうするのかと…。
それ程にあの屋敷は広いのかと…。
待遇が悪くて、すぐにやめてしまうのだろうと…。

その場にいた者達は思い思いの事を言って…。
やがて、別の誰かが言った。

やめたって奴の話も聞かねぇし、国に帰るのを見たこともねぇ、と…。
恐らく、屋敷の中で殺されちまってるんだ、と…。

マルチェロは、その時に面白い話だとこれを記憶した。
貴族達の悪い噂は知らないより知っていた方がいい。
実際、噂が根も葉もない事などほとんどないのだ。

これは使えるかも知れんな、と…裏をとろうと思いながら…数週間…。

今回の依頼が舞い込んだ、という訳である。

ひと月も幽霊に悩まされながら、屋敷とは目と鼻の先にあるマイエラ修道院に駆け込まなかったことこそが、噂の裏付けとなっているのではないだろうか…。
マルチェロはそう思って…。
けれど、残念ながらその幽霊退治に関わるヒマは、生憎と彼にはなかった。
所用の立て込んでいたマルチェロは、仕方なく、副団長に後を任せ、自分は自分の仕事で修道院を留守にしたのだ。


あの役立たずの大間抜けめ……。
その内どこかに飛ばしてやるから覚悟していろ!

マルチェロは忌々しげに胸の内で吐き捨てる。

まさか、ククールのいる隊に任務が当たるとは思ってもいなかったのだ。

マルチェロは彼なりに、彼の弟を注意して見ていた。
だから、ククールに何か不思議な感覚があることを知っていたのだ。
ククールが他の者よりもずっとカンが良いことを…。
気配を感じ取る力が強く、邪悪な存在には特に敏感に反応することを…。
そして、その心の優しさも純粋さも、甘さもよく分かっていた…。

だからこそ…マルチェロは、今までただの一度もククールに幽霊関係の任を与えたことはなかったというのに…。

蒼白な顔色の弟を見つめて…。
マルチェロの胸には珍しく後悔の念が満ちていた。

出かける前にコイツの身柄を押さえるべきだったな…。
地下牢にでも放り込んで置けば良かったのだ…。

ギリリと唇を噛み締めてから。
「…それで…?」
マルチェロは青い光に向かって訊ねた。
「何を言われた?ソイツに……」
言葉を継げば、光はチカチカと瞬く。
声は届いているらしい。
にやりと唇の端を上げ、笑う。

「ふん、同情でもされたか?可哀想に、と…?」

バカにしたように言ってやれば、光は瞬きを増して…。
『く…ククールは優しいんだ!』
再び、声が響いた。
『ククールは天使なんだ!みんなの事、分かってくれた!ククールは、怒って泣いてくれたんだ!』
「ほう、憐れみに惹かれて取り憑いたというわけか?」
『取り憑いてなんかないっ!ボクはただ、ククールの側にいたいだけだ!』
「…それで何故羽など生やした?あれはお前のせいだろう」
『だって…きっと似合うと思ったから……そう思ったら、ククールの背中に羽が生えたんだ。ククールはやっぱり天使なんだ』

「馬鹿かお前は…」

何処か懸命な子供の声に、その言葉に、けれどマルチェロはクッと喉を鳴らして笑った。
「コイツが天使だと?コレは呪われた子供だ。私の全てを奪い、私に災いばかりをもたらす。疫病神だ。天使などであるわけがない!」
『!』

それは憎悪だった。

突如、ザワリと音すら立ててその場に満ちた、まがまがしいまでのそれは…。
圧倒的な重圧感を感じさせる程、物理的な力さえ持ち得る程の憎悪…。

それはどちらの発する物なのか…。

マルチェロとククールに取り憑いている幽霊…。
二人はジッと対峙して……一瞬の睨み合いの後…。

『お前なんか嫌いだ!ククールは天使なんだ!ボクの天使だっ!悪口言うのは許さない!』

カッと鋭く眩い光が空間を走った次の瞬間に、ソレは形を変えてマルチェロに襲いかかってきた。
子供の姿ではない。
それは何か大きな…犬のような獅子のような…モンスターにしか見えぬ、影であった。
「…バカめ…」
霊体がククールの身体から完全に離れたことを確認し、マルチェロは素早く呪文を唱える。何処か祈りに似た言葉…。
厳かなその呪文の最後にマルチェロは右手で短く十字を切り、その手を前へと突き出して…。
そこから光が走った。
金色の、神々しいほどに眩い強い光が…。

「天に還れ…不本意だが、導きをくれてやろう」

浄化の力を持つその光は一瞬で部屋を満たし、幽霊を呑み込んだ。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

浄化とかって何でしたっけ…。
確か3あたりにはありましたよね?
モンスターを消す浄化の魔法みたいの…僧侶の魔法ではなく勇者の魔法だった気もしますが……。。。。
ニフラム???
光の彼方へ消し去った、とかそんな……わ〜、すっごいうろ覚えですが…(爆)

ま。とりあえず。

お兄ちゃん、そーゆーの出来るといいなと思ったと、そーゆー感じで。
ククたんは性格甘いので、きっと除霊とかには向かないだろうな〜と、コレはそんな風に思ったトコから出来た話なので…、書けて良かったなと思います。
後、お兄ちゃんは分かってたってのとかも。
 
 
 
02 (Fri) Dec 2005 [no.124]
 
 
。*・。.・ ヒトヒラノ雪 4 ・.。・*。



「…あの箱をここに運ぶ必要があるな」

さて寝るか、という段になり、マルチェロが思わず呻いた。
マルチェロの私室スペースは団長室内にあり、さほど広さはない。
そこに置かれたベッドは、当然、一般の団員達が寝ているモノと同じで…。
ククールの大きさと自分の大きさを考え、少々狭そうだなと思う。
「あの部屋のどこかに着替えもあったのかもしれんな…明日探してみるか…」
とりあえず、着替えさせなければ…と、マルチェロはごそごそとタンスを漁ったが、丁度良さそうなモノ等当然ながらある筈がない。
かといって、わさわさしたドレスでは眠るに眠れまいと思うので…。

「…すまんな、今夜一晩…これで我慢してくれ…」

マルチェロはそう言ってパジャマを手渡した。
ククールはウンと笑顔で頷く。
「大きすぎるとは思うが…あー、私は、向こうにいるから…」
人形とはいえ少女である。
着替える様をジロジロと眺めるのは、何やら騎士としてというより人としてどうかと思い、マルチェロはそそくさと公務スペースの方へ退散した。

ううむ。
人形とはいえ、女の子というのはやはりやっかいだな…。

衝立の向こうから、ごそごそと衣擦れの音が聞こえる。
落ち着かない気持ちでウロウロと歩き回っていると、ククールがズリズリと裾を引きずりながら出てきた。
マルチェロを見ると、首を傾げるような素振りを見せる。
大きすぎるパジャマにいささか困惑しているようだ。
「ああ、やはり大きいな…」
マルチェロは何とも申し訳ない気持ちになりつつ、ククールの側まで行くと、ズボンのゴムを引いてウエストを調整し、裾と、上着の袖を折り返してやった。
全く合っていない上着の肩…。
押さえていないと落ちて前が広がってしまうのに、苦笑が漏れる。
「…小さいな…お前は…」
思わずそう呟くと、ククールは物言いたげな顔で少しだけ表情を曇らせた。

声など出てはいないのに。
言葉など発しはしないのに。

『大きい方がいいの?』と、ククールに聞かれたような気がする。

それを不思議な物だと感じながら…。
マルチェロはまた苦笑して小さく頭を振った。
おいでと呼んで抱き上げ、私室スペースに戻って…。
そっとベッドの上に降ろしてやる。
「狭いが、我慢してくれるか?」
聞けば、ククールは大きな青い瞳でジイッとマルチェロを見上げ、それからにっこり笑って頷いた。
ベッドの中へ入れば、スリと身を寄せて…腕の中へと潜り込んでくる。

ずっと…仕事一辺倒で来た。

ここへ来てからもう十年以上…ずっと…。
勉学に励み、鍛錬に勤しみ、任務を全うすることだけを考えて…。
聖堂騎士団の団長になってからは、修道院のため、騎士団のために日々を捧げてきた。

こんな風に、誰かと抱き合って眠るようなことなどなかった。

久しく忘れていた人の温もりは懐かしく…。
鼓動も呼吸も…。
何か…柔らかく、心を包んでくれるような気がして……。

癒されるとは、こういうことだろうか…と、まどろみの中に思う。


人形が生きているという、夢のような、幻のような、嘘のような出来事…。
けれど、腕の中にある、確かな感触と存在感は…決して夢でも幻でも、嘘でもなくて…。

眠りへと落ちるその瞬間、マルチェロはその口元に柔らかな笑みを浮かべていた。

−−−−−−−−−−−−−

ドールってヤツは癒しですよ〜。
癒しってか、和み。。。
お金ホントかかりますがね…ってか、かけちゃうのね(笑)

カプ物やっていると、その相手以外とは関わりを持って欲しくない気持ちがある為、どうも『初めて』とかに拘ってしまうきらいがありますが…普通に考えると、ナイよね〜、何歳だよな〜とか、セルフツッコミ入れちゃいます。
いいのよ!
やおいはファンタジーなのよ!!!
…とゆことで。。。まあ、イロイロ大目に見てやって下さい〜☆
 
 
 
30 (Wed) Nov 2005 [no.123]
 
 
。*・。.・ ヒトヒラノ雪 3 ・.。・*。

 
 
右…左……よし!

書庫のドアから廊下を窺って……。
ソロリと部屋を出ると、そのまま階段を目指して走る。
階段脇の壁に背を押しつけ、上を見上げて…。

上前方…左右…気配は…ないな…。

「よし!」

短く呟いて、マルチェロは階段を一気に駆け上がった。
この時間、見張りの者は一時的に団長室の前を離れる。
それを見計らって、書庫を出てきたのだ。
マルチェロの腕の中には、ククールが抱きかかえられている。
ダダダダダッと部屋に駆け込み、ドアを閉めれば、はーーーーっと溜め息が漏れて…。
全身から力が抜けるような、安堵感を覚えた。
ククールが不思議そうに首を傾げる。

あの後、マルチェロはククールを箱に戻そうと思ったのだ。

聖堂騎士団の団長を務め、猛者達を率いている自分が、まさか少女の人形を抱きかかえて宿舎内を歩くなど…。
あり得ない、絶対にあり得ない、とそう思い、ククールを箱にしまってその場を去ろうとしたのだ。
けれど、ククールはマルチェロから離れるのを嫌がり、それはそれは悲しげに顔を曇らせるので…。
根負けしたマルチェロは、見張り達の交代の時間を見計らって、こうしてコソコソと部屋に戻ったわけである。

「全く…何故この私が……」

ぶつぶつと言いながら、ククールを床に降ろす。
ここまで来れば大丈夫だという事が分かるのか…ククールはおとなしくそれに従った。
団長室をグルリと見回し、それからマルチェロを見上げるとニッコリと笑って…。
「………」
こうして明るい部屋で見ると、この人形は本当に美しい容姿をしている。
背丈はマルチェロの腰程度で…年の頃なら12,3位のようだ。
ほっそりとした身体に豪奢などレスを纏い、艶やかな銀髪は長く…。
目が合えば、本当に嬉しそうに微笑む。
その心を溶かしそうな微笑に暫し見入ってしまいながら…。
この先どうしたらよいものかと、マルチェロは思案した。

生きてはいるが、喋りはしないようだな…。
大して動き回りもせんし…、まあ静かなものだ。
食事は日に三度のミルク、一度の砂糖菓子……その程度なら、誰に気づかれることもあるまい…。
だが………問題は……風呂とトイレだな……。

見張り達の交代時間を待つ間、取扱説明書を読んでいたので大体のことは分かっている。
トイレや着替えなど、最低限のしつけはされているとのことだった。
トイレの頻度も日に一度程度のものらしい。

だが、それでも、日に一度は必ずトイレとお風呂の時間があるという事だ…。

マルチェロは顔を顰め、ウウと唸った。
今更ながら実感した事態に、目眩と頭痛を覚えてしまう。

こんなヒラヒラでビラビラでフワフワのを連れて歩いて、しかも風呂だのトイレだのに行くなど……。
それでは、まるっきり変態ではないか!
だ…団長として団員に示しがつかん!

「………」
うーんうーん、と考えていれば、ククールがぎゅうっとしがみついてきた。
「…どうした?」
しゃがんで訊ねると、青い大きな瞳でマルチェロをジイッと見つめて…。
そして頭に感じる、何やら懐かしいような感触……。
どうやら、ククールが頭を撫でているらしい。

「……そうか、心配してくれているのか…」

マルチェロはフッと表情を和らげた。
心の中、温かく優しいものが満ちるのを感じて…。
しがみついているククールをぎゅっと抱き締める。

不思議なものだな…この人形は……。
人形のクセに生きていて…。
人形のクセに…温かく、柔らかい…。

…奇妙だが……なかなか…悪くはないものだな……。

マルチェロはククールを抱き上げ、そのまま執務スペースのデスクへと移動した。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

プランツは持ち主の愛がないと生きてゆけないので、プランツククはマルチェロ様に愛される事決定で!
たまには良いじゃないか…たまには……たまには……と、一生懸命自分を宥めつつ…。
(いや、何のしがらみもなくしてしまうと、それってマルククじゃないじゃん〜!とね……)

そんなに長い事書かないだろうと思います…(爆)
 
 
 
28 (Mon) Nov 2005 [no.122]
 
 
。*・。.・ ヒトヒラノ雪 2 ・.。・*。

 
 
 
青い瞳だった。
長い睫毛の中から現れたのは、空のように青い、澄んだ青の瞳……。
それが真っ直ぐにマルチェロを見上げる。

「な……?」

目を…開けた…?!

驚きのあまりにポカンとして…その人形を見つめるマルチェロ…。
人形はそんなマルチェロを暫く見つめ返していたが、やがて二、三度瞬きをすると、ノソリと身を起こした。
目を開けただけでも驚いたというのに、今度は勝手に起き出したのだ。
このあまりの事態に、マルチェロは思わずたじろいで…。

「…動いた…だと?一体…」

乾いた呟きがその唇から漏れる。
人形は箱の中で上半身を起こすと、マルチェロを見上げて少し首を傾げた。
その拍子に絹糸のように艶やかな銀の髪が、サラリと揺れる。

「……モンスター…では…ないのか…?」

呪いの力は感じられない。
邪気はない。
だが、今、目の前で人形が動いている。
これは一体どう言うことなのか…。
流石に混乱して固まっているマルチェロを、人形はじーっと見つめていたが、暫くすると、ニコッと可愛らしく微笑んだ。
花のほころぶようなその笑顔…。
思わず、ドキリと鼓動が跳ねた。

「…お前は……一体、何なのだ?」

訊ねれば、人形はゴソゴソと箱の中を探って…何やら一冊の本を取り出し、マルチェロに手渡す。

『プランツドール』

表紙にそう書かれたその本…。
ペラリと捲れば、中表紙の前に一枚の羊皮紙が挿んであった。
「……ほう…」
その紙は保証書のようなものらしい。
生年月日(人形なので本来ならば製造年月日であるはずだが…そこにはそう書かれていた)や、名前、店の名前など、いくつかの事項が書かれ、最後に購入者と思しき人物のサインと日付があった。
古めかしい書体のそれは今から50年以上も前の日付が書かれている。
「つまり…この部屋のものは大体50年以上前に集められたモノと言うことか…」
ぐるりと室内を見回す。
後で歴代の責任者でも調べてみるか…と、そんなことを思っていると、フワリと花のような匂いがして…。
いつの間にやら箱を出た人形が、マルチェロの隣に座り、ピタリと寄り添ってきたのだ。
「!」
驚いて見やれば、人形はマルチェロを見上げてニコニコと微笑む。
マルチェロはもう一度証明書を見た。
「…お前……ククールというのか…」
そこに記された名前を呼んでみれば、人形はこくんと頷いて…。
その可愛らしい様子に、何やらぎゅうっと抱きしめたい衝動に駆られ、マルチェロは慌てて視線を逸らした。

何をバカな…。
この私が人形など……!

ドキドキと煩い鼓動を落ち着けようと、本のページを捲る。
「何々?プランツドールとは……生きた人形???い、生きているだと?!」
ぎょぎょぎょとして再度傍らを見れば、マルチェロに寄り添ったままのククールが嬉しげに視線を上げた。

「………ミルクと人の愛情を糧として育ち、持ち主を己で選ぶ……」

所有者を選ぶだと?!
意志があるというのか?!

マジマジと見つめていれば、ククールは身を起こし、屈んでいるマルチェロの首に腕を伸ばしてぎゅうっとしがみつく。
「…オイ、待て…。まさか、私を新しい持ち主に選んだワケではあるまいな?!」
恐る恐る訊ねても、ククールは微笑みを浮かべるだけ。
ただ、その可愛らしい唇で、ちゅっとマルチェロの頬に口付けた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

プランツドールのククール。
プランツドールって『観用少女』なので…少女なんですが、男の子がいいなぁ!
やっぱなぁ!

てか、あたしはホントに受けの子にドレス着せたり何だりってのが好きです。。。
可愛い子はやっぱ飾り立てたいよな!ってことで!
プランツククは ビラビラでフワフワが良いのだぜ〜vvv
ああ、絵が描きたい〜(笑)
 
 
 
24 (Thr) Nov 2005 [no.121]
 
 
。*・。.・ ヒトヒラノ雪 ・.。・*。

 
※今回、ククールがプランツ・ドールという設定のパラレル話です〜!
 プランツ・ドールについて分からない方はこちらをご参照下さい★
 プランツとは… >> http://katakuri.sakura.ne.jp/~kasui/hapilove/fh-pd.html



。*・。.・ ヒトヒラノ雪 ・.。・*。




それを見つけたのは本当に偶然だったのか…。


もしかすると、呼ばれたのかも知れない、と…。

けれど、そんな風に思ったのはずっと後になってからのことで…。

その時は、本当にただの偶然だと、そう思っていた。



*。.・.。*。.・.。*。.・.。*。.・.。*。.・.。*。.・.。*


「…全く…何ということだ…」

もうもうと上がる埃にむせながら、マルチェロは忌々しげに呟いた。
目の前には本の山…。
その先には崩れ落ちた本棚がある。
「板が腐ったのか…」
ボロボロになった木の破片を手に取り、やれやれと溜息が漏れた。

まあ、寿命だったのだろうが……。
修理するにしても、ここだけで済む話ではないだろうな…。
書庫の大改築か…また出費がかさむな……。

「ああ、貴重な書物が…」

暗い気持ちになりながら、足下にバラバラと落ちた本の1冊を拾い上げる。
その装丁は年月によっての痛みが激しく、綴り紐は所々切れて…。
もはや読めなくなった背表紙のタイトルを見つめながら、人を呼ぶかと思っていると、ふいに…。
ヒュウと吹く、冷たい風…。
カビ臭いそれに何だと見れば、本棚の後の壁が崩れ落ち、ぽっかりと穴が開いていた。

「この上、壁の修理までか?」

うう…と思わず呻きながら、マルチェロは本棚の前に膝をつくと、壊れた壁の状況を調べて…。
穴の向こうにも床が続いている事に気付く。
「…ふむ?これは……」

もしやもう一つ…部屋があるのではないか…?

そう思い、マルチェロは本棚の残骸を丁寧に除けると、明かりを持って来て穴を覗き込んだ。
その結果は…思った通りで…。
どうやら、結構な広さの部屋が、壁を隔てた向こうにあるようだった。
フム…と唸り、マルチェロは周囲の壁をペタペタと触る。
幸い、空いている穴の大きさは、身体の大きなマルチェロでも何とか潜れそうで…。
けれど、その安全性についてはイマイチ保証がない。

まあ、何とかなるだろう。

マルチェロは自分への合図のように1つ頷くと、ゴソゴソとその穴に潜り込んだ。
「ほう、これは……当たりだったようだな…」
持ち込んだ明かりを掲げれば、照らし出されたのはゴチャゴチャと詰め込まれた大小様々の物…。
その形から、それらが美術品らしいと見当を付けて…。
思わず、笑みが浮かぶ。

恐らく、どの代だかの権力者がここに寄贈された品々の一部を隠していたのだろう。
「痛んでいなければいいが…」
マルチェロは短く呪文を唱えると、そこここに設置されたランプに火を灯した。
室内がにわかに明るくなり、ハッキリと物が見えるようになる。
絵画や彫刻、宝石の類など…。
ざっと見た限りでも、相当な宝の山が眠っていたようだ。
「クックック♪これも神のご加護か…」
笑い方はまるで悪人だが、マルチェロは修道院の財政状態をよく知るただ一人の人間である。
マイエラ修道院の窮状を日頃から憂いている彼は、ただ純粋に修道院の為、この臨時収入を喜んでいた。

「体制を変えるにしても、現状でかかる必要経費は何ともしがたいからな……これだけあれば当面は困らんだろうが…。今の内に改革を進めなければ…」

全く、前任者共の無能ぶりには苦労させられる!と、ブツブツ呟きながら手近な箱を1つ1つ開けて…。
これは壺か、こっちは彫像か、と中身を確かめる。
すると、その内に…。

「…これはまた…随分と立派な品だな……」

大きな彫像の陰に隠されるように…1つ、随分と大きな箱があって…。
小さければ宝石箱のようなそれは、金銀の見事な細工に様々な宝石、貝などをあしらい、その箱だけでも相当な値の張りそうな物だった。
こうなると、中には一体何が入っているのかと、興味を惹かれるのは当然である。
留め金を外し、蓋を開けて、中は何かと覗き込めば…。

そこには、綺麗な布に包まれて眠る、1人の少女が………。

「な…っ?」
思わず驚きの声を上げて…マルチェロは暫しの間、呆然と少女を見つめた。
頭の中を凄まじい勢いで様々な憶測が走り抜ける。
だが、
「いや…、人形か…?」
やがてその事に気付き、は…と息をついた。
「全く、人騒がせな……」
一瞬、本当に驚いた自分が可笑しくて、何やらクスクスと笑ってしまう。
「やれやれ、今日はとんだ日だな………しかし、これは見事だ……」
フウと溜息をつきながら、その場に屈んでマルチェロは人形の顔を覗き込む。

レースとリボンと宝石で飾られた、何とも豪華な少女の人形…。
透き通るような白い肌に、薄赤い頬と唇…。
長く艶やかな髪は、見事な銀で…。
整った眉毛も、長い睫毛も、一本一本植えられているのだろうか…、そのどちらも筆で書かれた物ではなかった。

閉じた瞼の中に隠された瞳は、一体どんな色なのだろうか…と。
興味をそそられ、息すら詰めて見つめて……。

上体を起こせば目を開ける仕掛けかもしれんな…。

そんなことを思い、そっと触れた時だった。
その人形の瞳が、ふ…と目を開いたのは………。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

とゆことで。
新しい話はプランツネタで。
ナナセ、このプランツを使った話は遊戯王で散々書いたのですが…。
マルククは、どうにもパラレルやりにくく、手を出さずにおりました。

…が、まあ、たまにはいいだろう…ということで。

ククールがお人形さんの話です。
よろしければ暫しの間、お付き合い下さいませ〜☆

てか、今回のマルチェロさんは何か苦労人の気配ですね(笑)
明日は病院で会社お休みするので、更新はあるかないか微妙な感じです〜。。。
 
 
 
23 (Wed) Nov 2005 [no.120]
 
 
いつか天使の降る空へ・6

 
 
ククールの反らした首筋に、何度も落とされる唇…。
柔らかく、温かく、濡れたその感触に、ゾクゾクと背筋を這い昇る熱……。
「は…ぁ…っ」
手が身体を這うのに、小さく高い声が漏れた。

こんな…団長室の真ん中で……。
こんな…昼間…から…。

そう思えば、それが余計に熱を煽って…。
肌が粟立ち、感覚が鋭敏になる。
本気なのかと、思う気持ちも徐々に溶け、ククールは兄の背に腕を伸ばすと、ぎゅっと縋り付いた。
「あ、あに、き…、兄貴…っ」

オレ、兄貴が…好きだよ…。
だから、何処にも行きたくない……ここにいたい…。

でも…。

「…オレ…、命令に…従うよ…」
「……!」
震える声で言ったククールの言葉に、マルチェロがハッと顔を上げて…。
そして、見つめ合った僅かな間……その時に…。

パチ…バチバチッ☆

突然、青白い光がスパークし、その思いも寄らぬ力で、二人の身体は弾けるように引き離された。
「え…?」
支えをなくしたククールが、ぺたりとその場に座り込む。
「…な…っ?」
流石のマルチェロも、これには一瞬呆然として…何が起こったのかと…。

何…だ?
今のは…電撃…?
いや、違う……これは…。

走り抜けたのは電気のような物だった。
だが、後に残された感覚は異質で…痺れではなく、異様なだるさと冷たさ…。

この感じは……まさか…?

それに思い当たり、眉を顰めていれば、ふいに「あ…」と小さな声が上がって……。
ククールがその場にパタリと倒れ伏す。
「…ククール?」
長い銀の髪が床に広がり、その隙間から覗く顔は眠っているかのように静かだった。
だが、その顔色は酷く悪い……。
「おい、ククール!どうした?」
背中に生えた真っ白な羽が、徐々に薄くなってゆくのを見つめ、それに悪い予感を感じながら…。
「ククール…!」
マルチェロが近づき、ククールへと手を伸ばすと……。
その手の平の下で、先程の青白い光がパアアッと輝いた。

『ククールに触るな!』

声が響く。
マルチェロのものでも、ククールのものでもないその声。
それは…子供の声のようなのに、憎しみに満ちた声だった。
マルチェロがギリと唇を噛み締める。

…………思い至るべきだったのだ。

ククールの身体に異変が起きたその時に…。
明らかに人外の力が働いたこの異変…。
もっと真剣にその理由を考えるべきだった。

「…バカめ……」

倒れたままのククールを見つめ、苦々しい呟きが漏れる。
青白い光はククールを守るようにその身体の上に留まり、マルチェロの様子を窺うように、時折チカチカと瞬いて…。
意志のあるモノがそこに居るのだと…。

「やれやれ、聖職者に取り憑いて修道院へ来るとは……酔狂な霊もいたものだ…」

マルチェロはニイッと唇の端をあげて見せながら、その光に向かって声をかけた。
光はそれには答えずに…ただ、パチリと小さく弾ける。
その様子を鋭く見つめたまま……。

「……まあ、取り憑かれる方も、相当なうつけだがな…」

マルチェロは面白くなさそうに呟いた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

さて。
流れを変えてみました。
っても、最初に思いついた話の内容に強引に持ってったって感じなんですが。
(いや、ムヒョとロージーの影響が出て霊が出てくる話になったわけではなく…(苦笑))

そろそろ本気で原稿仕上げないとだなー…と思いつつ、何だかいろいろうつつを抜かして遊んでおります〜。ああ〜〜。
始めるのが早いのも善し悪しだよな…最近中だるみばっかりだ。。。(-_-;)

明日は、お兄ちゃんのボクの続きか、新しい話か…どっちかの予定です。
 
 
 
21 (Mon) Nov 2005 [no.119]
 
 
お兄ちゃんのボク。19

 
 
「お前はボタンも満足に留められないのかね?」

いくつになったんだ、全く…と。
呆れたように呟いて…。
マルチェロは私室スペースに入ってくると、ククールの手を退かし、シャツのボタンを留めて行く。
「…兄貴……」
長い指の器用な動きを見つめ、ククールはドキドキする胸に苦しくなって…。
「何だ?」
「何で…こんな……してくれんの?」
「風邪を引かれては困るからな」
戸惑いながらも訊ねれば、兄はサラリとそう言った。
それがどういう意味なのか……。

上司としての言葉にしては、随分と甘いような、優しいような…そんな気がして…。

ボタン留めてくれるとか…ガキの頃でもしてくれたことなんかナイのにさ…。
風邪引いちゃ困るとか…今までなら絶対言わねーだろ…。
何だよ、こーゆーの……。

期待してはイケナイのだと分かっているし、思っている。
だが、やはり、何故か…何処か…優しくなったような気がして、期待する気持ちを押さえきれずに…。
「…あの…兄貴……」
「何だね?」
近い瞳を見上げれば、ドキリと鼓動が跳ねた。
兄の目は静かに自分を見つめ、その表情には変化の1つも見当たらない。

…やっぱ…普通ん時じゃ…キスなんかしてくんねーよな……。

そんなことにがっかりする自分を、どうかしていると思いながら…。
それでも、切なさで胸がいっぱいになって…。
「……ううん…何でも…ない、です…」
フルフルと小さく頭を振れば、マルチェロはそれでも言いたいところを察したらしかった。
クスリと小さく笑って…。
自分より幾分小柄な弟に、そっと唇を落とす。
ちゅっと触れ合い、離れる唇…。
「あ、あに…っ?!」
かあああっと赤く染まる頬…。
大きく大きく見開く目…。
驚きの表情で固まる弟に、マルチェロはクスクスと笑った。
「何だ、して欲しそうな顔をしていたクセに…」

し、して欲しそうな顔してたって……!!!!
だからって、してくれるよーな性格じゃないでしょーーー!お兄様っ!

「……アンタ、ワケわかんねーよ…!」
ぷいと顔を背ければ、今度はフフンと鼻で笑う。
「ああ、生憎、お前程度の頭で分かる程、単純には出来ていないのでな」
「ど、どうせっ!オレは兄貴と違ってバカですよ!」
ククールはモゴモゴとそう言うと、唇を噛み締めた。
優しくなった気がしたとか、やっぱ気のせいだ!と思う。
キスなど、本当に戯れなのだ、と。
この人は自分の反応を楽しんでいるだけなのだ、と。
自分でも驚く程に純真な兄への気持ちと、純情な反応…。
それを、笑っているのだ、と…。
「………」
マルチェロは項垂れてしまった弟に、ふ…と優しげな微笑みを向けて…。

「ククール、分かっているとは思うが、私はバカは嫌いだ」

キッパリとそう告げる。
ククールはハッと顔を上げ、マルチェロを見上げた。
再び大きく見開かれた、薄水の瞳…。
マルチェロだけを映したその瞳に、不安そうな、傷ついたような色が広がって…。
唇が、微かに動く。

兄貴…、と。

呼ぶ声が聞こえたような気がした。
満足げな笑みが、マルチェロの顔に広がる。

「…そう、私はバカは嫌いなのだ。特例を除いてはな…」

「………特例?」
それが、何なのか…。
ククールは知りたかったのだが、マルチェロは教えてはくれなかった。
ただ、ひどく優しい瞳で見つめながら、そっと髪を撫でて…。

「また、夜に来たまえ…」

囁かれたその言葉に。
それが意味するところに。
「あ…あにき…?」
ククールは三度、驚いた。
「聖堂騎士団員ククール、返事はどうした?」
兄が、ふいに冷たさを乗せた声で訊ねる。

いつもの声。
いつもの調子。
いつもの…厳しい瞳……。

それに、夢みたいな、嘘みたいな、まやかしの時間が終わったのだと、そう思って…。

「…は、団長殿…」
どこか、諦めた口調でククールは返事を返した。
「では、行きたまえ」
「はい」
ククールは、ビシリと敬礼をすると、そのまま部屋を出るために歩き出した。
私室スペースを出て。
公務スペースを横切って。
ワケの分からぬ寒さに、身を震わせて…。

そして、バタンと…扉の閉まる音が静寂の中に響き渡った。


その音をついたての向こうに聞きながら…。


「……そう…、バカは…嫌いなのだがな…」

温もりの残る毛布をソロと撫でて…。
マルチェロは呟いた。

特例中の特例だろうな…。
恐らくは……血の力…。

溜め息混じりの苦笑が漏れる。

半分とはいえ、血の繋がった弟だからこそ…バカな子ほど可愛いという方式が成り立っているのだ、と…。

どれ程憎もうとしても、憎みきれないのは…。
ククールを愛してやまないのは、その為なのだろうと…。


「……私も…大概、バカだな…」

フン、と…自嘲の混ざった呟きをこぼして…。
マルチェロは簡単にベッドを整えた。


−−−−−−−−−−−−−−−−

何てか、お兄様はお部屋とかキレイになってないとダメな感じがしますね。
ところで、バカな子程可愛いってのを、ずっと書きたかったのですよ!
なので、出せてスッキリしました☆
もうこの話終わってもいいや、くらい(え)
次の話の予定が決まってるので、もういいかなとスグに思ってしまう今日この頃でした(爆)
 
 
 
18 (Fri) Nov 2005 [no.118]
 
 
お兄ちゃんのボク。18

 
 
「………」
流石に予想外だったのだろう。
デスクの手前に立っているククールを見て、マルチェロは僅かに目を見開いて…。
けれど、一瞬の後には何事もなかったかのような顔で、後ろ手にドアを閉めた。
「…何をしている?」
「えっ、な…何…って、その……部屋に、戻ろうかなって…」
ククールがモゴモゴと言えば、マルチェロは顔を顰める。
「そんなカッコでかね?」
緑の視線が足下から顔までスーッと移動して…。
「え?」
ククールもつられるように毛布を巻いただけの自分の身体を見た。
「!!!!」

そ、そうだった!!!
オレ、服着てねーじゃん!

裸足の足、裸の肩に目が丸くなる。
思わず毛布の前をぎゅうと押さえれば、マルチェロは部屋に入ってきながらククッと笑った。
「寝惚けているのか?全く…仕方のないヤツだな…」
「き、着替えてから戻ります!」
ククールは慌ててそう言って身を翻す。
止められるかとも思ったが、兄は肩を竦めただけで…。
「ああ、そうしたまえ」
短く言われ、何だか拍子抜けしてしまう。

…何だよ……。
用が済んだらもうどうでもいいのかよ……。

ついたての奥、イスの上に置かれた自分の服。
何だか、胸がモヤモヤとして…ククールは毛布をベッドに放り投げ、服を着始めた。
すぐそこ、という距離にあるベッド。
ほんの数時間前は、そこに二人でいたのだ。

…あんな……熱かったのに……。

マルチェロの腕の中で…あれ程熱さに喘いでいたというのに、今は何やら寒いような気さえして…。
「………バカじゃねぇの…」
ボソリと口の中で呟き、ククールはバサリとシャツを羽織った。
着替えたら出て行くのだ、と思うと、何故かボタンを留める手がもつれてしまう。
なかなか止められぬボタンにイライラして…。
「…クソ…」
忌々しげに舌打ちしながら…。

何を期待してんだよ…。
ちょっと……抱かれたくらいでさ、何か変わるなんてあるワケねーじゃん。
アイツは…兄貴は…オレのこと嫌いなんだから…。
好きで抱いたんじゃない。
嫌いだから…きっと、イヤガラセの一種なんだ。

「絶対、そうだ…」
「何をブツブツ言っているのだ?」
「あ…っ」
背後から掛けられた声にハッとして、見ればついたての横にマルチェロが立っていた。

−−−−−−−−−−−−−−−−

お兄ちゃんが『仕方のない奴め』ってククにゆーのがすごく好きだったりします。
何か愛情を感じませんか?
あたしはマイエラ修道院で主人公達を尋問中にククたんが呼ばれて来て、その後勝手に出てっちゃった時に言うあれがものスゴツボで♪(長いよ説明…)

土日は、更新があったらまた天使話かなという感じで。。。
なければ、真面目に原稿やってるのかと思って下さい(笑)
 
 
 
17 (Thr) Nov 2005 [no.117]
 
 
お兄ちゃんのボク。17

 
 
「…テ…テ…」

小さく呻いて…ククールは目を覚ました。
二、三度瞬きをすれば、ぼんやりとした視界に飛び込んでくる深く暗い青…。
ソレが、何であるのか…。
考えるまでもなく分かって…ククールは「ああ」と小さく呟きを漏らす。
ごろりと寝返りを打って天井を見上げれば、何やら自然と深いため息が出て…。
額に手を当て、再び目を閉じた。

うー…やっぱ…信じらんねー……。
つか、頭とか腰とか…尻とか…痛いし…、ものすごかったるいし、目も腫れぼったいし……。
そーゆーのがみんな、何もかもホントだったってことの証なんだろーけど…。
やっぱ……何か…実感ねーや…。

そんなことを思い、顔を顰めて。
額に当てていた手を上にあげ、じっと見つめる。
「…………」
この手で、兄に触れたのだ。
兄の頭を引き寄せ、抱きしめた。
その感触は生々しく残っており、汗にまみれたあの肌の熱さ、視線、声、息づかい…と、次々と思い出されるそれらに、ドキドキと胸が高鳴る。

「……兄貴…」

兄貴……何か…優しかった…。
キス、いっぱいしたし…。
名前も…いっぱい呼んでくれたし……。

そう思えば、きゅうんと切なくなって…。
また、溜め息が漏れた。

奪われるだけだと思っていた。
マルチェロがもし、自分の身体を望むような事があった時は…、きっと…。
だが、実際は違っていたのだ。

実際のマルチェロは、奪うのではなく、ただひたすら与えた。

嵐のような快楽を…。
熱を。
唇を。
視線を。

濃密な時間を思い返せば、身の内にざわめきが起こる。
それに慌てて頭を振って…。

「…アイツ……何処行ったんだろ……?」

この手狭な私室スペースは勿論、隣の執務スペースにも人の気配がないことに気づいていたククールは、もそりと起きあがると、素肌に毛布を巻き付けてベッドから出た。
窓のないこの部屋では、外の明るさによって時を計るという事が出来ない。
ついたてからひょこっと顔を覗かせ、誰もいないことを再確認すると、ククールはスタスタと兄のデスクに近寄った。
そこから見える壁に、時計が掛かっている。

…何だ、まだ早いのか…。

現在の時刻が、朝の祈祷にもまだ早すぎるということを知り、怪訝な顔で…。

「照れくさくなって…他の部屋で寝てる……なんてことは、まずねーな…アイツに限って……」

案外、腹でも減って何か調達に行ってたりして…。
いや、まさか…。
もう一度風呂に入りに行ったとか…。

ランプをパチリと点け、デスクの上をざっと見るが、書き置きらしき物もない。
「ま、期待してねーけど…」
ククールは肩を竦めてそう言うと、マルチェロのイスにどかっと腰掛けた。
ここで仕事をすることがメインだからだろう。
マルチェロのイスはシンプルながら、とても座り心地が良かった。

「……何か用かね?……なんつって…」

兄の口調を真似てそんなことを呟いて…。
何とはなしに引きだしを開ける。
几帳面な彼らしく、きちんと整頓された引きだしの中。
「…ノートはここ。定規はここ、とか決まってんだろうな…きっと…」
クスクスと笑いながら次の引きだしを開ければ、そこには何故か無造作に置かれたファイルが1つ…。
古いものであるらしく、表紙の角がややすり切れたそのファイルは随分と分厚く膨らんでいて…興味を引かれたククールはそれを取り出した。
「………よし…」
耳を澄まし、足音が聞こえてこないのを確認してから…。
そっと表紙を開いてみれば、中には何やら写真が貼られているらしい…。
アルバムか、と思いながらページを捲ると、
「…何だ?これ…」
1ページ目には、修道士見習いと思しき子供達が何人も集まっている様子が映った写真が貼られていて…。
誰を撮ったものかも分からないようなその写真に、ククールは眉根を寄せた。
ペラリと、ページを捲る。
次の写真には、どうも見覚えのある子供がズームで写っている。

「あれ?んん〜??コレ…って……」

オデイロ院長と話ながら、嬉しげに笑っているその子供は……ククールだった。
「…懐かしーな〜…っつか、小さいオレ可愛いーなー♪」
更に、ペラリとページを捲る。
「…あれ?またオレ?」
ペラリ。
「ここにも…」
ペラリ。
「これも…」
ペラリ。
「また…?」
ペラリ。
「やっぱ…オレ…?」
てんてんてんてんてん…と、何かがククールの頭の中を転がって…。

少しの間…。

古い写真は各行事の際に撮られたものなのだろう。
復活祭や収穫祭、クリスマス等の様子が分かるそれらの写真は、記録の為に撮られたもののようにも思える。
全ての写真にククールが映っているが、特にメインとして映っているわけではなかった。
カメラに目線があっているものなど殆どなく、だからこそ、偶然が重なっているだけのようにも思えて…。
ドキドキと騒ぐ胸に、何だか頭がグルグルしてくる。

だ、だ、ダメだ…期待なんかしちゃ…!
兄貴が、オレの成長を追っててくれた、とか…そんなんときめいちゃ…。

「きっとコレ、誰かから没収したとかで……うん、きっと…そんなだよな…」

それが一番ありそうじゃん!と自分を納得させ、ペラと捲ったページにククールが目を落とした時…。
微かに聞こえる足音…。
「!!!」
ククールは急いで引きだしの中へファイルをしまうと、ワタワタとイスから立ち上がって………。
ベッドに戻るべきか、否かと迷っている内に、ガチャリと大きな音を響かせてドアが開いた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ククたんプライバシーの侵害です。
人の机の中なんて勝手に調べちゃダメですよ!

…って、人様宅に勝手に押し入り、本棚はおろか、壁に下げられた袋や寝室のタンスまで調べ、更には台所の壺を割りまくり、チーズの一かけ、ミルクの一滴すらも奪って行くようなゲームなんだから、今更ですね☆
改めて考えると酷いゲームだ。。。
何もないと「この家には薬草もないのかー!」とか思ったりするしね…(^-^;)
でも、台所のミルクやチーズ、壺から出てきたはした金(10Gとかさー、へそくりっぽいじゃん!)の類は、返してやれよ…とゆー、何とも言えない気持ちになります(笑)

ってか、つっこむトコはそこじゃなくて写真じゃないのか……(苦笑)
 
 
 
16 (Wed) Nov 2005 [no.116]
 
 
お兄ちゃんのボク。16

 
 
「い…っ、あ、ぁっ、あぁあっ!」

突如身を襲った衝撃に、目も口も大きく開いて…。
クク−ルは内部を侵す圧迫感に、ただただ喘ぎを漏らした。
「痛くはないだろう?」
「はっ、あ…っ、ぅ…ぁ…っ」
内部がビクビクと震えているのが分かる。
そして、その震えの度に、ソコにいる兄を意識してしまって…。
「フン、少々きついか…まあ、だがすぐに慣れるだろう」
「やっ、む、無理、そんな…っ」
動く気配を見せたマルチェロに、思わず必死になって言えば、ククッと笑われた。
手が、勃ち上がっている前を捉える。
「はぅうっ?!」
握り込んだ手の親指でグリグリと先端を擦られ、強すぎるその刺激にククールの身体が跳ねて…。
「あっ、や…あぁ、い、っちゃ…ぁあっ」
ぎゅうっと眉根を寄せ、白い喉を反らして快感をやり過ごそうとでも言うように…。
赤く染まった顔を汗と涙が混ざりながら、伝い落ちた。
そんな弟の様子を見つめ、フ…とマルチェロの表情が溶ける。

全く……こんな顔をするとは…。
これは…誰にも見せられんな……。

こみ上げた感情のまま、こめかみ近くに口付けるが、ククールはそれにすら、もう気づかないようだった。
初めて放り込まれた嵐のような快楽の中で、ただひたすら喘いでいるだけの姿が愛おしい。

全く、噂というモノはアテにならん…。

満足そうにニヤリと笑って…。
限界を迎える一歩手前で、マルチェロはパッとソコから手を離した。
「…あ…」
ククールは突如止んだ刺激に戸惑い、切なげな視線を向ける。
ふと、力の抜けたその瞬間…。
マルチェロはズルと入り口近くまで自身を引き抜くと、間髪を入れず、再び最奥いっぱいまで埋め込んだ。
「い、ぁああっ!」
ククールの身体を襲う、衝撃と痛み。
高く上がった悲鳴のような声。
だが、ククールの身体が防御の為に強張るのを、マルチェロは許しはしなかった。
宥めるような甘やかすようなキスを繰り返しながら、今度は小さな動作でゆるゆると、けれど、最奥を押し上げるように動いて…。
それを繰り返せば、初めは痛みに顔を歪めていたククールも、次第に快楽の色を強めて行く。
「ぁ、あ、あん、い、や…ぁ、あ…っ」
切れ切れに上がる甘く切ない声…。
「何がいやなのだ…前をこんなにしているクセに…」
すぐ間近からの揶揄するような囁きに、ククールはフルフルと首を振った。
縋る場所を求めて伸ばされる白い指先…。
ヒタと顔に触れたそれに、首を傾け口付ければ、熱に浮かされた瞳が僅かに開かれる。
「…あにき…っ」
ひくっと喉を震わせて呼んで…。
ククールはその頭を抱き寄せるように、首へと腕を回した。
「熱いな…」
抱き寄せられ、肌の発する熱の中…。
けして嫌ではないその熱さに小さく呟き、近い頬を、耳を甘噛みすれば、ククールはその度に身を竦めて…。
ぎゅうっと腕に力がこもる。
それに若干の息苦しさを感じながら…マルチェロは同時に妙な感慨を覚えた。

……抱き締められる…というのは初めてだな…。
まあ、抱き締めてやったこともないが…。

だが、
「…そうしがみつかれては…動きにくいのだがね」
口ではそう言って…。
ククールの身体を引き離し、そのままズッと突き上げる。
「ぁあっ…い…っ」
撓る背。
逃げる腰を押さえ、律動を繰り返せば涙を溢れさせて…。
「や、も…だ…っ、ぁ…お、おかし…く、なる…っ」
途切れ途切れの譫言のようなその言葉に、マルチェロはニヤリとする。

「何だ、だらしないヤツめ…、もうダメか?」

笑みを交えながらも、短く切れる言葉。
その声には熱が籠もり、いつもよりも甘く響いて…。
触れる唇も甘く…。
「ん、ん…っ」
間近で見る緑の瞳も、いつもより甘い。

それが、嬉しいのか…それとも、逆に辛いのか……。

「もう少し、我慢しろ…」
「ん…、あにき…」
囁かれた言葉に小さく頷きながら、ククールは切なげな表情を浮かべた。
マルチェロはそれに気付いたのか…、それとも気付かなかったからこそか……もう一度、柔らかに唇を重ねる。
そして、快楽を追って徐々に大きく速くなる動きに、ククールはどんどんと追いつめられて…。
苦しい程の快感に、ただ喘ぐことしか出来ずに…。

白く霞む何かの向こうへと……押し上げられるままに昇り詰めた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

とゆことで、一日空いてしまいましたが、続きです〜(爆)

今日は朝からずーっと、どうにもこうにも眠くて堪りません。
集中力がちょっとでも途切れると、うつら〜としてしまうので、すっごい危険です!(@_@;)
何が危険って、こんなエロシーンまっただ中の画面開いたままうっかり寝ちゃって、人に見られでもしたら!!!!
いや、だったら、仕事中に書いてんなよ、とゆー話なんですが…(笑)
 
 
 
14 (Mon) Nov 2005 [no.115]
 
 
お兄ちゃんのボク。15

 
 
 
 
…イッてしまった……。

大きく胸を上下させ、荒い息を整えようとしながら…。
半ば呆然として、ククールは思った。
正直なところ、少しショックだった。

同性の手に感じ、同性の手でイッてしまう等…。

子供の頃から整いまくっていた容姿のお陰で、イヤでも集めてしまう人の視線。
それは、ククールの好むと好まざるとに寄らず、また性別も年齢も不問で…。
向けられる好意の中には、ちょっと遠慮させて頂きます、なんてものも決して少なくはなかった。
だが、自分の姿勢は一貫して、美人な女の子が好き!で通してきたつもりだったのだ。
同僚にベタベタと触られれば、それを気持ち悪いと思い、また遠慮なく態度にも言葉にも表してきた。

だが……、マルチェロの手に触られるのは、気持ちが良くて……。

キスをされるのもイヤではなくて…。
そして、もっと…されたい、とさえ…思っていて…。

ああ…オレって…兄貴のこと好きなんだなぁ…やっぱ……。

今更ながらにそう思い、恥ずかしくなってくる。

うう〜、っとにもー…。
ホントに本気かよ〜!
男なのに〜!兄貴なのに〜!

「ううう…って、ちょっ!兄貴?!何処見てんのっ!」
ぐいと脚を広げられ、ククールは弾かれたように上半身を起こした。
脚の間に兄が居る。
それに目眩を起こしそうな程の混乱と羞恥を感じていれば、マルチェロはクスリと小さく笑って、起きあがったククールの胸を押しやった。
「今更恥じらっても仕方あるまい。おとなしくしていろ」
ボフッと、再び身体がベッドに沈む。
「…お…おとなしく…って〜…ぁ…、ちょっ!」
ククールの放った物で濡れた手が、入り口に触れ、ぬるりと滑った。
「ほら、力を入れるな」
入り口にピタリと当てられる指。
それは、二、三度、ソコを押して…。
指先がググッと潜り込む。
「〜〜っ!ん、ン…ッ!」
途端、息を呑み身を竦めるククール。
「力を抜け、ククール」
決して強くはない調子で命じられるのに、縋るような瞳を向けるが、マルチェロにやめる気はないようだった。

「やれやれ、本当に初めてか……」

呆れたような言葉とは裏腹に、何故かとても楽しそうに言われて…思わず涙の滲む瞳で睨み付ける。
「んなん、決まってんだろ!」
「そうか、ならば…イチから徹底的に覚え込ませてやろう」
「!」
何を?とは、流石に聞かなかった。
ただ、分かったのは…。

マルチェロが本当に本気だということ……。

「………っ」
ククールはじっと兄の顔を見つめて…それから静かに目をつぶった。
瞼の裏には焼き付いたようにマルチェロの顔が浮かぶ。
楽しそうな…それでいて、真剣そうな兄の顔が…。

…べ…別に………ヤじゃ、ねーし…。
兄貴なら、って…もう何度か思ったりしてたし……。
その気なら、もうそれでいいや……こんなん…もう、ナイかもだし…。

指がゆっくりと中へ押し入ってくる。
「ん…ぅ…っ」
きゅっと噛み締めた唇から、小さく呻きが漏れた。
体の中を触られているという、危うい感覚…。
漏れる吐息には熱がこもり、体内が段々と熱くなっていくのが分かる。
「ふ…ぅ…、…んっ」
マルチェロの指はゆっくりと、じっくりと内部を慣らし、ククールが快楽を感じる場所を探って、丁寧に的確に蠢いていた。
長い指が抜き差しされる度に立てる淫らな音が耳につき、羞恥心を刺激する。
「ぁ…、はぅ…っ、ぁ、あぁっ!」
深く差し込まれた指が、奥の方の肉をぐいと押し上げ、擦った途端、今まで感じなかった鋭い快感が背筋を走り抜けて…思わず、高く声上がった。
ク…と、上で短く笑う声。
「……ここか…」
「やっ、ぁ、はっ、そ、そこ、や…だぁっ」
「イヤではあるまい。ここがいいのだろう?」
「や、ぁあっ、へ、変、だよ…っ」
いつの間にか増やされた指。
それはバラバラに動き、内部をかき回して…。
今までは気持ちいいなどと思わなかった筈なのに、一度目覚めた快感はどん欲に全ての刺激を変換し、何をされても、何処に触れられても、甘い痺れを身体に走らせる。
「っあ、あっ、は…ん…っ」
薄く開いた唇から絶えず漏れる声。
抑えようと言う気持ちさえ、もう快楽に溶けてしまって…。
熱くこみ上げる涙が、目尻から溢れ出した。
「あ、あ…っ、あにき…っ、やだ…っ」
「全く…嘘ばかり言う口だな…」
ペロと、唇を舌が舐める。
「は…ン、ム……っ」
マルチェロはそのままククールの口内をゾロリと舐め、唇を離した。
「ふぁ…っ、あ、にき…っ、なんで……」
「ふむ、もういいか…」
ズルと指が引き抜かれる。
そして、その代わりに押しあてられた、熱の塊……。
ソレが兄のものであると、そう認識するよりも早く。
その灼熱の塊は、一気にククールの中へと埋め込まれた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

先週に引き続き、なワケですが。。。
月曜日から全く爽やかでないエロで申し訳ないです〜(爆)
(いや、爽やかなエロってのもあんまりナイだろうかと思いますが…)
もう一回くらいかな…紫アイコンは……。。。。
 
 
 
13 (Sun) Nov 2005 [no.114]
 
 
いつか天使の降る空へ・5



「お前は美しい…そう、この背の羽を受け入れてしまえる程に……」

「………」
「神より遣わされた者だと…祝福を受けし者だと…そんな言葉さえ誰もが信じるだろう」
歌うように、讃えるかのように囁いて…。
マルチェロはククールの顔に優しいキスを繰り返す。
「あにき…」
涙の跡を辿るように、口付けは頬を上り…目尻に溜まった涙を舌先でぺろりと舐め取って…。
「…天使は泣いたりしないものだ」
子供に言い聞かせるように…。
「…天使じゃねーよ…」
諭すような兄の言葉に、ククールはもごもごと言った。
涙に濁る声は何処か甘えた響きを持っている。
握られた手からは確かに兄の温もりが伝わって…。
ククールはぎゅっとその手を握り返した。

たとえば、何時か、何処か…。

ここではない場所に行くことがあったとしても…。
それが、兄と一緒であるならば、ククールは何処にだって行くという気持ちがある。

マルチェロのいる場所ならば、何処でもいいのだ。

マルチェロが自分を見てくれなくても、会話がなくても、その姿を滅多に見られないのだとしても……それでも同じ場所にいるならば、期待が持てる。
だが、遠く離れた場所に行かされてしまったら……もう二度と会えなくなる、と…。
そんな気がひしひしとして…。
ククールはただただそれが怖かった。

「天使なんかじゃねーよ、オレ…」
「そうかね?」
マルチェロがもう片方の手をククールの頭へと伸ばす。
そして、その頭を抱き寄せると、額にそっと口付けて…。

「だが、お前はどんなに汚そうとしても、また、汚しても…清らかなままだ……」

「清らかなんかじゃ…」
「真っ直ぐで…純粋で……」
優しい声で呟きながら、指先は頭を撫でる。
握りしめられていた手が離れ、それは羽の生えた背中へと回されて…緩く抱きしめられたまま…。
「あ、兄貴…何…」
顔を上げれば、何故か笑みを浮かべて見つめている緑の瞳。
「ああ…、そうだ、優しいことも知っている…」
「ね、どうしたの?兄貴?」
突如、自分を誉めているかのような言葉を並べだした兄に、ククールはただ戸惑って…。
どうしたのかと訊ねるが、それに対する答えは返されなかった。
「そして更に、この容姿だ…」
「え…、何…?」

「…お前は誰より美しい……」

ドキンと…鼓動が跳ねるのと同時に、ゾクリと…背筋を悪寒が走る。
一瞬、閃いた危機感。
けれど、ククールが逃げようとしたその時には、マルチェロの手は服の中に入り込んで…。
「あっ、あにき…っ?!」
「この羽は天よりの授かり物だろう…お前にだからこそ、相応しい…」
羽の付け根を撫でられ、ビクリと身が竦んだ。

羽をもぎ取る、なんて酷く恐ろしいことでも、この兄ならば考えられる。

「ぁ…っ」
戦慄に似た震えが身体を走るのに、思わず息を詰めれば…。
けれど、マルチェロは背中と羽を撫で続けるだけだった。

「私とて、惜しいとは思うのだ…。お前を…誰かに渡すなど……だが、最上の物だからこそ、献上品に相応しい。違うかね?」

「兄、貴…」
ククールはマジマジと兄を見つめた。

惜しいって……思うの?
最上の物って…思うの?
献上品に相応しいって…そう思うの?

喜ぶべき事ではないと、分かっている。
完全に『物』扱いをされて…それを受け入れるなどどうかしていると…。

だが、今までずっと、呪われた存在だと、生まれてこなければ良かったと、憎まれ、蔑まれて来たのだ。
そんな自分をマルチェロが、ほんの少しでも価値がある物と、意味がある物と、思っていてくれた事が分かって……。
ジワリと、滲むように広がる嬉しさ…。

献上品でもいい、役に立ちたいと…健気にもそんなことを思ってしまったその時…。

羽を撫でていた手が、身体を下へと滑るように降りていった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

こっちも紫アイコンつきそうなのか?!と思いつつ。
来週へ続くのであります☆
どうしようかな…。。。

ククたんの純粋さとか、お兄ちゃんはきっと眩しく見えたりして、それがまた何か『汚してやる!』系になったりすると萌えだよなぁとか思ったりしながら…(意味分かります?起き抜けなので言葉がまとまりません…が、このままで…(爆))
 
 
 
11 (Fri) Nov 2005 [no.113]
 
 
お兄ちゃんのボク。14



『服を脱げ』と、命じたマルチェロの言葉に、何を言うでもなく…。
ククールはおとなしく、けれどノロノロと服を脱いだ。
それは、躊躇いや恥じらいといった物のせいであったに違いないのだが、その様を眺め、待っていたマルチェロにしてみれば、何やら焦らされているような、誘われているような、そんな気さえして…。
全ての衣服が取り払われた時には、流石にゴクリと喉すら鳴ったものだった。

今、目の前にさらされているククールの身体…。
それは、先程風呂場で見たのとはまた趣が違って…。

半分は同じ血が流れている筈なのだが……。
到底、信じられんな…。

白く、滑らかな肌をゆっくりと手で撫で、マルチェロは胸の内でううむと唸る。
毎日、同じ物を食べ、同じ訓練をしているはずの弟…。
けれど、ククールの身体は自分の身体とは明らかに違うようで…。

美しいと…息さえ呑むほどに…。

発育途中のしなやかな肢体を何処か眩しげに眺め、その柔らかな筋肉の弾力を楽しみながら、ちゅっと唇を落とせば、鎖骨の下…紅い花のような痕が付いた。
自分の触れた証のようなその痕…。
それに満足そうな笑みを浮かべ、視線を上げて顔を見れば、ククールはぎゅうっと目をつぶり固まっている。

「怖いのか?」

訊ねれば、ソロリと瞳を開けて…何とも情けない表情で…。
それでも視線が合えば、心持ちキッと瞳に力が入った。
「べ、別に、怖くなんか、ない、です!」
ぷいと顔を逸らし、怒ったように拗ねたように言うのに思わず笑ってしまう。

これ程…人を惑わす容姿をしていながら……中身はまだまだ子供だな…。
今までよくぞ無事でいられたものだ。

「そうか、なら、気にするのはやめておこう」
そう言いながら長い髪を掬い、それに口付ければ、ククールは何か言いたげに口を開く。
一瞬、何とも切ない色がその瞳を彩り、それにドキリとして…。

こんな顔を、コイツは他でも見せているのだろうか…、と…。

ふと、覚えたのは紛れもない独占欲だった。

聖堂騎士団員は知らぬであろう。
だが、ドニの村の娘達、祈祷先の貴族達、その他…この地を訪れる多くの巡礼者達の中には、ククールと通じ合った者が居るかも知れぬ、と………。

そう思えば、ジワリと怒りのような、焦りのようなモノが胸を焦がす。

いや…それでも、今は私のモノだ…。
そして…そう、これからは………。

暗い思いに笑みさえ浮かべ、マルチェロはキスを落とした。
片手で胸の尖りを探れば、指先が触れた途端にビクリと身が跳ねる。
「ン、んん…っ!」
口の中で上がるくぐもった小さな声。
それに、感度はいいようだな等と思いながら…。
指先で弾き、転がし、軽く爪を立てて…。
円を描くように指先を遊ばせた後は、悪戯に脇腹を撫で上げた。
「ん、ん…っ、ン…」
感じるのか、それともくすぐったいのか…。
ククールは手から逃れようと身を捩る。
長いキスから解放してやれば『ふぁ』と小さく喘いだ。
色づいた唇は唾液に濡れて艶めかしく…。
もう一度…と、ねだるように見上げる薄水の瞳は熱に潤んで…。
唇を寄せれば、今度は自分から、僅かにそっと口を開いた。
マルチェロはその唇の形を辿るように舐め、それだけで離れて…おもむろに指先を下へと伸ばす。
「は…ぅ、んっ」
既に緩く勃ち上がっていたソレに手が触れると、ククールはビクッと大きく身を竦めた。
「何だ、触れる前からこんな状態か?しょうのないヤツだな…」
「ち、ちが…ぁ、ああっ!」
強弱を付けて擦れば、ソレはすぐに堅さと大きさを増して…。
ククールが嫌々をするように頭を左右に振る。
「ぁ、あ、あ…っ」
弱々しく胸を押す手。
ビクビクと震える身体…。
泣きそうに歪む顔は、けれど目元が紅く染まって…。
叱られたり、罰を与えられたりしている時とは明らかに違うその表情…。
それに、胸が騒ぐのを感じる。

抑制が…利かなくなりそうだな……。

「や…ぁ、や…、だめ…っ」
限界を訴え、身を震わせるククール。
呼吸が浅く早く、更に熱を持って…。
「あ、あぁっ、い…っちゃ…だ、め、だめっ」
何処か必死に耐えている弟に、マルチェロはクスと笑う。

「ダメではないだろう…、いいぞ、イッておけ」

耳元にそう囁き、先端を強く擦ってやれば、次の瞬間……ソレはいとも簡単に弾けた。


−−−−−−−−−−−−−−−−

最近、気分の乗っている時と乗っていない時の差が激しくて困ります。
てか、そういや久しぶりに書いたな…マルククエロ。
だから、イマイチノリが悪いのかな………(え?)
リハビリで暫く続けてみようかな…とも思いつつ、それもどうよとも思うので、次かその次くらいで紫アイコン外せる感じで。。。

土日は更新あったら天使話の続きになると思います〜☆

今、リヴの方でイロイロとお話しが出来まして、ちょっとリヴ話のユメが膨らんでしまったり…♪
Sさま、楽しいお話をありがとうございました〜!!!(><//)
兄弟めちゃめちゃ愛おしい〜〜vvvもーvvv
 
 
 
09 (Wed) Nov 2005 [no.112]
 
 
お兄ちゃんのボク。13



あのドアの向こう側は未知の領域!!!

一歩、また一歩…。
確実に近づく団長室。
頭の中が、麻痺したように思考を止めて…。
ククールはただ、前を歩くマルチェロの背だけを見つめていた。

『ここと、私の部屋と…どちらがいいかね?』

兄の問いに、ククールは結局答えられなくて…。
言葉を忘れてしまったかのような弟に、マルチェロが笑って答えを出したのだ。

『やれやれ、そんな調子では部屋の方が無難そうだな』

クスクスと楽しそうに…。
不気味なほどに優しく…。
マルチェロは「出るぞ」と、ククールの腕を取った。


そして、今…部屋に向かって歩いているわけである。


「…交代の時間か?」
「え?あ…」
呟きに顔を上げれば、団長室の前にいつも立っている見張りの騎士が居ないことに気づいた。
「…それとも…気を利かしたつもりか……」
さて、どっちだろうな?と、マルチェロがチラリと視線を投げて言う。
「!」
もうドアは目前だ。

どうしよう、どうしよう、どうしよう!!!

マルチェロの手がドアノブに掛かる。
ギッと一瞬軋んで開く団長室のドア……。
「…っ」
ここまで来て、脚が竦んでしまった。
「ククール」
呼ばれる、名前…。
普段、あまり呼んではくれない名を…今日は何度、呼ばれただろう。
しかも、怒られて、ではなくて…。

「ククール?」

頼りなげに自分を見上げているククールに、マルチェロはもう一度呼び掛けた。
眉根を寄せて、まるで救いを求めるかのように見上げているククールの顔は、何やら幼い頃の顔を彷彿とさせて…少しだけ、苦笑してしまう。

「おいで」

手を差し出せば、やや戸惑いながら。
それでも、何か魔法に掛かったかのように、マルチェロの手をとるククール。
それに笑いかけて…。
マルチェロは手を引くと、ゆっくりと室内に入った。

バタンと、二人の背後で閉じるドアの音…。

そのまま、ついたての奥へと誘われるまま従って…。
綺麗に整えられたベッドを見た途端、クラリと目眩に似た感覚を覚える。

き……来ちゃった……。

抵抗もせずに、ただおとなしくついてきてしまった自分…。
覚悟など、あってないようなものだというのに…本当なのか、と…。
そして、マルチェロは本当にその気なのか、と……。
「………」
ククールはソロリと僅かに視線を上げ、前を歩くその背を見つめた。
手から伝わる兄の鼓動は静かなもので…、心臓が壊れそうな程に騒いでいる自分とはえらい違いだと…何故かそんなことを思う。
「あ、あにき…っ!」
「…何だね?」
落ち着こう落ち着こうと思いながら、思い切って呼んでみれば、マルチェロは涼しい顔のまま振り返った。
「いや…あのっ、ほ、ホントに…ですか?」
「何がだね?」
「な、何って…だから……」
かあああああっと。
目に見えて赤く染まるククールの顔。
それが可笑しい。

ここまで黙ってついてきておきながら、何を今更…。
しかし…初めは意外に感じたが……。
これはこれで…なかなか悪くはないものだな…。

純情すぎるククールの反応。
それに興が乗って…マルチェロは引いていた手を、きゅっと握ってみた。
それだけで、ビクリと身を竦めるククール。

やれやれ…『色男』が台無しだな。
噂では随分と遊んでいる事になっているが…。

今まで、ククールの行動を逐一報告させていたマルチェロである。
当然、女性との付き合いに関しても、今までイロイロと耳に入っていた。
だが、自分に対する反応を見る限り、それらの報告全てが作り話だったのではないかと…そう思えて…。

では…真偽を確かめさせて貰おうか…。

「お前の期待する答えは…どっちだ?」
軽く握った手を持ち上げ、その甲に唇を寄せながらチラリと視線を流してやれば、ククールは真っ赤に染めた顔を俯かせた。
「ど、どっち、って…!」
そんなん、望むわけねーだろ!とは、ククールには言えなかった。

あーーっ、だって…だって…今更過ぎ、だよな…。
つか、ここまで来てそんなん聞くかな、フツー…って、先に聞いたのオレか…。
うーうーうー。

「…まあ、迷った所で、お前の好きなようにしてやる私でもないが…」
頭の上から低く響くマルチェロの声にゾクリとする。
手がぐいと引かれ、身体が抱き寄せられた。
「あっ?!」

背中に回る腕。
密着する身体。
フワリと昇る、同じ石鹸の香り…。

鼓動が急激に騒ぎ、体内を血が一気に駆け巡る。

「ン…っ」
あっと言う間に奪われる唇…。
頭の中が、一瞬真っ白になって…。
「ぁ…っ、ん…ぅ…っ」
次の瞬間には、大浴場で目覚めさせられたあの熱が甦った。
舌先が触れ合う度、ゾクゾクと走る痺れにも似た感覚…。

ああ、くそ…やっぱ、うまいな……。
溺れそ…。

ぎゅっと、手に触れたシャツに縋る。
柔らかな布地の、その下から伝わる肌の弾力と温もり。
ふっと離れた唇は、そのまま下へと降りて…。
「…は…ぁ…っ」
首筋に沈んだ兄の頭に…ククールはソロリと手を伸ばした。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

明日は紫アイコンを使おう!と思いながら、ひとまず今日はここまでで。

えー。
冬コミにお邪魔させて頂く流ちゃんのスペース、ドラクエと同じホールでした☆
(JOKER'S WILD/東2/M-03b)
わーいvvvちかーいvvv
夏は西と東でしたからね…ちょっと覚悟してたんですが…。
同じホールなら買い物行くのも楽だわ〜vvv嬉しいvvv

いや、人様んちにお邪魔させて貰う分際で、近いも遠いもないんですがね……(爆)
(ありがとね!流ちゃん!って、ここ見てないと思うけど…)

今日か明日、トップ絵とかオフライン情報とか、変えたいなと思います〜☆はい。
 
 
 
07 (Mon) Nov 2005 [no.111]
 
 
お兄ちゃんのボク。12



「ま、マルチェロ様が!!!」
「今後、ククールに傷を付けた者は、切り刻んで畑の肥料にすると仰ったぞっ!」

バタバタバタと、騎士達の詰め所へ駆け込んできた騎士A&Bに、その場にいた全員が一斉に注目する。
「ホントか?!じゃ、噂はやっぱり?!」
「うわーっ、何だよ、マルチェロ様普段はククールのこといびってる風だったクセに、やっぱアレって可愛い子イジメかよー!」
室内のあちこちであがる、ワーだのウーだのといった叫び。
それは、どんどんと人を集め、あっと言う間に部屋には入りきれないほどの騎士達が集ってしまった。
騎士AとBは、自分たちの聞いた事をそれぞれ皆に伝える。

「何と!マルチェロ様がククールの髪を洗ってやったんだぞ!」

「マルチェロ様は、それはお優しい様子でな『そんな不安そうな顔をすることはない』とか仰せになって…それからそのまま!」

「漏れ聞こえてくるククールの声がな〜、まあ、悩ましいの悩ましくないのって!」

「で、『覚えておけ』だもんな〜、いやぁ、あれ程にお怒りの声は我々であっても今までに聞いたことがないな…」

AとBとが話をする度に、至る所で上がる歓声や呻き…。
そして、それが一通り済むと、騎士Aがテーブルの上に登り、オホンと一つ咳をした。


「聞け!諸君!今宵はマルチェロ様が本懐を遂げる大切な日だーっ!」

オーッ!

「我々は、一丸となってマルチェロ様を応援し、何としてもコレを成就させねばならん!」

オーッ!

「その為、本日はこれより後、団長室への出入りを禁止する!諸問題は我々の間で解決し、決してマルチェロ様を煩わせることのないように!」

オーッ!

「大浴場へは、現在騎士団員Cが残っているが、奴が戻るまでの間、付近への立ち入りは禁止する!!」

ウオーッ!

「全ては、マルチェロ様のためにーーーっ!」

ウオオオオオーーーーーッ!!!


宵闇の訪れた修道院に、騎士団員達の叫びが轟いて……。
そして、マルチェロ本人が見たら、恐らく全員をクビにしそうなその集会(?)は、いつまでも盛り上がっているのだった…(爆)




さて。
その頃、大浴場では……。


兄貴…さっきの本心なのかな…。

湯船に浸かったククールが、ドキドキと胸をときめかせていた。
兄は少し離れた場所で、同じように湯に浸かっている。
それをチラリと見やって…。
湯煙の中、マルチェロはとてもくつろいでいるように見え、いつもとは違うその雰囲気に、また鼓動が跳ねた。

そういや…怒ってない顔とかって……あんま見た事ねーんだよな…。
つか、この状況だと、顔ってゆーか…何てゆーか……いやあの、意識する方がおかしーんだけど……。
男だし!兄貴だし!そーだよ!実の兄貴だっつの!!!

ああ…でも……でもさ、こんなん、ちょーレアなんだもん……。

ラフな洗い髪など、見たことがなかったから……。
険しさも鋭さもない、何処か、気の抜けているような…そんな兄を目にする事はなかったから……。
自分は今、とても珍しいものを見ているのだ、と。
こんなチャンスはもうナイかもしれない、と…。
そう思うと、視線は自然と兄へ向いて……。
そのまま、ついつい、湯の中に沈んでいる身体へと目線が降りかけ、ハッとして目を逸らす。

いやいやいや、そんなん見るオレってどうよ!
あーでもでも、何かマジでくつろがれてるんですけど…。
オレはこんなにドキドキなのに…!

兄貴…さっきのってホント?って……聞きたいな〜〜…。

あー、でも、聞いて素直に教えてくれるタマじゃねーし…。
でも、でもさ、キス…したりしたし……。
結構、ホントだったりとかすんじゃねーの…?
……って!
い、いや!期待しちゃダメだ!
んなの、あるはずナイじゃん、ぜってーナイ!ナイナイ!!!!

ふいに、クスリと小さな笑みが聞こえた。
すぐ、近くで……。
「…さっきから…何を1人で百面相しているのかね?」
「っ!」
ハッとして顔を上げれば、マルチェロがスグ側にいた。
身体が触れそうな程、近くに…。
「面白いな、お前は…」
「あ、あ、兄貴…!」
間近で微笑まれ、かあっと頬に赤みが増す。
どんな顔をすればいいのか分からなくて、いっそ水の中に潜ってしまいたい気分になどなっていると…。

「さて。今日は特別に、お前に選ばせてやろう」

マルチェロが唐突にそう言った。
「え?」
当然、何を言っているのか分からず、きょとんとするククール。
そんな弟に、兄は至って涼しい顔で…。

「ここと、私の部屋と…どちらがいいかね?」

「エ…」

え?
え????
えーーーーーーーーーっっっ???

サラリと訊ねられたその内容に、ハッキリ何の為にとは言われていないながらもその意味するところを知って…。
ククールは目も口も大きく大きく開けたまま、兄を凝視した。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

こんな部下達もどうなのよ…と思いつつ…。。。
スミマセン、悪ノリでついつい遊んじゃってます(笑)

後半はククールの乙女な心情だけで終わってますね…。
明日はどうなる事やら…と思いつつ、明日は鞴祭なので!
もしかするとSS更新出来ないかもしれませんです〜。

今日の内に出来るだけ進めておこう…!
(今日は大きな仕事の打合せで、上司はみんな会議室。お陰でのんびり遊んでおります☆)
 
 
 
06 (Sun) Nov 2005 [no.110]
 
 
いつか天使の降る空へ・4

 
 
「おかえりなさい!兄貴!」
マルチェロがついたてから顔を覗かせると、ククールが笑顔で飛び出してきた。
「…いい子にしていたかね?」
訊ねれば、笑顔のままウンと頷く。
「ちゃんとお言いつけの通りにおとなしく、いい子にしてましたよ!」
キラキラと輝く瞳には『ごはん』の三文字。
マルチェロは苦笑すると、来たまえと短く告げ、ついたての向こうへ身を翻した。
ククールが後について公務用スペースの方へ行くと、デスクの上には二人分の食事が乗っていて…。
「ああ、そっちのイスを持って来い」
「うん!」
ククールは私室スペースの方のイスを取ってくると、兄のデスクの前に置いた。
兄が席に着くのを見て、自分もイスに腰掛ける。
背中の羽が少し邪魔だったが、それでも座るのに困りはしなかった。
「…父よ……」
ククールが席に落ち着くと始まる食前の祈り。
兄がするのと同じように手を合わせ、目を閉じ、頭を垂れて…。
静かに流れる祈りの言葉に耳を澄ませる。
落ち着きのある低いバリトンは、けれどミサや何かの折に聞くのとは違い、柔らかで静かで…。
聞いている内に何やら胸がドキドキするのを感じ、ククールはこっそりと息を吐いた。

思えば、兄弟差し向かいで食事をするなど、初めての事かも知れない。

コレも羽が生えたおかげだよな〜!
…って、それもどうかとは思うけど…!
でも、正直…嬉しいな……とか…。

「どうした?食わんのか?」
かああと赤くなった顔を隠すように俯けば、それを不思議に思ったのか、兄はそう訊ねてきて…。
「あ、いえ!」
ククールは慌てて目の前のサラダを口に運ぶ。
「…好き嫌いが多いのではないか?だからいつまで経ってもウェイトがつかんのだろう」
「そ、そんなことねぇよ!いつもちゃんと残さないで食ってます…!」
「本当かね?」
「ほんと!」
探るような瞳に返す、むくれたような顔。
むうっと唇を尖らせるククールに、マルチェロは「ならいいが」と頷きパンをちぎった。
ククールはレタスとキュウリを呑み込むと、真っ赤なトマトにフォークを刺す。
それを口に運んで…。
「…何だよ?」
兄の視線に気づいた。
「いいや…」
マルチェロは静かに呟き、再び皿へと視線を戻す。

今や近隣の諸国にまで、広く知られているククールの美しさ。

初めは、ミサでその姿を見初めた信者の貴族であった。

『今度の祈祷には是非、あの赤い制服の騎士殿にお願いしたいのだが…』

そう頼まれた時の驚き。
即答できずに空いた間を、貴族は勝手に誤解して…。

『ああ、勿論、便宜を図って貰えるなら、それなりの事は考えているよ』

そして、提示された金額は、目を瞠るほどのものだった。
それでも……。
それでも、その時…マルチェロはその話を断ったのだ。
弟の貞操の危機を感じて…というワケでは、残念ながらない。

彼には分かったのだ。

弟の『価値』が………。

幼い頃より、この弟の容姿が整い過ぎていることには気づいていた。
だって最初に出会った時…、本当に天使のようだと思ったのだから…。
そう、何て可愛い子供だろう、と。

そして、それは年を追うごとに…色を加え、艶を加え………。
憎んでいるはずのこの自分ですら…時に惑いを感じる程に…。

だからこそ、彼には自信があった。
ククールの価値は、安易に貶めるような真似をしていいものではないと…。

そして、そんなマルチェロの思惑の通りといったところか…。
ククールという騎士の噂は、マルチェロが貴族の申し出を断ったことに端を発して…。
噂は噂を呼び、その姿を見たか見ないか、祈祷に呼べたか呼べないか、今日は何処ぞの貴族の屋敷に行った、先月は何処其処の国の式典へと参列したと…、様々に囁かれるようになり、そしてまた、マルチェロがフィルターのように祈祷先を選り分けていることが、貴族達の好奇心や選民意識を擽って…どんどんとその価値を高め、値を上げていった…。

「……フン、お前に純白の羽とはな…」

「え?兄貴?」
ク…と喉を鳴らして笑った兄に、ククールは戸惑いの視線を投げた。
カチャン、と皿に当たったフォークが小さな音を立てる。
いつの間にか、どちらの皿の上も綺麗に片づいていた。
「…美味しかったかね…?」
「…え?う、うん…」
訊ねられた内容に戸惑いながら、それでもククールはコクコクと頷く。
本当は、緊張して味などサッパリ分からなかったのだが…。
「ほら!ちゃんと、残さないで食べた、でしょ?」
「ああ、そうだな…」
何でこんな会話を交わしているのだろう…。
未だかつて、こんな普通過ぎる言葉を交わしたことなど、ただの一度も有りはしなかったというのに……。
今の自分たちの状況に、ククールが軽い目眩を覚えていると…、マルチェロがおもむろに席を立った。
そして、コツコツとデスクを避け、ククールの元へ行く。
「……あにき?」
何となく、ククールも席を立った。
そして、立ち上がっても尚高い兄の顔を見上げる。

何かがおかしい。
何かが、いつもと違う。
兄の、何かが……。

不安と戸惑いに満ちたククールの顔を、マルチェロは静かに見つめた。
早朝の空の様に澄んだ薄青の瞳に、自分の顔がハッキリと映っている。
自分の顔だけが…。
それにニイッと笑って…。

「…お前は…何処か…行ってみたい所はあるかね?」

マルチェロは優しいとさえ思える声音で訊ねた。
「え…?」
「何処でもいい。何処か、行ってみたいと思う場所はあるか?」
「…な、何で…そんなこと聞くんですか…?」
ドクドクと、急激に高鳴る心臓。
頭の中では警鐘が鳴り響く。
兄がいつもと違う様子で、いつもと変わったことを言うときは要注意なのだ。
それはいつだって、酷く傷つけられる前触れだったのだから…。
「何だ、怯えることはないだろう?聞いてみただけだと言うのに…」
クスと笑って、マルチェロはククールの頬にそっと触れた。
温もりが優しく頬を撫で、緑の瞳が微笑を湛えて見つめている。

オレを…追い出すんだ……ここから…!

ククールは唐突にその事を悟って…。
「オレ、何処にも行きたくないです!ここにいたい!」
マルチェロの手をハシッと掴むと、そう叫んだ。
「…おや、意外な言葉だな…」
いつも抜け出してばかりのお前が…と、冷たい笑みを乗せたままの唇が、囁くように呟く。
ククールは夢中で首を振った。
「こ、これからは抜け出したりしないからっ!」
「…何度も聞いたセリフだな…」
「今度は本当にっ!本当だからっ!だから、兄貴、お願い…!追い出さないでっ!」
ここから追い出さないでと、必死に縋り付く弟…。
涙のにじむその瞳を見つめて…。
マルチェロはゾクゾクと沸き上がる何かを感じていた。

「追い出すなどと…誰も言ってはいないだろう?少し落ち着きたまえ、ククール」

クスと笑い、少し声と口調とを和らげる。
「あに……いえ、団長…」
「ククール、美しき我が弟…」
言い直したククールに、優しく頷いて…。
マルチェロはもう片方の手でそっと銀の頭を撫でた。

「追い出すわけではない。ただ、お前に私の使いとして行って欲しい所があると、そう思っているだけなのだよ?いつもの祈祷と大して変わりがあるわけではない」

縋るように見上げた瞳が涙に浸食される。
歪み、揺れる兄の顔を、それでも見つめて…ククールは唇を噛み締めた。

絶対、違う。
いつもの…祈祷に行くのとは違う。
こんな風に優しく言うなんて…今までなかった。
きっと…すごく遠いところへ……行かされるんだ…。

「お前の美しさは広く知られているからな…。もしあるのならと…希望を聞いてみたのだが…」
「…希望、なんて…っ」
ククールがぎゅっと目を瞑り、左右に頭を振る。
するとその拍子に、小さな涙の粒が、ぱたぱたと左右に散った。
それを眺めながら…。
「そうか、特にないようならば……」
マルチェロは何もなかったかのように言葉を続ける。
フルフルと振られるククールの頭。
「そうだな、サヴェッラの法王様の館を見たことはなかろう?空中に浮かんでいるのだ。あれこそが神の奇跡……お前があの館へと大空を舞う姿はさぞ美しいだろうな、ククール?」
頭を撫でていた指先が、今度は羽を撫でる。
ククールは大きくしゃくり上げた。

兄は自分を法王様へ献上する気なのだ、と……それを察して……。

「あ…あにき……オレ、ここが、いい…っ!ここに、居させて下さい…」
ただ、必死に…。
自分の手を掴んだままのククールの手を、マルチェロは優しく握る。

「法王様は小鳥がお好きなのだそうだ」

「あにき…っ」
「背に羽を頂いたお前なら、さぞや可愛がって頂けるだろう…」
「あにきっ、オレ、言うこと聞くから、ちゃんと…っ!何でもするから、他に行くのだけは…っ」
ボロボロと涙をこぼし、必死に訴えるククールを見つめて…。
「…何故いやがる?」
マルチェロは理解できないというように眉根を寄せた。
「ここにいるより余程幸せだと思うがな…待遇もいいだろう。法王様の寵愛を受け、何不自由なく暮らせるのだぞ?」
「…やだ、やだよ…!なんで…っ?」
フルフルと、何度も左右に振られる頭。
「何で急にそんなこと…っ?!羽が生えたから?オレのこと、やっぱり気味が悪くなったの?」
「気味が悪い?いいや、その逆だ、ククール…」
縋り付くククールにマルチェロはそう囁くと、優しいキスを落とした。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

とゆことで、ぎりぎりダメでしたが(爆)天使話の続きですー☆

てかね、えー。
冬コミ、落選いたしましたーーー!(爆)

まあ、ここんトコずっと、そろそろダメだろうと思っていたので。
ええ、ジャンルの変わった今回は、やっぱり落ち時だったんでございましょう。
ずっと受かってたもの。
いい加減、ダメでも当然って感じだよ(溜息)
とゆことで、諦めは結構スッパリ付いているものの、やっぱ少しヤサグレ気味です〜。
ちぇ〜。
 
 
 
04 (Fri) Nov 2005 [no.109]
 
 
お兄ちゃんのボク。11



成る程、何かに似ていると思ったが…。
そうか…『人魚』に似ているのだな………。

長い髪で胸元が隠れているククールを見つめ、マルチェロはふとそう思った。
子供の頃に絵本の挿し絵で見た『人魚姫』…。
今のククールはそれに似ている。

まあ、普通…男に抱くイメージではないのだろうが…。

クスと笑えば、ククールが怪訝そうに眉根を寄せた。
澄んだ青い瞳が不安げに自分を映し、温かい大浴場の中、白い肌は上気して桜のようにほのかに色づいて…。
その美しさに成る程…と、感心さえ覚える。
今のククールからハッキリと感じるのは、紛れもない”色香”…。
惑わされる者が出るのも、十分に頷けることである。

さて…。
こうなってしまっては仕方がない、といった所か…。

己の中に生じる熱と衝動を冷静に見つめながら、マルチェロは胸の内でため息を付いた。
ドアの向こうには、ククールを運んできた聖堂騎士団員数名が様子を窺っている。
その事に気づいていたからこそ、マルチェロはすぐにククールを追い出すことをしなかったのだ。
今まで、数ある噂を肯定も否定もせずに放っておいたのは、噂があることでククールに気のある団員達を牽制できたからである。
つまり、ここでもし、何もせずにただククールを放り出せば、噂はガセだったと証明することになるわけで…。
ククールに気のある連中は、今後マルチェロに対し、気兼ねを感じる必要がなくなるのだ。
今回は連れ込まれたのが自分の元だったから良かったようなものの、同じ様にして何処か別の場所へ連れ込まれる危険性があるということは、マルチェロにとって望ましい展開ではなかった。

「……時、か…」

所有者が誰か…ハッキリと示すべき時が来たか…。

「フン…いいだろう…」
ふ…と。
兄の唇に笑みが浮かんだ。
「え?何が…?」
きょとんとするククールの頭を、マルチェロは笑みを浮かべたままの表情でそっと撫でる。
「そんな不安そうな顔をすることはない」

優しげな微笑み。
優しげな声と言葉。
そして、優しげな仕草。

「え……あの、兄貴…?」
緑の瞳が覗き込んでくるのを戸惑いながら見上げていれば、そっと頬に手が添えられて…。

えっと……。
これって…もしかしてひょっとして、な展開…?

ドキドキと高鳴る胸。
兄の瞳から目が離せなくなり、何だか吸い込まれるような気さえしてきて、クラクラと…。

…でも、何か、もー兄貴が優しくしてくれるんだったら、いいかも…何でも……とか…。
つか…、やっぱ、格好いいよな…兄貴……(ぽ)

なんて…ククールは、あっさりうっかりシッカリと、兄のカリスマに当てられてしまう。
ぽや〜んと魅了されている様子の弟に、マルチェロは静かな動作で唇を落とした。
ハッと一瞬見開かれた薄水の瞳に笑いかけ、もう一度…。
シャワーで濡れたククールの唇に、ちゅっと軽くマルチェロの唇が重なり、それは数度繰り返されて…。
温かで柔らかな唇が、そっと触れ合う度、ドキドキと鼓動が跳ねる。
「あにき…」

もし、もしも、自分がマルチェロと噂のような関係になる事があったとして………。

それでも、それは絶対に、普通の恋人同士のような、甘い関係にはなり得ないとククールは思っていた。
優しい行為であるはずがないと。
強いられ、奪われるだけの行為だろうと…。

こんな風に優しく口付けられる事があるなどとは、夢にも思わなくて……。

「ん、あに……っ、ん…んん…っ」
何か言いかけたククールの言葉を、深く合わさった唇が呑み込んで、その口付けは質を変え、深くなり、熱くなり…。
絡まり合う舌にゾクゾクと、背筋を震えが走り抜ける。

や…、あの、ちょっと……。
気持ちいい…んです…けど…。

「ふ…ぁ…ん…っ」
吐息混じりの自分の声は、鼻にかかって甘く耳に響いた。
頼りなくなってくる足下。
どこかに縋りたくなるが、目の前のマルチェロに手を伸ばしてしまう程には、まだ正気を失ってはいないから…。
「あ、にき…」
ダメと言うように手で軽く兄の身体を押し、ククールはキスから逃れた。
「は…っ、あ…」
けれど、大きく息を付いた途端、かくんと折れる膝。
そのままその場へ崩れ落ちそうになったククールを、マルチェロの腕がすくい上げるように抱き留めて…。
「あ…っ」
「大丈夫かね?」
クスと微かな笑みを浮かべ、兄は何とも余裕な表情でククールを見つめた。
涼しげな緑の瞳に、かあっとククールの頬が熱くなる。
「だ、大丈夫、です!」
俯きながら言えば、マルチェロはその耳元に唇を寄せて…。
「…湯船に入っていろ」
小さく囁いた。
それから、少し身を離して大きく声を上げる。

「これは…ロープの痕か…?」

「え?」
兄の突然の言葉に驚いて、視線を上げる。
「ああ、こっちにもついているではないか!痛いか?可哀想に…」

か、可哀想?????

「え?あ、あの…えと…?」
ポカンとしてマジマジと顔を見つめるが、マルチェロはあっさりとククールを放すと、ツカツカと大浴場の入り口へ突き進んでいった。
そして、バンッとドアを開ける。
その向こうに、団員達の姿があったのかなかったのか…ククールには確認出来なかったが、マルチェロはグルリと脱衣所を見回して…。

「…覚えておけ…」

背筋が凍るような声でそう言った。

「今後、アレに髪一筋の傷でも付けてみろ……必ずやその犯人を見つけだし、切り刻んで畑の養分にしてくれる」

そこに満ちる明確な怒気。
それは、その言葉が冗談やただの脅しではない事を物語り、暖かいはずの大浴場の室温が一気に零下まで下がった様な気さえして……。
けれど、ククールは別の意味からその言葉に衝撃を受け、呆然とその場に立ちつくしていた。

し……知らなかった…。
兄貴…ホントはオレの事…大切に思ってくれてたり…してた……とか?
いや、そんな、まさか……。
ウソ…だよ、きっと。
何かあるんだ…裏が…多分……。

兄の見せた怒りに、嬉しさがジワリと胸にこみ上げる。
だが、それ以上に『信じられない』と、その気持ちが大きくて…。
素直に信じて、嬉しいと喜んでしまうのは、何処か怖い気がして……。

でも……、オレに傷つけたら許さないって……言ってくれた……。

「あにき…」
呼び掛ければ、振り返って…。
「何だ、風呂に入っていなかったのか?風邪を引くぞ」
マルチェロはそう声を掛けてくれた。

−−−−−−−−−−−−−−−−

魅惑の眼差しだっけ…?
目がビカーって光るヤツ。
あれ、お兄ちゃん使ったらはまりすぎてスゴイ笑えると思うんだけど、どうかしらとふと思ってしまったり。
(てか、すごくダメージ受けそうじゃない??攻撃魔法って感じだよね、魅惑の眼差しとゆーより目からビームっぽい)
お兄ちゃんのカリスマ以外のスキルって一体何なのさー?!と、時々気になったりしますが、勉強熱心なので、幅広く手を出してみたりしたってとこなのでしょうか…。
でもムラがあんのかな…。。。
回復は普通完璧に抑えなきゃと思うのですが…ねえ?
キアリーとかキアリクとかも使えなさそうな気がするのは気のせい???

マルチェロ「人には役割というものがあるのだ。私には回復などを行う役が回ってこなかっただけの事。必要がないから覚えなかったのだ」 ←出来ないのではないと言いたい。
ククール「まーまー、これからはオレが専属で回復役してあげるからさ♪♪」

割れ鍋に綴じ蓋的?


ツッコミ入れたい部分は山程なんですが、もう敢えて流す方向で…… ←今日のSSに関して。
 
 
 
03 (Thr) Nov 2005 [no.108]
 
 
お兄ちゃんのボク。10


 
何か…落ち着いてみると…すごいこと…かも……。

ザバーッと水を被って。
ハーッと息をつくと、何だかふいにそんな実感が湧いてくる。
兄弟であっても、ふれ合いなんてものは全くと言っていい程にない、自分とマルチェロ。
一緒にお風呂に入るなど、幼い頃に一度か二度あったくらいだ。
それも、沢山の修道士見習いの子供達と一緒のことで…。

二人だけで入った事など、一度もないのだというのに……。

「…ふう……」
曇っている鏡を手で擦り、何だか落ち着かなくて溜息が漏れる。
ぼやけた中に映る自分の顔を見ながらその反射を利用して、ククールはソロリとマルチェロの様子を盗み見た。
「っ!」
が、視線を向ければ、兄もまたこちらを見ている所で…。
バチッと、視線があったと思った瞬間、電気でも流れたかのように身が竦んでしまう。
ククールは驚き慌てふためいて顔を俯かせた。

な、何だよ何だよ!
何で見てんだよっ!
だーーっ、あーーっ、ビビッたーーーーー!!!!

バクバクバクと騒ぐ心臓。
シャワーのコックをひねり、勢いよく吹き出したお湯を頭から被る。
ぎゅううっと瞑った瞳。
長く真っ直ぐな銀の髪が、水の流れにユラユラと揺れて…。
顔の前…壁のように流れて降りた。
顔を隠してくれるそれに、何だかホッとして息をつく。
ククールは手を伸ばしてシャワーを止め、更に手探りでシャンプーを取った。
そして、そのまま髪を洗おうとして…。

「…お前は…本当に細いな……」

ふいに、声が聞こえた。
と思った次の瞬間、背中におかれる手の感触。
「あっ、兄貴?!」
ギョギョッとして、思わずその場に固まるククール。
いつの間にこんなに近くに来たのかと…ただ驚いて。
大きく見開かれた青い瞳に、マルチェロはクスッと小さく笑った。

「そう怯えるな。どら、私が洗ってやろう」

「は?」
ぽかーんと、大きく口が開く。
聞き間違いかとも思うが、そう思っている内にも、手からシャンプーの瓶が取り上げられた。

ワタシ・ガ・アラッテ・ヤロウ……………?

言われた言葉がひとつひとつ句切られながら、ゆっくりと脳へ浸透する。
目も口も大きく開けたまま。
鏡の中に映るマルチェロの動作を、ただただ夢でも見ているような気持ちで見つめて…。

誰が?!何を?!誰を?!何処を?!
ちょ…っ、マジ、何だってーーーーーーー?!?!?!
ウソだろウソだろ、オイーー!!!

ホントに?ホントになのか?と、頭の中はそればかり。
パニックを起こして倒れそうな気分になりながら、それでもふわりんと香るシャンプーの香りなんかはちゃんと分かって…。
そうこうしている内に、ワシャワシャと柔らかな泡が髪を包み込んだ。

が、が、がーーーーん!!!

て…天国のオカアサン、事件です!
大変です!天変地異です!
兄貴が、兄貴がオレの髪を洗ってくれたりしています!
しかも、痛くしないで…ちゃんと…。
ボクはもう直、お側へ行く事になるのかもしれません…。
きっとそうだ…オレ死んじゃうんだ〜!
てか、じゃなかったら夢だ…そうだ!夢だ!きっと夢に違いない…!

だってこんなコトって、絶対絶対絶対、ア・リ・エ・ナーーーイ!!!!

「…ククール?どうしかしたのか?」
「えっ?う、ううん!ど、どうもしないデス!」
このあまりにも信じがたい出来事に、ククールが必死で現実の否定をしていると、ふいにかけられる、優しい声…。
ククールは慌ててブンブンと頭を振った。
「バカ、頭を振るヤツがあるか!ほら、泡が目に入るぞ」
「あ、は、はい!ゴメンナサイ!」
ぎゅーーーと目を瞑る。
「流すぞ、目を開けるなよ?」
「あい!」
まるで子供に言うような言葉。
マルチェロはシャワーの湯で泡を洗い流しながら、優しく手で髪を梳く。

な、何…?
これは、何?何事????
兄貴に何かが乗り移ってるとか、ニセモノだとか、魔法とか薬とか何かで頭おかしくなってるとか…、そんなん?

「ククール、怖がらなくていい」

「兄貴…」
顔にかかる髪を、そっと除けてくれる手の感触。
ククールはドキドキしながら瞳を開けた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

未来SS(笑)
とゆことで、同じ日に上下表示は画面送るのが面倒なので、明日の日付で更新★(書いてる今は11/2であります)
明日はSS更新ナイって事で!
多分ナイ…多分…(あったら意味ないなぁ…)

今日はせっせと、M字ハゲとか、マルチェロとか、ムヒョとか、お友達のリヴ達にエサを盛り周り。
(ちなみに、あたしが配って回るのは殆どフサです。フサ切れた時は、その子の色に合わせた虫を配るようにしてます)
みんなシッカリ生きろよ!と思いつつ、頭の中はリヴ本ネタでいっぱい。
M字ハゲもマルチェロも、飼い主さんとは全く面識がなく、掲示板で挨拶交わした程度なんですが、頭の中ではもうシッカリ擬人化されている始末……。。。
お兄様なリヴ達の元へせっせと通い詰める健気なkukurunの姿に、勝手に和んだりしております☆

『兄貴!おはよー!朝ご飯何にする?フサムシ?ルリセンチコガネ?セスジスズメなんかもあるけど…ケセパにする?』
『………』
『うーん、ストレス溜まってるからやっぱフサムシだな♪はい、兄貴v食べさせてあげる?』

(ー'`ー;) vv(^▽^)♪

kukurunってばラブラブだねぇ〜。
もういっそ子供とか生まれればいいのにね…なんて、ちょっと恐ろしいことを考えてみたりしてな…(笑) ←いや、笑えない笑えない…

 
 
 
02 (Wed) Nov 2005 [no.107]
 
 
お兄ちゃんのボク。9



カポーーーン。

広い広い大浴場に、何やら軽い音が響いて…。
もうもうとけぶる湯煙。
マルチェロは広々とした洗い場で、汗を流しているところだった。
熱い湯を被れば、自然にフーッと息が漏れる。
普段、仕事が立て込んでいる時はシャワーで済ませてしまうことの多い彼であるが、この日は手が空いていたので…。
久々にゆっくりと湯に浸かれそうだな、とゆったりした気持ちになって…。
ザバーッと頭からシャワーの湯を浴びた時だった。

ガラガラ☆

大浴場の引き戸が、勢いよく開けられて…。

ドシャ☆

続いて響く、何かの床に落ちる音。
そして、数人の駆けて行く足音…。
その合間に、
「いでっ!ちょっ!マジで、バッ…!コレ解けよ!」
聞こえてきたのは、間違えようのないククールの声だった。

「……………」

ぽたりぽたりと、髪から滴る水。
マルチェロは半ば唖然として、風呂場のタイルの上に投げ捨てられた(どう見てもこの表現がピタリとはまっている)ククールを見つめた。
ククールは手と足を縛られ、制服のままで転がっている。

「……酷い姿だな…」

流石に混乱を覚えながらそう声をかければ、ククールは憮然とした顔を上げてマルチェロを見た。

『大丈夫か?』は有り得なくても、せめて『どうした』とかさー、『どういうことだ?』位は言ってもいーんじゃねーか?
誰のせいでこんな目に遭ってると思ってんだ!
ぜんぶぜーーーんぶ、兄貴が悪いんだかんな!

「…お呼びだそうですね、団長殿」
ヤサグレた気持ちのまま、イヤミを込めてそう言うが、
「ここに呼んだ覚えはないがな」
マルチェロはケロリとそれを受け流す。
「オレもそう言ったんですけどねぇ…運んで下さった先輩方が、一刻も早くと仰いまして……と〜っても不本意なんですが、こんな所にお邪魔することになっちまいました」
「…ほう」
ククールの言葉を顔色も変えずに聞いて…。
マルチェロは額に張り付いた前髪を掻き上げる。
裸だというのに何処を隠すでもなく、悠然と構えたまま、いつもと変わらぬ様子の兄。
それを見上げて……。

…もうやだ。
っもーーー、やだ!
何なんだよ、コレ。

ククールは段々悲しくなってきてしまった。
兄が自分を見下ろしている視線には、呆れたような色が混ざっている。
濡れたタイルの上に、縛られて転がされている自分。
制服には水が滲み、長い髪も水に浸かって……。
何だってこんな目に遭わなくてはならないのか、と…。
そう思ったら、不覚にもジワジワと涙が滲んできてしまった。
ぎゅっと唇を噛み、視線を逸らす。
兄の前でだけは、絶対に泣いた顔など見せたくない。
いつも、そう思っていたし、いつだって頑張って耐えてきた。
どんなにきつくつらく当たられても、我慢して堪えてきたのだ。
だが、今日はもう何だか悲しくて、情けなくて……堪え切れそうになかった。

何だよ、何だよ、みんなして…。
オレ、兄貴に嫌われてんのにさ、変な誤解しやがってさ…。
勝手にこんなトコ放り込みやがってさ…。
どうせ、兄貴はこんなことになったのもオレが悪いってゆーんだろうし…。
もう、水浸みて冷てーし…何なんだよもーーーっ!

何とか涙を抑えようと、瞳をつぶって心を落ち着かせようと思うのだが、
心に浮かぶのはこの状況の不条理さ。
口には出さない不満を、胸の内で延々こぼしていると、

「風呂に入る時は服は脱いでくるものだ…」

ふいに、すぐ近くで兄の声がした。
見れば、マルチェロがすぐ側まで来て自分を見下ろしている。
「…脱ぎたくても脱げる状況じゃねーじゃん!」
オレ手品師じゃねーもん!と、もはや丁寧な言葉遣いなどする気も起きなくて…。
言いながら声が震えてしまうのを、もうどうにも出来ない。
ワナワナと震える唇。
マルチェロは溜息を付くと、その場に膝を付いた。
そして、無言のままククールの身体を起こすと、腕を縛っているロープをほどいてやる。
「………」
大きな手が、自分の手に触れて…。
長い指が、ロープの縛めから解放してくれた。
それを背後に感じて……。

「………う〜……」

食いしばった歯の間から、呻きが漏れてしまった。
俯いた顔から、ぽたぽたと涙が落ちる。
一瞬、場に満ちる、何とも気まずいような沈黙。
「……足は自分で解け」
「…っ…ぅ…っ……」
短く言われたのに頷きながら…。
けれど、一旦堰を切った涙は止まらずに、後から後から溢れては落ち、床を濡らしている水に溶け消えて…。
「………」
マルチェロは何かを言いかけてやめ、そのままククールの側を離れた。

「…早く……服を脱いで、風呂に入れ」

少し遠くなった声が、そう言う。
イスに座る音。
シャワーをひねる音。
そして続く、シャワーから吹き出し、床にあたって跳ねる水音……。
聞こえてくるそんな音に耳をすませながら、ククールは「うん」と小さく頷いた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

下の子に泣かれると、上の子ってのはどうにも弱いものです。

可愛い可愛いは憎いの裏とゆー言葉がありますが、お兄ちゃんは逆がありそう、つか、あったらいいなぁで!
(『可愛い可愛いは憎いの裏』 意味 ; 心の中では憎んでいながら、口先で盛んにかわいいと言うこと。また、過度の愛情は、憎悪に変わりやすいということ /大辞泉)

でもさ、絶対憎からず思ってるよね〜。
だってククたん、可愛すぎだもん!!!!(力説)

しかし、何か進むの早いな………。。。
今日も2つアップで行けそうですよ〜!
明日休みだし、調度いいかな…とか。
 
 
 
01 (Tue) Nov 2005 [no.106]
 
 
お兄ちゃんのボク。8

 
■・・・・・・ 注 意 ・・・・・・■

同日の2本アップは、後の方が上に表示されます。本日、7と8をアップしてますので、7を読んでない方は先に画面を下へ送ってみて下さいませ★(ここがちょっと不便なんだよね……)

■・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・■

 
 
「んだよ!離せよっ!チクショー…何だってんだ、てめーら!」

ジタバタジタバタと必死に藻掻いて…。
ククールは自分を押さえ込んでいる騎士達を睨み付けた。
「ククール、暴れてもムダだぞ。おとなしくしろ」
「そうそう、オレ達は何もしねーよ。オレ達は」
「マルチェロ様のお言いつけだもんな〜」
「ウソつけ!」
騎士ABCがニヤニヤと笑って言うのに、ククールが吼える。

「マルチェロのヤツが、わざわざオレなんか捕まえさせるワケねーだろ!」

そう…。
マルチェロがムダな事はしないのをククールはよく知っている。
そして、マルチェロもまた、ククールの事をよく知っているから…。

ククールには他に行く場所がないのだ。

放っておいてもいずれ必ず戻ってくると分かっているからこそ、行動範囲の制限をしたり、部下に探させたり、連れ戻させたりなんてことはしない。

「いや、今回は捕獲次第連行しろだと」
「……ウソくせぇ…」
肩を竦めた騎士Cに、ククールは唇を尖らせた。
その明らかな不信の眼差しに、騎士Aが何やら温かな笑みを浮かべてククールの肩を叩く。
「まあまあ、マルチェロ様も気にされておられるのだろう」
「ああ、昨日のお前のただならぬ様子……さぞ辛辣な事を言われたのだろう?」
「だがな、きっとそれは言葉のアヤというか…まあ、何だ。愛情の裏返しというヤツだ」
「そうそう、気にするな。マルチェロ様もきっと言い過ぎたと思っておられるのだ」
宥めるような口調。
何もかも分かっていると言わんばかりの笑み。
けれど、言っている事は全くの見当違いで…。
ククールがフルフルと身を震わせる。

「だーかーらーっ!オレとアイツはそんなんじゃねえって!」

「今更隠す事もないだろう、ククール」

力一杯叫んだククールに、けれど、それでも、騎士Aは大真面目な顔でそう言った。
全くと言っていい程…小指の爪の先程も、話を聞く気など持ってはいないらしい。
「ああ、そうだ。オレ達は皆、お前とマルチェロ様を全力でバックアップするつもりだぞ」
「ば……ばっかじゃねぇのっ!」
キラッキラと目を輝かせる騎士Cの言葉に、カアアと顔が赤く染まる。
「んなの…、第一、アイツから頼まれたわけでもねーんだろーが…」
ぶつぶつと言えば、騎士達はフッと鼻で笑って……。

「団長の心中をお察しし、サポートするのが我らの務め!」
「団長の悩みは我らが悩み!」
「団長の幸せは我がマイエラ修道院の幸せに繋がるのだ!」

縛ったままのククールを地面に降ろし、何故か中空に顔を向け、ビシビシとポーズまで決めて口々に言う騎士達。

…………アホだ、コイツら……。

ククールは冷たい地面を頬の下に感じながら、深い溜息をついた。

「あのな、盛り上がってるトコ、ホントに悪いんだけど……オレとマルチェロは、その…、何てゆーか…一回も、んなこたしてねーぞ?」

「そんなことが信じられるか!」
「あれだけ頻繁に、しかも長時間に渡って二人きりで…」
なあと顔を見合わせる騎士AとB。
Cがその横でフーンと唸った。
「いや…だが、ひょっとするとひょっとすることもあるかもしれんぞ?」
その目がキラーンと光る。
「ひょっとするも何もねーって!」
ジタバタ藻掻いて何とか身を起こそうとするククール。
Aが、ポンと手を叩いた。

「ああ、好物は後に取って置かれるタイプとか?」

「そういや、お好きなものは最後に食べられるな…」
「とすると、ククールに手を出す機会を窺っている…とか…」
騎士ABCはククールをじーっと見つめた。

「いや、ナイって。アイツ、ホントにオレのこと嫌いだから…」


もごもごと、言いながら自分で悲しくなるような内容を、それでも自分の身を守るために言わなければならないククール。
だが、騎士達はそれに取り合わなかった。
「成る程…ならば、その機会を作るのはどうであろうか?」
「おお!そういえば、もうすぐ団長の風呂の時間…」
「ほう、それは良さそうだな…」
にやぁーと広がる笑み…。

「なっ、何がいいんだよ?!冗談よせって!んなん、ぜってー殺される!ホント、マジ、マジで勘弁して下さい!先輩っ!お願いっ!」

いやーーっっ!と、必死で頼み込むククールを、満面の笑みで抱え上げて…。
一行の足はマイエラ修道院の大浴場へと向けられた。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

出過ぎた真似ってヤツなんですが。
団長の為とゆー大義名分で、行け行けGOGOだぜ!の騎士様達。
みんなでやれば怖くないも混ざって始末に負えない感じに。。。(苦笑)

さて、明日か明後日はお風呂エッチかな〜☆ ←楽しそう嬉しそう…
 
 
 
01 (Tue) Nov 2005 [no.105]
 
 
お兄ちゃんのボク。7



「…何だ?今日は随分お仲間が多いな…」


ドニの町に程近い丘の上に座ってぼんやりとしていたククールは、修道院の方からゾロゾロとやってくる騎士達の姿を見つけ、そう呟いた。
何かと厳しいマルチェロだが、修道院内の者達がドニの酒場へ出入りするのを禁止したりはしていない。
だが、それでも聖職者の端くれとしてか、ククールのように目を付けられては堪らないと思っている為か、皆あまり大っぴらに出向いたりはしないのだが…。

何かいい事でもあって、みんなにご褒美…とかだったりして?
いや、んな事ねーだろーけど……。

「…そろそろ…帰ろっかな…」
夕暮れに染まる空を見上げ、フウと溜息をつく。
修道院を出てから、酒場に行く気分にも、女の子と遊ぶ気分にもなれず、かといって戻る気にもなれなかったので…。
ククールはドニの町と修道院とが見える丘の上で、何やらぼんやりのんびりと時間を潰していたのだ。
今頃はもう、自分が訓練を抜け出した事が兄に伝わっているに違いない。

「…帰ったら……また説教だろうな…」

あーあ…と溜息をついて。
それでも…、怒られる方がいいとククールは思った。
昨日のように、何もせず、何もされず、ただひたすら…2時間もの間、じっと側に居るのに比べたら…と。
こんなに側にいるのに…と、どうしても思ってしまうのが辛い。

こんなに側にいるのに…どうしてオレを見てくれないの?
こんなに側にいるのに…どうして何も言ってくれないの?

そう思うと苦しくて悲しくて、堪らなくなる。
マルチェロはククールがまるでそこにいないかのように、仕事や読書をして…。

いっそのこと、マジでそーゆー関係とか強要されたりのがマシだよな。

「…なーんて……ウソだけど〜…」
そんな事をチラリと考え、ククールはかあと頬を染めた。

『……噂を…本当にして欲しいかね?』

そう言ったあの声が、耳から離れない。
あの時…もしかしたらほんの少しくらいは、兄にその気があっただろうか?
ポンと肩に置かれた手…。
あれがもし、離れることなく背を撫でて身体を辿っていたら……自分はどうしたのだろうか?
「…………」
ククールは伸ばしていた足を引き寄せると、その膝に顔を埋めた。
何とはなしに、溜息が漏れる。
バカみたいだと、苦い笑みが零れて…。
だってきっと、何も起こりはしない。
兄は自分になど触れてはくれないのだから…。

「…あーあ…。帰りたく…ねぇなー……」

悲しくなって、切なくなって、呻くようにそう呟くと…。
ザザザッと、草を踏みしめる数人の足音。

「そう言うわけにはいかんのだな、ククールよ!」
「見つけたぞ!我々と一緒に来て貰おう!」
「さあ、マルチェロ様がお待ちかねだ!」

わははははは★と、高笑いを響かせながら、聖堂騎士団員たちが現れた!


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

悪ノリ以外のナニモノでもなくなっている聖堂騎士団たちの登場。。。
書いてて楽しいんだもの〜。。。
(ククたんがお兄ちゃんとの関係について悩んでるのはもーっと楽しいですがね☆(爆))

てか、実はここまでは昨日書いてあったのだったり…。
もう少し先書いたらアップしようかな、って思ってたんですが、今日続き書いてみたら今の時点でも随分と長いようなので、ひとまず午前中はここまでのアップとゆことで。
今日はもう一回、5時頃更新あると思います☆
 
 
 
31 (Mon) Oct 2005 [no.104]
 
 
いつか天使の降る空へ・3

 
 
さて、どうすべきか…。

客人の相手をしながら、マルチェロは羽の生えたククールに思いを馳せていた。
といっても、先程途中で触れるのをやめたあの肢体について…ではない。
文字通り『天使』となったククールの、一番有効的な使い道…それを模索しているのである。

汚れなき威光を纏った神の御使い……。

そんな冠を被せてしまえば、教会関係者だけではなく、どの国の国王も、貴族も…皆がククールを欲しがるだろう。

マルチェロは満足げにほくそ笑んだ。
あの羽に意味があるのはククールの美しさがあってこそ…。
神の御使いなどという言葉にも負けぬ、あの容姿があるからこそだ。

…麗しき我が弟君………。

さて、どうしたものか…。
サザンビークかトロデーン辺りに顔を売るのもいいが…敵対する小国というのもあるな…。
教会関係者となれば……やはり、ニノ大司教あたりか?
いや、あの男には勿体ない……。
ニノは確かに重要な地位にいるが……所詮は小者…。
いっそ法皇様に直接献上してみるのもありかもしれんな…。

「……マルチェロ様?」

ついつい考えに耽ってしまったマルチェロに、客である公爵夫人が不思議そうな顔をしている。
それにハッとして…。
「これは失礼…少々気にかかることがありましてね…」
取り繕うように言えば、婦人はクスリと笑った。
「今日は随分とご機嫌がよろしいようですね、珍しいこと」
マルチェロはそうですかな?と肩を竦め、手元の書類にチラリと目を落とす。
「それで…、今度の祈祷会の件でしたね…」
「ええ、それで実は相談なのですけれど…次は是非、ククール様にお願いできないかしら?」
「ククールに…ですか…」
「ええ、とても人気があることはよく存じ上げておりますけれど…出来たら是非……」
「………」
考え込むように黙ったマルチェロの前で、見事な細工を施された扇子を広げ、夫人は艶やかに微笑む。
「勿論、それなりのご寄付はさせて頂きますわ。他に先約があるようでしたら、そちらより多くお出ししましょう。如何かしら?」
「さて、それは魅力的なお話ですな…」
マルチェロの緑の瞳が真っ直ぐに公爵夫人を捉える。

公爵家には今のところ悪い噂はないが……。
そこまでする意図は計りかねるな。
まあ、何にしても…安く見られては困る。

「悪い話ではないでしょう?迷う必要があるかしら?」
「…ご存じの通り、ククールの祈祷は大変人気がありましてね……祈祷の日時は来月の初めでしたか……」
フムと唸ったマルチェロに、夫人は眉を顰めた。
「どなたかの先約があって?」
「…ええ……」
言葉を濁すマルチェロ。
残念そうな笑顔は、その先約の相手が夫人よりも格が上だと言うことを暗に仄めかしている。
貴族の世界は金だけが全てではない。
いくら名門の公爵家といえど、上には上がいるのだ。
「来月の半ば過ぎなら何とかなりますが……」
「……やむを得ませんわね…」
夫人が赤く艶やかな唇をきゅっと噛み締める。
「では?」
どうされますか?と…訊ねたマルチェロをジッと見つめて…。
「…18日に。お願いできて?」
探るように…。
やや不安の見える瞳。

「来月の18日ですね。では、そのように…」

マルチェロはそれにニッコリと笑いかけると、席を立った。


−−−−−−−−−−−−−−−−

2週連続でお休み更新をしなかったので、今日は天使話の続きを…。

人・身・売・買!つか、娼館か?!とか思いつつ…(苦笑)
何かあれ思い出しちゃった…川原 泉さんの『バビロンまで何マイル?』
あれはチェーザレ・ボルジアの話が後半のメインになってるんですよね。

てか、お兄ちゃんはチェーザレとかモデルになってんだろうか…?(ふと…)

ちょっともっといろいろ読んでみようかな…とか思ったりして。。。
 
 
 
27 (Thr) Oct 2005 [no.103]
 
 
お兄ちゃんのボク。6



「ばーか!ケンカしたんだって言っただろ」

その様子を端から見ていた騎士Aが言うのに、Dは唇を尖らせた。
「だから仲直りの切っ掛けになればと思ったんだよ!」
「だが、Cの話じゃ団長はご機嫌だったらしいぞ?」
「ケンカっても、どうせククールが一方的に怒ってるだけの事だろ?」
「いつもの事じゃん、んなの」
AとD、二人の会話が今一番ホットな噂の内容であると察し、周辺にいた騎士達がワラワラと集まってくる。
「え〜、でもさ…、もしかしたらって事も…」
「ナイナイ、ナイって!」
「大体、団長とククールじゃケンカになんかなりっこねーじゃん」
「そーそー、相手誰だと思ってんだよ?マルチェロだぜ?団長だぜ?」
「ククールがまたなんかやらかしたら、直ぐさまお呼び出しになるだろうよ」
「そーそー、有無なんか言わせねーさ」
騎士達はそれぞれに好きな事を言い、うんうんと頷きあって…。

「ま、とにかく、今までと変わらず見守るのが部下の務めじゃないか?」

「だな!」
そういう結論に達した。
ちなみに、今この場に集まっているのは、古参の騎士達である。
皆、マルチェロを信じ、長年行動を共にしてきたが故なのか、それとも単に面白がっているだけなのか……今回の事には妙に結束が堅かった。
そして、
「団長の幸せを願うのが、我ら団員の務め!」
1人がそう叫ぶと、何故か周囲からは『オーー!』と歓声が上がって…。

「そうだ!マルチェロ様の幸せの為に!」
「おう!マイエラ修道院の明日の為に!」
「マルチェロ様、万歳〜!」
「我らが団長、万歳〜!」

ワー!と、オー!と、バンザーイ!バンザーイ!と…。
ワケの分からぬ高テンションが、聖堂前の広場に満ちる。
普段、面白味に欠ける閉鎖的な生活がイケナイのだろうが、いつの間にやら人数が増えていて……。
それはまるで、何かの決起集会のような様子…。
そして、その場の半数くらいが何が何やら分からぬままに、それでも『団長の思いを応援しよう!そうしよう!』とゆーことに落ち着き、解散となったのだった。


☆・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・☆


「ご報告いたします!聖堂騎士団員・ククール、本日は朝課、ミサ共に遅刻せず出席、朝食はニンジンとグリンピースを残しましたが、その他は完食。午前の訓練も終え、昼食は完食を確認しております。現在は午後の訓練中ですが、用があるといって姿を消しました」

「…ほう」
少し前に運ばれてきたお茶を啜りながら、マルチェロは報告された内容を頭の中で反芻した。
仕事にひと息を入れるこの時間、マルチェロはククールについての報告を受ける事にしている。
今まで、ククールが問題児であることから、誰もその報告について疑問を持ちはしなかったのだが、二人の仲が噂(しかも本当らしい)となってしまうと話は別で……。
報告に来た騎士は、いつもと違う反応が見れるのではないかと、期待に胸を膨らませながらこの部屋を訪れたのだった。
「用とは何だね?」
「は、現在、ククールの後を尾行させております」
「…ふむ、大方ドニの町にでも遊びに出かけたのであろう。全く、訓練をサボるとはけしからんな…」
「は!見つけ次第、スグに連行して参ります!」
何故かキラキラとした瞳で言う騎士。
マルチェロはそれに怪訝なものを感じながらも、ああと生返事を返し、手元の書類に目を戻した。
周辺の森で起こったモンスターによる参拝者への襲撃被害状況の件数をまとめた書類だ。
「この辺りの警備の強化が必要だな…」
地図で位置を確認し、そこをトントンと指で叩きながら呟いて…。
「……暫くグループごとに交代で警備させるか…。いや、だがこの辺りに巣があるやもしれんな……調査をさせてから一気に叩くべきか…」
ぶつぶつと小さく。
考えを口に出しているマルチェロを、騎士はこっそりと観察していた。

いつもと変わらぬご様子…。
ククールが用があるといって抜け出したのも、さほど気になってはいないようだが…。
本当に二人はそーゆー仲なのか?
…いや、今までだとて気付かなかったのだからな。
もしかすると、マルチェロ様の今の心中は嵐のように乱れておいでなのかもしれん。

「…出没地点から………この2点…いや、3点か……レベル的には…」

マルチェロはモンスターの出没地に見当を付けているらしい。
ブツブツと呟くその横顔を、騎士はジーッと見つめて…。

うーん。
やはり、そんな感じは見受けられんな…。

「…どうかしたか?」
首を傾げていると、突然向けられた緑の瞳が不思議そうな色を浮かべた。
「は、いえ!」
騎士は慌てて手と首を振る。
マルチェロは少しの間、騎士の様子を伺っていたが、
「5班の班長を呼んでくれ」
短く指示を出すと、地図に目を戻した。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

人間、退屈だとロクな事を致しません。
…とゆことで、何ともお馬鹿な騎士さん達になってしまった。
いいんだ。お馬鹿さんだって!
マルチェロ様が好きならそれで入団資格有りなんだ!!!
聖堂騎士団員達はみんなマルチェロ様大好き!と、ナナセは信じております☆

えーと。
明日は会社お休みするので、多分更新はないと思います。
お休み中、更新があるとしたら天使話かな。。。
 
 
 
26 (Wed) Oct 2005 [no.102]
 
 
お兄ちゃんのボク。5



さて。
ククールが漏らしたこの呟きを、偶然にも聞いてしまった者が居た。

それはたまたまタイミング良く(…か、悪くか)戻ってきた同室の騎士……。
彼はドアの前まで来た所で、中から何やら声が聞こえるのに気付き、静かにドアを開けて様子を窺っていたのだ。
そして、中から聞こえたククールの独り言と泣いているようなその声に、部屋に来た用すら忘れ、やや呆然として……。
その場に立ちつくし、今聞いた事と状況を頭の中で反芻&整理する。

「おい、どうしたんだ?」

そんな騎士の元へ団長室の前で見張りをしている騎士の一人が、近寄って来た。
ドアの前で室内の様子を窺っていた騎士を仮にAとするなら、この近づいて来た長身&長髪の騎士はBとでもしようか…。
ともかく、騎士Aは騎士Bの声にビクリと身を竦めてから、唇に指を一本あて、黙れのジェスチャーをした。
そして、ドアから少し離れた場所へ移動する。
「なあ、何だよ?さっきククールの奴、団長の部屋からドタドタ出てったんだぜ?何かあったのか?」
小声で訊ねる騎士Bに、騎士Aはウンウンと頷いた。
「ああ、あったみたいだぜ!今、もう嫌いだとか言ってた!」
「もう嫌いだ?マジでか?!」
「ああ!その前は、マルチェロのバカとか言ってたぞ!」
二人は顔を見合わせる。

「やっぱ…あの噂はホントだったんだ!」

声をハモらせそう言って、は〜〜っと何やら息を付く二人…。
「そーだよな〜、あの団長のククールの構い方って尋常じゃねーもんな!」
「そりゃ確かに当たり方キツ過ぎだけど、アレって要は好きな子いじめだろ?」
「うんうん、部屋に呼びつけたり、拷問室に呼びつけたり、しょっちゅう二人で会ってるしな!」
なーっ!うんうんと、頷きあっていると、そこにもう一人…騎士Cがやって来た。
「よお、見張りサボって何やってんだよ?」
「シーーッ!」
「聞けよ!やっぱあの二人、デキてたんだぜ!」
聖堂騎士団員にしては珍しく小柄なCに、AとBはやや身を屈めて小声でこの情報を伝える。
だが、あまりにも唐突なその言葉に、Cは怪訝な顔をするばかりで…。
「あの二人?」
「団長とククールだよ!」
「しかも何か今日は喧嘩したっぽくてさ〜、ククールの奴団長室飛び出してきて…」
「もう嫌いだって、部屋で泣いてんだぜ!」
AとBの今仕入れたばかりのこのネタに、えーっとCは目を丸くした。
「マジ?修羅場なん?」
「ああ、そーらしい」
「じゃ、団長今機嫌悪いのか?」
「そうじゃね?」
「うわー、マジかよ…?オレ、院長から書類預かってきたトコなんだぞ?」
勘弁してくれよー!とぼやくCに、けれどAとBはニヤニヤとして…。
「行け!偵察隊!」
「団長の様子、シッカリ観察して来いよ!」
二人は無責任にそう言うと、ドン☆とCの背中を叩く。
「いいよな、お前ら!気楽に言いやがって〜!」
「まーまー、外で様子窺っててやるから♪」
「んじゃ、オレはみんなに教えてこよ♪」

そして、3人の聖堂騎士達は、各々のすべき事をする為に散って……。



翌日。。。

どうも…妙な視線を感じるな…。

チラッと目線を配れば、周囲の騎士達は一斉に明後日の方向を見る。
それがまた、あまりにも下手なので…。
何なのだ一体…と、マルチェロはいささか面白くないものを感じて顔をしかめた。

だが、マルチェロの周辺の変化はそんなもので…。
妙だと言えば妙だったが、さほど気にするほどのものでもないように思えた。


一方…。
ククールの方はといえば…。

「なあなあ、ククール?団長のお部屋に花を持ってくんだけどさ、白い百合と赤いバラ…どっちがお好きだと思う?」

「なあ、マルチェロ団長が今度のポルトリンクの視察に誰を行かせるか知らないか?」

「ククール、団長ってホントは甘いものはお好きなのか?今日の3時はカステラ持っていく予定なんだけどさ」

やたらと繰り返される兄に関しての質問に、戸惑ってしまって…。
最初はまじめに答えを考えていたが、仕舞いには面倒になり「直接聞け!」と怒鳴るような始末。

んだよ、一体全体…。
つーか、コイツらの半分はいっつもオレの事目の敵みたいにして、イチイチ兄貴にチクッてる奴らじゃねーか…。
今日は何でこんな態度変わってんだ???

心の中は不信感でいっぱい。
けれど、
「おーい、ククール!マルチェロ様にお茶持っていってくれよ」
なんて掛けられた声には、思わず顔を輝かせてしまう。
おう!と、喜んで返事をしかけ、そこでハッと気付いた。

いや、おかしい!
兄貴にお茶持ってくって、いっつもすげー競争率高いじゃん!
兄貴の取り巻き連中がいっつも順番とか決めてさ…なのに、こんな突然譲るみたいの…絶対おかしい…。

ククールの中のトラップ警報がピコーンピコーンと鳴り響く。

罠だ!
きっとコイツら何か仕組んでやがる!

ククールは心の中でウウウと呻った。
この場合、罠の向こうに待っているのは何だろう、と…それを見極めようとして……。
単にマルチェロのお説教で済む程度の話なら、別に引っかかっても構わない。
だが、何やら今日はみんなの様子がおかしいから…。
「おい、どうしたんだ?変な顔して…」
お茶のトレイを持ったまま、騎士Dは不思議そうにククールを見つめている。
「……いや、オレ、ちょっと…用があんの思い出した!他のヤツに運んで貰えよ!」
ククールは散々迷った結果、その場から逃げるように立ち去った。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

本日は、聖堂騎士団員たちが現れた!って感じでしょうか。
聖堂騎士団員 3匹 とかだね、この場合。
あ、Dも出したのか…4匹か。(どうでもいいって(笑))

ワラワラと人をいっぱい出すのって好きです。
会話だけの羅列も好き。
でも読むと読みにくいんですよね(爆)
分かっているけどやってしまうのだった。。。
 
 
 
25 (Tue) Oct 2005 [no.101]
 
 
お兄ちゃんのボク。4



「噂が立ってんのは誰のせいだよっ!」

荒々しい足音を立てながら自室へと戻ったククールは、部屋に入るなり力一杯そう叫んだ。
胸の中がモヤモヤとした物でいっぱいで、苦しさからか…知らず、口がへの字になる。
そのまま、部屋の奥にある自分のベッドへ身を投げて…。
「くそ〜…何だよ、兄貴のバカ…!」
今度は何だか情けない声が漏れた。

ポンと肩に置かれた手の感触。

『……噂を…本当にして欲しいかね?』

そう囁いた声…。

チラリと流された視線…。

そんな物全てが、ククールの胸を騒がせて…。
ドキドキするような、イライラするような、モヤモヤするような…。
自分は一体、どうして欲しかったのだろうか。
噂が本当になればいいと、心の何処かでは思わない事もなかった。
兄が本当は自分を好きなのだとしたら、こんなに嬉しい事はないと…そう思うから。
だが、

『全く、私もいい迷惑だ…。よりにもよって、この世で最も憎んでいるお前に執心しているなど…』

マルチェロの言葉は、ククールが聞きたいのとは正反対のものだった。
「…分かってるけど、でも、オレのせいじゃないじゃんか…」
ジワと滲んでしまった涙に、ぎゅっと目を瞑る。

憎んでるとか、嫌いだとか言うクセに…、呼びつけてさ。
マジ嫌いなんだったら、完全無視とかすりゃいーじゃん!

…って、それはヤなんだけど〜………。

ククールは枕に顔を埋めたまま、ウーと小さく呻った。
完全に無視される事…それが何よりも辛いからこそ、ククールは頑張って問題行動を起こしているといっても過言ではない。

叱られるだけであっても、あの声が聞きたくて…。
睨まれるだけであっても、あの瞳に映りたい。

まるで恋慕のような、この気持ち。
他の誰に対しても、抱いた事のないそんな気持ちを、よりにもよって自分を毛嫌いしている実の兄に対して感じているのだ。
何て皮肉なのだろうと、思えば一層悲しくなって…。
「…マルチェロのバカ……!もー嫌いだ…」
ククールは恨めしげに呟くと、グスと鼻を鳴した。


−−−−−−−−−−−−−−−−

眠い……。。。
昨日は結構寝たと思うのに、眠い……ってのは鉄が足りないせいかな??(爆)

兄さんだけだと話が進まないので、今日はククたんサイドです。
明日はまた違うトコに行ってみようかな…とか思ってますが、
まとまらなくなりそうな気配も感じて、さてさてどうなる事やら…(え)
 
 
 
24 (Mon) Oct 2005 [no.100]
 
 
お兄ちゃんのボク。3



不思議なものだ、と…。

ククールの出ていったドアを見つめ、マルチェロは胸の内で呟いた。
昔は、ククールが視界に映るのが許せなかった。
いつもちょこちょこと後を付いてきて、自分を伺っているのが鬱陶しくてイライラした。
叱っても、追い払っても、懲りず諦めずにやってくるククール。
嫌がらせかと思うことすらあった。
いっそどうにかしてしまおうかと…少々荒っぽいことも考えた。

だが、それも暫くの間だけで…。

やがて…それに慣れてしまうと、今度は絶えずククールの姿を探している自分に気づいた。
自然と、弟が自分の後を追っていることを確認している。
自分を見ていることを。
側にいることを…。

そして、一度そうなってしまうと、今度は姿が見えなければ落ち着かない…なんて事になってしまって………。

何故いない?
何をしている?
何かあったのか?

気づけば、ククールのことをあれこれと考えている始末。
何故この私が…と腹立たしく思いながら、それでもその思いは強まっているようで、こうして時々時間に余裕があると、ククールを部屋に呼ぶようになった。
だからといって、別に何をするとか、させるとか、そんなことはなくて……。
そう。
ただ、ククールが目の届く所にいる、それだけでいいのだ。

あの赤い制服が視界を掠め、あの銀の髪が揺れるのを眺めることで覚える、不思議な落ち着き。

退屈を何より嫌う弟を、何をさせるわけでもなく、ただこの部屋の中にいさせる事が出来るというのは、愉快であり、そして、天使の如きと謳われるあの容姿を、他の誰の目にも触れさせずに独占しているという事実は、彼の中の何かを非常に満足させた。

今頃は解放されて羽を伸ばしに出かけたか…。
それとも、ふて腐れて寝ているか……どちらだろうな…。

「……さて、仕事に戻るか…」

困ったものだと苦笑しながら、マルチェロは閉じた本を引きだしにしまい、代わりに書類の綴られたファイルを開いた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

今日はちょっと短く…。
というのも、土日で張り切って遊びすぎて眠いのだったり……(笑)
もう若くないんだから!と思いつつ、やっぱね、遊ぶ時こそ本気ですよ!(爆)

うーん、眠い…とか思いつつも、1時から始まったリヴのハロウィンパーティはシッカリ覗きに行き、島&飾りを購入。。。
しかし、今すんごい重いですね…。
放浪がかろうじて出来るくらいかな?
何か、島のアイテム変更するのももうムリだった(爆)
まあ、ハロウィン仕様に出来たし…いいけどさ。

って、それはいいとして。。。
ヒマな時にククを侍らせるお兄ちゃん……いい身分だ〜!羨ましい〜!
でも、どうせ侍らせるならお兄ちゃんがいいよなぁvvv
(ククたんは踊り子として舞わせるの♪♪ ←どんな設定で何の話なんだよ…)
ニノとかなら出来るんだろうなぁ…いいなぁ、アイツ…。。。
 
 
 
21 (Fri) Oct 2005 [no.99]
 
 
お兄ちゃんのボク。2



兄がクスと小さく笑ったのに驚いて、ククールはハッと視線を戻した。
マルチェロは静かに席を立つところで…。
そのまま、ゆっくりとククールに歩み寄る。

怒っているようには見えはない。
威嚇されているわけでもない。

だというのに、何故か…足が竦んでしまって…。

「………」
その場に立ちつくしているククール。
いつもと変わらぬ緑の瞳…。
それを見つめたまま、どうしていいか分からずに…。

「兄貴…?」

まさか……。
まさか…?
噂が…ホントだなんて…ことは……。

ポンと肩に置かれた手…。
その感触に、ククールがビクリと身を竦める。
それを気にとめる風もなく……。
「……噂を…本当にして欲しいかね?」
マルチェロはチラリと視線を流し、訊ねた。
「な…っ」
その内容に弾かれたように兄を見て…。
ククールはそれ以上、言葉が続かなかった。
ドキドキと煩く騒ぐ鼓動。
目がチカチカする。
息も苦しい。
ぼうっとする頭の中は、どうしよう……と、ただそれだけ…。
そして、そんなククールの緊張はマルチェロに全て伝わっていたから…。

逃げも騒ぎもせんか…。
まあ、かといって、覚悟がありそうにも見えないがな…。
どちらにしろ、そんなことではいざというときは一巻の終わりだぞ、ククール。

胸の中では、何故か優しく語りかけながら。
「おや、満更でもないようだが…」
現実には、揶揄するような口調で…。
「そ、そんな、ことっ!」
あるわけないと、叫ぼうとするその顎を捉える。
覗き込むかのように…至近距離で絡む瞳…。
秋空のような薄青の瞳の中、映っている自分がニヤリと笑った。

「……お前には…とかくその手の噂が多いようだな…」

「!」
薄青の瞳が、マルチェロを見つめたまま大きく見開かれる。
「私以外にも噂になっている者が多くいよう?ソイツ等とはどうなんだ?」
「うっ、噂なんかいい加減だって…今、アンタが言ったんじゃねーか!」
「全く、私もいい迷惑だ…。よりにもよって、この世で最も憎んでいるお前に執心しているなど…」
「…っ」
ククールはぎゅっと唇を噛み締めた。
握り締める拳…。
僅かに身体が震えている。
それはまるで、今にも泣き出しそうなのを堪えているかのように…。
そんな弟の肩をポンと軽く叩いて…。
「…もういい。行きたまえ」
マルチェロは手をサッと振ると、それきり机に戻った。
そして、何事もなかったかのような顔で、開いたままの本に視線を戻す。
「……っ、……っ!」
ククールは僅かの間、その場に立ちつくしていたが、やがて黙ったまま一礼すると去っていった。
バタンと、いささか乱暴にドアが閉まる。
静寂の戻った部屋に、クスと…小さな笑みが漏れた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

うーんうーん。
どうも、ウチのお兄ちゃんは意地悪くなんないですね〜…。。。。(爆)
諦めず、日々精進!のつもりなんですが…(え)

ククたんはいろいろと噂が多いでしょうね。
お兄ちゃんとアヤシイ仲!って噂が一番多かったら幸せだな〜vvvと思いつつ…(笑)

さて、日曜日はイベントであります☆
いらっしゃられる方、どうぞよろしくお願い致します!

 
 
 
20 (Thr) Oct 2005 [no.98]
 
 
お兄ちゃんのボク。


ヒラリ、ヒラリと赤が揺れる。
本を読むマルチェロの視界の端を、チラチラと掠めるその色…。
それは、聖堂騎士団の中でただ一人、他の団員達とは色も形も違う特別仕様の制服で…。
それを着ているのは彼の弟であるククールに他ならなかった。

「…ウロウロするな」

「え?あ、す、すみません!」
モゴモゴと謝り、ピタリと動きを止めるククール。
マルチェロが視線を本に戻すと、ホッと息を付くのが僅かに聞こえた。
チラリと見やれば、ククールは明らかに不満げな顔で唇を尖らせている。

ちぇ、何でオレここにいなきゃなんだよ。

そう思っているのだろう事は容易に想像が付いて……。
マルチェロは本を持つ手にぎゅっと力を込めた。

まるでしかられた悪戯坊主だな…。
全くいつまでも落ち着きがなくて困る…。

笑いそうになるのを堪えれば、自然と眉間にしわが寄る。
ふいに顔を顰め、何だか難しそうな、不機嫌そうな様子になった兄に、ククールは不安げな顔をした。
今日はまた一体何で怒られるのかな?と思っているのだろう。

マルチェロが、ククールを呼びつけてから既に2時間近く…。

その間、説教らしきことは何一つ言われず。
いや、そもそも、叱られる時以外会話(?)などはナイに等しいこの兄弟である。
世間話など到底するわけもないので…。
団長室はこの2時間近くの間、終始沈黙が支配していた。
ククールが動き回る靴音と衣擦れの音、そして、マルチェロがページをめくる音に、暖炉の炎がはぜる音……室内でたまにある音と言ったら、それくらいの物だ。
だが…。

「あのぉ…」

痺れを切らしたのだろう。
ククールがおずおずと声をかけてきた。

「…団長殿は、何か用があってオレを呼んだんじゃないんですか?」

「用か…、例えばどんな用だと思うかね?」
訊ねられた質問に、逆に質問を返す。
「え?」
じっと見つめてやれば、ククールもまた困ったような視線を向けてきた。
「た、たとえば…?怒るとか…?」
「ほう、何か怒られるようなことをしたのかね?」
「えっ、いや、してないけど!」
ククールはハッとして、それからブンブンと首を振る。
マルチェロにはその慌てようが可笑しい。
だが、そんな素振りは見せないで…。
ただ、見つめていれば、
「してないけど、だって、それだったら一体何で…」
ククールはそう言葉を続けた。
「さて、何故だろうな…」
「………っ」
肩を竦めて視線を再び本に戻す。
だが、そこに書かれている文字など、内容など、頭には何一つ入ってこない。
単なるジェスチャーだ。
何より人を不安にさせるのは情報の不足だと、マルチェロには分かっている。

「…兄貴!なあ、アンタ知ってんの?」

焦れたククールが責めるような口振りで声を上げた。
「何をだね?」
チラとだけ視線をくれてやれば、ククールはカアッと頬を染めた。
おや?と思う。

「アンタが…こーしてオレを度々呼びつけるから……団長はオレにご執心だって、そんな噂流れてんだぜ?」

言いながら、どんどんと赤く染まって行く顔。
終いには耳まで真っ赤になりながら、ククールは何故か挑むようにマルチェロを睨んだ。
その顔にドキリと鼓動が跳ねる。
「ほう…」

これは、随分とうぶな反応をしてくれる…。
噂ではイロイロと言われているが…。
さて、どの程度まで本当なのか……アヤシイものだな…。

「いーのかよ…?」
「いいも何も…。噂などいい加減な物だ」
「だから気にしないってのか?」
「お前は気になるようだな」
じいっと見上げれば、ククールは何か言いたげに口を開き、それからプイと顔を背けた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−

昨日今日と、のんびり〜な気持ちとは裏腹に、何故か仕事に切れ目がありません…(-_-;)
とゆことで、中途半端にこんなトコで続く。

今回は、お兄ちゃんがククールをお気に入り、ってのが見たいのであります。

さて、ちゃんと書けるかな?と思いつつ……。
23日の新刊情報、今晩か、明日の晩にでもアップしたいと思っております。
ハロウィン話の方になりました☆
 
 
 
17 (Mon) Oct 2005 [no.97]
 
 
*:.。..。.:*゜+ キミのカケラ・2 +゜*:.。..。.:*



ぼうっと、明らかに寝惚けているらしい様子で…。
ククールはマルチェロの腕を見つめ、それからゆっくりと視線を上に昇らせる。

「あれ……?あにきだ…」

何ともボケた呟き。
「昔の…夢を見ていたのか?」
「え?オレ、何か言ってた?」
訊ねれば、きょとんとした顔で首を傾げた。
「ああ…まあ…」
それに何と答えたものかと思っていると、ククールはふいに小さな笑みを浮かべて…。
何やら照れくさそうな様子で少し顔を俯かせる。
そして、
「…へへ。あのさ、ガキの頃にさ、オデイロ院長にお遣いに出されたことあったじゃん?まー、兄貴は覚えてないかもだけど…」
そう話し出した。
その内容にドキリと鼓動が跳ねる。
「………いや、覚えている…」

恨み辛みなど、いくらでもあるだろうが…。
何故、嬉しそうなんだ?

何を言い出すのだろうかとやや身構えながら…。
言えば、ククールは驚いたように一瞬目を見張って、それから嬉しそうに微笑んだ。
「ホント?えー、何か嬉しいな♪アンタは絶対忘れてると思ってた」
「……全く、私も何故覚えているのかと思うがな…」
溜息混じりに呟いて…まだ腕に掴まったままのククールに、視線で先を促す。
「オレはちゃんと覚えてるよ。いい思い出だもん」
「いい思い出…だと…?」
「うん。だって…アンタむちゃくちゃ急いでたのに、オレが転んだら戻ってきてくれてさ…」

『ほら…泣くな。かすり傷だ』

そう言いながら、差し出された手。
血の滲んだ膝を見て、ホイミをかけてくれた。

「仏頂面だったけど、ちゃんと起こしてくれたじゃん。そんでケガ治してくれたし…それにさ、その後はゆっくり歩いてくれた♪」
嬉しそうに語るククールの顔に、マルチェロの胸が鈍く痛む。

……急いでいたんじゃない。
置いていこうと思っていたのだ。
そして…コイツが転んだ時に…マズイと思った。
その後、治療をしたり、ゆっくり歩いてやったりしたのは…若干の罪悪感からだ。

それも、ククールに対してではなく…オデイロ院長に対して感じた……。

薄青の瞳が自分を映し、疑うことなく微笑んでいる。
「……それしきのこと…」
言葉に迷って、漏れた呟き。
それに、ククールがぷうっと頬を膨らます。
「兄貴には”それしき”でも、オレにとっては大事なの!」
ほんの少し、傷ついた面持ちで…。
けれど、本当に傷ついてはいない。
まだ…。
マルチェロが本当のことを告げれば、ククールの”大事な思い出”とやらは壊れ、本当に傷つくだろう。
ならば……。

「……なら、大切にしまっておくといい」

ならば、言う必要はあるまい。

マルチェロにとって苦い思い出でも、ククールにとっては良い思い出だった。

ならば、それでいいではないかと……。

傷つけて楽しいことなど、もうないのだから…と、胸の内で呟いて…。
フンと小さく鼻を鳴らし、マルチェロは近い頭をポンポンと軽く叩いた。
それは、まるで子供をあやすかのような…何処か優しい仕草で…。
その感触を心地良いと感じながら、ククールはふと思いついた疑問を口にする。

「…そういや…。兄貴ってば何でここにいるの?」

途端、兄の眉間に深く刻まれるシワ。
「………」
聞いてはイケナイコトだったんだろうかと、ヒヤリとしながら、それでもジッと見つめていれば…。
やがて、マルチェロは小さく溜息をついた。
「…私も…夢を見てな…」
「え?昔の?」
「…ああ、それで…何となく足が向いただけだ」
どんな夢かと聞きたいのだろう。
ジイッと向けられたままの視線。
薄青の澄んだ瞳は…何やら昔のままのような気がして…。

ああ…………そうだった…。

ふいに、マルチェロは思い出した。
あの時、ククールが言ったことを。
自分が何を言ったのかは、依然思い出せぬままだったが、だが、とにかく酷いことを言ったのだ。
そして、ククールはそれに泣きそうな顔をして……。

『でも…ボクは、お兄ちゃん…好きだもん…』

立ち去ろうとしたマルチェロに、か細い声でそう言った。
それをハッキリと思い出す。
あの後、ククールは逃げ出すように走り去ってしまったが、マルチェロは周りの同僚達に酷くからかわれ、もの凄く腹立たしい思いをしたのだ。

…思えば、あの一度きりだな…。

ククールがハッキリと気持ちを言葉にしたのは……。

だが、その後も…変わらなかったと言うことか…。

「……物好きだな…」
「え?何が?」
思わず漏らした呟きに、ぱちくりと不思議そうに見つめてくる瞳。
それにフッと笑って……。
マルチェロはククールの手をふりほどくと、ベッドから離れた。
そして、そのまま部屋を出て行きかけて…、チラリと視線を投げる。
ククールはワケの分からぬまま、そんな兄の背を見送っていたのだが、

「これからは可愛がってやろう」

突然、そんなセリフを言われて…。
「…え…?」
ますますワケが分からずに…。
そして、混乱している弟を後に残したまま、それ以上は何も言うことなく、マルチェロは部屋を後にした。
「え…?」
部屋から聞こえるククールの戸惑いの声。
それにクックと喉を鳴らして…。

「…過去を思い返すのも…そう悪くはないのかもしれんな……」

マルチェロは何処かサッパリとした気持ちで、そう呟いた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

人の感じ方ってのはそれぞれ違うって事で。
自分にとって取るに足らぬ記憶でも、誰かにとっては大切な思い出ってこと…ままあることですよね。
マルククの場合は多そうだよねとか思ったのでした。
同じ場所にいても同じ物を見てないですもんね。

それにつけても、マルチェロ兄さん最後のセリフはどうなのか…(笑)

まあ、どっちの意味も隠ってるってことで。ね。

 
 
 
16 (Sun) Oct 2005 [no.96]
 
 
いつか天使の降る空へ・2


「おかしな事を言うな、お前は…聖職者が天使を気味悪がるはずないだろう」
違うかね?と言われ、ククールはほんの少しだけ複雑な気持ちになった。
いつも、呪われた存在だの、不幸の元凶だのと言われてきたのだ。
この場合の『天使』にどんな意味があるのかと…そう思ってしまって…。

いや、きっと姿だけのことなんだろうけど…。

そう思うと切ない。
けれど、それでも、何か一つだけでも、この人に認められている物があるのだと思えることは救いのようで……。
ククールは羽を撫でている手の感触に目を閉じた。
兄の整った指先は優しく羽を撫でている。
優しく、優しく…。
けれど、その手が羽の生え際…つまり、裂けた寝間着の中へと入り込んでくると、ククールはハッと目を見開いて…。
「あ…っ」
裸の背をツツとなぞられ、ゾクリと震えが走った。
「ふぅん…コレでは制服は着れんな……」
ねっとりと、絡み付くような視線が身体を這う。
いつもとは違うその瞳に、ククールは戸惑って…。
そのまま固まっているのにクスリと笑い、マルチェロは弟の耳元に唇を寄せた。
「どうしたのかね?気分でも優れないか?」
自分を伺い見る不安げな瞳…。
きゅ…と、唇を噛んで…。
小さく頭が左右に振られる。
覚悟を決めたとでも言うように、そっと目を閉じたククールにマルチェロは笑みを深めた。

おやおや、これは随分と従順な…。
まあ…拒否権など元より無いがな……。

憂いを乗せたその顔を楽しみながら、けれどその手はそれきり離れて…。
「…もうこんな時間か」
色気のないそんな呟きと、遠ざかってゆく気配に、ククールは目を開けた。
すると、つい今し方まで身体が触れるほど側にいたはずの兄は、もうついたての向こうへと消える所で…。

え?え?え???
何でイキナリ……?

「あ…あにき…?」
戸惑いから思わず呼びかける。
その妙に不安そうな自分の声に、カアッと頬を染めたククールだったが、兄はそれに足を止め、緑の視線をチラリと向けた。
「…残念だが、今日は予定が詰まっている」
意味深な笑み。

何が残念なんだよ、何が!

「………」
「お前はここでおとなしくしていろ。夜には戻る」
妙に機嫌の良さげな兄を訝しく思いながら、
「夜…って、あの、オレの食事は…」
おずおずとそう訊ねてみる。
「ああ、そうか…ならば昼に一度戻ろう」

オレ、朝食も食ってナイんですけど……。

「………」
今にも鳴り出しそうな腹に、思わず眉根を寄せると、
「どうした?一人になるのは心細いかね?」
クスと…笑いながらかけられる、揶揄するような言葉…。
心細いって言ったらどうするんだろう、等と…そう思ったのとほとんど同時に、何故かシッカリキッパリ頷いていた。

う、頷いちゃった!
頷いちゃったよ!おぉい!オレ〜〜ッ!!!

「…ぁ、いや、そのっ」
バカにされる!怒られる!とアワアワしてしまうククール。
だが、
「……やれやれ、困った奴だな…」
マルチェロは一瞬だけ目を瞠ったが、苦笑すると戻ってきて……。
「!!!」
ぎゅっとククールを抱きしめた。
「ここへは誰も入らない。安心しろ」
「★☆★☆」
「いいか、この部屋から出るな」
「う、うんっ!」
囁くようなその言葉に、コクコクと何度も頷く。
マルチェロは満足そうにククールの頭を撫でた。
ご褒美のように与えられたその感触に、ククールの胸が熱くなる。
「…あにき…」
薄く笑う緑の瞳。
そして、離れて行く体温。
遠ざかるその背を、何処か憧憬に似た思いで見つめて…。
ついたての向こうへと消えても、その後ドアの閉じる音が重く響いて聞こえるまで。
固まったように立ちつくしたまま……。
やがて、詰めていた息を吐き出し、ククールはベッドに倒れ込んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

綺麗な弟は好きですか?

…とゆことで。
ええ、好きでしょうとも!と思うのですが…。
ねえ、マルチェロ兄さん?(呼びかけてどうする(笑))

何やらちょろちょろと続きそうな天使話。。。
来週…イベント後に余力があったら更新かけたいなと思いますが。
さてどうかな…?(だって、イベント後って事は打ち上げ後だもんね…寝そうだ…)
てか、今うっかり寝かけちゃってました…危ない。。。
 
 
 
14 (Fri) Oct 2005 [no.95]
 
 
*:.。..。.:*゜+ キミのカケラ +゜*:.。..。.:*

 
 
礼拝堂から宿舎へと通じる長い廊下。
午後のミサを終えたマルチェロは、その廊下を自室へと戻っていた。
中庭からは午後の日差しが入り、朝の荘厳な雰囲気とは少し違って何処か穏やかな空気に満ち、周りを歩く同僚達は和やかに談笑を交わしている。
だが、前を向いたままのマルチェロの顔は険しく…。

「なあ、マルチェロ…」

横を歩く友人が、気遣わしげに声を掛ける。
途端、鋭い緑の視線に睨まれて…。
「……いや、でもさ…」
怯みながらも言い募り、チラリと背後に視線をくれる。
先程からずっと、少し後をちょこちょこと付いてくる小さな修道士見習い。
大きな青い瞳でマルチェロの背を見上げ、振り返ってはくれないか、声を掛けてはくれないかと、ただただ待ち侘びている。
傍目にも分かるその様子。
加えて、滅多に見ない程の可愛らしい子供なのだ。
「声くらい…かけてやっても…」
何やらとても気になって、浅黒い肌をした騎士見習いはチラリチラリと子供とマルチェロを交互に見る。
「なあ…?」
マルチェロは苛立たしげに溜息を付くと、ピタリと足を止め、背後を振り返った。

「…………………」



そこで、何を言ったのか……。

一瞬大きく目を瞠ったククールが、次には酷く悲しげに顔を歪めたのを見つめたまま…。



その映像が薄くぼやけて行き、代わりに白い漆喰と黒い梁の天井が瞳に映って…。
「…………」
格子状に張られたその梁を見上げながら、マルチェロはノソリと身を起こした。

あそこで、何を言ったのか…。
まあ…何にしても、アレを傷つける内容だったには違いないか…。

カーテンの隙間からは朝日が差し込み、タイル張りの床を照らしている。
そのタイルに描かれた模様を、ぼんやりと眺めて…。
何を今更と、苦い笑みが浮かんだ。
今更、過去を思い返して何になろう。
修道院にいた頃のククールを思い浮かべれば、その顔はいつも緊張に強張っているか、怯えているか、はたまた傷ついているか…そのどれかで……。
あの頃のマルチェロは、弟のあの美しい顔が悲しげに曇るのを、悔しさに歪むのを、絶望に打ちひしがれるのを…楽しんでいたのだ。

自分だけが傷つけていいのだと、そう思っていた。

ククールは天が自分に与えた、自分のものなのだ、とまで……。

そして、そんなマルチェロの思いを裏付けるかのように、ククールはどんなに傷つけられても変わらず、直向きな思慕を寄せ続けたから…。
尤も、マルチェロはその気持ちに気付かないフリをしていたし、ククールの方もまた、その気持ちを表に表そうとはしなかった。

そう、それは暗黙の了解………。

何をしても、ククールは自分の元を離れはしないと…あの頃のマルチェロは、何故かそう信じて疑わずにいた。
勿論、そんなことを思っている等と、自分では認めていなかったが…。

もし…。

もしも、院長が亡くなったあの時…ククールを追い出していなかったら…。

「……馬鹿馬鹿しい…」
何だ今朝はと小さく呟き、マルチェロはベッドから降りた。
スリッパを引っ掛け、寝間着のままで部屋を出る。
時計を見れば、いつもの起床時間よりも随分と早かった。
キッチンへと向かうつもりで、足は何故か反対のククールの部屋へと向いてしまって……。


ドアの前まで行くと、そこで暫し立ちつくす。

「…………」

この家に連れてこられたのは、もうひと月も前だ。

アテなどあるはずもない旅を続けていた自分を、ククールが捜し出して…。

何もなかったかのような顔をして。
まるでそうするのが当たり前のように。
ただ、そっと手を引いてこの家へと案内した。

『ここがオレ達の家』

『ここが兄貴の部屋で、こっちがオレの部屋』
『これが兄貴のイスで、向かいがとーぜんオレ』
『これが兄貴のパジャマ。それと、歯ブラシと、タオルと…』

これが兄貴の、こっちがオレのと…。
嬉しそうに笑いながら、ククールは1つずつ説明をした。
見つかるかどうかも分からない自分を、あちこち懸命に捜したのだろうに…。
その合間に、これを揃えたのかと…。
そう思えば、余計なことを…と怒る気などは霧散して…。
ただ、分かったと頷いてやった。

そう。

それだけだった。

何も、聞かれず。
何も、語らず。

まるで、ずっと昔からここで一緒に暮らしていたかのように…。


キ…と、初め小さな音を立て後は静かにドアが開く。
マルチェロがククールの寝室へ入るのはこれが初めてのことだった。
自分の部屋と大差ない作り…。
だが、服や物の散乱しているこの部屋は、整然とした自分の部屋とは随分と印象が違うように思えた。
ベッドの上には枕を抱き締めて眠る弟の姿…。
マルチェロと色違いのお揃いである小さな星模様のパジャマを着て、何とも幸せそうな顔で…。

…全く……世界を救った英雄が…こんなに無防備でいいのか…?
気配すら感じ取れんとは…情けない…。

「……ん〜……えーすのふぉーかーど…」
むにゃむにゃと漏らした呟きに、頭痛を覚える。
「夢の中でもいかさま賭博か?全く…」
思わずそう呟くと、ククールは突然むくっと身体を起こして…。
素早く伸ばした手で、ガシッとマルチェロの腕を掴んだ。
「?!」
一瞬、何事かと身構えたマルチェロを、ククールは目を閉じたまま、それでも見上げるように顔を上向ける。

「…あにき…」

ぎゅうっと。
掴む手に力を込めて…。
「あにき…ぃ…」
「……」
呼ばれるのに応えたものかと迷っていると、ククールは泣きそうに顔を歪めた。

「……おいて…かない…で…」

か細い哀願の声。
その声に、思わず眉を顰める。

そういえば……。
昔…何処かに置き去りにしようとしたことがあったか…。

ふいに蘇った思い出…。
思い出などと綺麗な言葉で片づけられるようなものではない。

『待って、おいていかないで』

泣くまいと懸命に堪えながら、自分を追いかけてくるククール。
あれはいくつの時だっただろうか…。
確か、オデイロの命で、一緒に遣いに出された時のことだった。
何で僕が!と忌々しい気持ちで一杯で、腹立ち紛れに置き去りにしてやろうかと、かなり本気で思ったのだ。

もう少し成長してからだったら、本当に置き去りにしていたかもしれんな……。
…いや、それだとコイツも成長しているから…自力で戻って来てしまったか…。


……あの時のことを夢に見ているのだろうか?

マルチェロが黙っていると、ククールの瞼がピクピクと痙攣して…。
二度三度、瞬きをした後、ぼんやりと自分が掴んでいるものを見つめた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−

久々に更新…して続いているというのもどうなのか…って感じですが(爆)
リヴを始めてからこの10日あまり、ホント〜に何もしていないので、準備運動みたいな感じで…。。。
何も(話を)考えない日が続くと、すぐに勘が鈍るダメな私であります。

明日明後日とお休みですが、調子が良ければ天使話の続きなど…。
アップ出来るといいな、くらいな感じですが。
 
 
 
12 (Wed) Oct 2005 [no.94]
 
 
kukurunはね。。。


久々に更新かと思いきや!みたいな事になっててすみません…(爆)
もう、ここ数日はずーっと擬人化ラクガキとかしちゃっててねぇ…ミミマキだからククール髪の毛くるくるとかしちゃって、誰だよこの女の子!とかゆー状態になってました。
わーん!だって可愛いんだものーー!!!!<ミミマキムクネもククたんも!!!

つか、話を書いてこその同人屋、更新してこそのファンサイトなんですが〜(分かってるんだ〜分かってるんだよ〜)

今はすっかり『リヴリー』にメロメロで…。。。(ダメじゃん!)

まだ暫くは全てをなげうって、kukurun育成に励むつもりのようです(爆)
変わらず覗きに来て下さってる方には、本当に申し訳ないです(ありがとうございます)
自分の中の一大ブームがすぎれば、再開すると思いますので…。。。
てか、23日にkukurun育成日記な本(多分、タイトルは『団長の箱庭』ですね)とか出てたら、呆れてやって下さい。。。

つか、ホントにヒマさえあればkukurun放浪させてる。。。
そして、マルチェロの生え際とゆー島のM字ハゲとゆーリヴに餌を運んでみたり…。。。
だって何てナイスな名前のチョイス…!(><)
マルククなリヴ友出来ないかな…と思ってるんですが、巡り会わないです。。。切な…。
 
 
 
04 (Tue) Oct 2005 [no.93]
 
 
団長の箱庭



それは…あの忌々しいククールめをまんまと追い出してやって、数日が経ったある夜のことだ…。

夢枕にオデイロ院長が立った。

生前と変わらぬ穏やかな笑みを浮かべ、院長は私に何かを差し出す。

『マルチェロや、お前にこれをやろう』

それは手の平に乗る程に小さな、本当に小さな生き物だった。
「これは…?」
初めて見る生き物である。
受け取る前に思わずしげしげと観察してしまう。
モンスターの類ではないようだが…。
まあ、何にしても院長が下さるというのだ。
貰わないわけにはいかない。
それに、その生き物はなかなか愛嬌のある顔をしていた。
くるくると螺旋に撒いた耳も可愛らしいと言える。
全身を覆う薄紅色の毛はフワフワで、見るからに柔らかそうだし、ほんの少し触ってみたい気も起こって…。
「…珍しい生き物ですね…」
言いながら、手の平に受け取る。
その小さな生き物は、誰?とでも言うように首をかしげ、青いつぶらな瞳でじいっと私を見つめた。
ハッキリ言って、愛らしい。
だが、
『可愛いじゃろう?名前はククルンじゃ』
ホッホと笑いながら告げられた名に、一瞬、私の心の平穏を乱す、一番思い浮かべたくない顔がどんっと浮かんだ。

「…その名は何かイヤなものを連想するのですが…変えてもよろしいでしょうか?」

『耳がくるくるとなっておるじゃろう?じゃから、ククルンなんじゃよ』
即座に申し出た私の言葉を院長はあっさりと聞き流す。
くるくるだからククルン???
「いや、でしたらクルルンの方が…」
『名前は一度決めたらかえられんのじゃ』
諦めよと、穏やかな笑顔が言っている。
…………院長、お亡くなりになって人が変わられたのではありませんか?
私の知っている院長は…院長は……。
『マルチェロよ、ククルンはきっとお前の良い癒しとなろうて…。わしの頼みじゃ、可愛がってやっておくれ』
「…は、院長の頼みとあらばこのマルチェロ、必ずや仰せの通りに…」
恭しくお辞儀をして…。
心の中で、だが、名は変えようと…。
そう思っていたのだが、
『名前は変えてはならんぞ、ククルンじゃぞ!』
院長は念押しでそう言った。
何故か、エコーまでかかって聞こえる。
と思えば、院長の姿は光に包まれ段々と薄くなって………。
そして、消えてしまった。
「…オデイロ院長……」
私の手の中には、ククルンという名の小さな生き物がシッカリと残っていた。

かくして。
私とこのククルンという不愉快極まりない名の不思議な生き物との生活が始まった…。

☆ーーーーーーーーーーーーーーーーー☆

ちょっとした遊び心ってヤツで。。。(笑)
ホントはkukurunトコの掲示板に載っけてみようかと思ったのですが、コピペ出来なかったので、こっちに。

マイ設定で、あのkukurunは院長が下さったものとか、そーゆー事になってたのでした(苦笑)

うーん。。。
トップに島ごと張ろうかな…。。。
kukurunだし…DQ8サイドだよねぇ。。。
 
 
 
04 (Tue) Oct 2005 [no.92]
 
 
・・・ 風色の瞳・13 ・・・



「あ……」
「………」
逝ったか…と、小さく呟いて…マルチェロは再び歩き出す。
ククールは、その背におぶさったまま、何とも言えぬ気持ちで……。
夜の森の中…沈黙が降りる。

羨ましかった。

ギルとジェムの兄弟が…。
仲が良さそうで、互いを思い合っていて…。
それがとても羨ましかった。

でも…。

でも………。

「……兄貴…」
マルチェロの肩口に顔を埋めたまま、ククールはポツリと呼び掛けた。
切なくて切なくて、堪らなかった。

嫌われててもいい。
憎まれてても、疎まれてても…。
それでも…、兄貴が生きていてくれれば…それだけで……幸せなんだ。

「……長生きしてね…」

ぎゅっと抱き締めるようにしがみつきながらそう言えば…、兄は暫く黙ったままで…。

「……………バカめ」

やがて、フンと小さく鼻を鳴らしてそう言った。
「誰に言っている!」
大体、今日死にかけたのはお前だ、と。
ぶっきらぼうに。
けれど、いつもの刺々しい口調ではなく…。
「あは…そだね…」
ククールは小さく笑って目を閉じた。
兄はゆっくりとした足取りで、森を進んで行く。
木々の隙間から差し込む月明かり。
会話などはなく…、耳に聞こえるのは虫の鳴き声ばかりで…。
けれど、伝わる鼓動だけで、充分だったから。
力強いその音に、自分の鼓動を重ねて…。

兄貴…、大好きだよ…。
正面切って言ったら、アンタは嫌がるだろうし…、オレも…んなの照れちゃって言えねーけど………。
でも…。
いつか…ジェムみたいに言えるかな……。

温かな体温に眠気が降りてくる。
勿体ないと思いつつもそれに抗えず、ウトウトとしながら…。

兄貴の背中って…何か…安心するな……。
んなこと言ったら怒るんだろうけど…。

やがて…。
森が途切れ、ブライス家が見えてくる頃には、ククールはマルチェロの背ですっかり安心しきって眠りこんでいた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−

おや??
終わってないですねぇ………。。。。

ってのも、リヴリーなんか飼い始めちゃったもんで…、気になって気になって気になって…(爆)

ミミマキムクネ の kukurun ちゃんです。
島の名前は『団長の箱庭』

ちなみに、ブログから行けますので、よろしかったら覗いてやって下さいませ☆
これから更新遅くなったら、全てヤツのせいです(爆)
あーん!だって可愛いんだ〜!!!!(><)
 
 
 
03 (Mon) Oct 2005 [no.91]
 
 
・・・ 風色の瞳・12 ・・・



ごつごつとした洞窟内を確かな足取りで歩くマルチェロ。
その背に負ぶさって…。
「………」
早鐘のような鼓動。
息をすることすらままならなくて…苦しさに、目眩がしてくる。

「…ちゃんと掴まっていろ。落ちたらそのまま捨てて行くからな」

「はい…」
早すぎる鼓動も、手が震えていることも、みんな伝わっているのだろう。
兄の素っ気ない言葉に小さく頷いて…。
信じられないこの状況を、何とか信じようと努める。
しがみつく手に力を込めれば、体温と匂いが一層近くなって…また、鼓動が速まった。

兄貴…ごめんね…。
オレ、兄貴を信じてなかった…。
こんな事…絶対ないって…思ってた。

兄貴がオレを助けてくれる事なんて…絶対ないって…。

でも、助けてくれたね…。

モンスターもやっつけてくれたし、ケガの治療もしてくれて……こんな…おんぶなんて……。
すっげーありえねー事ばっかで……ホント夢みたいで…。

でも、マジ嬉しい……。

ジワジワと滲んでしまう涙。
ズズッと鼻を啜る。
「………」
ふいに、マルチェロが何かを呟いたような気がして、ククールは顔を上げた。
「え?何?」
「いや…、それより、お前はブライス家を抜け出して来たのだろう?」
「…うん、多分…」
こんなカッコだし…と、靴も履いていない自分の足へ視線を落とす。
兄の腕に抱えられ、地上から随分と高い位置に浮いている足は、あちこちに擦り傷が付いており、泥まみれで…お世辞にも綺麗とは言い難い。
マルチェロは舌打ちこそしなかったが、深いため息を付いた。
「…お前はまだルーラを使えないのだったな…」
「うん…、あ…!」
兄の言わんとすることを察し、ククールは小さく声を上げる。

ブライス家へ…行ってくれるんだ…。
ってことは……兄貴はブライス家へ行ったことがないからルーラでは行けないし……。
もしかして…このまま…?

し、幸せ過ぎかも!!!!

きゃー♪と、ククールが幸せモード大全開でピンクのハートを大量に辺りへまき散らしていると、


『ククール、良かったね!』

不意に響く、子供の声…。
「あ…ギル!」
ハッと視線を巡らせて見れば、近くの木の枝に、ギルが座っているのが見えた。
その姿はマルチェロにも見えたのだろう、密着している身体が、僅かに強張ったのを感じて…。
やっぱり、兄弟だからかな…などと、ほんの少し嬉しく思いながら…。
「ギル、モンスターはやっつけたけど…これでジェムは危険じゃなくなったのか?」
聞けば、ギルはニッコリと笑って頷いた。
『うん、ありがとう!聖堂騎士はやっぱり強いね!ボクも…なりたかったな…』
マルチェロの青い制服を見つめるギルの顔には、子供らしい憧れと、何処か大人じみた諦めの表情がある。
その顔と声に、何かを感じて…。
「……ギル…」
何と言っていいのか分からず、迷っていると、
『…あのさ、ククール…。ジェムに、大好きだよって言ってくれる?』
ギルは優しく微笑んでそう言った。
「あ、ああ、いいぜ!分かった!」
『ホントは自分で言いたいけど…ジェムはボクが見えないから…』
「え…見えないのか…?」
寂しげな言葉に、驚いて…。
マジマジとギルを見つめる。

ジェムはあんなにギルのこと好きなのに…。
ギルのこと…見えないんだ……。
守ってくれてたのに…。
心配してくれてたのに…。

全然、知らないんだ…………。

「………」
知らず、ぎゅっと…。
マルチェロにしがみつく腕に力がこもる。
兄がどんな顔をしてギルを見ているのか、後にいるククールには分からなかった。
だが、とにかく、ただ静かに………。

『…もう行かないとね…。もっと、ずっとここにいたいけど…』

スウッと、ギルが目の前に降りてくる。
小さな、本当に小さなその姿。
まだまだ本当に年端もいかない子供だというのに…と、何だか切なくなってくる。

『ホントにありがとうございました』

ギルは礼儀正しくきちんとしたお辞儀をして…。
そして…そのまま、淡い光となって霞むように…消えてしまった。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

わー、ダメだ!
もうちょっと書いたけど間に合わないや…(爆)
とゆことで、キリが悪いので、ここら辺で切っておく……。。。
明日締められたら、明日で終わりです〜☆(><)

 
 
 
01 (Sat) Oct 2005 [no.90]
 
 
いつか天使の降る空へ



「……礼拝にも出ずに…ここで何をしている?」

ガチャリと開けたドア。
一歩部屋に入るなり、マルチェロは室内に向けてそう訊ねた。
目の前には誰の姿もない。
だが、ハッキリと感じる人の気配。
自分の私室も兼ねている団長室…その、公私のスペースの区切りとなっているついたてを睨んで…。
マルチェロは部屋に入ると後ろ手にドアを閉めた。

「ククール、出てこい」

ゆっくりと部屋の中を進みながら、声をかける。
だが、部屋の中にいるはずのククールは、返事を返すことも、ついたての奥から出てくることもなく…。

寝ているのか?

そう思い、憮然とした顔でつかつかと歩いて、私室スペースへと入る。
ベッドの上には、毛布にくるまる物体が一つ…。
「ここで何をしている!聖堂騎士団員、ククール!」
妙な膨らみの毛布をガバッと引き剥がして、
「な…っ?!」
…そして、現れたのは、真っ白な羽だった。

真っ白でフワフワの、鳥のような羽…………。

白い寝間着の背中を突き破り、しっかりと身体から生えている真っ白な……。

「あ、兄貴…っ」
その羽の向こう側から、こちらを振り返って…涙を浮かべた青い瞳が困り果てた様子で見上げている。
「…………☆」
「ど…しよ…っ、オレ、起きたら…こんな、なってて…」
「何…だ、一体…羽、だと?」
混乱のため、二人揃って言葉は途切れ途切れになってしまって…。
「うう、あにきぃ…」
「…バカな…」
唖然としたまま見つめ合う。
マルチェロの手から、掴んだままになっていた毛布が、バサリと落ちた。
それを合図にでもしたように…。

「…思い出せ。物事には必ず原因があるモノだ」

突然、マルチェロがそうキッパリと言う。
「昨日は何をしていた?何か変なモノを食べたのではないか?だから拾い食いはするなといつも言っているだろう!」
「してねーよっ!オレは犬か!」
「ならば、女か?!まさか、貴様、妙な薬を使ったりは…」
「し・て・ま・せ・んっ!何だよ、妙な薬って!」
「ならば何だ!!!」
「原因不明だからここにいるんだろーがっ!」
ぎゃーぎゃーと、今度は二人揃って喚いて…。
睨むように見つめ合ったまま…。
うぬぬと兄が唸れば、むむむ〜っと弟も唸る。
「人の身体に羽など……面妖な…」
「オレ、どうなっちゃったのかなぁ…」
「知るか!」
「元に戻ると思う?」
「…何とも言えんな…そもそも…何故、ここに来た?」
院長の所でなく?と訊ねられ、ククールは俯いて唇を噛みしめた。
それから、上目遣いに兄を伺い、言い難そうに少し迷いを見せる。

「……アンタしか…思いつかなかったから…」

むうと唇を尖らせ、ぼそぼそと…。
そのククールの言葉に、マルチェロは僅かに目を見張った。
「羽見て、パニック起こして……そしたら、兄貴のことしか頭浮かばなかった…」
「………お前…」
緑の瞳と青い瞳が絡み合う。
それは、先ほどまでとは違い、何か…穏やかで和やかで……。
「…兄貴…」
その空気に、ククールがほわんと胸を温かくしかけた…その時。

「私に、見せ物小屋にでも売られるのではと…、そうは思わなかったのか?」

マルチェロはやや呆れたような声音でそう言った。
「お……思わなかった…!つか、売るの?」
ククールが目を丸くして、それから不安げに訊ねる。
「いや、それよりも宣伝に使う方が効果的か…」
フムと真剣な顔で…。
「オデイロ院長の祈りの最後に天井から降りてくるのはどうだろうか…お前なら天使といっても十分通用するだろう」
真っ白な羽と、やたら整った弟の顔を見比べ、頷くマルチェロ。
「あの、かなり本気っぽく聞こえるんですけど…」
「私はいつでも本気だ。天使の飛来した修道院…いや、天使の祝福を受けた修道院…。いいアイデアだと思わんかね?」
「ひ、酷い!!!兄貴の鬼っ!」
「この羽は動かせるのか?飛ぶことは?」
わーんと泣き伏したククールに、けれどマルチェロは平然と訊ねた。
聞いてねーし、鬼兄貴!と尖らせた唇でぶつぶつ呟き、恨みがましい視線を向けてから…。
「飛ぶのは試してねーけどぉ…」
ククールはバサリと羽を広げてみせる。
団長室の三分の一ほどの私室スペース…。
そのスペースいっぱいに広がる、純白の天使の羽…。
それは何やら、淡く発光までしているようで……キラキラと厳かでいて柔らかな光を纏い、ククールが人間ではない何か別のものに見える。
マルチェロですら思わず息を呑んで見入るその美しさ。
「…飛んでみる?」
そんな兄の様子に気をよくし、ふよふよと軽く羽を動かしながらククールは訊ねた。
だが、

「いや…ここでは狭いだろう」

マルチェロはあっさりと首を振って…。
その手が純白の羽を撫でる。
柔らかで暖かなその感触。
それを楽しむように、ゆっくりと形を辿れば、ククールが小さく身を竦めた。
「……」
「どうした?」
訊ねられ、首を振る。

……頭を…撫でられてるみたいだ…なんて言ったら…きっと、もう触って貰えない……。

顔を赤く染め、俯いてしまったククールがそんなことを思っているとは知らず、マルチェロはその意味を取り違えてニヤリと笑った。
「ほう、感覚があるのか…」
面白い、と呟いて…。
「…っ」

触り方が変わる。

「…き、気味が悪い…とか、思わないの?」
ゴクと唾を飲み込み、訊ねれば、エメラルドの瞳がスウッと細められた。
それは、微笑んでいるような、何か眩しいものを見つめるような、そんな顔で…。
「別に」
マルチェロは静かにそう呟いた。

ーーーーーーーーーーーーー

土日用SSは新しいお話に。。。。
今回、アンジェロな感じで☆
つか、風色の瞳がね、ホントはこーゆー話だったのですよ。

そう……そもそもの始まり…それは夏コミ一日目の帰りのことでした…(遠い目)

地下鉄のホームを歩いていた時、流ちゃんがたまたま目にした『女優の霊が云々』とゆー記事のタイトルを呟いたのです(もはや覚えてない…何にしても胡散臭い記事だったような…(笑))
その瞬間、私の脳裏に浮かんだのは、天使になったククたんが天に帰ってしまうのを一生懸命に留めようとするお兄ちゃんの姿でした。。。(何じゃそりゃ!)

ま、そゆことで。
風色の瞳の方では、導入部を謝り全く違う話に発展してしまったので(え)、とりあえず、今回はとっとと天使化させたのでありました。
スグに終わるお話の予定です。
って、多分更新は来週の土日どっちかかと思いますが。。。
また読んでやって頂けると嬉しいです〜☆でわでわ。
 
 
 
30 (Fri) Sep 2005 [no.89]
 
 
・・・ 風色の瞳・11 ・・・



夢を見ていた。
マルチェロが懸命に自分の傷を治療してくれている…そんな夢。

青ざめた顔に汗を浮かべ、何度も、何度も、回復呪文を繰り返す兄、マルチェロ…。

全部夢かな、と、ククールはぼんやり思った。
兄を見ている自分は、まるで飛んででもいるかのように、フワフワして何やら頼りない感じで…。
痛みも、熱さも、寒さも、何も感じない。

きっと全部夢なんだ。
だってそうだよ。
兄貴が助けに来てくれるなんて…。
兄貴が、オレのケガを治療してくれるなんて…。
こんなの、こんな幸せなの…夢に決まってる。

夢に……。

「…っげほ…っ」

ふいに…咳き込んだのと同時に甦る、寒いという感覚。
痛みはないが、何故か目眩を感じ、何やら気持ちが悪くて……。
「…ぅ…ん……」
呻けば、すぐ真上にあるマルチェロの顔がハッと強張った。
マジマジと自分を見つめるエメラルドのような瞳。
温もりが、ジワジワと伝わる。

………ホントなのか?
夢じゃ…ナイ…のか?

「…気づいたか…?」
うっすらと開いた瞳がぼんやりとしたまま、それでも信じられないと言うように自分を見上げていることに気づき、マルチェロは小さく尋ねた。

「…ぁ……き…」

あにき、と。
その唇の微かな動きは、そう告げて…。
弟はひどく幸せそうな笑みを浮かべる。

「…ククール…」

それにホッとしながら、けれど、だからといってどんな顔をすればいいのか分からなくて…マルチェロは眉間にしわを寄せた。
いつものような険しさのない顔…。
眉根を寄せたその顔は、何やら困っているかのようで…。
「…うれし…よ…」
そんな兄に微笑んだまま、ククールは囁くように言う。

夢じゃなかった…。

兄貴が助けに来てくれて…。
兄貴がケガの治療をしてくれて…。

オレ、すげーウレシイ…。

「ありがと…」
コクと小さく喉が動く。
弱々しげな呼吸。
未だ血の気の薄い顔。
ジワ…と潤む瞳に見つめられ、マルチェロはぷいっと顔を逸らした。
「…私は礼は言わんぞ」
憮然として言うが、ククールはそれにきょとんとした顔を返して…。
何の礼?と、本当に分かっていない様子で、僅かに首を傾げる。

…ケガの衝撃で記憶が飛んだか?
それとも……本当に無意識の行動だったのか…。

「………」
ククールの問いかけにマルチェロは暫しの間黙っていたが、やがて、何事もなかったかのような顔を向けた。
「起きれるか?」
「…ん…」
よろよろとククールが身を起こす。
僅かな動作に出る溜め息。
まだまだ本調子ではないらしい。
頭の奥がジンと痺れたように痛んで…。
顔を顰めたククールを見て、マルチェロもまた顔を顰めた。
「どうしたの?」
「…………いや…」
何やら迷いの見て取れる兄の顔。
普段、即断即決の冴える兄にしては珍しく、複雑な顔をして…また暫しの間…。
ワケの分からぬまま、ククールが次の言葉を待っていると…、
「……仕方あるまい…」
マルチェロは何とも渋い顔でそう呻いた。
そして、ククールのスグ側にしゃがむと、背中を向ける。
「………え…?」
大きく大きく見開かれる、薄水色の瞳。
向けられた背の意味に、ただただ驚いて………。
「早くしろ。置き去りにされたいか?」
照れているのか、ぶっきらぼうなマルチェロの言葉。
「え、だ、だって……あの…、お、おんぶ…ですか…?」
「歩けないなら仕方あるまい」
洞窟の中ではルーラも使えんからな、と。
忌々しげにぶつくさ言って…。
「ほら、本当に置いていくぞ」
「……は、はい!」
ククールは自由のきかない身体を何とか動かし、兄の背におぶさった。

−−−−−−−−−−−−−−−−

はい、皆様ご一緒に☆
『あーりーえーなーーーい!』
…とか、言いたくなるような、この展開!(え…)
おんぶだってよ!お・ん・ぶ!!!!!
…うっうっうっうっ…。。。
ふ……、ふれあいが見たいんだよ〜、見逃してくれよ〜!!!(><)

まー。まー。まーーー。。。ね。

続きはまた来週、とゆことで。
多分、あと少しで終わりだと思います。はい〜。
 
 
 
29 (Thr) Sep 2005 [no.88]
 
 
・・・ 風色の瞳・10 ・・・



「…………」

いつも…目障りだと思っていた。
邪魔な存在だと。
いなくなればいいと…………。

そう、コイツさえ生まれなければ……。

いつだって、そう思ってきた。

その筈だった……。

だが………。

「………」
目の前で倒れているククールを呆然と見つめ、マルチェロは僅かの間逡巡した。
肩と腹から流れ出る真紅の血は、身体の下に血溜まりを作り、痛みに歪んでいた顔は、すでに表情をなくして……。
「………何故……」

何故、私を庇うなどと……。

その蒼白な顔を見つめながら…胸の中に何かモヤモヤとしたものが広がるのを感じる。
出会ってからずっと…嫌っていることも、疎んじていることも、隠した事などなかった。
いつだって、きつく厳しくあたってきた自覚がある。
酷いことも沢山してきた。
なのに何故、と…。
思えば思う程に、何か苦いようなもので…胸が苦しくなって…。

お前は……私がいなければと……思いはしなかったのか…?

『危ないっ!兄貴っ!』

そう叫んだ声が耳から離れない。
前に飛び出すククール。
その身体を貫く黒い棘。
吹き出すように飛び散った鮮血。
そして、流れる銀の髪…。

スローモーションのような映像が頭の中、何度も再生されて…。

マルチェロはぎゅっと拳を握りしめた。
こうして考えている間にも、ククールの血は流れ出て行くのだ。
上司として、部下をみすみす死なせるような真似は出来ない、と…。
そう胸の内で己に言い聞かせるようにして…その場に膝をつき、傷を調べる。
貫通している肩の傷は、特に問題はなさそうだった。
骨にも異常は見られない。
だが、脇腹は……。
刺さったままになっている棘は、その大部分が身体の中に埋まっているような状況で…。
一見するだけでも分かる程に、酷い状況だった。
ゴクリと咽が鳴る。
伸ばしかけた手が僅かに震えているのに気付き、マルチェロはまさかと思った。

…まさか……。
コレを…失う事が怖いとでも……?

「…バカな…」
短く否定して傷口に手をかざす。
1回のベホイミで肩の傷は見る間に癒えた。
続いて、脇腹に深々と刺さっている棘を引き抜く。
途端、溢れ出す鮮血にゾクとしながら…その傷口に手をかざして…。
1度、2度…。
闇に沈む洞窟の中で、癒しの光が目映く輝いた。


−−−−−−−−−−−−−−−−

ククたん引き続き負傷中〜。
お兄ちゃんベホイミしか使えないからなぁ…ううむ、とか。

今日は内部監査の為、短めで…。
昨日は普通に仕事が忙しく…。。。
何だよもー!SS書く時間ナイじゃんか!プリプリとか思ったりしてましたが、いやいや、会社は仕事するトコだよ、ナナセさん☆怒るトコじゃないから!とゆー(笑)

今週はお疲れモードで、家に帰ってからは殆ど何もしていないダメッぷりです。。。。
次のイベントまで間があるから余計にねぇ…。
てか、昨日の就寝9時半って!
いつもより6時間も早いよ!!!(爆)
今日こそは起きてていろいろやりたいです〜☆
 
 
 
27 (Tue) Sep 2005 [no.87]
 
 
・・・ 風色の瞳・9 ・・・

 

伸ばした手が、ククールの腕を掴む。
前に踏み出そうとした足の下、カラカラ…と、岩の崩れ落ちる音がして…。
ククールは呆然と、闇の広がるその下を見つめた。
足下に大きな穴がぽっかりと口を広げている。
もし、一歩でも先に踏み出していたら、ククールは真っ逆さまにその中へ転落していただろう。
そして…、恐らくその先にはモンスターが待ちかまえている…。
そう見て間違いないと…それを知って……。
ククールはゆるゆると、自分の腕を掴んで止めてくれた相手を振り返った。
「…ぁ…っ」
薄水色の瞳が大きく大きく見開かれる。
暗い洞窟の中、それでも、その手の持ち主を知る事は出来たから……。
信じられない気持ちで…。
「……あに…き…?」
寝間着の袖から出た、素肌の腕。
そこに伝わる兄の手の温もり。
「……嘘……何で……あにきが…」
声が震えてしまう。
目の奥が熱くなって…ジワリと視界が揺らいだ。

来て…くれた…。
兄貴が……兄貴が…ギルみたいに…!

それは、絶対に無い事なのだと、ククールが半ば絶望していた事だった。

ジェムのように、自分は兄に愛されてはいないから……。

だから、兄はギルのように自分を助けようとしてはくれないと…。
マルチェロには、弟である自分を守ろうという気持ちなど、微塵もありはしないと…。

ここで、もし自分がモンスターに殺されても、きっとどうとも思わずに…むしろ、喜ぶかも知れぬとさえ………。

でも、兄貴は来てくれた…!
来てくれたんだ!

目の淵でゆらゆらと揺れていた涙が、瞬きと同時にパタパタとこぼれ落ちた。
「なんで…ここが…?」
尋ねる声は掠れて…震えている。
マルチェロは何とも複雑な心境で、掴んでしまった腕と、驚きと喜びの見て取れる弟の顔を見つめた。
「あ、ギルに聞いたの?」
兄に霊が視えるかどうかは分からなかったが、可能性はあるかもと尋ねる。
だが、
「……ギル…?」
マルチェロは聞き慣れぬ名に、一瞬眉を潜めて…。
「ああ」
それから、声を出して頷いた。
「ブライス家の死んだ長男か……」
成る程、途中聞こえた子供の声はソイツか…と、納得する。
「…違うの…?」

じゃあ、何で分かったの?と…。

ククールがそう聞こうとした時だった。
「っ!」
不意に、マルチェロが掴んでいた手を強く引いて…。
自分の後ろへと、ククールを放るように、突き飛ばすように…。
「うわっ?!」
小さく上がった悲鳴を背後に聞きながら、マルチェロは抜き払った剣を構え、眼下の闇を見据える。
大きな穴の底に蟠っている闇の中から、感じるのはすさまじい殺気…。

『……邪魔をしおって……折角、ここまで呼んだと言うのに…!』

マルチェロの声でもギルの声でもない、しゃがれた声が洞窟内に響き渡った。
「ほう…ようやく正体を現したか…」

『…後少しだったのに…!あと少しで美しいククールを…喰らう事が出来たのに…!』

洞窟内を満たす程の憎悪が、障気となってマルチェロに向けられる。
「!」
ビュルビュルと音すら立てて飛来した触手のようなモノを、けれど、マルチェロは焦ることもなく剣で薙ぎ、切り落として…。
「……!」
ククールの耳に短く小さな呪文の詠唱が聞こえたと思った次の瞬間、轟音と共に燃えさかる炎がモンスターめがけて放たれた。
洞窟内の闇を、一瞬消し去る赤々とした炎の光……。
その光に浮かび上がったモンスターの姿はクモのような多脚の生き物で…闇のような黒い身体に、真っ赤な瞳をしているのが見て取れた。
モンスターに着弾した炎が、ドォッと火柱を上げる。
その衝撃によって生まれた熱風が洞窟内を走り、燃え上がった炎が天井を舐めるように広がった。

あにき……すごい…!

兄のメラゾーマの凄まじい威力に圧倒され、ククールは洞窟の床に片膝をついたまま…。
だが、炎の中で揺らめいた影を見るなり、身体は反応して…。
「危ないっ!兄貴っ!」
叫びながら、兄の前に飛び出す。
「なっ?!」
その身体を、小さな黒い固まりが一つ二つ…刺し貫いた。
「何だとっ?!」

『ククール…おいで…』

ククク…と、炎の中からしゃがれた笑い声が聞こえる。

『共に…行こう…』

「あぁあっ!」
モンスターの吐き出した黒い固まりは、棘のような物だった。
それは、一つはククールの肩を貫通し、もう一つは脇腹に深々と刺さって…。

溢れ出す鮮血。
苦痛にゆがむ顔。
崩れ落ちる身体。

銀の髪が長く長く…揺らめいて……それは、スローモーションのようにゆっくりと、視界を下へと落ちて行く。

「ククールッ!」

叫んだその声は…自分の声ではないような、何処か必死な声だった。

そして、次の瞬間には…洞窟内から深夜の森へと眩い光が走って……………。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ククたん負傷!
もし、ククたん死んじゃったら(縁起でもない)絶対幽霊になってマルチェロさんに憑いちゃいますよね〜☆

「ハッ!これでストーカーし放題?!!!!いいじゃん!幽霊!」

……結構エンジョイしそうだよ……。。。
でも触れないから切なくなっちゃうの〜。
そんで、お兄ちゃんがポツリと「ククール」とか、自分を思い出してくれたりしてんの聞いちゃったりしてね、「うわーん、兄貴ー!」ってなるの。
で、最後はきっとイシュマウリが何とかしてくれるんだよ(笑)
(便利だなぁ、イシュマウリ…)

 
 
 
24 (Sat) Sep 2005 [no.86]
 
 
ラブリーベイベ☆3

『じゃ、オレ着替えてくるね』
そう言って、ククールが自室へと逃げるように消えた後…。
マルチェロは途中で止まっていた夕食の支度に戻った。

…痴漢……痴漢だと……?

イライラなのか、ムカムカなのか…。
つい今し方されたククールの話には、何やら腹の底から沸き立つモノを感じて…。

全くけしからん!
何だってアレはあんなにあっけらかんとしていられるのだ!
見知らぬ輩に触られて、不快だとは思わんのか?!

胸の中でぶつぶつと呟きながら、冷蔵庫を開けて…。
綺麗に盛られたサラダを取り出しながら、朝のラッシュで混雑する車内の映像が浮かぶ。

ごちゃごちゃと詰め込まれ、身動きすらままならぬ状況のククール。

そこに、知らぬ誰かの手が伸びて……。

まず、何処から触るのだろうか…。

ちらりと頭を過ぎる、そんな考え…。
思えば、痴漢が一体どのようなことをするモノなのか、被害にあったことのないマルチェロにはよく分からない。

やはり、尻か…?

だが、女性と違って、男は尻など触られたところで別にどうとも思わない気がする。
何かが当たっていたとして、誰かが好き好んで、自分の尻を触っている!等と、すぐに思うものだろうか…。

「うーむ…とすると………まさか…前なのか?!」

制服に包まれたククールの身体…。
その前へと伸ばされる手…。
最初は微かに…撫でて…。
ピクリと、その身が緊張に跳ねるのを眺めて…。
次第にハッキリと…与えられる感覚。
ククールは逃げようと身を捩るが、自由の利かぬ混雑の中では、それも上手くは行かずに…。
ジワジワと、快楽に蝕まれて…。
「ぅう…」
噛み締めた唇のその奥から、小さく声を漏らすかも知れない。
赤く染まってゆく目元…。
あの薄水の瞳が潤み、熱い吐息を漏らして……。

「………」

…いや、確かにアレの感度はいいが…痴漢の手になど感じるのか?!

マルチェロはむっつりと黙り込んだまま、サラダを睨み付けた。
「あ〜…腹減った…。今日の夕飯何?」
パタパタと、着替えを済ませたククールがキッチンへと入って来る。
Tシャツに短パンというラフなその姿…。
長い素足を惜しげもなく露わにしたその姿は、先ほどまでと違う健康的な色気を醸し出していて…。
だぼだぼとしたTシャツから、うっすらと分かるボディラインに、またしても想像力が刺激されてしまう。

この身体を…痴漢の手が這ったのだ…!

痴漢というのは、腹や胸を撫でたりもするのだろうか…?
まさか、ズボンの中に手を入れたりなど……そこまでは……いや、だが、しかし…!!!

『ぁ…、や…っ』

微かな拒絶の声…。
怯えた瞳は、けれど熱に潤んで…。
首筋に、相手の息を感じるかも知れない。
柔らかな尻を撫で、その間に指を埋めて…。

「………っ!」

なまじ、ククールの身体の隅々までを知り尽くしているだけに、想像は想像だけに留まらず…実際の感触までもリアルに思い浮かべてしまう。
ムカムカムカと沸き起こる怒りは、ムラムラムラと、違うモノもまた沸き起こさせて…。
ソレが余計に腹立たしい。

……コイツは自分の容姿の良さを分かっているクセに、無防備すぎる…!
だからこそ、不穏な輩に狙われるのだ!
痴漢なんぞに触られおって〜〜〜っ!!!

「どしたの?怖い顔して…」
ソレ運ぶの?と手元を覗き込む弟に、兄は眉間にシワを寄せたまま…。
「…ククール…」
「何?」
呼べば、きょとんとして見上げる薄水色の瞳。
マルチェロは再び冷蔵庫を開けると、サラダを戻した。
「兄貴?」
「食事の前に話がある」
「え?何?」
「そこに真っ直ぐに立ってみろ」
そう言ったマルチェロの言葉に、ククールはワケが分からないながらも言われた通り、その場で背筋を伸ばした。
「こう?」
首を傾げ、訪ねる仕草も愛らしい。
マルチェロはその顔を少しの間眺めていたが、やがて、背後に回り込むと…。

「…言ってみろ。痴漢はどのようにしてお前に触れた?」

耳元に囁いた。
ククールがビクリと身を竦ませ、振り返ろうとするが、マルチェロはソレを許しはしなかった。
「何をされたのだ」
「な、何って…そんな大したことじゃ…」

てゆか、兄貴…気になってたの?!

驚きにドキドキしてくる…が、それと同時に、何やら怖い気もしてくる。
ここで返答を誤れば、酷いことをされるのでは…と、そんな予感めいた閃き…。

「……ちょっと…尻触られただけだってば…」

「ほう?」
もごもごと言う弟に、マルチェロは片眉を上げた。
サワ…と、長い指が尻に触れるの感じ、ククールはビクと身を竦める。
「こう、か?それとも…」
触れている手に軽く力が入り、双丘の間へと指が沈んで……。
「こうかな?」
そのまま怪しげに蠢く指先…。
「…っ、ちょ、ま…っ、兄貴っ!オレ、腹減ってるんですけどっ!」
「質問に答えろ」
「…だ、だから…、最初は軽く撫でられてて……それからそーゆーことしようとしたから…、手掴んで…やめろって…ちゃんとオレ言ったよ?」
「それで?やめてくれたのか?」
「痴漢は犯罪だろ!」
やめるに決まってるじゃん!と叫びながら…身の内に生じてしまった熱に、顔が赤く染まる。
「…顔が赤いな…息も上がっている……痴漢の手にも感じたのか?」
「っ!」
ククールがハッとしたように振り返る。
傷ついたような、怒ったような顔で…。
「アンタだから…感じるんだ…っ!誰が…痴漢なんかに…っ!」
そう言って、噛み締める唇。
密着する身体が、わなわなと震えたのを感じ、マルチェロは小さなため息を漏らした。
「…すまなかった」
素直な謝罪。
背後から腕を回し、ぎゅっとククールを抱きしめる。
「少し想像が行き過ぎたようだ…」
ポニーテールにされたままの髪を避け、首の後ろにちゅっと数度口付けて…。
それは何処か、あやすような…甘い仕草で…。
「……どんなこと考えてたんだよ…」
少し涙の混じった声に、ややぶっきらぼうに聞かれ、マルチェロはクスリと苦笑した。

「教えてやってもいいが…食事は夜中になるぞ?」

「!」
正面にあるドアのガラスに、二人の姿が映っている。
大きく目を見開くククールを、楽しげに眺めるマルチェロ。
ガラスの中に映る互いと視線が合う。

「………いいよ」

ククールが、ポツッと言った返事に、笑みを深めて…。
マルチェロは、赤く染まった耳にちゅっと口付けた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

あたしはむしろ、お兄ちゃんを触りたいね!と思いながら…(痴女)
段々と深くなる眉間のシワを眺めたら楽しいだろうなぁ♪

紫にするほどでもないんだけど、一応。。。
やっぱ好き嫌いありますしね。


えーと。
昨日…になってしまいましたか、もう。。。
イベント参加の皆様、お疲れさまでした〜!
ウチにお立ち寄り下さいました方には、どうもありがとうございましたvvv
何だかあっと言うまで……。
ああ、このイベントに出たくてDQ8での活動決めたんだよね…なんて思うと、ホントに一つの節目というか…、何か、ああ終わっちゃったなぁ…みたいな。。。。。
混乱もなく、良いイベントでしたね☆
またあったらいいなぁ…ってのが正直な思いですが、主催業務の大変さを思うと、そんなことは軽々しく言っちゃいけないってのもあるので…うん。
楽しかったです!と。

ま、そんな感じであります〜☆
 
 
 
22 (Thr) Sep 2005 [no.85]
 
 
・・・ 風色の瞳・8 ・・・



突然出てきた自分の名に、一瞬ドキリとして…足が止まる。
聞き間違いかとも思った。
だが、

『ニセモノだよ!呼んでるのはニセモノのマルチェロだ!』

続いた言葉に、成る程と状況を概ね理解して…。

私のニセモノに呼ばれて、アレはノコノコとこんな所まで来たというのか?

そう思うと、何やら奇妙な感情が胸に湧き起こる。
モヤモヤとするような…。
ムカムカとするような…。
何を騙されているのだ、と…そんな腹立ちを覚え、マルチェロはククールを捕まえようかとも思った。
だが、どうせならモンスターの元まで案内させるべきだな…と、こちらはいつも通りの冷静な状況判断で思って…。

自分の知っている者に化ける能力があるモンスターなのか…?
……オデイロ院長にでも化けられたらやっかいだな…。

ここはやはり、このままククールを囮にする方向で行くのが無難か…等と。
そんな事を考えている内に、どうやら目的の場所へとたどり着いたらしい。
森の木々が切れ、突き当たった岩肌にぽっかりと洞窟の入口が空いている。

この森にこんな所があったとは…。

マルチェロが感心している間にも、ククールはその真っ暗な穴の中へ躊躇もせずに入っていってしまった。
足を早め、その後を追う。
「?!」
洞窟内に一歩踏み込んだ途端、内部に満ちる禍々しい程のモンスターの気配…。

そして、マルチェロはここで初めて聞いた。

ククールに語りかける、モンスターの声を……。

『…いい子だ…ククール…。さあ、おいで…あと少しだ…』

優しく語りかける、自分と同じ声を…。
それにゾッとするのと同時に、もの凄い嫌悪感を覚える。

ククールはコレに呼ばれるまま、ここへ来たというのか?!
こんな…こんなコトをこの私が…。

言うわけがないと、ムカムカしながらそう思いかけた時…。

「…兄貴…じゃない……」

ククールのか細い、涙に濡れた声がそう呟いた。
「兄貴じゃない……違う…」
モンスターの術に抗うように、首を振りながら…けれど、その足はジリジリと先へ進んで行く。
「………」
その様子に、また何やら複雑な感情を覚えて…。

分かっては…いるのか…。
分かっていて、それでも尚はね除ける事が出来ないのか…?

マルチェロはもう少し様子をよく見ようと、ジリ…と間合いを詰めた。
『ククール、私に会いたいのだろう?』
モンスターの声が、そう囁く。
「……っ」
ククールは大きくしゃくり上げた。
「……兄貴…っ」
子供のように泣きながら、そう呼ぶ声は、まるで助けを求めているかのようで……。
チクリと胸に走った小さな痛みにマルチェロが顔を顰めていると、ふいにククールの前に広がる闇がユラ…と妖しく揺らめいた。
そして、その闇の中から現れたのは、手…。
差しのばされた手…。
ククールの目がそれに釘付けになって…息すら忘れたかのように瞬きもせず、ただじっと…。

『おいで、さあ…』

闇の中からゆっくりと、その手の持ち主が姿を現す。
それは…優しい笑みを湛えた…子供の頃のマルチェロだった。
「!」
「……あに…き……」
『ククール』
優しく笑いかけ、手を差しのばしている子供のマルチェロ。
けれど、響くその声は、今のマルチェロのものである。
『さあ、こっちだ』
「…ぁ…」
呼ぶ声にククールがよろめいた。
ヨロヨロと近寄り、その手を取ろうと自分もまた手を伸ばして……。

マルチェロは一瞬、動く事が出来なかった。

目の前のその光景に、何故か…見入ってしまって…。
マルチェロ自身、覚えはある。
ククールに笑いかけた事など…、初めて会ったあの時の…一度だけだから………。

だが…何故…今更こんな姿で………。

ククールの手が、あと少しでニセモノの手を捕らえようという様を、じっと見つめたまま。
「?!」
「あ…っ」
けれど、その手が触れようとしたまさにその瞬間、ニセモノのマルチェロはスウッと遠離って……。
何故か闇の中へ再びその姿を隠してしまった。
『こっちだ、ククール…』
笑みを含んだ声が、闇の中から呼び掛ける。
「ぁ、ま…、待って…兄貴!」
「待て、ククール!」
ニセモノを追って走り出そうとしたククールに、マルチェロは思わず手を伸ばした。


−−−−−−−−−−−−−−−−

ムカツクムカツクムカツク!と…思わず呟くような事が、今あり…。
何を書こうとしてたのか忘れてしまいました(爆)

いいもん!明日は兄弟オンリだもん!(><)

明日いらっしゃる方、どうぞよろしくお願い致します〜☆
つか、ドラクエオンリは初めてなんだ♪
どんなだろ〜vvv楽しみ〜♪♪♪

はっ☆
もう機嫌治ってるよ!何て単純な!!!(笑)
 
 
 
21 (Wed) Sep 2005 [no.84]
 
 
・・・ 風色の瞳・7 ・・・


 
『ククール!そっちはダメだよ!』

突然、澄んだ子供の声が響いて…。
ククールは立ち止まり、声のする方を振り返る。
それは、昼に会ったギルの声だった。
「…ギル?」

『ククール、どうした?こっちだぞ…』

兄の声がまた呼ぶ。
ククールは立ち止まったままで、そちらの方へ首を向けた。
真っ暗な夜の森…。
二人とも、声だけはハッキリと聞こえているのに、姿が見えない。

『ククール、ジェムの所に戻って…ここは危ないよ』

『ククール、早くおいで…こっちだ、さあ、何をしている…』

二人の声は揃って、けれど全く違うことを言う。

「…兄貴……じゃない……」

ククールはポツリと呟いた。
ジワジワと心を浸食するような悲しみ…。
そして、悔しさ…。
顔が歪む。

『ククール、何を言っている?さあ、早くおいで…こっちだ…真っ直ぐに歩いてくればいい』

『ククール、行っちゃダメだよ。ククールの好きな人じゃないよ。マルチェロじゃない』

ぽろりと、涙が溢れた。

そうだ。
兄貴じゃない…。
兄貴は…おいでなんて言わない。
オレに優しく話しかけたりしない。

そんなの…分かってる……。

『…ククール…真っ直ぐに来るんだ』

また、兄の声が呼ぶ。
「兄貴…」
ひっくと、しゃくり上げて…。
ククールは一歩前に踏み出した。

『クク−ル!!!』

ギルが鋭く叫ぶ。

『そうだ…お前は、私の言うことだけを聞いていればいい…』

笑みを含んだ声…。
邪悪な色をちらつかせるその声は…けれど、何故か今までで一番、本物の兄に近かった。
「…兄貴……」
ふらりと…。
声に呼ばれるまま…ククールは森の奥へと歩を進めた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「……全く…聖堂騎士団の恥さらしめが…」

ふらふらと、森を歩いて行くククールを見つけて…。
マルチェロは苦々しげに呟いた。
寝間着姿で、しかも靴も履かずに裸足のまま…。
時折、キョロキョロと視線を彷徨わせ、そして、何かと会話をしているように、頷いたり返事をしたりしているククール。
様子がおかしい事は一目で分かった。
恐らく、モンスターか何かの術にはまり、操られているのだろう。
気付かれぬよう距離を保って跡を付けながら、何故、自分が気付いてしまったのかと…忌々しい思いに顔を顰めて…。
虫の知らせ…等と思う事すら、腹立たしい。

あんな男…人知れず死んでくれても一向に構わん筈なのだが…。
だが、こんな修道院から目と鼻の先の森で、人に害をなすモノが生息しているというのは見過ごす事が出来んからな……仕方がない…。

微かに差し込む月明かりに、何もかもが青く見える。
そんな中、何故かぼんやりと浮かび上がるように見えるククール。
白い寝間着を着ただけの姿でフラフラと歩いている弟は、何やらとても無防備で…。

……何だ?
アイツ…泣いているのか?

チラリと見えた横顔にそれを見て取り、マルチェロは何やら複雑な気持ちが浮かぶのを感じた。

ククールはフラフラと森を進んで行く。
マルチェロは気付かれぬよう気を付けながら、少し距離を縮めた。
すると、

『ククール!ダメだよ』

どこからともなく子供の声がして…。
マルチェロは足を止め、周囲に視線を走らせた。
だが、何処にも子供の姿など見つけられず…。
「?」
気配は、ある。
だが、姿が見えない。

……正体を現した…というワケか?
いや、それにしては様子がおかしいか…。

『ククール!危ないよ!』

声の主はククールを止めようとしているようだ。
だが、ククールはその声が聞こえていないかのように、前だけを見つめ歩いて行く。
どうなっているのかと怪訝に思っていれば、

『ホントのマルチェロじゃないんだよ?分かってるんでしょ?ククール!』

子供の声がそう叫んだ。


−−−−−−−−−−−−−−−−−

ククたん…マネマネとかに殺されそうだよね。。。なんて思うのだった…(爆)
あ、マネマネでいいか…マネマネ…。
8に出てこなかったけど…(あれ?いないよね??モシャスってリーザス村の女の子しか使わないよね…)

てか。
お兄ちゃんが助けに来てくれた模様☆(模様って…)
虫の知らせとかって、あるよね〜とゆーことで。
血は水より濃いわけですな。

つか、明後日はいよいよ兄弟オンリっすよ!!!!!!
わっくわく〜!!v(><///)
3連休は遊び倒す予定なので、ここの更新はないと思います〜。多分ね。←・・・。

って、まだ明日一日あるじゃんよ!(笑)

 
 
 
20 (Tue) Sep 2005 [no.83]
 
 
・・・ 風色の瞳・6 ・・・



眠れない……。

ククールは何度目かの寝返りを打ち、溜息をついた。
ジェムと話をした後からずっと…、頭の中はマルチェロの事でいっぱいになってしまって…。
胸もいっぱいになってしまって……。
何だかよく分からぬ苦しさに、溜息ばかり漏れる。

ギルとジェムの兄弟は、自分達兄弟とは何て違うんだろうと………。

分かってはいるのだ。
ギルとジェムが特別なのではなく、自分とマルチェロの関係が特別なのだと、ククールはちゃんと分かっている。
ククールは修道院に来るまで、兄の顔も、名も、そもそも…その存在すら…知らなかったのだ。
そんな兄弟はそういないだろう。
ましてや、自分が生まれた事で、兄が家を追い出され、その事でずっと憎まれている等………。


…兄貴……オレに…『お兄ちゃん』っぽい感情とか…持ったことってあんのかな…。


「ねぇだろうな〜……ああ、聞くまでもねぇよ……」
ふと頭を過ぎった考えに、自分で答えを出して…自嘲気味に笑う。
「ホント…バカみてぇだよな…」

兄貴がオレに持ってる特別な感情なんて……殺したいくらい憎いとか…きっとそんなんだけだ…。
わかってんのに…。
知ってんのに…。

なのに、どうして…こんなにも恋しいんだろう…。

自分が兄を思い浮かべる時、いつもその顔が見えていない事にククールは気づいていた。
一体、いつからだろうか…。
昔は、兄を思い浮かべるときは必ず、初めて会った時のあの優しい笑みを湛えた…正面から見た姿だった。
だが、いつ頃からか…、ククールが思い浮かべるマルチェロは、やや斜め後ろから見た…顔の見えない角度で…。
真っ直ぐに先を見ている兄を、斜め後ろから見ている…そんな感じなのだ。
それはきっと、自分に向けられる瞳に耐えられないから…。

ギルを『大好き』だと言ったジェムの輝かしい顔を思い出す。

あの時、ククールが羨ましいと思ったのは、何かジェムの言葉や態度に誇らしさのようなものを感じたからだ。
ククールがマルチェロを好きな気持ちには、必ず『でも』という言葉が付いて回る。

自分は兄が大好き。
『でも』、兄は自分が嫌い。

兄が自分を嫌い『でも』、自分は兄を好き。

兄が自分を嫌っているという事実が、ククールの好きという気持ちに引け目のようなモノを感じさせる。
兄には言ってはいけないのだと…。
人には言えないと…。
何故か、そう思ってしまって……。
もう、ずっと…心の中に秘めていた思い…。

「………オレだって…、オレだって……好きだよ…」

ジェムがギルを想うよりずっと、ずっと好きなのだと…子供じみた競争心のようなものを感じながら。
「……オレの方が……ずっと………」
頬を伝った涙が、ポタリと枕に落ちて…小さなシミを作った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


『出て行け』

冷たく言い放たれた、その一言。
怒りと憎しみで燃えていた瞳…。

初めて会ったあの人が…本当の『お兄ちゃん』で…。
たった一人残された、血の繋がった家族だった…。


いつからだったろう…。
『兄貴』って…呼ぶようになったのは……。


昔は、こっそりと『お兄ちゃん』って呼んでた。
面と向かって言えば怒られるから、ではない。
面と向かって何かを言えるほど、近くになんていさせて貰えなかった。
いつだって、不機嫌な顔ばかり向けられて…。
怒りばかり見てきた。

本当は優しいのに……。

あれから一度も…笑いかけて貰った事なんてなくて…。

ああ、そう。
そうだ……笑いかけて欲しかった。
もう一度、手を差し伸べて欲しかった。
その手を、ちゃんと掴みたかった。
今度こそ、ちゃんと……。


『…ククール…』

ふいに名を呼ばれ、ククールはハッとして顔を上げた。

『ククール…』

ハッキリと名を呼ぶ声がする。
低く甘い…兄の声が…。

『ククール?どうした?』

…何?
何が、どうした?なの?

ククールはそう怪訝に思いながら、マルチェロの姿を探した。
鬱蒼とした森の中…。
何故、こんな所にマルチェロがいるのかと、少しだけ疑問に思う。
だが何故か、それでいい気がして…。

「兄貴?兄貴、何処?」

きょろきょろと周囲を見回し、呼びかける。
だが、すぐ近くにいるはずの兄の姿は何処にも見えない。

『こっちだ…ククール』

ただ、声だけが聞こえて…。
自分を呼ぶ兄の声は、いつもとは違い、とても優しい声だった。
そう……ずっと昔…初めて声を掛けてくれた、あの時のように…。

「…こっちでいいの?」

子供のように頼りなげな声が、自分の口から漏れた。
情けない、と叱責されるのではと思うが、

『真っ直ぐに来ればいい…そう…』

兄は優しい声でそう言う。
「真っ直ぐ…」
うん、わかった!と素直に頷いて、ククールはガサガサと茂みを掻き分け、森の奥へ進んだ。
細い木の枝が、柔らかな肌に傷を付ける。
いつも手に付けているはずのグローブは、今はなくて…。
ふと気付けば、ククールは寝間着のまま…靴も履いていない。
裸足の足は泥で汚れ、石や木で細かな傷があちこちに付いていた。

……どうして裸足なんだろう…?

ぼんやりと疑問に思う。
兄とは言え、マルチェロは上司である。
その兄に会うのに、こんな姿でいいのだろうか…と…。
思うのだが、

『ククール、何を心配している?何も不安に思う事などない…』

兄の声が優しくそう囁くので……。

そうか…、これでいいんだ…と納得し、ククールは嬉しそうな笑みを浮かべた。


−−−−−−−−−−−−−−−

さてさて。
ククたん何やら妙なモノに呼ばれております。

おかしい……最初考えていたモノとどんどん違う感じになってる…(汗)と思いつつ。
会社にいる間にチマチマ行き当たりばったりで進めてるんだもんね…、そりゃ思いつきで変わるわなぁ…とか、開き直ってみたりもして…。

まあ、とりあえず、明日に続く!なのであります〜★

 
 
 
18 (Sun) Sep 2005 [no.82]
 
 
ラブリーベイベ☆2



濃紺の襟には真っ白なライン。
そこにかかる、ポニーテールにされた銀の髪は艶やかで…。
短いプリーツのスカートから、長い足が惜しげもなく出ている。
自分にピタリと張り付いている弟をしげしげと観察し、何やら溜め息が漏れた。
なまじ顔がいいのも考え物だな…と、苦い思いが浮かんで…。

「お前…本当にこの姿で帰ってきたのか…?」

今更ながら呆れたように問えば、当の本人は何も分かっていない顔で頷いた。
「途中までみんなと一緒だったし…宣伝とか言ってさ♪」
面白かったぜ♪等と笑っている弟に、再び溜め息が漏れる。
学生の悪のりというのは、どうにも付いていけないモノがある。

教師は何も言わなかったのか?
コレはともかくとして…こんなカッコが似合う男子生徒等そうそういないだろうに……。

「全く…」
呻くように呟き、マルチェロはククールの身体を少しばかり離した。
「大体、上も下も短すぎる!痴漢にでも遭ったらどうするのだ…情けないとは思わんのか?」
「えー?そうかな〜…ってゆーか、痴漢なんてフツーのカッコしてたって、あうときゃあうし…」
薄いピンクの唇に指を一本当てて呟いた弟のそのセリフに、マルチェロがカッと目を見開いた。
「何だとっ?!」
「あ…」
しまった☆とばかり、口を押さえるククール。
だが、そんなことはすでに遅い。
マルチェロは恐ろしい程の剣幕で、ガシイッと肩をつかんだ。
やたらと真剣な緑の瞳に、じっと見据えられる。
「お前…痴漢に遭っているのか?」
「…え…や、あってるってゆーか、まあ、たま〜にあうこともある…みたいな…?」
「何故、私に言わなかった!今まで一回もそんな話は聞いたことがないぞ!」
「言ってどうすんのさ…そんな…ってか、女の子じゃないんだしさ〜」
それに、格好悪いじゃん…痴漢にあったなんて…と、視線を逸らしたままボソボソ呟くククール。
「貴様のその態度がいかんのだ!痴漢は立派な犯罪だぞ!」
「…そんな大袈裟な…」
「大袈裟ではない!貴様という奴は…そんな危険にさらされた経験がありながら、チャラチャラとこんなカッコで帰ってきおって〜〜〜!!!!!」

き…危険にさらされた経験………。
兄貴…オレ、ちょっと触られた位なんですけど…。
それに、一応ちゃんととっちめてやったりしたんですけど……。

顔を真っ赤にして怒っている兄に、ちょっと付いていけないモノを感じながら…、それでも、自分が痴漢に遭ったことでこれほどまでに怒るとは…と、何だか嬉しくなってみたりもして……。

兄貴ってば、何だかんだ言ってもオレのこと自分のモノみたく思ってくれちゃってんだ♪
何だよ、も〜♪♪

「じゃあさ、もし、兄貴と一緒に電車乗ってたとして、オレが痴漢にあったらどうする?」

エヘヘ♪なんぞと笑ってしまいながら、甘えるように上目遣いで見上げ、そう聞いてみる。
「決まっているだろう。痴漢は現行犯逮捕だ。となれば、やることは一つ…」
マルチェロはキッパリハッキリそう言った。
ククールは「うん」と頷き、続きを促す。
「その場で取り押さえ、次の駅でホームに降りて…」
「うん」

「その次の電車が来るのを待ち、線路内に叩き落としてやる」

「ちょっと兄貴!それ殺人っ!てか、現行犯逮捕でしょ?!逮捕!駅員さんとかお巡りさんに引き渡すのが正しいんじゃ…」
兄の言葉に弾かれたようにツッコミを入れたククールだが、言った本人はフンと何故か胸を張って…。
「痴漢なんぞやらかすような輩は、百害有って一利なし。社会のゴミだ。速やかな排除こそが正しい処理なのだ!軽犯罪扱いで済ます等生ぬるい!」

いやいやいやいや、ダメでしょ、それ!!!!!
てゆか、排除とか処理とか言っちゃダメだから!

「あ…兄貴、でも、軽犯罪の相手に重犯罪犯すのはどうかと……」
物騒極まりない発言を力一杯してくれた兄に、恐る恐るそう言えば…。
「…ふむ、それもそうだな…ならば、人目のないところまで連れて行くか…」
マルチェロはあっさりと頷いて、今度はそう言った。

結局始末しちゃうんですか、お兄様〜〜〜っ!

「……兄貴……兄貴の会社とオレの学校が反対方向で良かったって…、オレ、今初めて思ったよ……」
人知れず抹殺するには何処がいいか…等と本気で呟いている兄に、ククールは心の底からシミジミと呟いた。

ーーーーーーーーーーーーー

お兄ちゃんがすっかり変な人になっちゃった…(爆)

前に書いたセーラー服ククたんのお話の続きで…。
いや、続くつもりなど全くありませんでしたが、ふと、制服と言えば痴漢プレイ!とか思っちゃいまして…えへ。
痴漢話など。。。
つっても、やってませんけど。
どうせなら、チラリと覗く腹など、大いに触って頂きたいモノです。うむうむ。

つか、痴漢だとか痴女だとか…。
実際、男の子でも被害に遭うモノなんですよね〜。
ウチの弟も高校生の頃、中央線で結構遭ったと言っておりました。
同人界の中だけの事じゃないんですねぇ。。。
 
 
 
16 (Fri) Sep 2005 [no.81]
 
 
・・・ 風色の瞳・5 ・・・


「ククールがいないとね、おにーちゃんの声が聞こえるんだよ」

その夜…。
ベッドに入ったジェムが、秘密を打ち明けるといった風に、声を潜めてそう言った。
「…へえ…、何て言ってるんだ?」
数時間前、本人(?)に会っているククールは興味を引かれて訊ねる。
ギルは、ククールの事を知っていたようだった。
ジェムにはギルが見えるのかもしれない。
もしかしたら、ジェムを狙っているという『悪いモノ達』について、何か聞いているかもしれないと、そう思って…。
だが、
「おにーちゃんは森の中にいるんだ。それで、ジェム、こっちだよって」
ジェムは少し考えてから、そう言った。
「…呼んでるのか?ギルが?ジェムを?」
「うん」
「それは……えーと…、ギルは危ないとか…何かそーゆーことを言ってないか?」
ククールにとっては意外だったその言葉に、戸惑いながら…。
訊ねれば、ジェムは不思議そうな顔をした。
「危ない?言ってないよ?何で?」
「じゃあ、呼んでるだけなのか?」
「うん。こっちだよってゆーの」

…どういうことだ?
ジェムに心配をさせない為に、ギルは何も言っていないのか…?

『呼ぶ』霊は危険である。
もし、それが本当ならば、聖職者の端くれとしては見過ごす事が出来ない。
「………」
困ったな…やっぱ相談するべきか?と、ククールがやや重い気持ちになっていると…。

「でもね、ボクが森に行っても、おにーちゃんいないんだよ?何でかな?ボク、おにーちゃんに会いたいのに…」

そう、寂しげに…。
「…ジェムは…ギルが好きなんだな…」
「うん!大好き!」
思わず呟けば、ジェムは輝かんばかりの笑顔で頷いた。
「そっか…」
真っ直ぐで…素直な気持ちが何だか眩しい。
『大好き』と言い切ったジェムに羨ましさを感じ、ククールは僅かに視線を逸らす。
だが、

「ねえ、ククールにもお兄ちゃんいる?」

そんな微妙な空気など、子供に分かるはずもなく…。
ジェムは澄んだ瞳でそう訊ねた。
「……ああ…」
「お兄ちゃんのこと好き?」
「………」
訊ねられたその言葉に、思わず言葉に詰まる。
「好き?」
「…ああ…」
「じゃあ、同じだね」
ボソリと肯定したククールにジェムは嬉しげな笑みを浮かべた。

同じ…かな…。
オレは…兄貴の事好きだけど……。
でも……兄貴は…オレのことなんか……。
ギルみたく、お兄ちゃんだから弟を守る、なんて……アイツ絶対言わないし…つか、嫌われてるし…。
それに…オレも……好きだなんて言った事…ないな…。

「ククール?どうしたの?」
「いや…。もう寝ろ。また明日になったら遊んでやるから、な?」
くしゃと頭を撫でてそう言えば、ジェムはうんと元気に頷いた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−

おおお。。。
時間がありませんでした!(><;)

今週来週と三連休続きで嬉しいですね!!!
明日入稿済んだら、お休み中でも何かしら更新かけたいなと思っております。
よろしければ覗いてやって下さいませ★
 
 
 
13 (Tue) Sep 2005 [no.80]
 
 
・・・ 風色の瞳・4 ・・・

 

「…んだよ、マルチェロのヤツ……っと、ワケわかんねぇ…」

ブツブツと呟きながら、ククールは森の中をブライス邸へと戻っていた。
何だろう、このモヤモヤは…と思う。
別に、何かされる事を期待していたわけではない。
…と、少なくともククールは思っている。
痛い目に遭わされる事を望む人間など、よっぽどの物好きでもない限りいないだろう。
だが…。
それでも…。

今日はまた、随分とアッサリじゃないか?
何だよ、わざわざ呼びつけたクセに……。
しかも、地下なんかにさ…何のつもりだったんだよ、アイツ…。
その上………。

そっと、顎に手を触れる。
マルチェロが掴んだその場所。
覗き込まれた瞳を思い出して、ドキンと鼓動が高鳴った。
「!」
ぶんぶんぶんっと、慌てて首を振る。

ちっがーーう!
ドキンじゃねーだろ!ドキンvじゃ!
何を乙女にときめいちまってんだ!!!

あーもー、オレってば!と、思わずその場にうずくまって…。
「…うー…」
覆った顔の下から、何とも情けない声で呻く。
ジッと見つめられたあの時…。
ククールは、もしかしたらキスをされるのでは、と…少し…いや、かなり期待してしまったのだ。
そんな事を思ってしまった自分が、何だかもう恥ずかしくて、悔しくて……。

何だよ何だよ、何だよ!

「…マルチェロの甲斐性なし!ちゅーぐらいしやがれってんだ!」

ヤケになってそう叫んだ。
森の中に入ったとは言え、まだ修道院からはさほど離れてはいない。
誰かに聞かれる可能性もなきにしもあらずだったが、聞こえたら聞こえたでいーもんね!と、完全に開き直って…。
だが、

「ククールはマルチェロにちゅーされたいの?」

突然かけられた、子供の声には飛び上がらんばかりに驚いた。
慌てて声のした方に視線を向ければ、一人の子供が木の陰からこちらを伺っている。

ジェム……じゃない、よな?

金の巻き毛。
青い瞳。
ふっくらとしたバラ色の頬。

ジェムに瓜二つのその外見に…、一瞬目を疑って…。
ククールが驚いていると、
「ねえ、マルチェロってゆー人はククールの好きな人?」
子供はニコニコと人懐こい笑みを浮かべながら寄ってきた。

「……お前、ジェムの友達か?」

ヒシヒシと感じているある予感…。
それに緊張を覚えながらも、ククールは訊ねた。
子供はニコニコと笑ったまま首を振る。

「ボクはギルだよ。ジェムはボクの弟」

ああやっぱり…。

ククールはその子の言葉にどんよりした気分になって…。
さてどうしたものか、と考えを巡らせた。
ギルと名乗るジェムにそっくりな男の子。
つまり、目の前にいるこの子は、幽霊というヤツになるわけで…。
ククールは人よりもカンが良く、昔から、度々そのような者達を視ることがあった。
だから、何となく…そうではないかとは思ったのだ。
だが、ここまでハッキリとした幽霊を視たのは初めてである。

「…ギルは…何でここにいるんだ?」

ククールは不必要にギルを刺激しないよう気を付けながら、訊ねた。
「ジェムがここに来るから」
「……ジェムを待ってるのか?」
成仏出来ずにいる霊が、寂しさから他者を呼び込もうとするのはよくある事である。
ギルもまたその類であろうかと…。
その可能性が高いと思いながら、重い気持ちで訊ねるが、ギルはううんと首を振った。
「違うよ」
「じゃあ、どうして?」
再び訊ねれば、ギルはククールを真っ直ぐに見上げて…。

「ボクはお兄ちゃんだからジェムを悪いヤツから守ってるんだ」

力強くそう言う。
「悪い奴ら?」
「そうだよ。悪い奴らが狙ってるんだ」
ククールが鸚鵡返しに呟くと、ギルは真面目な顔で頷いた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

さーて…どうしたものか…。
コレって立派な異常事態ってヤツだよな。

ククールは屋敷への道を戻りながら、考え込んでいた。
辺りは既に陽が傾き、薄暗く不気味な様相を呈して…。
時折、モンスターらしきものの声が聞こえるのが、その雰囲気に一層の迫力を加えている。

この森の中に、何か悪いモノがいるらしい。

そして、それらはジェムを狙っているらしくて…。
ギルは、その悪いモノ達から弟を守るためにこの森にいるのだと言う。
それは恐らくはモンスターなのだろうが、どんなものなのか…。
ギルは説明をせずに消えてしまった。

「…迫っているらしいけど、よく分からない危険……そして、それを教えてくれた幽霊との遭遇………コレって…正直に報告しなきゃかな…」

呟きながら、ぽわんと兄の鋭い瞳が頭に浮かぶ。
こんな内容で報告書を書こうものなら、間違いなく2時間はイヤミとお説教の嵐だろう。
『成る程、なかなか面白い作り話だ…』と、冷やかな声まで聞こえて来る気がする。

「……やっぱ…再調査の上、ご報告させて頂きましょうかね…」

それが無難であるという結論に辿り着き、ククールは一人うんうんと頷いて…。
何にしても、まずは屋敷に戻るべきだなと、足を早めた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

調べモノをしていて、ネット上をグルグルしてたら、あっという間に時間が過ぎてしまいました…(爆)

てか、〆切が迫っておりますね〜!(><)<23日合わせの
どうしてあんなに早く原稿に取りかかったのに、まだ終わってないんだろう…と不思議でならない感じなんですが…。。。
ホントに遅くなった……とか、嘆いてる場合ではなく、とにもかくにも頑張るべし!!!なのであります。
 
 
 
12 (Mon) Sep 2005 [no.79]
 
 
・・・ 風色の瞳・3 ・・・



子供の朝は早い。

「ねえねえ、ククール!今日は何して遊ぶ?」

ブライス邸に警護役として泊まり込むことになってから、既に3日…。
毎朝のようにジェムの強襲にあっているククールは、今朝もベッドに飛び乗られた衝撃で目を覚ました。
ぼよんぼよんとベッドの上で跳ねる元気なお子様に、ククールはどんよりとした視線を向ける。
「…オレはまだ眠い…」
「ボクはもう眠くない。ククールは朝寝坊だね。どうして眠いの?」
「眠いモンは眠い…。何でも、どうしてもねーの…」
「じゃあ、5つ数えてあげる。起きなかったらくすぐります。いーち!」
「…かんべんしてくれよぉ………」
「にーい…」
「…ねみー…」
「さーん…」
「…んー……すー…」
「しーい」
「ぐー……」
「ごーおっ!はい!くすぐりのけい、決定〜!」
もぞもぞもぞと、ベッドの中に潜り込んで…。
ジェムの小さな手が、ククールの脇腹を擽る。
「うわあぁっ?!」
突然、自分の身体を襲った感触に、間の抜けた悲鳴を上げて…ククールは飛び起きた。
「や…っ、ば…っ!よせって!コイツ!」
それでも離れずに擽っているジェムを掴まえ、逆に擽ってやれば、きゃあきゃあと賑やかな笑い声を上げて喜ぶ。
「ったく!まだみんな起きてねーだろ!」
「だって、ボク目が覚めちゃったんだもん。大人はどーして朝遅くまで寝てるの?」
「大人は夜忙しいの!」
「何が忙しいの?」
「いろいろとね。そりゃまー、ジェムが大人になったら分かるさ」
バチンとウィンクしてそう言えば、ジェムはハーッと溜息をついた。
「大人はすぐそーゆーんだ。ずるいんだよな、大人は…」
「ま、そーゆーもんなわけだ」
不満げに唇を尖らせているのに、クスクスと笑って。
ククールはあちこちに跳ねているジェムの髪をくしゃくしゃと掻き混ぜた。


警護を始めて3日間…。
特に異常はなく…。

ジェムも森に行きたいと言い出すことはなかった。
その代わり、
「ククールがずーっとここにいてくれたらいいな…」
そう度々口にして…。
ジェムはすっかりククールに懐いていた。



そして、何も起きぬままに更に2日……つまり、5日が過ぎた頃…。

マルチェロから一度報告に来るようにと命が下って…。

兄からの呼び出しにはいい思い出などない(いや、普段でもいい思い出などナイに等しいのだが)ククールはやや気重たさを感じながら。
出かけようとしたところをジェムに捕まった。
「ククール、何処行くの?」
「ん〜…まあ、ちょっと野暮用…」
「やぼよーって何?」
「……聖堂騎士のお仕事でね、修道院に行かなきゃいけないんだ」
「せーどーきしのお仕事か…じゃあ、仕方ないね…。でも、帰ってくるでしょ?」
ジェムの大きな青い瞳がじいっと見つめてくる。
それを見つめ返して…。
「ああ、帰ってくるよ、夕方には」

多分…。

コッソリ心の中で付け足す。
報告など、毎日帰っている者達に聞いているはずなのだ。
何も起きていないのだから、詳細も何もあるわけがない。
それをわざわざ呼びつけるというのは………。

……歪んでても愛情…とか思って喜ぶべきなのかな……。
まー実際、兄貴の顔見れんのは嬉しい気もするし…。

「ホント?約束だよ!」
「ああ」
ゆびきりげんまんをさせられ、苦笑しながらククールは階段を下りた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


カツン、カツンと。
石造りの階段を降りてくるブーツの音が微かに響いてくる。
ゆっくりと、けれど力強い…。
あまりにも聞き覚えのある、その音…。

地下の拷問室の、その1つ前にある部屋の中。

専ら、取り調べなどを行うその部屋で、ククールは足音の主を待っていた。
足音は一歩ずつ、確かに近づいてくる。
あの人が、もう直ぐここへ来るのだと思うと、それだけでドキドキとして…。
何をする気なのだろう…と、兄の思惑を測る。

どーせ、イチャモン付けたいだけだとは思うけど……。
つか、報告聞くのに、場所がここってのがそもそもどーよ…。

変わらぬ間隔で近づく足音。
距離がどんどんと迫って…迫って……そして、0になったと思った直後、ガチャリとノブの回る音が大きく響いて…。
ノックもなしにドアが押し開かれた。
ドアを開けたその場所で立ち止まったまま、マルチェロは室内のククールを見る。
「……っ」
真っ直ぐな緑の視線に、一瞬、射竦められて…。

たった5日だ。

ククールが修道院を離れていたのは。
だが、そのたった5日……何て平和で穏やかに過ごしていたのだろう、と…。
そんな事をシミジミと思ってしまう程の緊張感に、息すら忘れて固まっていれば、兄はツカツカと部屋に入って来た。

「警護役はシッカリと務めているかね?」

低く、何処か甘い声が訊ねる。
ククールはそれにハッとして…視線を僅かに逸らした。
「……毎日の報告は受けているのでは?」
「私は今、お前に聞いているのだが?」
静かな、けれど有無を言わさぬ様子の兄の言葉に、ククールは表情を硬くして…。
「…ブライス家ご子息の警護役、日々滞りなく務めております。現在迄の所、不審点並びに異常事態等は確認出来ておりません」
事務的な口調で報告する。
「ふむ…。夫人の行動に不審点は?」
「不審点、疑問点は特に見られません。子息、使用人についても同様です」
「屋敷の周囲等に不穏な気配は?」
「…特には…感じておりませんが……」
「…では、心配はないと見るかね?」
チラリと…流される視線。
それを見つめて、

「…現在の所は…」

ククールはそう呟いた。

これで、警護は打ち切りかもしれない。
そうなれば、ジェムとの約束を守れないな…等とチラリと思う。
だが、
「そうか…だが、もう暫く様子を見る。お前は引き続き警護の任に当たれ」
マルチェロは一瞬の迷いも見せずにそう言った。
「はい」

…あれ?何だ?
今…何か……チクッて…。

胸に走った僅かな痛み…。
それに戸惑っていると、
「…どうした?」
真上から、声を掛けられた。
顔を上げれば、いつの間にか兄はスグ側まで来ていて…。
あっと思う間もなく、顎を掴まれる。
「あ…な…っ?」
突然の行動に驚き、ククールは目の前の顔を凝視する事しか出来ずに…。
何をされるのか…と内心ドキドキしてしまうのだが、マルチェロは何をするでもなく、ただジッとククールの顔を見つめるばかりで…。
不安と期待に胸が騒ぐ。
近過ぎる視線。
息すらかかる程のその距離は、兄の大きさを改めて感じさせるようで…。
段々、息すらままならなくなってくる。
「あ、あの…?一体…?」
ククールはドギマギしながらも、何とかそう訊ねた。
すると、マルチェロは突然パッと手を離し、
「いや。もういい。戻れ」
そう言って、それきり…。
ククールに背を向けてしまった。
「へ?あ、あの?」
「報告が以上なら、ブライス家へ戻れと言っている」
「…は…あ…」

ワケ分かんねーーーーっっ!
な、何だよ、何だよ、今のっ!
もーーーーーーーっっ!!!

突然、放り出されたような形で…。
ククールは釈然としないまま、それでも言われた通りにドアへと向かった。
だが、ドアを開けようと、手をノブへ伸ばした瞬間に。
「……ククール」
思いもかけず、呼び止められて…。
「はい?」
振り返れば、マルチェロは何かを考え込んでいる顔のまま視線を床に落としている。
「何でしょう?」
何か変だな…と思いながら、発言を促すように訊ねれば、
「…いや…何でもない。寄り道せずに戻れよ」
兄は軽く頭を振り、行けと手を振った。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

どうも…あたしの書く話には、リーダーっぽいマルチェロ兄さんってのが圧倒的に足りない…(爆)
とゆことで。
ククたんに報告とかさせてみましたが。
そーゆー事じゃない…みたいな。。。。

てゆか、やっぱこの二人が揃っていると、進の早いな〜。
(進むのってゆーか…言葉が出てくるのが、かな)


ところで、この話のタイトル『風色の瞳』…コレを見て、あー昔、某アニメの某キャラが歌ってた歌?とか思う人っているのかな…?
ちなみにあたしは征士さんのファンでした。
 
 
 
11 (Sun) Sep 2005 [no.78]
 
 
お掃除中の発見物・4?

4だっけ?と、たった今見たはずの数字を忘れているヤバ気なナナセであります……(爆)

チュウする前なのかした後なのか…。
こんなんばっかいっぱいあるんだ…(恥)


・・・・・・・・・・・・・

グイと、乱暴に引かれた髪…。
突然のことに、ただ驚いて…。
バランスを崩して、倒れ込むのを防ぐ為、咄嗟に掴んでしまった肩…。
そこから伝わる体温に、胸が騒ぐ。
近すぎる視線は、何を考えているのか分からず……戸惑ったまま、逸らすことも出来ないで…。
見つめ合う、永遠のような一瞬。

・・・・・・・・・・・・・

なんて感じで。

原稿中なので、更新してる場合では…と思いつつ、ラクガキモノのアップくらいなら出来るよね。と…。
ドラクエはラクガキいっぱいしてるんだな。。。と、改めてシミジミ。


ううむ…。
眠い。寝よう…(爆)
 
 
 
09 (Fri) Sep 2005 [no.77]
 
 
・・・ 風色の瞳・2 ・・・

 
 
修道院に戻ると、すぐにオデイロの部屋へと呼ばれて…。
行けば、そこにはオデイロとマルチェロの他にジェムの母親の姿があった。
それに、もう来たのかと感心しながら…。

「ご苦労じゃったの、ククールや」

「いえ、遅くなりまして…」
オデイロからかけられたねぎらいの言葉にそう言えば、この老院長はニコニコと笑って頷いた。
「話はブライス夫人より聞いておるよ」
「ククール様には本当に息子がお世話になりまして…」
「あ、いえ、そんな…もういいですから、顔を上げて下さい」
「ですが、オデイロ様のご用がありましたのでしょう?こんなに遅くなってしまって…」
心底すまなそうに言っている夫人に、寄り道などしなくて本当に良かったと思うククール。

あぶねーあぶねー…。
あそこで呼び込み断ってホント良かったぁ〜!
これも、今日いいコトしたお陰かな…神のご加護ってヤツ?

なんて思って…。
「あの、ホント…気にしないで下さい」
勧められたイスに腰掛け、出されたお茶をありがたく頂く。
客人&院長の手前…というよりは、兄の手前、本来は遠慮しなくてはいけないのかも…な所だが、何と言っても今はもう夕飯時を過ぎているのだ。
空っぽの胃に染みるような、温かな紅茶に、ああ…腹減った…とシミジミ思い、コッソリと溜息をつく。
「…それで…あの…?」
オレを引き留める理由って何ですか?と、ククールは3人の顔を順番に見つめた。
だが、3人は一様に口を開く事はなく…。
室内は暫し、奇妙な沈黙に支配されて…。

何だよ何だよ…この変に重い空気……。
つか、オレってここに座ってていいのか?
すっげー居辛いんすけど……。

そう思いながら、長い前髪の隙間にチラリと…正面のマルチェロを盗み見る。
兄は何処を見るともなく…ただ静かに何かを考えているようだった。
組まれたままの長い指が、一定の間隔で小さく動いている。

こっち…見ないかな……なんて…。
いや、見たトコで別に何もねーんだけど…。
どうせ目があったら睨まれるだけだし…。

ちぇ…と、ククールが心の中でつまらなく思った時…。
「何やら…心配事がありそうな様子じゃの…」
ようやくといった感じで、オデイロがそう夫人に切り出した。
「…えっ?!…ええ、まあ……あの…」
夫人は一瞬驚いたように目を見開き、それから何故かオロオロとして…。
視線が3人の間を彷徨う。

「はて…杞憂であればいいんじゃがの…」

オデイロは穏やかな瞳で夫人を見つめた。
「無理にとはいわぬが…困った事があるようなら、話してはみんかの」
力になれる事もあるじゃろう、と…。
あくまでも優しいオデイロ。
夫人は僅かに迷いを残したまま、それでも縋るようにオデイロを見つめ、
「…あの、実は…そうなんでございます…。少し…困っているのです……」
そう語り始めた。
「実は…ギルが……あ…いえ、私の所の息子なのですけれど…」
「えと、ジェムが捜していたお兄さんですか?」
「ええ…。あの…実は、ギルは…1年以上も前に亡くなっているのです…」
「え?でも…?」
ククールは驚きから小さな声を上げたが、マルチェロとオデイロは静かに夫人の次の言葉を待つ。
「あの森で遊んでいて…魔物に…。ギルがもういない事を、ジェムも分かっているはずなのですが……」
「それじゃ、何で…」
「…それが、何故かここ数日、ジェムは急に『お兄ちゃんを捜しに行く』と言い出すようになって……私も一体どういう事なのか…」
本気で戸惑っているらしい夫人の言葉に、ククールはオデイロとマルチェロの顔を見た。
「さて…子供の心とは不思議に満ちたものじゃが……危険が伴うとなっては…心配じゃな…」
長いヒゲを撫でながら言ったオデイロの言葉に、夫人が頷く。
「ええ…、幸い今までは発見が早かったので、大事には至ってないのですが……」
このままではいつどうなるか…と、今にも泣き出しそうな様子で言われ、ククールが同情の言葉をかけようとした時だった。

「ふむ…。では、暫くククールをお屋敷の方に行かせましょうか」

兄が、横からサラリとそんな申し出をして…。
「まあ、でも…そんな…よろしいんですの?」
驚く夫人にニッコリと笑いかける。

「信者の皆様の安全をお守りするのも、我が聖堂騎士団の務め。どうぞご遠慮なさらずにお任せ下さい」

ククールは、この突然の言葉にポカンとして、夫人に笑いかけている兄を見つめた。
だが、兄は正面にいる自分には視線を向けることなく…。
今度はオデイロの方を伺う。
「院長、それでよろしいでしょうか?」
「そうじゃのう…。警護と共に調査もせねばならんが…」
「では、もう一人か二人、手配しましょう。ククール、それでどうかね?」

どうかね……って………。

やっとこっちを見たと思えば、ニッコリと、有無を言わさぬ迫力の笑顔を向けられて…。
ククールは思わず絶句した。
「ククール様がいらして下さったらジェムが喜びますわ!」
ニッコリと、夫人も安心したように笑う。

「………はい。精一杯務めさせて頂きます…」

まあ、いいけどさ、別に…と、少しだけ薄暗い気持ちになりながら…。
そう返事を返したククールに、オデイロが優しく微笑んだ。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−

おおおお。
時間がありませんでした!(><;)
全然進んでないまま、来週に続くであります!!!(汗)

スミマセン〜〜〜。。。
 
 
 
08 (Thr) Sep 2005 [no.76]
 
 
マルとクク★(ウチのね…)

オー!ジーザス!にあったような感じで。
ウチの真流(マル)と玖紅流(ククル)です★
玖紅がとても幸せそうで、微笑ましいです(爆)
 
 
 
08 (Thr) Sep 2005 [no.75]
 
 
・・・ 風色の瞳 ・・・

 

何か…声が……する…?

それは、院長からお遣いを頼まれ、ドニの町へと行く途中の事だった。
森の中で聞こえたその声に、ククールは足を止め、周囲を見回す。
聞こえたのは小さな子供の声だった。
泣きながら誰かを呼んでいるような、不安げな声…。

迷子か…?

「……ん…」
今度は、もう少しだけハッキリと聞こえた。
「あっちか…」
ククールは呟くと、見当を付けた方向へ走り出す。
それは、ドニへ行く道とは全く違う方向だったが、小さな子供が迷子になっているのでは放っておくこと等出来なくて…。
あの声に魔物達が集まってくる前に保護しなくては、と。
間に合えよ!と思いながら、足場の悪い森の中、木々の間を抜けて……急ぎ駆けつけたその先に…。

「おにーちゃーん!」

泣いていたのは、何とも可愛らしい男の子だった。
金の巻き毛に青い瞳の…まるで聖母の絵に描かれた、周りを飛ぶ子供の天使のような……。
男の子は茂みの中から現れたククールに驚き、一瞬声を失ってその場に立ち尽くした。

「…あ、えーと…驚かせちゃった…かな?」

子供が無事であった事にホッとして、ククールはニコッと笑いかけながら、男の子の目線に合うようその場にしゃがむ。
「大丈夫?」
「……おにーちゃん…誰?」
「おにーちゃんはね、ククールってゆーんだ。キミは?」
「ボクは…ジェム」
涙混じりの甘えた声…。
涙に濡れた青い瞳が、じいっとククールを見つめて…。
それから思い出したようにゴシゴシと、服の袖で涙を拭った。
「ジェムか。よろしく」
「うん…」
ククールがニッコリ笑って手を差し出すと、ジェムは鼻を啜りながらその手をキュッと握り締める。
「ジェムはお兄ちゃんを捜してたのか?呼んでるのが聞こえたけど…」

子供に何かを聞くときは、一つずつ、ゆっくりと…。

オデイロ院長が前に言っていたことを思い出し、ククールは気を付けて質問をした。
ジェムはウンと小さく頷き、また表情を曇らせる。
「おにーちゃん、どっか行っちゃったの…」
ジワジワと潤み出す青い瞳…。
だが、
「そっかぁ、じゃあ、一緒に捜してみようか?」
ククールがそう言うと、ジェムの青い瞳は瞬く間に涙を消して…。
パアッとその顔を輝かせた。
「ククールも一緒に捜してくれるの?」
「うん。一緒に捜すよ」
いつまでもここにいるわけにはいかないので、ククールはそう言ってジェムを抱き上げた。


だが、その周辺をいくら捜しても、ジェムの兄は見つからずに……。

1時間近くが経った頃だろうか…。
もしかして、ジェムの兄はもう生きてはいないのかも…と、ククールが思い始めた時だった。

「ジェム〜、ジェムー!」
「ジェム坊ちゃま〜」
ジェムを呼ぶ声が聞こえてきて…。
「あ!母様達だ!」
ククールの腕の中で、ジェムは嬉しげに顔を輝かせた。
「え?あ、親御さんが探しに来たのか!」
その事にホッとして、ククールは急ぎ声のする方へと足を向ける。
すると、
「ジェム!」
少し離れたところから、身なりの良い女性が現れて…。
ジェムを抱えたククールに駆け寄ってきた。
「ああ、ジェム!良かった…!無事だったのね!」
心配したのよ!と心から安堵したように言い、母親はククールから渡されたジェムをぎゅうっと抱き締める。
「あのね、ボク、おにーちゃんを捜しに来たんだよ!ククールと一緒に捜してたの」
頬をすり寄せる母親に嬉しそうに報告しながら、ジェムは「ね、ククール!」と、ククールを見やった。
母親の目がククールに向けられ、
「まあ、そう、スミマセン、息子がご迷惑をお掛けしてしまいまして…」
そう、すまなそうに困ったように微笑んだ。
ジェムと同じ金の髪に青い瞳…。
透き通るような白い肌の持ち主で、子供が二人もいるとはとても思えない、華奢な容姿をしていた。
「いえ、これも聖堂騎士の務めですから…」
「あら、まあ…あなたマイエラ修道院の…、お役目の途中でしたのでしょう?ああ、本当に申し訳ないことを…」
「いや〜、まあ、無事で何よりですよ。魔物にも遭いませんでしたし…」
「ククールはせーどーきしなの?ボクも大きくなったらせーどーきしになるんだよ!お兄ちゃんも!そおか〜、ククールはきしなのか〜!」
すごいなー!と、男の子らしい憧れを乗せた瞳で、ククールを見つめるジェム。
子供のキラキラした瞳に見つめられ、ククールは苦笑して…「まあな…」と曖昧に言葉を濁した。
「ククール様、ですわね…後で必ずお礼に伺います…」
母親はジェムを連れの男に預けると、再度深々と頭を下げる。
「えっ?いや、お礼なんてそんな…!お兄ちゃんは見つかってないですし…。あの、心配ですね…。聖堂騎士団で捜索しましょうか?」
子連れじゃなかったら口説き文句の一つでも…って感じだよな〜と思いながら…。
ククールはそう聞いてみる。
…が、母親はその言葉に、一瞬だけ、何とも言えぬ複雑な顔をして…。
「いえ…、この子の兄でしたら、もういいんですの。大丈夫で…」
それから、ニッコリと笑ってそう言った。
「あ…見つかったんですね?良かった!」
「ええ、本当にご心配をお掛けしてしまいまして……ほら、ジェム、ククール様にお礼を言いなさい。それとお別れを…」
「えーっ、ククール帰っちゃうのぉ?」
「アナタがお家に帰るのよ、ジェム坊や…本当に困った子ね。ほら、ありがとうとさようならでしょう?」
母親に促され、ジェムは「はぁい!」と元気な返事を返す。
「ククール、ありがとうございました!で、ばいばい!またねっ!」
「ああ、またな、ジェム☆…お兄ちゃんと…仲良くな」
「うん!」
屈託なく笑うのが眩しくて、何だか羨ましいと…。
ククールは胸に僅かな痛みを覚え、顔を顰めた。

仲いーんだろうな…。
ちぇ…いいよな………。
あんな美人の母さんがいて、仲のいい兄貴がいて…。
アイツ幸せだな……。

じゃあねーっと、いつまでも手を振っているジェムに手を振り返してやり、やがてその姿が見えなくなると、ククールは盛大な溜息をつく。

「…さーて。すっかり遅くなっちまったな…」

これからドニに行って、院長の用事を済ませて、それから帰る…。
全てが終わって修道院に戻る頃には、もう夕食の時間も終わってしまうだろう。
ドニで何か食べて帰ろうかな…と、ぼんやり考えながら…。
薄暗くなった森の中を歩いて…。
遠目に修道院の明かりを見つける。

「……ちぇ。まあ、いいか……」

早く用を片して、兄貴に怒られに帰ろう…と。
何だか急にそんなことを思い、ククールは小さく笑みをこぼした。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

とゆことで。
今日からまた違う話など。。。
そんなに長くは続かないと思いますが……。
てか、マル兄さんが出てこなかった…寂しい!!!(><)とか思いつつ(笑)
明日はいっぱい出て貰おう…うむうむ。


ところで、ジェム(GEM) = 宝物、大切なもの とゆー意味だったりします。
赤毛のアン(イングルサイド辺りだと思った…)に出てきたんじゃなかったかな…。
息子の一人の愛称だったような…。

イメージが良くて好きな名前なのだった。。。
いや、それだけですが…(爆)

 
 
 
07 (Wed) Sep 2005 [no.74]
 
 
+−+−+ 憧れの人 +−+−+


ボクの憧れはドアの前に立つお役目をさせて貰うことなんです。

騎士見習いとして、ここに来て…初めてあのお部屋の前を通った時に…、

『あそこが団長室だ』

そう言われた、あの時から…ずっと…。
あのドアの向こうにあの人がいるんだって思って…。
いつか、ボクもあそこ立てるくらい、強く立派な騎士になるんだって…。
ボクがここへ来たのは、騎士見習いになるって決めたのは、家の慣習に従ったわけではなく…自分で言い出した事なんです。

そう…どうしても、マルチェロ様のお側にいたくて…。

初めてマルチェロ様を見たのは特別ミサをして貰った時でした。
オデイロ院長について礼拝堂に入ってきた、あの人を見て…。
ボクの目は文字通り釘付けになりました、
真っ直ぐに前を見ているあの緑の瞳の鋭さ…。
一筋の乱れもない黒髪。
厳しい表情。
そして、堂々としたあの出で立ち……他の誰とも違う、あの制服…。


「あのきっちりとしめられた襟の中が……見てみたい…っ!」

滔々と語っていた騎士見習いらしき人物の声は、そこで、何やら妙な熱の籠もった願望を吐露し、止まった。
途端、オーだとかワーだとか、野太い歓声が上がる。
「オレはあの腰が気になる!」
別の声が同じ様な熱を持ってそう叫ぶと、何やら数人の同意する声がそれに続いて…。
「あのピンと伸ばした背中とかもな〜…」
「つか、あの人はセクシーだよなっ!だよなっ!」
「おーおー!あの身体にフィットした団長服、マジでやらしい!」
「そーそー!どこもかしこも完全ガードな感じのトコがまたなっ!」
「あー、そっか!お前らは脱いだトコとか見たことねーんだ?」
優越感に満ちた別の声。
「先輩はマルチェロ様と同期ですよね?!見たことあるんですか?」
「は…裸とかっ?!」
ゴクリと誰かの唾を飲む音。
「そりゃ、お前。マルチェロだって最初っから団長なわけじゃねーからな」
「そうそう。オレ達同じ部屋だったんだぜ♪」
「アイツ、夜中まで本読んでっからさ、たまーに起きれねーことがあってな〜」
「そーそー!起こしてやった時の焦りようがな〜♪」
「ま、今じゃそんなん見れなくなったわけだけど…」
あの頃は良かったなーと頷きあう声。
周囲の若い声が、口々に「いいなー」だの「見たい」だのと声を上げて…。
「あ〜…、ホント、マルチェロ様…触ってみたいよな…」
「抱いてみたいって言えよ、正直に!」
「…オレは抱かれてみたい…」
「オレも」「ボクも」と…。

騎士&騎士見習い達の会話は弾んで……。
マイエラ修道院の夜は更けて……。


++・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・++


「…なぁ、隣の部屋にアンタをオカズにしてそうな輩がたまってんだけどさ……野放しにしてていーわけ?」

隣室の賑わいを、微かながらも聞き取って…。
壁により掛かっていたククールは、先程からずっと同じ体勢で本を読んでいる兄に声をかけた。

「何だ、気になるのか?」

からかうように言われ、思わず渋面になる。
そりゃなるでしょうが…と思うのだが、兄はその会話の内容を知ってか知らずか…ケロリとした顔で…。
伏せた視線は相変わらず活字を追ったまま…。
「…お前も混ざってきたらどうだ?暇なのだろう?」
「!」

暇にさせてんのは誰だよ!
自分が呼びつけたクセに、ずっと本なんか読んで…全然こっち見もしないでさ…。
くそ…ムカツク!

「あー、寧ろ混ざりたいね!つか、オレがいっとー語る資格アリだと思うし?奴らが聞きたいこともバッチリ語ってやれるしな!」
開き直ってフンッと言ってやれば、マルチェロは意味深な笑みを唇の端に乗せ、それから読んでいた本をパタリと閉じた。
「ほう?だが、残念ながら仲間としては迎え入れて貰えんだろうな」
「何で?オレがアンタのお手つきだから?やっかまれて追い出されるっての?」
「…面白い冗談だ」
冗談じゃねーじゃん!と思うが、マルチェロの緑の瞳に睨め付けられ、胸の内でボソリと呟くだけにする。
だが、言いたいことは表情だけでも充分に伝わったらしかった。

「お前は…まさか、自分が気に入られている等と…おめでたいことを思ってはいまいな?」

冷たい声が訊ねる。
「……思ってねーよ。んなこと…」
それに、ズキリと胸が痛んで…。
ククールは震えそうになる声を何とか出して答えると、僅かに視線を俯かせた。

んな事、思うわけねーじゃん。
日頃、お前さえ生まれなければ!とか散々言われててさ、何処をどうやったら思えるんだよ…。

そう文句の1つも付けたくなるが、言えばもっと酷いコトを言われるだけだと…それも分かっているので…。
ククールは黙ったまま…。
どうしてこんな人が好きなのか…と思ってしまう。
隣の部屋に集まっている殆どの者は、マルチェロが自分に見せているような一面を知らない。
普通に憧れる気持ちは分かる。
だが、自分は知りすぎる程知っているのだ。
体罰や訓練という名目で、実際に傷つけられた事も多々ある。
嫌われ、疎まれている。
本当に憎まれているのだとも知っている。
だというのに……。

何故……この好きな気持ちは揺らぐことなく、常にこの人へと向いているのだろう……。

顔も見たくない程嫌いだったら…きっと楽だったんだろうな…。

そんな事を思って、苦い笑みが洩れた。
「…アンタがオレを嫌いなのなんて…分かりすぎる程分かってる」
「ならいい…」
ギ…とイスを引く音が響くのに、ククールは気持ち視線を上げる。
マルチェロは、そんな彼の瞳を見つめ『来い』と指だけで命じて…。
歩み寄れば、腕を取られ、強く引かれた。
「なっ?!」
イスに座ったままのマルチェロの上…バランスを崩して、半ば倒れ込むように…。
「ちょ…っ、ここで…?」
仕切はついたてだけとは言え、すぐそこにはプライベートスペースがあるのだ。
団長として、いつも執務を執り行っているこちらのスペースで敢えてコトに及ぶなど、ククールには考えられなくて…。
マジマジと見つめれば、

「不満ならば構わん。部屋に下がれ。何、代わりに隣の誰ぞを呼べばいい話だ」

事も無げにそう言われる。
本気なのか言ってみただけなのか…。
ともかく、ククールにはその真偽を計ることなど出来なかった。
ただ、マルチェロの涼しい顔を凝視して………。
一瞬の沈黙が部屋に降りる。

もし、もしも本気で言っているとしたら…自分ではない誰かが兄に触れ、抱かれるのだ。

そんなことは考えるだけでもいやだったし、何より、もしかしたら、もう二度と自分は呼ばれないかも知れない。
それが何よりも恐ろしかった。
「どうした、ククール?手が震えているぞ?」
優しく訊ね、顔を覗く兄。
こんな時ばかり、ちゃんと名前を呼ぶ兄を心から憎いと思う。
だが、それでもマルチェロに呼ばれると、自分の名前は何か特別な意味を持ったモノのように聞こえて………。

今、許されている、ほんの少し………本当に少しだけの繋がりのようなもの…。

それを失うことだけは出来ないと…。
絶対にイヤだと…。
そう思っている自分の必死な気持ちを、まざまざと見せつけられたようだった。
「…い、です…」
胸に渦巻く嫉妬と恐怖に唇を噛んで…ククールはフルフルと首を振る。
「何だね?」
「…不満なんて…ありません…」
絞り出すように言った言葉に、マルチェロがニッコリと笑った。

「いい子だ…おいで」

伸ばされた手が引き寄せるのに従って…。
自分も伸ばした手でマルチェロにしがみつく。
きつく…きつく…。
いつもなら怒るマルチェロは、けれど、今日は何も言わずに…。
ただ、満足そうな笑みを浮かべて、ククールに口付けた。


−−−−−−−−−−−−−

聖堂騎士団の連中はマルチェロ様大好きッ子の集まりだと信じて疑わないナナセであります。
つか、じゃなかったら入団は認めん!くらいの気持ちで!(オイ…)
てかさ〜、エロイよねぇ、マルチェロ団長…vvv ←酔っぱらいの絡みのように
あー…襲いたい………(こらこらこら…)

ちなみに。
団長室の隣に部屋ナイじゃんよ!とか、つーか、何で本人の部屋の隣で、んな集会してんだよ!とか、そんなツッコミはなしで……………。
後者は書いてる最中にも思ってましたが、前者はたった今気付きました!
ねーよ、部屋!!!と、ちょっと敗北気分でいっぱいです…(゜台゜lll
いいんだ。あったんだよ、前は、きっと。。。。
団長ラブが行き過ぎて埋められたんだよきっと。。。きっとそう…そうなのよ……。。。(遠い目)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 ←流石にちょっと反省中。。。


ところで、今更ですが。。。
何か、ククールが『団長殿』って呼んだり、敬語使ったりするのが萌えみたいです☆(ホントに今更だな…)
ビバ★セクハラ!(…人として間違っとる)
 
 
 
06 (Tue) Sep 2005 [no.73]
 
 
+−++ 初・恋・日・記 ++−+



▼・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
○月○日(はれ)

今日教えて貰った気になる話。
騎士団の心得の一番最後には『ククールに関わるな』と書いてあるらしい。
ボクはここへ来てまだ一週間くらいだから、そのククールってのが物なのか人なのかも分からない。
ボクにその秘密を教えてくれた子も、知らないって言ってた。
ククールって何だろう?

▼・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
○月□日(くもり)

ボク達は謎の言葉『ククール』を調べる為、調査を開始した。
でも、ククールって何?って聞くと、みんな『悪いことは言わないから関わっちゃダメだよ』とか、『その名前は言っちゃいけない』とか、『聞かれたら大変だよ!』とか言うんだ。
そんなにいけないってどんなものなんだろう??
誰に聞かれると大変なんだろう?
ククールってゆーのは相当危険な物らしい。
もしかして悪魔なのかも知れない。

▼・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
○月△日(くもりのちかみなりのちあめ)

今日、騎士団で一番偉いマルチェロ様がボクに話しかけてきた。
『ククールになど興味を持ってもロクな事にはならないよ。アレは災い以外の何者でもないのだから』
マルチェロ様はそう言って、ボクの肩をポンポンと叩いた。
ボクが『ククール』を調べてるって何で知ってるんだろう?
修道士の人たちは『だから言わんこっちゃない!』って言ってた。
マルチェロ様はとてもお優しそうに見えたのに…何でかみんなは怖がってる。
マイエラ修道院は謎が多い感じだ。

▼・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
○月×日(はれのちくもり)

今日、礼拝堂の裏を掃除してたら、すごく綺麗な人と会った!
陽の光の中、急に現れたその人は、長い銀の髪に青い目をして、頬はバラ色で…天使様の像よりもずっとずっと綺麗だった。
その人は唇に指を一本あてて『ナイショな』ってウィンクをして、それから壊れた塀を越えて外に行ってしまった。
見たことのない赤い服を着ていたけど…あの人も騎士なのかな…?
ニコって笑いかけられて、すごくドキドキした。
また会えるかな…?

▼・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
○月☆日(あめ)

あの人が『ククール』だった!
今まで見かけなかったのは、何か罰を受けていたとかで…外に出ちゃいけなかったかららしい。
でも、どうしてあんなに綺麗な人が災いなんだろう…。
どうして罰なんか受けてたのかな。
よく分からないけど、ククールさんに会ったことはナイショだ。
うん、絶対ナイショにしておくんだ。


+・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・+


「やれやれ…。本当に悪魔の遣いだな…お前は……いたいけな修道士見習いをたぶらかすとは…」

溜息混じりの低い声が、深夜の団長室に響いた。
冷たい炎を宿す緑の瞳に見据えられ、ククールは怯まぬように腹に力を入れる。
「別に…オレが何かしたってわけじゃないと思いますが……。つか、人の日記とか調べんのヤメロよ!プライバシーの侵害だぜ、それ」
「私はこの修道院内で起こっている全てに目を配る必要がある…」
マルチェロは事も無げにそう言うと、机の上に置かれた焦げ茶色のノートをソロリと撫でた。
それは最近ここへやって来たばかりの修道士見習いが付けている日記帳で…。
その修道士見習いがククールに興味を持っていた事から、彼の腹心の部下がずっとチェックをしていたのだった。

「…フン、どうしたものだろうか…この修道士見習いは…。なあ、ククール?」

チラリと向けられる視線。
「どの見習いだ?オレはアンタと違って、ここにいる奴らの顔なんてほとんど覚えてねーからな」
エメラルドのような深緑の瞳には何もかも見透かされてしまいそうで…。
ククールは肩を竦めながら一瞬だけ視線を合わせ、それからそっと目線を伏せた。

自分と関わりを持とうとする者は、必ず排除する。

そんな兄のやり方をずっと見てきたククールである。
たとえ子供でも、酷いことをしかねない…と、本気で心配して…。
「大体、みんな同じカッコでさ…見分けもつかないね」
それを悟られぬように、敢えて無関心を装う。
「だが、礼拝堂裏で会ったのだろう?コイツはお前に忠誠を誓っているようだぞ?」
「知らないね」
兄から逸らした視線はグルリと室内を巡って…つい、ついたての向こうへと…吸い寄せられるように…。

ここで、兄の神経を逆なでするようなことを言い、怒らせてしまえば、自分はこの部屋から追い出されるだろう。
だが…。
その結果、修道士見習いの子供が行くアテもないのに追い出される…なんて事になるかもしれない。

ククールの脳裏に、二日前に礼拝堂の裏で見かけた子供の姿が浮かぶ。
まだ10歳にもならぬような子供…。
小さな身体に大きすぎる箒を持って、懸命に掃除をしていた。
自分の過去とダブるその姿…。
ハ…と、諦めの溜息が口をついた。
「…罪だな…。お前のその姿は汚れなき者を貶める…」
「そりゃ大層なことで……」
マルチェロが立ち上がり、近付いてくる。
ククールは足下に視線を落としたまま、兄が自分の横を通り過ぎるのを待ち、その後に従った。

「ふぅん?今日は随分と物分かりがいいな…。子供は苦手かね?」

ついたての奥へと入ると、クスと笑われて…。
ククールは叫びたくなる衝動を何とか堪えた。

こんなことしなくても…!
こんなことしなくても…、オレは…兄貴が望むなら……。
兄貴が望んでくれるなら……他には…誰もいらないのに…。

キュッと噛み締めた唇。
辛そうに顰めた顔を、マルチェロは満足気に撫でる。
「…お前は…天使像よりもずっと綺麗だそうだ……罰当たりな小僧だな…」
だが、と笑みを含んだ声音で…。

「私も…そう思うがね」

耳元に流し込まれる囁き。
唇がそっと触れる。
「っ?!」
ククールが大きく目を見開けば、兄は可笑しそうに目を細めた。

「服を脱げ。ククール」

眠れぬ夜の始まりを告げるその言葉…。
「……仰せのままに…」
それに目を閉じて……。
真紅の制服がバサリと足下に落ちた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−

日記〜SSって、何か『ふたりはなかよし』に書いたマルチェロの日記みたいな作りですが…。。。
単に、ククたんに惚れるヤツとか絶対多いよね〜…とか思ったら書いてみたくなったのでした。
(思いつきの気分は前に書いた『修道僧の決意』みたいな感じ。海闇友達のSさんが面白かったと言ってくれたので、続き考えよう〜♪ってずっと思ってたのですが…何か形が違ってしまった…(爆))
つか、一番最初の…『ククールに関わるな』はフツーに暗黙の了解がありそうだと思います(笑)
でも書いてあったらいいなぁ。。。
しかもコッソリお兄ちゃんが書いてたらいいなぁ。。。(夢)
どうも…ダメな感じに執着してるのとか好きらしいです。
病んでるなぁ…っての。


てか。
ホントは見習い坊やの日記部分だけだったのですが、やっぱマルとかククとか絡んでないとつまらん…!と付け足しました★
でも、この話ではククたん心配してるけど、お兄ちゃんは多分子供を追い出したりはしないよ〜って思うな。

そして、更にホントは続きのエロ部もあるのですが、何かまとまり悪いかな…って感じなので、ここで切っちゃうことに。。。

次はマルチェロ様万歳!な感じの話が書きたいな…とか思ったりしてます〜。
 
 
 
05 (Mon) Sep 2005 [no.72]
 
 
オー!ジーザス!24



ククールの目が大きく見開かれる。
「…っ!」
宝石のようなそれに映されている自分が、一瞬だけ、ニヤリと笑ったように見えた。

『諦めろ』

もう一人の自分が最後に言った言葉…。
それは、もう一度一つに戻ることに対し、言った言葉だ。
ククールが愛おしいという思いは、自分の中に戻った。
今、ここに、あるのだ。
それを認めることは出来ないと言ったけれど……。

「………ここに…居る間だけだ…」

「え?」
「茶番に付き合ってやる」
誰の、とは言わなかった。

無意識の否定が分裂を呼んだと分かっている。

同じ轍を踏むつもりはないと心の中で呟き、マルチェロは薄く笑った。
相反する二つの感情のどちらも、掌握すればいいのだと…。
「兄貴…?」
戸惑う弟のその綺麗な瞳を見つめて…。
「ククール…」
静かに呼び、唇を落とす。
柔らかで甘いその口付けに、ククールは不安げな様子を隠せない。
「あ…、あにき…?まだ、薬の影響が…」
訊ねられたその言葉に小さく苦笑して…マルチェロは弟の頭を撫でた。
艶やかな銀髪の絹のような手触りを楽しむように数度…。
「お前は…優しくされるのは苦手なようだな……」
そして、耳元に唇を寄せ、囁く。
「え…」
「だが、今の内だけだ。味わっておくがいい…この先…二度とありはしない」
「兄貴…?」
ポツリと呼んだ声は唇の中…。
再び重ねられた口付けは、数度角度を変えて…深さを変えて…。
「…んん…っ、は…」

今の内だけ?
二度とない…?
兄貴…オカシイってワケじゃないのか?
さっきまでとは違うみたいだけど…。

分からない…と戸惑う胸の内とは反対に、身体はマルチェロの与えるキスに刺激され、熱を高めて行く。
昨夜、覚え込まされたその熱は、甘く思考を痺れさせ、何処かうっとりとさせて…。
「ん…ん…っ」
ククールが口付けに夢中になっている間に、前開きの寝間着は簡単に脱がされ、長い指先が躊躇いもなく下へと伸ばされた。
「…あっ…?!」
下着の上からソコをソロリと撫でられ、思わずビクリと身が竦む。
そしてそのまま、布越しに指を這わせられると、それだけで背筋が震えて…。
「…んんっ」
ぎゅっと目の前のシャツに縋れば、
「お前は随分と感じやすいな…」
笑みを含んだ声が耳元にそう囁いて……ククールはカアッと頬を染めた。

そりゃ、相手がアンタだからだよっ!

心の中で思いっきりそう叫び、きゅっと唇を噛み締めると、顔を逸らす。
マルチェロはクスクスと笑いながらククールの首元に啄むようなキスを繰り返した。
「別に、我慢することはない。イきたければイクといい…何度でも与えてやろう…」
「や、やっぱオカシイって!アンタ、まだ薬効いてんだろっ!」
「さあ、どうかな…」
藻掻く身体を易々と押さえ、マルチェロはゆっくりと下着を脱がせた。
「あ…、やだ…ぁ」
「説得力がないぞ」
ここをこんなにしては…と緩く屹立したモノに指を絡める。
「ああっ」
既に溢れ出していた先走りの液を、塗り広げるように指を動かして…。
ククールはイヤイヤをするように左右に首を振った。
「は…、ぁ…あ…、あ…」
ビリビリと皮膚の表面を伝って下肢から這い昇る強い刺激。
本当なのか、本当じゃないのかと迷う思考は、波のように押し寄せた快楽にあっという間に浸食されて…。
零れる涙を舌で舐め取り、マルチェロは楽しげに目を細めた。
「…ぅんん…っ…は…ぁ…っ」
目元を紅く染め、熱に瞳を潤ませ、額には珠のように浮かぶ汗…。
一見すると、ククールの方が余程薬物の影響を受けているかのようである。
薬か…と、マルチェロは低く笑った。
「…そうだな…薬のせいなのだろう……」
握る手に力を込め、追いつめながら囁く。

「ククール……お前を愛おしく感じるのは…な…」

その言葉を、ククールが聞いたかどうかは定かではなかった。
名前を呼ばれたのとほぼ同時に、ククールは大きくその身を弾ませて…追い上げられるままに欲望を吐き出し、嵐のような一瞬を迎えていたのだから……。
「ぁ…あ…あ…」
放出の余韻に浸り、身体をヒクつかせているククールにマルチェロは唇を寄せた。
熱を持った肌は何処か甘い香りをさせて…。
石鹸でも香水でもないその香りに、何故か懐かしさを覚える。

ああ……愛しいと認めよう。

ただ一人…。
思えばコレだけだった。
私の感情を波立たせるのは…唯一コイツだけ…。
怒りから…だけでなく…。
憎しみから…だけでもない…。

「…だが、今だけだ…」
「あにき…?」
鼻にかかったような、呂律の回らぬ声が、不思議そうに呼ぶ。
それに、フ…と笑いかけて…。
マルチェロは甘い口付けを落とした。



そして、翌日の午後には…雨はサッパリと上がって…。

「やっぱ、このカッコが一番だな♪」
真っ赤な聖堂騎士団の制服を纏い、ククールはうーんと伸びをしながらそう言った。
ドレス姿の時は、一応それなりに気を遣って、おしとやかにしていた(つもり)のだ。
兄の方も既に仕度を終えており、見慣れた団長服を纏って、威厳たっぷりの様子で…。
夫人は残念そうな寂しそうな顔をしながら、それでもマルチェロへの引け目がある為か、もう何も言う事はせずに…。
一通りの挨拶その他を済ませると、二人を静かに見送った。
マルチェロは、着替えを済ませる頃にはもういつものマルチェロに戻っていて…、それはそれでククールを複雑な気持ちにさせたのだが、それでも、やはり元の通りと思えば安心もして……。
「行くぞ」
「はい!」
短い命令に元気よく答え、ククールは小走りに兄の後を追った。
ぬかるんだ道、大小の水たまりを避け、泥を跳ねないように注意して…。

昨日のは………夢にしよう…。

真っ直ぐ前を向いている顔をチラリと見やって、ククールは心の中でポツリと呟いた。

あんな風に優しかったのは…薬の効果が残ってたからだと思うし…。

昨夜…というより、つい数時間前の出来事を思い出し、ついつい顔が赤くなる。
酷くされた一昨日は、さほどでもないのだが、何やら大切に甘く優しく抱かれてしまった昨日は、思い返すだに恥ずかしい気がして………。
昨夜のマルチェロは、気味が悪くなる程静かで…優しかった。
昨日の昼の、明らかに様子のおかしかったのとは感じが違ったが、それでも、何処か通じる所があった気がして…。

うん…。
そうだな…薬のお陰で見れた…夢だったんだ。
優しい兄貴の夢…。
いや、流石にちょっとイロイロ恥ずかしいけど……。

チラリと振り返れば、屋敷のドアの前…夫人が見送ってくれているのが見えた。
それに手を振って…何とはなしに溜息が漏れる。

もう二度とない…か……。

挙げた手を下ろし、ふとそこに向ける視線。
今はグローブに覆われた手の平に…何やら温もりのようなものが残っているように思えて……。
切なさに止まってしまった足。

「…おいて行くぞ」

掛けられた声に顔を上げれば、少し先に行ったマルチェロがこちらを見ていた。
それに驚いて…。
一瞬、動きを止めると、
「何をぼうっとしている…そんな調子で橋から落ちるなよ」
呆れたような声でそう注意された。

遅れた自分を気遣うように足を止めてくれるなど…。
注意をしてくれるなど…。

今まではなかった事…。

「は…はい!」
慌てて頷いて、駆け寄りながら…。
嬉しくて笑ってしまう顔を隠すように俯かせる。

ずっとずーっと遠いまま、離れていく一方のように思えていた距離が……少しだけ近づいたように思えて…。



かくして、予想外の長期滞在となったローゼンクイーン家での祈祷は、ついに終わりを迎え、二人はごくごく簡単に渡された、申し訳程度の橋を通り、帰路につくこととなったのだった。

公爵夫人より過去最高額の寄付を、謝礼とお詫びにと貰って……。


−−−−−−−−−−−

わーお!
タイムアップだよ!!!!
残業時間だよ!早く帰らなくっちゃ!(爆)

えー。。。
長らく続いておりました オー!ジーザス!ですが、ひとまずコレにてオシマイとゆことで…。
お付き合い下さいました方には、本当にありがとうございました☆
明日から、また別の話など始めて行こうと思ってますので、またどうぞよろしくお願いいたします(^-^)
…って、何書くかきちんと決めてないんですけど…まあ…何とかなるでしょう。。。(えー)
明日は明日の風が吹く♪ってことで★
でわでわ、また明日〜!(笑)

 
 
 
04 (Sun) Sep 2005 [no.71]
 
 
ラブリーベイベ☆



「う〜〜〜…」
ドアの上方に丸くポチリと開いた覗き穴。
直径1センチ程度のガラス窓を上目遣いに見やって…。
ククールは鼻に掛かった呻きを上げた。
整った眉はハの字に下がり、薄紅の唇を尖らせて…何とも情けないその表情…。
「兄貴〜…ごめんなさいってばぁ〜…開けてよぉ〜」
ねぇ〜!と。
自分でも、よくこんな声が出るものだと感心するくらい甘えた声で訴える。
が、ドアは一向に開く気配を見せず…。
それどころか、さっきまでは確かにソコにあった筈の兄の気配すら、もう感じられなくなって…。
「鬼兄貴!意地悪!ケチ!怒りんぼっ!」
ひとしきりの悪態をつき、ククールはドアの下に座り込んだ。
短いスカートは、何とか尻をカバーしてくれるものの、タイル敷きの床から伝わる冷たさや堅さから、さほどガードしてくれはしなさそうだった。
スカートとルーズソックスの間でむき出しになっている膝小僧に手を置き、顔を埋める。
「…門限よりちょこっと遅くなっただけじゃん…。それに、文化祭の準備してたからなのにさ…、理由とか聞きもしないで顔見た途端にドア閉めやがって……何だよ…兄貴のバカ!」
尖らせた唇からブツブツと漏れる文句。
昼はまだまだ残暑が厳しい季節だが、暦上ではとっくに秋なのだ。
夜ともなれば、それなりに冷え込む。
段々と冷たさの染みてくる尻に、ククールは情けないような惨めなような気持ちになってきて…。
ドアを見上げ、また「うー…」と呻った。
側に置かれたカバンをチラと見やり、ズボンを穿こうかなとも思う。
今、ククールが着ているのは学校の制服ではない。
そもそも、ククールは歴とした『男の子』だ。
本来、スカートなんかを穿くはずはないのである。
だが…。
何故か今、ククールが着ているのは、世間一般で言うところの『セーラー服』というヤツで…。
「……似合ってると思うんだけどな…」
兄が、自分の姿を確認した途端、その鼻先で玄関のドアを閉めたことを思い出し、思わず呟いた。

みんな『可愛い』って言ってくれたのに…。

しょんぼりとしながらスカートの裾を弄る。
ぐううと鳴る腹。
こんなことならみんなと一緒に何か食べてくれば良かった…と、ひもじく思って…。
「…兄貴〜…なー、ごめんなさいってばぁ…」
もう一度そう言うが、相変わらず、ドアは閉じたまま…。
ククールは立ち上がり、ドンドンとドアを叩いた。
そして、
「開けてくれないんならいいよ!エイトんちにでも泊めて貰うし…!別に、行き場所がないわけじゃないんだからなっ!」
ヤケになって、そう言った時だった。

「どうしたの、キミ?閉め出されちゃったの?」

笑みの混じった声が、マンションの廊下に響いたのは…。
振り返れば、2軒先のドアの前に一人の男がいる。
年の頃なら二十代後半から三十代前半といったところか…。
髪と顔の長い男で…。
ククールは隣人を殆ど知らなかったので、その男と顔を合わせるのも初めてだった。
「あ、スミマセン…騒がしくて…」
ククールがぺこりと頭を下げると、彼は人懐こそうな笑みを浮かべて近付いてくる。
「いや、それより…ウチに来るかい?開けて貰えないんだろう?」
「え?いや、あの…大丈夫です…」
ニコニコとした笑顔にイヤな物を感じ、ククールはジリと後ずさる。
が、元々ドアのすぐ前にいたのだ。
ローファーの踵がドアに当たり、コツンと小さな音を立てた。

も…☆
もしかして…ライトにピンチな感じ?
オレ、男の子なんですけど!
女の子じゃないんですけど!
あ、兄貴〜〜〜っ!

「怖がらなくていいんだよ?ご近所さん同士、助け合いって必要だろ?キミは今困ってるようだし」
「お、オレ、別に困ってないです。大丈夫ですから、ホント…」
段々と近付いてくる男に愛想笑いを向けながら、内心焦りまくっていると…。
ガチャン…。
鍵の開く音がして、開きかけた玄関のドアがゴツリと背中にぶつかった。
「あ…!兄貴っ!」
「入れ」
ドアの隙間から覗く緑の瞳。
一瞬ポカンと立ち尽くしたククールを、グイッと家の中へ引き込み、マルチェロは外の男を睨んだ。
そして、ドアを閉めると今度は家の中の弟を睨む。
「あ、の……ただいま…」
ゴクとつばを飲み込んで…。
モゴモゴと帰宅の挨拶をするククール。
そんな彼の目の前で、慌てて脱いだ為に重なっている靴を静かに直し、
「……お前はいつから女生徒になったんだ?」
マルチェロは訊ねた。
「えっ?あ、いや…これは、そのぉ…」
ククールは一瞬ドキリとしたように身を竦め、それから自身の姿を見つめる。
「今度の文化祭で、ウチのクラスは喫茶店をやるんだけどさ、そのコスチュームなんだよね…っつか…、似合ってない?みんなには好評だったんだけどなv」
ニコッと笑いかけ、短いスカートのプリーツを広げるポーズを取ってみせれば、間髪を入れずに…。
ゴン☆と重い拳が頭上に落ちた。
「っった〜〜〜ぁ…っ!ひっでーな、も〜っ!」
「文化祭の悪ノリは理解したがな…何故その格好で家まで帰って来る必要がある?」
「だって…兄貴、文化祭なんか来てくんないだろ?」
「ああ」
「…だ、だから、見せたげようと思ったわけ。折角の可愛らしいこの姿をvvv」
マルチェロは無言で拳を振り上げた。
ククールが慌てて身を翻す。
ヒラリと広がる濃紺のスカート。
ポニーテールに結ばれた長い髪と、赤いリボンを靡かせて…。
玄関から延びる廊下を走り、真っ直ぐリビングへと駆け込むと、ひょいとソファを飛び越え、左右に退路を確保したまま、そのソファを挟む形で後を追ってきた兄と対峙した。
「ぼ…、暴力反対っ!」
「…言葉で言っても分からない者には、時に暴力も必要だ」
「時にじゃねーじゃんっ!いっつも先に手が出んだろっ!」
「なら、言えば分かるのか?」
「……優しく言ってくれたら考える」
ジッと自分を睨み付けている緑の瞳が、ククールの言葉に厳しい色を増した。
それを負けずに見つめ返して…。
緊張と静寂に張り詰める室内…カチコチと時計の音が大きく響く。

「…そこに…まっすぐに立ってみろ」

やがて、根負けしたように短い溜息をついて、マルチェロはそう言った。
ククールは兄の様子を窺いつつも、ソファから離れるとシャンと背を伸ばしてその場に立つ。
僅かに逸らした上体。
短い上着の裾から、微かに腹が覗く。
その絶妙な隙間も…胸の前で結ばれたリボンの大きさも、そして、膝上十数センチといったスカートも…。
何やら計算された『見せ方』みたいなモノを感じて…。

………これは…ひょっとして、近頃何処ぞで流行っているらしい『萌え』とかいうヤツか?

なんて、妙なことが頭に浮かぶ。
「誰が作ったんだ?」
「え?コレ?そりゃ、全員が着るわけじゃないからさ、担当がいるわけで…。なかなか良く出来てるだろ?」
オレのが一番うまく出来てると思うんだよな♪と言って…。
ニコッと笑いかけられるが、マルチェロの心中は穏やかではなかった。

誰かが、自分の与り知らぬ所でククールに触れている。

そう思うとどうしても、目眩を覚えそうな程の嫉妬を感じてしまう。
学校のことには極力口を出さずにいるつもりだった。
ククールにはククールの世界がある。
そしてそれは、自分のいる大人の世界とは、常識もテンションも全く違うのだと…。
それも分かっている。
だが…。

だが、それでも、面白くないモノは面白くないのだ。

「ああ…まあ、良く出来ているな。似合っている、と認めてやろう」
溜息混じりにそう言えば、ククールはぱあっと表情を明るくした。
「マジ?可愛い?美人?オレって何でも似合うよな♪」
調子に乗ってそんなことを言いながら、その場でクルリと回ってみせるククール。
濃紺のスカートが際どい位置まで捲れ上がる。
「おい、下が見えるぞ」
「ん?見えても平気なんだぜ♪」
ククールは、ホラ☆と事も無げに言うと、大胆にもスカートを捲り上げ、下に穿いているモノを見せた。
「な…っ」
一瞬、視線が釘付けになる。
白いカボチャパンツ。
正面に一つピンクのリボンがついている。
「スカートを下ろせ!バカモノ!そもそも、何故そこまでする必要がある!」
「万が一のことを考えて…。スカートの下から見えたのがヤローの下着じゃあんまりじゃん?」
夢がねぇよと、ケロリとして言ったククールだが、途端、室内を一気に満たした兄の怒りを感じて…。
再び逃げようとするが、時は既に遅かった。
力強い手に腕を取られ、そのまま引き寄せられる。
「いやぁん!」
「変な声を出すな!」
「だぁってぇ〜、お兄ちゃんったら怖いんだもん☆」
「ふざけるな!」
背の高い兄を上目遣いに見上げ、しなを作って言うククールに剣呑な視線を落としたまま…。
いつもと違う雰囲気を感じ、眉を顰めて…。
唇にうっすらと乗せられた、濡れたようなピンクの輝きに目を留めた。
「…化粧までしているのか…」
「や…女の子達が面白がって…」
「成る程…」
心底面白くなさそうに頷くマルチェロ。
じいっとその様子を見上げていたククールは、微かな期待に笑みを浮かべた。
「……もしかしてさ、怒ってんの?」
「何故笑う?」
どうも調子が狂うと思いながら、マルチェロは掴んでいた手を離す。
「いや、だったら嬉しいのになぁって…」
「怒られて嬉しいだと?」
「じゃなくて、怒られんのはヤだけど、それがヤキモチだったら嬉しいなってこと♪」
「なっ!」
ククールはぎゅうっとマルチェロにしがみついた。
「大丈夫♪万が一なんてねぇよ。オレ、兄貴だけだもん♪」
「……アヤシイモノだな…」
嬉しげに笑う目元に口付けて…。
「…いつなんだ?」
囁くように問う。
「え?」
「文化祭とやらは…」
「来てくれんの?」
大きく見開かれた薄水色の瞳。
期待に輝くその瞳から目を逸らし、マルチェロは溜息をついた。
「まあ…気が向いたらな…」
「やった〜〜♪オレすんげ嬉しい!」
ぎゅうぎゅうと抱き締める腕に力を込めるククール。
「…シワになるぞ。早く着替えてこい」
「へへ♪もうちょっとだけ、このまま〜♪」
「…全く…」
ぴたーっと張り付いたまま、幸せそうに笑っているククールにもう一度溜息をついて…。
マルチェロはそっとその背に腕を回した。


+−−−−−−−−−−−−−+

ラクガキから浮かんだ話ですが…。
同じようなのを海闇でも書いてるな…とか、ふと思い出したりして。。。
『セーラー服』とか着せると、スグ『文化祭の喫茶店』に行ってしまうあたり、短絡的というか…想像力が貧困ですね…(爆)
てか、門限云々はラクガキに書いた言葉だったので、それを使用したわけなんですが…。
書き終わった後で、やっぱこのカッコで帰ってくるのは無理があるよねぇ…とか。
先に帰宅させといて、着せるべきだったんだよ!とか。
帰ってきたマル兄を迎えに出て、そのまま外に放り出されるんだよ!とか。
まー、イロイロと…こうすりゃよかった!ってのに気付くわけですが。。。。
とりあえず、ヨシということで☆(え)

 
 
 
04 (Sun) Sep 2005 [no.70]
 
 
お掃除中の発見物・3

またロクでもないモノを……と思いつつ。。。
セーラー服ククたんであります。

つか、閉め出されるククたんに、ちょっと萌えっとしてしまい、SSが出来てしまいました(爆)
パラレルな上、女装モノで、あーもうホントにまぁ…って感じですが…。。。
よろしかったら読んでやって下さいませ☆
 
 
 
02 (Fri) Sep 2005 [no.69]
 
 
オー!ジーザス!23



ピクピクと瞼が小さく痙攣した。

「兄貴っ?!」

その瞼が開かれ、緑の瞳が現れるよりも先に、その微かな兆候を見逃さなかったククールが、がばぁっと兄に飛びつく。
「兄貴!兄貴!しっかりして!」
「……っ」
声にもならぬ小さな呻きが唇から漏れた。
うっすらと開いた瞳が徐々に周囲の色彩を甦らせるが…、何よりもまず先に飛び込んできたものは、何とも情けない顔のククールで…。
「兄貴〜っ!」
ぎゅうっとしがみついてくるのを、マルチェロは無言で押し退けた。
ギロリと睨めば、ククールは一瞬怯えたような顔をして…身を引く。
「ああ、良かったわ!マルチェロ様…」
公爵夫人とメイドのマナが、少し離れたところから安堵の表情を向けているのを確認し、
「…私は…一体…?」
マルチェロはやや心許なさげな表情でそう呟いた。
事情など全て分かっていたし、本当は薬のせいばかりではないことも分かっている。
だが、夫人が薬を盛ったのは事実であり、実際、今回の事に少なからずも影響しているのだ。
ならば、全てをそのせいにしてしまうのが一番の得策…と、マルチェロは判断していた。
「お詫びのしようもありませんわ…全て私が悪いんですの…」
そんなこととはつゆ知らず…。
夫人はしょんぼりとしてそう言う。
「……貴女が…一体何を…?」
「兄貴、意識がなかったんだよ、急に倒れて……」
おずおずと出された手が、そっとシャツの端を握った。
やっと意識を取り戻した兄から、少しでも離れていたくないのだろう。
心配と安堵で複雑な顔をしているククールをチラリとだけ見やって…。
マルチェロは再び夫人に視線を戻した。
夫人もマナも寝間着にガウンを羽織った姿である。

「……ふむ、よく分かりませんが…事情の説明は後でも良いでしょう…。今は…随分と遅い時間のようだ…」

「ですが…」
「私はこの通り、大丈夫なようです」
神妙な顔をしている夫人にサッパリとした笑顔を見せて…。
「それに、後はククールがついていてくれるでしょうし…」
マルチェロは傍らのククールをそっと抱き寄せた。
「!」
薄水の瞳が驚きに見開かれる。
兄の真意を測りかね、混乱の見て取れるその瞳…。
それを一瞬だけ強く見つめてから…。
「いや、ご心配をお掛けしたようで申し訳ない」
夫人には恭しく頭を下げる。
「いいえいいえ!とんでもありませんわ!でも、本当によろしいの?」
「こんな時間に女性をお引き留めすることこそとんでもない。さあ、どうぞ私のためと思って部屋にお戻り下さい」
「お、奥様、あの、オレがちゃんとついてますから…」
「そう……?では……今宵…この場は失礼させていただきますわね…」
夫人は戸惑いながらも、マルチェロの申し出を受けて、部屋を後にした。


それを見送って………。


「兄貴…大丈夫?」
ククールがおずおずと訊ねる。
見上げるその瞳の不安げな色は、マルチェロが元に戻ったのかどうかが分からないからであろう。
「残念だったな」
抱き寄せていた身体を突き放し、冷たく言えば、ククールは大きく目を瞠って…。
それから、ハ…と息を吐いた。
整った顔に安堵の笑みが浮かぶ。
「……ヤツの方が都合が良かっただろう?」
「ヤツ?それって…さっきまでのアンタのこと?」
オレのこと『クク』って言ってた…と言われ、思わず渋面になるマルチェロ。
自分の中にそんな自分が居るなど、やはり信じられないと思う。
「都合ってゆーか…まあ、確かに良かったかもね…でも、別に残念ってことは…」
「随分と甘えていたではないか」
咎めるような口振りになるのが、何とも苦々しい。
もう一人の自分に独占欲云々と言われた記憶も甦る。

自分相手に独占欲など……いや、そもそもコイツに対してそんな感情を呼び起こされるなど…あるはずが……。

明らかにムッとしている兄の顔から目を逸らし、
「アンタが怒って元に戻るかと思ったからだよ。まあ………兄貴に甘えてみたかったってのも…あるけど…」
ククールは少しモジッとして…。
「甘えてみたかっただと?何を馬鹿な…」
「ほらな、普通なら絶対あり得ねーじゃん。でも…、戻ってくれて良かったよ…。やっぱ、調子狂うモンな……」
少し寂しげに…けれどニッコリと笑う弟に、今度はマルチェロが目を逸らした。

…抑えられた欲望……。
消し去ろうとした感情…。
ヤツは……私の中へ戻った…。

「…兄貴?」
そのまま黙ってしまったマルチェロの顔を、ククールが覗き込む。
不安げな薄水色の瞳。
また倒れるのではないかと心配しているのだろう。
「ね、もう寝た方がいいよ」
意識を失うなんて普通じゃないんだから、と。
そっと腕に触れて…。
その手を…振り解くのが通常の行動であった。
今までならば、何の躊躇もなく、何を思うこともなく…。
だが、マルチェロはククールの手を掴むと、そのままそれを引き寄せて…。
「な…っ?」
バランスを崩したところを押し倒す。
自分より幾分か小柄な弟は、抵抗することもなく組み敷かれ、ただ、戸惑いの瞳だけを向けた。
「……あれが…本当だったらどうする?」
その整った輪郭をツ…と頬を指でなぞりながら…。
マルチェロが訊ねる。
「え?」
ククールはきょとんとした顔になって、二・三度瞬きをした。
子供のようなその表情…。
それに何処か自嘲気味な笑みを浮かべて…。
「…いや、戯れ言だ。忘れろ」
「なに…、ん…っ??」
何事かを言いかけた唇を塞ぐ。
言葉を奪う軽い口付け。
小さく開いていた唇の中、互いの舌先が…ぴちゃと触れあった。

−−−−−−−−−−−−−−−

昨日は更新ありませんで…。。。
覗きにいらして下さった方にはスミマセンでした!
風邪が一向に良くならず、どうにもこうにもぼんやり気味であります。。。(=_=)
どんだけ出るんだこの鼻水…(汚)

まー、それはいいとして。
お兄ちゃん元に戻りました。
次で終わりの予定です〜。
 
 
 
31 (Wed) Aug 2005 [no.68]
 
 
オー!ジーザス!22



「ああ、何て事でしょう!ククール!私のせいですわ…」
昏睡状態のマルチェロを見るなり、公爵夫人はそう言ってククールに縋り付いた。
「奥様…の…?」
「ええ、そう……私、貴方にどうしても幸せになって貰いたくて…今朝、マルチェロ様のお茶に…お薬を……」
「クスリ…?」
「そう…、いわゆる惚れ薬という物を入れましたの……きっと、あれのせいに違いありませんわ!」
ククールは自分を抱き締めている公爵夫人をマジマジと見つめた。

惚れ…薬…だって…?

頭がクラクラしてくる。
「まさか…!まさか、そんな…っ、兄貴が…気付かずに飲むなんて…」
そんなことあり得ない…と呟くククールに、夫人は涙をこぼしながら頭を振った。
「疲れているようだから…滋養強壮によい物だと…そう申しましたの……マルチェロ様も、まさか私がと疑いもしなかったのでしょう…」

脳裏に、今朝の何処かぼうっとしたマルチェロの姿が浮かぶ。
いつものような覇気を感じない、静かなマルチェロ…。
その彼のお茶に、惚れ薬を混ぜて……。
スグにバレてしまうかとも思っていたが、彼は何の疑いもみせずに、それを飲み干した。
だが、その後は…特に何の変化も見られなかったのだ。

遅効性なのかしら……?

自分では一度も試したことのなかった薬だったので…夫人は不思議に思いながら…。
ただ観察しているわけにもいかないので、何気なく言ったのだ。

「ククールは本当に美しい子ですわね。男の子にしておくのが勿体ないくらい…」

マルチェロは一瞬、不思議そうな顔を向けて…。
それから、
「ええ、確かに…美しいですね…。そう…女性であれば………妹であれば……」
そう呟くように答えた。
「妹…?」
その何処かぼんやりとした声に、薬が効いたのだろうか?と思って…。
「…そう……妹…なら……」
見つめる夫人の前で、マルチェロは眉根を寄せ、考え込むように…。
じっと…カップを見つめていた。


「お茶の時間に睦まじい姿を見て、とても嬉しく思ってましたのに…まさかこんなことになるなんて…」
「解毒剤は?」
「毒消し草なら、今マナが…」
マナというのは、側仕えのメイドである。
彼女は、夫人の言葉が終わらぬ内に、毒消し薬の瓶を抱えて部屋に現れた。
ククールは毒消しの薬を受け取ると、直ぐさまそれを口に含み、口移しで兄に飲ませる。

お願い!
兄貴、目を覚まして…!

意識のない身体を抱き締めて…。
「兄貴…、兄貴…気付いてくれよっ!目を開けてくれよ…っ!」
ただひたすら、祈るような気持ちで…。



『……認めろ』
涙に暮れ、見るも哀れなククールの様子に、もう一人のマルチェロは胸が痛むらしい。
何処か頼むような響きで言った。
『消えろ』
それをアッサリと拒否するマルチェロ。
『一緒でなければ戻れんぞ』
『…そうかな?この状況を生みだしたのが薬のせいだとしたら…毒消しが効けば、案外すんなりと戻るかも知れんぞ?』
『ならば、待ってみればいい』
二人のマルチェロは、身体とククールを真ん中にして互いに睨み合った。

キーになったのは『妹』だろうか…?

マルチェロは目の前の同じ顔を見つめながら、記憶を反芻した。
入れ替わる瞬間に呟いていたこと。

ククールを麗しいと…美しいと……そして、妹だ…と…。
あの言葉には何か…暗示じみた物があった…。

『…コイツは弟だぞ…妹ではなく……ククではなく、ククールだ』
漠然とした見当で、とりあえずそう言ってみれば、
『ほう、認識はあるようだな…』
クスと笑われ、ムッとする。
『そう…。口で何と言おうとも、実際は認めている。愛してもいる。否定し、拒絶する一方で…押さえられた欲望はどんどんと膨らみ、その思いを強めていった……そもそもの歪みを作ったのは”あの男”だが…それを大きくしたのはお前自身だ』

あの男…父親の面影が二人の脳裏に同時に浮かぶ。

『夫人の薬は私が表に出るきっかけになっただけ…』
『……私は、ククールを憎んでいる』
『私は愛している』
『憎んでも憎み足りぬ…』
『愛して止まぬ…誰よりも何よりも…』
『…同じ強さでか?』
憎しみと同じだけの愛なのかと…。
マルチェロの問いかけに、もう一人のマルチェロが笑みを深めた。

『……気付いているのだろう?本当は。認めてはならないと思いこんでいるだけなのだと…』

その言葉に、一瞬だけ…マルチェロは黙り込む。
だが、スグに頭を振って…。
強い瞳でもう一人のマルチェロを見やった。

『私の力の源は、その思いの対極にあるのだ……認めることは出来ん』

キッパリと言ったその言葉…。
それを聞いたもう一人は、けれど満足そうに頷く。
『…いや、それでいい…』
フッと少し呆れたように笑って…。
自分たちの身体へと視線を落とす。
ゆっくりとそこへ向かい、引き寄せられる互いの距離。
戻るのだ、と感覚が言っている。
『諦めろ』
不機嫌そうに眉根を寄せているマルチェロに、もう一人のマルチェロは言った。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

自分では「ククたんククたん」と、普段呼んでいるわけですが…。
お兄ちゃんに『クク』とか言わせると、どうも可笑しくていけません。
普段が普段だけに、そりゃぞっぴくわなぁ。。。と思いつつ。
でも一回やってみたかったのでした。
いや…、明日はもう普通のお兄ちゃんに戻ってしまうので…。
『クク』呼びも終わりかぁとか思うと、ちょっと残念な気分になったり…(ならんでええて…(笑))

次は何の話を書こうかなと、ぼんやり思いつつ、後もう少し…ですね、お付き合い下さいませ★
 
 
 
30 (Tue) Aug 2005 [no.67]
 
 
オー!ジーザス!21



『何を気安く触っている!離れろ!貴様っ!』
ガウッと吠えるようにそう叫び、マルチェロは自分に縋り付いているククールの頭を押しやろうとした。
だが、スカ…ッ☆と…。
自分の手はククールの頭の中に入り込んで……。
そのまま勢いよく、突き抜ける。
『?!』
よく見れば、手どころか身体全体がうっすらと透けていた。
オマケに、ベッドに横たわっているはずの自分から、何故か半身を起こした自分が出ている。
『な…、な…んだと…?』
幽体とでも言えばいいのか…とにかく、そんな状態であるらしい。
『何だコレは?!』
当然のように、ぎょぎょっとするマルチェロの横から…、
『ああ…クク、大丈夫だ、私はここにいる…』
もう一人…マルチェロと同じ顔、同じ身体を持つ人物がククールの頭をそっと撫でている。
いや、その人物も同じように幽体であるので、撫でているのではなく、撫でるフリをしている、が実際には正しい。
『お前は…っ!』
マルチェロは大きく目を瞠り、それからスグ、もう一人のマルチェロに詰め寄った。
『さっきまでは私の身体でよくも好き勝手を…っ!』
『好き勝手?言っておくが、コレは私の身体だ。そして、私は私の思うままにしたまで…何か不都合があるかね?』
『不都合どころの騒ぎではない!この私が、アレを愛おしいだと?!何が妹だっ!何が…誰が…ククなどと……っ』
『ククは我が最愛の妹…愛おしい者に愛おしいと言って何が悪い?』
マルチェロの剣幕に、けれどさすがは同じ人物といったところか…。
もう一人のマルチェロは平然として、逆に訊ねる。
『さ…っ、最愛の妹だと?!よせっ!怖気が走るっ!』
ゾゾ…と顔を青く染め、眉を顰めてマルチェロが叫ぶ。
それに、目を細めて…。
『成る程…お前が、ククを苦しめている”兄貴”というワケか…』
もう一人のマルチェロが、何処から取り出したのか、スラリとレイピアを抜いた。
『苦しめることこそが正しいのだ!アレは私から全てを奪った男…憎むべき悪夢そのものだ!』
マルチェロもまた、突如手の中に現れたレイピアを構える。
『いいや、違う…ククは私のたった一人の肉親…。愛して止まぬただ一人の家族……そう、愛さずにいられるはずがない…』
『ふざけたことを抜かすな!』
ぴゅんっと細身の剣の風を切る音が高く響いた。
キンッとその剣を受け、凪ぎ払う音もまた高く響く。
二人の動作は全く同じだった。
攻撃のパターンも、防御のパターンも。
クセもスキも分かっている。
だから、互いに追いつめることも追いつめられることもなく…。
『ククは私を愛している』
『ハ、それはどうだろうな…』
もう一人のマルチェロの言葉を、鼻で笑うマルチェロ。
それに、もう一人の方が片眉を上げた。

『ほう?愛されているのは自分の方だとでも…?』

見透かすような瞳。
マルチェロは無言で距離を取った。
そして、流れるような動作で十字を切る。
だが、
『食らうわけがないだろう?』
グランドクロスは、その光を生じることもなく霧散した。
もう一人のマルチェロが不敵に笑う。
『何っ?!』
『今の私達は意識体でしかない…。そして、私はお前でお前は私だ。分かっているだろう?』
『お前は幻だ!幻は幻らしくとっとと消え去れ!』
『いや、幻ではない…私はお前の中に確かにいる私だ』
『…この私の中に…お前が、だと?!』
『ああ。それをお前が無理矢理に捨てようとした……そこから生じた無理と…何かの弾みだな……』
その言葉に二人のマルチェロは暫し互いを見つめた。
二人の手からレイピアがフッとかき消える。

分裂までの過程はおおよそ想像がついた。
マルチェロがどうしても認められぬと、自分の中から消そうとしたククールへの思いが、追いつめられることでまとまり、持ち前の精神力の強さ故反発もまた強く…別人格を形成するまでに至ったのだろう。
だが、主人格であるマルチェロを押し退けて、もう一人が出てきた…その『何らかの弾み』が一体何であるのか…。

『……夫人…か?』
『可能性は高いな…』
『どうやったらお前は消える?』
『知っていったところで話すはずはあるまい?それに、そもそもそんな方法はない』
もう一度一つに戻るだけだと呟いて…、もう一人のマルチェロは、愛おしげにククールを見やった。

「兄貴…、兄貴…どうしちゃったんだよ」

自分たちの身体に縋り付き、泣いているククール。
そっとその頭に手を置く。

『クク…お前が私を呼んでくれるなら…私はスグにでもお前の元へ戻ってやるものを…』

愛おしげで寂しげなその呟き。
『生憎だったな…ソイツが呼んでいるのは私のようだ』
全く気がしれん…と唇の端を上げて笑えば、
『……それは単にお前の方が表に出ていた期間が長いだけのこと…』
もう一人のマルチェロはククールに口付けながら、冷たい視線を向けた。
『…お前など…二度と表には出さん』
その瞳をギンと睨み付けるマルチェロ。
燃えるような緑の瞳が互いを貫く。

『覚えているはずだ…お前も…』

静かに…。
もう一人のマルチェロが語り出した。
『夜中…皆が寝静まってから……様子を窺いに行っただろう?』
『……何のことだ』
『気になっていただろう……ずっと…いつも……』
『……何を言っている』
『苛立ちは完全な無視が出来ない己に対してだ…ククに対しての怒りからではない』
『……下らん…戯言だ…』

『ならば…、幼いククの手に触れた……肌の記憶を甦らせてやろうか?』

ゆっくりと、もう一人のマルチェロはククールの頬を撫でながら…。
マルチェロを見上げ、静かに言葉を繋いで行く。
『あの頃のククが『お兄ちゃん』と密かに呼んでいたのを……あの可愛らしい甘い響きを…忘れてはいまい…?』
『気色の悪いことを言うな!』
マルチェロは己の中で激しく燃え上がった怒りに目眩を覚えた。
腹の底から沸き上がるそれは……もう一人の言葉に対してなのか…それとも、行動に対してなのか…。
ただ、ククールの肌を撫でる指先を、どうしても目が追ってしまう。
『…面と向かっては怒りながら…その実感じていた焦りは…さて、何だったのか……説明が出来るかね?』
『下らんな…貴様の話は聞くに値しない。この私がククールに対して焦りを感じるだと?馬鹿馬鹿しい…!』
『認めたまえ。愛情を…』
『感じていない感情を認めるなど、到底出来ぬ相談だ』
『今感じている怒りもか?私がククールに触れていることに嫉妬を感じているのだろう?お前は昔から独占欲が強かったからな』
『……ああ、私は今、確かにお前に対し怒りを感じているが…それは、私と同じ姿でソレに触れていることが我慢ならないからだ』
独占欲などでは断じてないと…。
気の弱い者が見れば、それだけで気を失いかねないような凶悪な視線を向ける、その先で…。

「人を…呼んだ方がいいよな…」

ひっくと大きくしゃくり上げ、ククールが呟いた。
幾分冷静さを取り戻したらしい。
ゴシゴシと袖で涙を拭く。
『クク…すまない…。私は大丈夫だ…』
もう一人のマルチェロは、ぎゅっとククールを抱き締める素振りを見せた。
「兄貴、待ってて…すぐ戻るからね…」
ククールは未だ意識を失ったままのマルチェロにそう告げると、ベッドから飛び降りる。
まさか、その光景を、兄自身の意識が見ているとは知らずに……。


−−−−−−−−−−−−−−−

兄様分裂☆
もう一人の方のセリフが可笑しくて、時々笑っちゃいそうになりながら…(えー)
つか、幼少期のククたんの寝顔を覗きに行くマル兄…。
きっと手とかにそっと触れてみたりしてさ〜、ぎゅうって握られたりしてドキドキしたのよ。
って思ったら、ちょっと楽しくて妄想止まらなくなってしまいました★

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

すやすやと安らかな寝息をたてているククール…。
暗闇に慣れた目でも、その表情の細かな様子までは分からない。
それでも、マルチェロはじっと弟の寝顔を見つめて……。
息を潜め、ただ静かに…。
「……ん…」
ククールがモゾと寝返りを打つ。
窓から差し込む薄明かりに、銀髪がサラリと揺れるのが見て取れた。
布団から出された手。
思わず手を伸ばし、そっと触れてみる。
途端、ぎゅうっと…指先を握られて…。
一瞬、ギクリと身が竦んだ。
だが、ククールが目を覚ました様子はなく…。
反射的に握っただけのようだった。
「………」
指先から伝わる、少し熱めの体温…。
熱でもあるのでは…と思うが、子供というのは体温が高めなのだったかと思い直して…。
少しの間…繋がれた手をジッと見つめていた。

小さな手だ…。

小さくて柔らかなククールの手…それが今、自分の手を離さぬよう、ぎゅうっと握り締めている。
そう思うと、何かよく分からない気持ちがジワジワと湧いてきて…落ち着かなくなって……。
マルチェロは唇を噛み締めると、そっと手を引き抜いた。

馬鹿馬鹿しい…。
何をしているのだ。

そんな自分に苛立たしさを覚え、全ての思いを断ち切るように背を向けて、出ていこうとしたマルチェロの後ろ…。

「ん…、おにーちゃん…」

ククールの小さな声がした。
ハッとして振り返るが、ククールは眠ったまま…。

寝言…?
夢を見ているのか?
まさか…ボクの夢を?

「…おにー…ちゃ…」
再び上がる小さな呼び声…。
「…っ」
騒ぎ出す鼓動。
震え出す身体。
マルチェロはククールから目をそらし、逃げ出すように部屋を出た。
そして、そのまま部屋には戻らずに…、何故か広場へと向かって…。

「…何をバカな…っ!」

呟きが漏れた。
噴水により、絶えず動いている水面…。
そこに映る自身の姿を見下ろして…。

何を…バカな……!

大きく深呼吸をした。
苦しさを吐き出すように…。
騒ぐ胸を鎮めるように…。

そう…。
それは彼が、彼の小さな弟に対し、確かな愛情を持ち合わせていると認識し、そしてまた、それを打ち消そうと…否定した…最初の夜であった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とかね。

暗闇の中、一人焦る子マル。。。。
青いな〜とか、あっぶないな〜とか…そーゆーの考えると、何か楽しくてイケマセン♪

って、何でコメント部分にこんなモン書いてるんだか…。
ホント、好きだねぇ…(^-^;)
 
 
 
29 (Mon) Aug 2005 [no.66]
 
 
オー!ジーザス!20



「ね、兄貴…?オレ、どんな…嫌われてたって……」
ぎゅうっとしがみついている腕…。
首筋に顔を埋めて…。
背に縋る指先に力が籠もる。
「オレは…兄貴のこと…っ」

ずっと、ずっと好きなんだよ、と…。

続くはずだった。
兄が呻きを上げるまでは…。
「…ククー…ル……ッ」
苦しげな声が名を呼ぶ。
『クク』ではなく『ククール』と…。
「え?」
それは、まるでプツンと糸が切れてしまったかのようだった。
マルチェロの身体から一気に力が抜け、しがみついていたククールごと、ベッドに沈み込んで…。
「んんぅっ?!」
マルチェロの全体重を受け、ククールが苦痛の声を上げる。
「や…ぁっ、おも…ぃ…って、ちょっ、兄貴?!」
ググ…と苦しい体勢から、それでも何とか力を込めて、兄の身体を退かそうとするが…。
その間も、マルチェロはグッタリとしたままで…。
「……兄貴…?」
呼びかけに、返る声はない。
「兄貴?」

イヤな…予感……が…する…。

重く沈んだままのマルチェロの身体の下から、半身を引き出したククールは、胸を過ぎった不安に眉を顰めた。
そっと兄の肩に手を置く。
「ねえ…兄貴?」
ピクリとも動かぬ身体…。
「ちょっと…、オイ、どうしちゃったんだよ?なあ、兄貴ってば…」
ゆさゆさと揺すっても、何の反応もなく…。
仰向かせて顔を見る。
眠っているように目を瞑っているマルチェロ…。
いつもはハッキリと浮かんでいる眉間のシワもなく…ただ、静かに…静かに…。

ま、まさか…死ん…で……?

怖くて怖くて、ぎゅうっとしがみついた胸…。
そこからは微かな鼓動が確かに伝わって…。
「生きてる…よな、そりゃ……」

落ち着け…落ち着け、オレ…。

ククールはギュッと目を瞑り、首を振って…ぱんぱんと頬を叩いた。
それから、今度は落ち着いた面持ちで兄の顔を見つめながら…。
「兄貴?聞こえてる?兄貴?」
呼びかけ、反応がないかを観察する。
だが、返答も反応も…何一つ、ありはしなかった。
「兄貴?団長?マルチェロ団長?」
呼称を変えて呼びかける。
だが、何と呼ぼうとも、兄の静かな顔には何の変化も見られずに…。
「や、やだなぁ、冗談キツイっすよ?ね、起きて下さいよ……団長…」
知らず、息が上がる。
鼓動が耳の奥で痛い程、ドキドキと騒いで…。
マルチェロの肩に置いた手が、微かに震え出す。

怖い………。

何で?
何でこんな…突然、意識がなくなるなんて……。
どうしちゃったんだよ?
何だよ、兄貴…。
オレ、どうしたらいいんだよ…?

「兄貴…」
ぎゅっと兄の纏うシャツを握り締める。
「起きてよ、兄貴…っ、やだよっ、こんな…兄貴、兄貴…っ」

だが、何度…揺すっても、叩いても、呼んでも…。

マルチェロの意識は戻らなかった。


−−−−−−−−−−−−−−−−

昏睡状態に陥るお兄ちゃま。。。
何かおかしくなったり意識なくなったりで酷いなぁ……大好きなのに何でだ??うむぅと呻りつつ、明日へ続く☆

えと、昨日いらして下さった方にはありがとうございました!
昨日はサークルさんの数も少なくて…、おお、いない…(寂)とか思ったりもしましたが、出られてる方は結構新刊あったりして、ウハウハと喜んでしまったり♪
(グッコミなんで。サークルさんとか少ないのは当たり前だし。夏コミ&インテ直後なので、新刊なくたって不思議じゃないから、あったのがホントに嬉しいのだ♪)
海闇のお友達さんが遊びに来てくれたり、遊びに行ってみたりと、何か今までと違う感じが面白かったです。
とりあえず、ハジメテの参加が終わったので…何だかホッとしております☆
次はオンリだ!ファイトだぜ☆
 
 
 
28 (Sun) Aug 2005 [no.65]
 
 
お掃除中の発見物・2

 

お掃除中の発見物その2。

折角なので(何が)色付けてみました。
かなり前に描いたものなので、お兄ちゃんの髪が少し長めであります。
(この頃、攻略本を見ながら描いていたので。。。でもゲームだと短いし…とか迷ってたのです)

ラクガキアイコンさっぱり使わないので(かたりとかゲームとかも使ってないな…)SS更新がお休みの土日は、ラクガキものポツポツ上げていこうかな…とか。。。
 
 
 
26 (Fri) Aug 2005 [no.64]
 
 
オー!ジーザス!19



また……夜が来てしまった…。

バスルームのドアに手をかけて…ゴクリと唾を飲み込む。
もしかしたら、もうマルチェロが来ているかもしれないと、そう思うと胸が騒いで…。
来ていたら……やはり、昨日のような事になるのだろうか、と。
自分は、それを期待しているのだろうか…と、そう思えば、カアアと顔が火照った。

でも。
でも………今夜、兄貴が抱くのはオレじゃないんだよな………。
オレだけど、オレじゃない。


『………お前は……妹…』

マルチェロの漏らした呟きを、ククールは微睡みの中で聞いていた。
兄の唇が触れた手の甲に視線を落とす。

「……うーん…女の子じゃないんだけど………マズイかな…」

胸…ナイし………。
下…ついてるし………。

ふんわりとしたシフォンのネグリジェ…。
オフホワイトの地に描かれた見事な薔薇を見るともなしに見て…。
「……妹じゃないって…怒られたりして…?」
不安な気持ちを誤魔化すように苦笑し、ククールはドアを押し開けた。



*・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・*


「クク…」

優しい声で、名を呼んで…。
優しい唇で、キスをして…。
優し手が、髪を撫でる

昨夜とは、うって変わっての優しい行為…。
だが、優しく声を掛けられる度、優しく口付けられる度、優しく触れられる度に……ククールの胸の中ではどんどんと、切なさと苦しさが増して…。
「クク…、お前が愛おしい……」
「ぁ…っ」
『兄貴』と呼びかけてやめ…ククールは真上にいるマルチェロから視線を逸らした。

ダメだ……っ。
ダメだ……。
ダメだよ、兄貴……違う…。

『弟』では愛されないなら『妹』でもいいと……、そう思ったはずだった。

たとえ、フリであっても良かった…。
兄に優しくされてみたかった…。
ひとときでも、隣にいることを許されるなら………間違った選択だって、ウソだって、何でもいいと思った。

だが………。

「やっぱり……やだよ…こんな…っ」

「どうした?クク…?」
気遣わしげに訊ねる兄の瞳の中、顔を歪めた自分の顔が映っている。
髪を下ろし、胸の空いたネグリジェを着て、今にも泣きそうな顔をしている自分は、本当に女の子のように見えて…。
「…違う…」
ククールはひび割れた声でそう言った。
「何がだ?」
「オレ…弟だよ、兄貴の…」
ぎゅうっと瞑った瞳から、熱い涙が溢れてくる。
「……クク…?」
「ククじゃない……ククールだよ…、ねえ、兄貴…どうしちゃったの……?」

これは、意地悪をしているのではないと…気付いたのはあの呟き……。
『………お前は……妹…』と…そう言った、あの虚ろな声の響きだ。

だが、本当はずっとおかしいと感じていた。

有り得ない事ばかりで……。
信じられない事ばかりで…。
それでも、おかしくはないと思いたかったから…。

『妹』だったら、兄は優しくしてくれるのだと…。
『弟』じゃなければ、可愛がってくれたのだと…。
自分の事を…本当は嫌っていないのだと…。

そう思いたかったから…。

「クク、何故そんな事を言うのだ?私はどうもしてはいない…」
「…っ」
フルフルと首を振り、ただ涙を零すククールに、マルチェロは戸惑いの表情で…。
「泣くな…」
溢れる涙を舐め取り、濡れた頬に口付けて…宥めるように、哀願するかのように言う。
「お前に泣かれると、どうしていいかわからない…」
「…兄貴は、そんなこと言わない…」
ククールはブンブンと首を振った。
「クク…、何故だ…?私は…」

「兄貴は…、オレの事嫌いなんだ」

「そんな事はない!私は…っ」
『私はお前を愛している!』と続くはずだった言葉を…ククールがキスで遮る。
何を言うか、聞かなくても分かった。
どうしても聞きたい言葉だったが、それでも、それだけは聞いてはイケナイと…何処かで思ったから…。

「………それがホントだったら……オレ、死ぬ程嬉しいよ…」

大好きな大好きな兄の首にしがみついて…、ククールは震える声でそう言った。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

この話もそろそろ終わりかな、な感じで。
誰だお前は〜!!!!とか、ヒヤヒヤしながら書いてたんですが、振り返ればいい思い出です(え?)
ま、そんな感じで、また月曜日に…ですね、覗いてやって下さいませ☆

日曜日はグッコミです〜!
参加される皆様、どうぞよろしくお願い致します〜!!!(><)
新刊ちゃんと出来てるかな〜とか、届いてるかな〜とか、そんな心配もしつつ…。。。

 
 
 
25 (Thr) Aug 2005 [no.63]
 
 
オー!ジーザス!18



長い睫毛。
バラ色の頬。
スッと伸びた鼻先。
整った細い顎。
柔らかく微笑みを乗せた唇…。

「…………?」
膝の上にある弟の顔をジッと見つめて…マルチェロは僅かに眉を顰めた。
何かがおかしい。
そう思う。
だが、何がおかしいのか…、それはいまいちよく分からなくて…。
胸の中にモヤモヤとしたものを感じながら…軽く頭を振り、溜息をつく。
すると、
「…ん…」
振動が伝わったのか…ククールが小さな呻きを上げた。
起こしたか?と思うが、ククールは微かに唇を動かし、それだけで…。
スウ…と再び安らかな寝息が聞こえてくると、マルチェロは安心したように微笑んだ。

夕べは無理をさせたからな…。
休ませてやらねば。

そんな事を思いつつ、膝の上に広がる艶やかな銀の髪を優しく撫でる。
「クク…」
そっと名を呼ぶと、長い睫毛がぴくりと震えた。

お前は本当に美しい……。
誰よりも…何よりも…。

胸の内で感嘆の溜息をつき、フ…と笑う。
その笑みは穏やかで…とても満足そうなものだった。
緩く握られたままの手に力を込め、きゅっと握りかえしてやれば、ククールの指先にも力が入って…。
ぎゅうっと…。
手の平から伝わる少し高めの体温。

昔と…変わらんな……。

見つめる顔に幼い時の面影が重なる。
幼い頃のククールのあどけない寝顔と……。

『おにいちゃん』

そう…密かに呼ぶ声まで聞こえる気がして…マルチェロは顔を顰めた。
胸にこみ上げる思いは懐かしさなのか…。
それは何処か甘酸っぱいような…微かな苦しさと痛み。
バカバカしい、と思いながら、けれど、その思いはそれ以上強まる事はなくて…。
代わりに、強い愛おしさだけが胸を満たした。
「クク…」
だが……。

…違う…。

落としかけた口付けを止める、自分の声…。
愛おしさを認めてはならぬと、胸の奥から叫びが聞こえる。

違う…?
何が違う?
この胸を焦がす程の愛おしさ……それを…何故…認めてはならぬと…?

静かに眠るククールをジッと見つめて…。
暫くの間…動きを止めたままで…。


「………お前は……妹…」

やがて、ポツリとそう漏らし、マルチェロは繋いだ手に唇を落とした。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

台風が来るぞ〜!とゆことで、いつ帰ってもいいようにとワタワタ仕事を片づけていたのに、すんごい静かになっちゃって、何やら残念な気分です…ちぇ(苦笑)
いや、ホントに来て、被害とか出たら困るんですけどね…。。。

さて。
今日はすっかり様子のおかしいお兄ちゃんを。。。
ホントは『私の可愛い弟』とか、血迷ったセリフを言わせようとか思ったんですが、流石に躊躇われてやめました…………。
ありえねーありえねーとブルブルしつつ……(何でそんなもの書いてるんだろうか…)
 
 
 
24 (Wed) Aug 2005 [no.62]
 
 
オー!ジーザス!17


 
ガキの頃…羨ましかったっけなぁ…。

「読んだか?」
「ん…、いいよ」
斜め上から訊ねてくる兄に頷いて…。
ペラリ、と捲られるページを目で追う。
物語など、サッパリ頭には入っていなかった。
ククールはマルチェロの腕の中に包まれ、先程からぼんやりと物思いに耽っていたのだ。

こーゆーのとかが…ホント、羨ましかった。
兄貴とか姉貴とかに可愛がられてるヤツ見ると…何か、自分と比べちまって落ち込んだり…。

チラリと見上げれば、文字を追っていた兄の目が、ふっと向けられて…。
「どうした?」
そう聞いてくる。
普段なら絶対にかけられないその言葉に、少し胸が痛んだ。
「何でも…」
そう言いながら、視線を逸らせば、
「ああ、飽きたのだろう?」
仕方のないヤツだな、とマルチェロは笑って…。
閉じられた本が、ソファの横のテーブルに置かれる。
「それとも…眠くなったのか?」
身体を通して直接響く声…。
「ちょっとね…」
「そうか、部屋に戻るか?」
「やだ」
問われた言葉を、ククールはキッパリと却下した。
冗談!とでも言わんばかりに即答され、マルチェロが思わず吹き出す。
そして、
「なら…ここで寝ればいい」
肩に回されていた手に力が入り、そのままグイッと倒されて…。
グラリと揺れた視界。
斜め上だった兄の顔が、真上になって…その遙か上に天井が見える。

え………?
え?え?えええええ…?!?!?!
こ、これって…ひょっとしてもしかして……ひ、膝枕…とかいうヤツ?!?!?!
マジでーーーー?!?!?!

大きく大きく目を見開いているククールに、マルチェロは楽しげな笑みを浮かべた。
「何だ、眠いのではなかったのか?」
「ね…っ、眠気なんか吹っ飛ぶっつの!」
「おや、何故かね?」
さあ、寝るがいい、なんて…いけしゃあしゃあと言い、ぽんぽんと頭を撫でる兄。
「………アンタ、スゲー楽しそうだな…」
「言葉遣いが悪いぞ、クク」

とっても楽しそうですね、マルチェロお兄様v
…って。
言ってみたらどんな顔するんだろ…。

言葉遣いを窘められてそんな事をチラリと思いつつ…。
「マルチェロ……眠れません〜…」
正直に言えば、不思議そうな顔をされた。
「…子守歌でも歌ってやるか?」
「イイエケッコウデス!」
真面目な顔の提案を、思いっきりお断りする。

余計寝れんわ!
いや、でも、聞きたい…けど……。

「ならば…本を読んでやるか?」

いや、寝れねーから、ソレも!
ホントに…!

「………手を…」
ククールは兄の申し出にプルプルと首を振り、代わりの案をポツリと呟いた。
子供じみていると思うが、兄の方も十分にお子様扱いなのだから、構わないだろう。

「手を…握ってても…いい?」

「ん?ああ…」
おずおずと言われた言葉に、マルチェロは軽く頷くとスッと手を差し出した。
ククールはその手を嬉しそうに取ると、両手でそっと包みこむ。
自分の手よりも大きな兄の手…。
夕べ、少し冷たいと感じたその指先は、今は温かい。

兄貴の手か………。

ククールはポツリと胸の内で呟く。
兄と手を繋ぐ事は、子供の頃の憧れだったのだ。
兄に手を握って貰って眠る事も…。
子供の頃…兄弟のいる子が言っていたのが羨ましくて羨ましくて…。
そんな機会がないものかと…ずっと思っていた。

でもきっと、自分たちには一生そんな事はないのだと諦めていた…。

そんな事を…思っていた事すら忘れてしまった今になって…。

兄貴の手が、オレの手の中にある……。
夢か…幻か…って感じだな…。
つか、あー…そっかぁ、オレ…夢見てんのかもな…。
意地悪してるにしたって、優しすぎて気味悪いもんな…。

見上げる瞳に映るのは、穏やかな顔の兄。
やっぱ、夢かなぁ…と思いながら、そっと目を瞑る。
「……あにき…」
小さく小さくそう呼んで…。
握った手に、スリ…と頬を寄せたククールの頭を、兄のもう片方の手が優しく撫でた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

夢オチなのか?!?!?!と、自分で思いつつ、明日へ続く。

つか、子守歌…。。。
お兄ちゃんの特技だったら面白かったかもなぁ…(苦笑)

マルチェロは子守歌を歌った!
ククールは眠ってしまった!

…可愛いかも…♪(ほんわか)
でも、ゼシカとか石化しそうだよね……(爆)
聖堂騎士団員たちはウットリしている!とかね。


あああ。。。
時間過ぎちゃった!(爆)
帰らなきゃ!!! ←(笑)
 
 
 
23 (Tue) Aug 2005 [no.61]
 
 
オー!ジーザス!16


 
お茶の後、再び戻った図書室…。
マルチェロが読みかけの本を持ち、奥に置かれたソファへと落ち着くと、ククールはすかさずその後を追った。
そして、
「…隣に…居てもいい?」
小首を傾げ、可愛らしく(ククールの自分的イメージ)聞いてみれば…。
「ああ、構わんぞ」
マルチェロは事も無げにそう言った。
夫人の前でないので、もしかしたら邪険に追い払われるかも知れないと、少しドキドキしていたククールは、兄のその返答にホッとして…嬉しそうな笑みを浮かべながら、いそいそとソファに腰掛ける。
濃いグリーンのソファは柔らかく、驚く程に座り心地が良かった。
体温を感じる程の距離…。
いかにも難しそうな本を開いているマルチェロの横で、ククールは持ってきた本をぎゅっと握りしめた。

「あ…あのさ、寄っ掛かったら……重い…?」

甘えるんだ!甘えるんだ!と、心の中で自分に繰り返し、上目遣いに兄を見上げて訊ねる。
本人的にはかなり頑張って甘えてみたつもりの言葉…。
マルチェロはそんなククールに一瞬だけ驚いたような顔をして……それから優しく微笑むと、
「いや、大丈夫だ」
おいで、と肩を抱き寄せた。
「…っ☆」

お……っ、お、おいで……ってっ!!

おいで…って!
おいでって〜〜〜っ!
反則過ぎなんスけど!
鼻血出そうなんスけど〜〜っ!!!!

ま……っ、負けねーぞ、兄貴っ!

つか、今一瞬驚いたよな?!
ってことは、やっぱおかしくなっちまったワケじゃなく、ワザとやってるってことで…。
そーと分かれば、いつもの調子で怒り出すまで、てってー的に甘えてやるからなっ!

かあああああっと頬を染めながら、それでも決意を新たにするククール。
密着した身体にドキドキしたまま、近い顔を見上げるが、兄は涼しい顔で本を読んでいる。
斜め下に落とされた視線。
緑の瞳が文字を追うのに合わせ、僅かに頭も動く。

ホント…本好きだよな……。

修道院でも度々見かける、本を読む兄の姿…。
自分がスグ側にいる事など、もはやキレイサッパリと忘れてしまったかのようなその様子に、少し寂しいものを感じながら…。
コッソリ溜息をついて本を開く。
ククールが持ってきたのは少し前に流行った冒険物語だ。
若者向けに書かれたそれは適度な文字の大きさで、文章の難易度も高くはない。
だが…、いざ読み始めてはみたものの、一向に内容が頭に入らなくて……。
何度も何度も同じ部分を繰り返し読み、全く先に進めぬ有り様…。

うううう…くそ〜〜。
こんな状態で本なんか読んでられるか!

胸の内で不平を漏らしつつ、それでも何とか読もうとしていると、
「…まだ読み終わらんのか?」
上からそんな声が降ってきた。

ドッキーーーンと大きく跳ねる鼓動。
慌てて視線を向ければ、こちらを見ている兄とばっちり目が合ってしまって…。
「うぇえっ?な…?なに?」
「いや…いつまでそのページを読んでいるのかと思ってな…」
その言葉に、兄が少し前から自分を見ていたのだと、それを知って…。
ククールはあわあわとページを捲った。
「あ、う、ごめん、ちょっとぼーっとしてて…」
「ちゃんと読んだのか?お前が読んでいないのにページを捲る必要はないんだぞ?」
「う、うん、大丈夫っ!全然!」
ガクガクと頷き、本に視線を落とす。
騒ぎ過ぎている鼓動を何とか鎮めたいのだが、あまりにもドキドキしている為、息すらままならなくなってきて…。

さ…酸欠で死にそう……だぜ…。
いや!ダメだ!ここで甘えねばっ!
今、甘えなかったら、一生次なんかナイんだ。
ぜってーナイ。
だから死ぬな!
根性で甘えろ、オレ!

いや、おかしいだろう、ソレ…と、ツッコミを入れたくなるような事を自分に言い聞かせ、ククールはキッと勢いよく兄を見上げた。
そして、
「あ……あのさ、ま…、ま…まる、まる…ちぇろ……っ」
名前を呼ぶって拷問に等しい…等と思いながら、何とか兄の名を呼べば、
「どうした?」
当の本人は涼しげな顔で聞いてくる。
緑の瞳に怒りの影はない。

「あ…あのさ、一緒に……読む…いや、読みたい、な〜、とか…思うんですがっ!」

しどろもどろになりつつ…、何とかそう言ってみてから、

読むワケねーじゃん!兄貴が!
こんなガキの読むよーなモンをさ!

なんて思う。
だが、マルチェロは驚きも怒りもしないで……それどころか、逆にフッと笑って………。
「いいだろう、貸してごらん」
ククールを抱き込むように腕をまわし、本を取った。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

書いてて怖くなってきた…!(爆)
どうしよう!マジでオー!ジーザス!だよ!!!(><;)と、思いつつ…。

ククールは仲間達と話す時なんかは『マルチェロ』呼びしてますが、本人目の前にしたら呼べないんだろうなぁ…とか思ってみたり。
呼びたいわけでもないでしょうしね。
兄貴って呼ぶのを認めて欲しいんだもんね〜。

しかし、この兄怖い…。。。
ナニモノだ一体。。。。。(答;ニセモノ …と、セルフツッコミ。。。)

うわ。今、海外からの電話を取ってしまいました!
ドッキリしちゃった(爆)
 
 
 
22 (Mon) Aug 2005 [no.60]
 
 
オー!ジーザス!15



よ、呼んじゃったっ!
呼んじゃったよ!
マルチェロって!
本人に向かってっ!

バクバクと騒ぐ心臓に目眩すら覚えながら…。
怒られるんじゃとヒヤヒヤするが、マルチェロは至って静かな様子だった。

「そうか、ならいいが…」

軽く頷き、肩から離れる兄の手…。
顔が遠くなる。
それにホッとしていると、
「さあ、お茶にしましょう、二人とも」
夫人が嬉しそうに声を掛けた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ヒラヒラとしたレースの襟を止めている、夜空のような色の石のブローチ。
兄の首元のそれを何とはなしに眺めながら…。
「……………」
もし…。
もしも、自分が本当に女の子として生まれていて…、両親も健在で、家も残っていたとしたら……。
マルチェロと二人で、こんな風にお茶を楽しむ事もあったのだろうか…。
そんな事を考える。
ククールはぼんやりと紅茶に口を付けた。
フワリと口内から鼻腔にかけて広がる、爽やかな花の香り。
マルチェロは先程から、公爵夫人の思い出話に付き合い、和やかに会話をしている。

もし…妹だったら…。
お兄ちゃんとか呼んでたのかな…。
あ、お兄様か?!?!
うわー!お兄様!すっげ似合うかも!
つーか、オレって女の子だったらマジ可愛かっただろうな〜。
今ですら、この美少女っぷりだもんな〜♪
うーん、勿体ないコトしたもんだぜ、神様も…。

ともすれば暗くなる思考を、何とか明るく保とうと、いささかお馬鹿な事を考えて…。
クスッと小さく笑えば、マルチェロの視線がチラリと向けられる。
それに一瞬ドキリとするが、ククールが何事もなかったようにサンドイッチに手を伸ばすと、兄の目はふっと柔らかな色を浮かべ、それから静かに夫人の方へと戻った。
「………っ」
もぐ…と。
一口サイズのミニサンドを小さく囓る。
小さな小さなパンの固まりが、何故か喉につかえるようで…。

いつも、苛立ちや怒り、憎しみに満ちた瞳ばかりを向けられてきた。
けれど、今向けられるのは…優しさに満ちた静かな瞳で…。
あるはずのない愛情まで…込められているような気がして……。

んなわけ、ねーじゃん…。

胸を突き刺す鋭い痛みに、ククールは俯いた。
また、もぐ…とサンドイッチを囓る。

あー、でもやっぱ………女の子なら、妹だったら、こんな感じだったんだ……きっと…。
兄貴は優しくて…オレを可愛がってくれて……、きっと……大事にしてくれたんだよな…。
…………ちぇ。
やっぱコレ…新手のイジメだな…。

フウと、心の中で溜息をついて…。
凹んでしまった自分を勢いづけるように、ククールはサンドイッチの残りを頬張った。
今まで味など分かっていなかったが、どうやらキュウリのサンドイッチだったらしい。
ゴクンとカップに半分程残っていた紅茶で流し込めば、
「どうした?クク?」
再び、マルチェロの瞳がこちらを見る。
「いーえっ、何でもっ!このサンドイッチ、すごく美味しいですよ☆」
にっこり。
ククールは満面の笑みを向けてそう言うと、もう一つ、今度はスモークサーモンのサンドイッチを手に取った。

ふーんだ!
挫けないもんね。
元の兄貴に戻る前に、目一杯甘えてやる!

そんな事を思いながらサンドイッチを元気に頬張り、決意を新たにして…。
次はケーキ、その次はスコーンと…。
三段の皿にキレイに盛られた菓子を次々と平らげながら、ククールは若干呆れたような視線を向ける兄に、ニコニコと笑いかけてみせた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

トラディショナル式のアフタヌーンティなぞ…。
何つか、優雅で豪華な感じが好きなのですが。
京都の長楽館で頂いたのが一番思い出深いかな…。
http://www.chourakukan.co.jp/top.html
長楽館は建物が素敵ですよね☆
(ホテルもあの調子の建物だったなら、絶対泊まるのにな…普通なんだもん。。。)

ククールは甘い物好きそうですよね。
お兄ちゃんは好きかダメか、どっちかって感じだな。
どっちでもいい…はない気がする(笑)
明日はお兄ちゃんにべったりさせてやる!とか、思いつつ……(ホントか?!)

ところで、アフタヌーンティでお皿のっけてあるあの三段のヤツって何て名前なんでしょうか。。。(爆)
 
 
 
21 (Sun) Aug 2005 [no.59]
 
 
お掃除中の発見物…。

修羅場中の現実逃避でお掃除などしてみたら、こんなものを発見………!

数年前に秋葉のゲーマーズかなんかでもらったデジキャラットのポストカードを見て描いたっぽい。。。。

多分、遊戯王でも同じカッコさせてるはずだ…(そんな記憶がある)

…何て進歩のない私……ちーん。
とゆことで…、脱稿記念に上げてみました(何故)
 
 
 
19 (Fri) Aug 2005 [no.58]
 
 
オー!ジーザス!14


 
「まあvまあまあまあv」
嬉しげに嬉しげに。
公爵夫人はニコニコと笑って声を上げた。
「本当に…何て素敵な光景なのでしょうvvv」
マルチェロに手を取られククールが階段を下りてくる。
その様を眺めているのだ。
「ああ、勿体ないですわ〜!橋さえ壊れてませんでしたら、スグにでも絵師を呼びますのに……」
心の底から嘆く夫人に、マルチェロは穏やかな笑みを向けた。
「そうですね、私も残念だ」

ちょっと!!!聞きました?!?!
この人残念とか言ってますよ!奥さん!

心の中で、誰とも知らぬ相手に話しかけつつ、ククールは引きつった笑みを浮かべて…。
柔らかく握られた手を、チラリと見る。

手とか…繋いでくれんのは嬉しーんだけど……。
何考えてんのかわかんねートコが、マジ怖い……。
あり得なさすぎなこの状況が、ほんっとーーーーーに怖い………。

「…クク?どうしたのかね?」
「な…っ!!!」
ぼんやりというか、どんよりというか…な様子で現状を考えていたククールは、突然目の前に現れた兄の顔に、思わず飛び上がった。
「…ん、でも…、アリ、マ、セン……ッ!」
切れ切れになってしまう言葉。
かあああっと顔を染めた自分を、夫人が楽しげに眺めているのが視界の端に映った。

「疲れが出たか?」

囁くような声で聞いてくるマルチェロ。
緑の瞳はククールを見つめて微笑む。

意味深過ぎッス!団長殿っ!
つか、顔近いから!顔っ!
ぎゃー!急に抱き締めるとかって、だめーーっ!
やめて〜〜っ!
マジ、心臓に悪いって!!!

「大丈夫…デス…」
これはきっと新手のイジメなんだ!と、そんな事を思いながら…ククールは小さな声で応え、顔を俯かせた。
距離が近すぎるなんて事は、修道院では絶対にあり得ない事で……そう思うと、照れてしまっているのが勿体ないような気もする。
折角なのだから、満喫するべきなのだろう。

手を繋いだり。
見つめ合ったり。
笑いあったり。
普通に会話したり。
ぎゅっと抱き締められたり、抱き締めたり。

全部全部憧れていたのだ。
普通の兄弟の、普通のやり取りに…。

でも〜ぉ、これも全然普通じゃないけど〜〜…!
つか、女でもオレの事は認めないとかって夕べ言ってなかったっけ?
んで、その後殺されかけた気がするんですけど………。
一晩経ったら、妹はアリになったってのか?

だが、
「歩けんなら、抱いて運んでやるが……平気か?」
…なんて…。
優しげに声を掛けて…。
そっと、肩を抱いて…。
『妹』を気遣うマルチェロ。

存在を否定されるのは、何も今始まった事じゃない。

優しくされるのは、素直に嬉しい…。
こうして、視線を合わせてくれることも…。
心配してくれるのも…。
ふれ合いの全て……。
『弟』では出来ないと言うなら…。

妹だって、構わない。

「…大丈夫、です…あの、ありがとう…………マルチェロ…」

ククールは自分に注がれている緑の瞳を見上げてそう言って、ニッコリと笑いかけた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−

うわ〜〜。
これはどうなのかなぁ、もう…とか思いつつ。

明るくサッパリなドタバタお笑いSSの予定はもうとうに崩れ去り、すっかりワケのわからんことになっている今、タイトルのオー!ジーザス!は、あたしの嘆きっぽいですな…。
この話、どーオチつけんだよ!かみちゃまたっけてー!みたいなね。
迷走中です〜☆(いいのか言って…そんな事…)

ま、どーにか頑張れ!あたし!(どーにか頑張れって、何か『さくせん』のようだ…!)

 
 
 
18 (Thr) Aug 2005 [no.57]
 
 
オー!ジーザス!13



軽く重ねられた唇は柔らかく暖かく…。
鼓動がドキリと大きく跳ねる。
兄の緑の瞳は何を思うのか…ただ、ククールの瞳を覗き込むように見つめて……。
暫くの間、時が止まったかのように、二人静かに見つめ合う。
マルチェロは何かを迷っているようだった。
僅かに寄せられた眉…。
眉間に小さく皺が寄り、そのままジッと……。
やがて、フウと…小さな溜息が漏れた。
「あ……あにき…?」
ククールは、喉に張り付いたような声で兄を呼ぶ。
緑の瞳に映る自分は、本当に女の子のようだ。
呑気にもそんなことを思えば、マルチェロの指が銀髪をそうっと撫でて…。

「…お前は…本当に、美しいな…」

ポツリと…何処か虚ろな呟きが兄の口から零れた。
「え…?」
「…麗しく……清らかで…」
「兄貴…?」
「………穢れなど…何一つ知らぬようだ」
「ちょっ…、ねえ?兄貴…?」
戸惑うククールに注がれたままの緑の視線。
けれど、その瞳に、本当に今自分が映っているのだろうか?
何処か、何か違うものを見ているかのような兄に、ククールは不安を覚えて…。
「ね、どうしたの?」
訊ねれば、微かに笑う。
それは、今までに見た事もない優しい笑顔…。
「ああ…怯える顔も美しい………」
マルチェロは、またサラリと髪を撫でた。
そして、

「お前は妹だ」

短く告げられたその言葉に、ククールは大きく目を見開いた。
「は?」
「この屋敷にいる間…」
「え?」
「お前は妹だ。私の…」
「あ、あにき…?」
どうしちゃったの?と訊ねれば、マルチェロは静かに首を振る。
「兄と呼ぶな。名前でいい」
「な、名前で…って……え?」
「私はククと呼ぶことにしよう」
「はあ?ちょっ、本気で言ってんのかよ?!」
「お前は妹だ。もう少し、おしとやかにするべきではないかね?」
「な………っ☆」
大真面目な兄の顔をマジマジと見つめて……。

あ…頭……おかしくなっちまったのか?
ククと呼ぶことにしよう………って………。
つか、名前で呼べとか…。

「コ…コレハユメダ…ユメ……ウン、ハヤクメヲサマサネェト…★」

ブツブツブツ、と固い声で呟くククール。
だが、
「どうした?クク?顔色が優れぬようだが…」
なんて、真面目な顔で言われて…。
「!」
グラリと、思わず視界が傾いた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−

お久しぶりでございます★(笑)
期せずして夏休みが一日延びてしまい、今日ようやく出社しましたナナセです。
まさか地震で帰れなくなるなんて思ってもみませんでしたが…。。。
まあ、それはいいにして。。。

え〜、休み前からの話、続いております。
何とか女装設定をきちんと盛り込まなくては!とか思って無理矢理流れを変えたのですが、自分で書いてて、コワ!とか思ってしまいました(笑)
ああ、またこうやってあり得ない(つか、あり得なさ過ぎ…)話を捏造して行くんだ…あたしったら…と、呆れつつ、もう少し続く予定です〜。
よろしければ、今暫くお付き合い下さいませ☆
 
 
 
10 (Wed) Aug 2005 [no.56]
 
 
オー!ジーザス!12



マルチェロは図書室にいた。

さやさやと衣擦れの音を立てて室内に入ってきたククールを、彼の瞳はチラリとも見ることなく…。
ただ、静かに手元の本の文章を追う。
「………」
別に、何か話があって来たわけではない。
ククールは静かにマルチェロの斜め前のイスをひき、腰掛けた。

何で……追い掛けちゃうかな…。
どうせ…酷いことしか言われないって…分かってんのに……。
嫌われてるのも分かってんのにな…。
でも…修道院に戻ったら…こんな風に近くには居れないし……。

そう思うと、胸が痛んで…小さく溜息をつく。
外はまだ雨が降り続いていた。
昨日よりも小降りになったものの、屋敷の周辺を流れる川が増水している為、橋を架ける工事はまだ当分出来そうにない。
まだ二、三日はここに滞在しなければならないようだ。
ククールは視線を落とし、また小さな溜息を漏らした。
自分の身体をふんわりと包むベビーブルーのドレス…。
爽やかで柔らかな色合いのこのドレスには、所々に小さな紺のリボンがついている。
それを何気なく弄りながら……。
まだ暫く、こんなドレスを着ていなければならないのかと思うと、何やら複雑な気分になる。

昼近くになって起きてきたククールに、公爵夫人は嬉しそうな笑顔を向けた。

恐らく、それはマルチェロが自分の願いを聞き入れて、ククールの想いに応えたのだろうと、そう思っているのだろう。
期待になんて全然添えてない内容だけど…と、やや皮肉に考え、唇の端を僅かに上げる。
何か、本でも読んでみようかと席を立ち、手近な書棚を覗いて見れば…。
成る程、公爵夫人が『きっとご満足頂ける』と請け合っただけの事はあり、確かにその蔵書のコレクションは目を見張る物があった。
時間はあるのだし…長い物語に挑戦してみようか…等と、分厚い本に手をかけた時だった。
ふいに…、

「いい度胸だな…」

背後から声を掛けられる。
間近に聞く、よく通るバリトン…。
胸のざわめきを覚えながら振り返れば、いつの間にここまで来たのか…。
ククールの真後にマルチェロが居た。
「……なにが…?」
「昨日の今日で…いや、僅かに数時間か……」
マルチェロはフンと鼻で笑い、緑の視線をククールに落とす。
射るようなその瞳に、背筋をゾクリとしたモノが走って…一歩下がればトンと背中が書棚にぶつかった。
「あれで懲りなかったのか?」
「……あれで…って……」

懲りない……懲りないよ。
諦めが悪いからこそ、今でも兄貴が好きなんだから…。

そんな事を思いつつ、上目遣いに見上げれば、
「フン、懲りなかったと見える……」
なんて、笑われて…。
頬にそっと手が添えられる。

「……墜とされても…汚されても……美しさは損なわれぬままか…」

「え…?」
少し冷たい兄の指先…それに戸惑いながら…。
言われた言葉にはもっと戸惑って…。
緑の瞳の中、不思議そうに見上げている自分の顔が、ゆっくりと大きくなった。


−−−−−−−−−−−−−−−−−

あああああ。
話が進まずにダラダラしてるなって状態がどうも嫌いなのですが…。。。
そんな状態のまま、夏休みに突入致します〜!

どうして、会社にいる時しか更新しないんだよ……とか、ツッコミたくなりますね(笑)

5時半までにアップしなくてはならない!とゆープレッシャー(?)がポイントな模様。
〆切が迫らないと原稿に本腰の入らないダメな同人屋さんであります(爆)

しかし、今やっている原稿はグッコミ合わせなんですが、和解後なんでラブいです♪
やっぱ、ラブいのはいーやねぇ…とか和んだりしつつ、いちゃもちゃさせてます☆
(今書いてるのがそんなトコ)
たとえ夢見すぎと言われても〜ユメを見てこそ同人屋〜★とゆことで。。。(笑)

ま、そんなわけで…1週間…スパーンと空いてしまうかもしれませんが……。
お盆明けに、また覗いてやって頂けると、嬉しいです☆(^-^)

でわでわ、夏コミ参戦の皆様、暑さに負けず頑張りましょう〜!
会場でお会い出来ましたら、どうぞよろしくお願い致します〜!
(って、ここで書いてもドラクエの人には知り合いいないから仕方ないんだけど……がく)
 
 
 
09 (Tue) Aug 2005 [no.55]
 
 
オー!ジーザス!11



汗と涙にまみれた頬…。
そこに張り付いた銀髪をそっと避けて…。
マルチェロは意識を手放したククールを虚ろに見つめていた。
長い睫毛が頬にかかり、僅かに眉根を寄せて…その表情は悲しげとも、苦しげとも取れる。

悲しめばいい。
苦しめばいい。
恨めばいい。

安らぎ等決してやらない。

ずっと…そうしてきたはずだ…。

「……なのに…何故…」

小さな呟きを漏らして…マルチェロはククールに口付けた。
僅かに開いた唇に、けれど侵入はせず、ただ、形を辿るように舐めて…。
落とした視線は、何処か切なく…。

何故、お前は私を好きでいる?

そう胸の内で問う。
マルチェロはククールがずっと自分を慕ってきたことを知っていた。
本人はずっと胸に秘めていたつもりであろうが、その想いは言動の端々に見え隠れしていて…。
それでも、初めは気のせいだろうと思っていたのだ。

こんなに酷く、冷たくあしらわれて、それでいて好きだ等…そんな物好きはいるまいと……そう思っていたのだ。

だが、彼の弟は余程の物好きであったらしい。
初めて出会ってからずっと…10年以上もの歳月を、ほとんど兄弟らしい触れ合いも会話もなく過ごしたというのに、それでもククールはマルチェロのことを諦めることも、嫌うこともなく…ずっと好きなまま…。

「…私は…お前など……」

じっと見つめながら、呟いて…。
胸に覚える微かな痛み。

触れたのは…抱いたのは…間違いだったかもしれぬと、頭を掠めた苦い思いに、マルチェロは溜息を漏らした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「……くそ……だりぃ…」
ノソリと半身を起こしかけ、身体を襲った鈍痛に悪態をつく。

いくら何でも無茶しすぎだっつの……。
腰はイテーし、頭はイテーし…。
つか、身体中痛い…。

「うー……」
腕の下のサラリとしたシーツに、おや?と思って…ククールはキョロキョロと周囲を見回した。

あれ…?
ここって…オレの部屋じゃ……ない…?

ブラウン系の色調で統一された落ち着いた内装の室内。
ククールの部屋はピンクと白を基調に、レースや花で飾られたいかにも少女〜な部屋である。

……ってーと……ここは…ひょっとして…兄貴の部屋?

そう思っただけで、ドキリと跳ねてしまう鼓動。
ドキドキしながらベッドを降り、真っ直ぐクローゼットに向かって…。
その中にかけられた青い制服を見つける。
聖堂騎士団の団長のみが着ることを許された…一般の団員達とは明らかに形の異なったその制服を………。

兄貴が…運んでくれたんだよな……。
何で……?

自分の部屋のベッドがどんな状態だったのかなど、想像するのは容易くて…。
確かに、あそこで汗と体液でぐちゃぐちゃになったまま眠るのはイヤだなとは思う。
思うが、そこに一人で残されている方が、らしいと思うのだ。
見れば、身体も綺麗にされている。

「……よく…わかんねー…」

暫し、顔を顰めて考えて…。
まあ、いいやとククールは1つ息をついた。
考えても分からないことなんていくらでもあるのだから。
キレイにしてくれないより、キレイにしてくれた方がありがたいし…と。
そう思うことにして…。
「…テテ……」
小さな呻きを上げつつ、ククールはバスルームへと向かった。


−−−−−−−−−−−−−−−−−

終わらない…終わらないねぇ…とぼやいてみつつ…(^-^;)

マルククにハマった時、今回は鬼畜にも挑戦よー!とか、意気込んでたりしたのですが、やっぱ無理だねぇ…とか(苦笑)
うーんと意地悪なのとかやってみたいんだけど……やはり、夢は夢か………。
うーー!だって、ラブラブが好きなんだもん〜。。。
まあ、途中が可哀想でも、絶対最後はハッピーエンドってのが私のモットーなんですが…。

あー……いつか、マルチェロがすごい意地悪!とか、ククールが可哀想!とか言われてみたいなぁ…。
今までやって来た事の対極な感じだけど…。

ま、人ってのは自分にないモノに憧れますからね☆
 
 
 
 
08 (Mon) Aug 2005 [no.54]
 
 
オー!ジーザス!10

 
 
「あ…っ、ぁ…っ!」

広い寝室に響く、痛みの為とも、快楽の為ともつかぬ喘ぎ…。
もう幾度、達したのか…。
果ての見えぬ快楽に、もはやククールの正気は失われていた。
ただ、ただ、追い上げられ、イかされる。
それは本来、子を成す為の…あるいは、愛を確認する為の行為である。
だが、二人の間にはそのどちらの意味もなく…。
何の為の行為であるのかわからぬまま…ただ、繰り返し、繰り返し…。
「や……っ、も…ぅ、あ…ぁあ…っ」
痛みには決して逃げる素振りを見せなかったククールの身体は…けれど、過ぎる快感には藻掻いて…。
突っ張った足がシーツを蹴る。
震える指が縋る場所を求めて伸ばされ、マルチェロの肩を掴んだ。
ぎゅうっと力を込めたその指先…爪が肩に食い込み、肌を裂く感触に、マルチェロは僅かに顔を顰める。
だが、それでも、その手を振り払うことはせずに…。
ククールの胸に珠となって浮かぶ汗が、所々に散った白濁の液と混ざり、ゆっくりと肌を伝い落ちる。
その様を見つめ、
「…浅ましいな…」
そう、何処か虚ろに呟く。
「本当に、欲深い身体だ……」
マルチェロは冷たい笑みを浮かべ、深く穿った己を更に奥へと押し入れて…。
「ぁあっ、や…ぁ、む、り…っ」
悲痛な声を上げ、逃げようとする腰を押さえつけ、追い込むように動いた。
「や…い…っ、は…ぁあ…も…、もう、だ、め…っ」
ビクビクと痙攣する身体をツツ…と撫でる。
哀願するように見上げる瞳を覗き込んで。
「…無理?ダメ?ウソはいけないな、ククール…」
何故か穏やかに笑うマルチェロ。
「ウソじゃ、な…っ、お…ねが…っ、も…ゆる、し…て…っ」
「許して、か…なかなかいい…。だが、分かっているだろう?」

決して許されることはない、と…。

耳元に囁かれた優しい声に、ククールの双眸が見開かれる。
「あ、ぁ…あ、に…き…っ」
溢れ出す涙。
快楽に溶けていた思考が、冷水を浴びせられたように瞬時に覚めて行く。
「…お前など……絶対に許さない…。許されていい筈がない……認めてはならないのだ。何があっても…絶対に。お前など…。そうだ、憎まなければ…」
耳元に落とされ続ける暗い小さな呟きは、まるで自分に暗示をかけているかのようで…。
ククールには、そんな兄がとても苦しげに見えた。
とても苦しげで…辛そうで……そして、とても…脆く……。

憎まなきゃ…生きていけないのかよ?
オレを許したら…兄貴はダメになっちまうってのか?
オレを認めたら…アンタ、壊れちまうのかよ……。

胸が痛くて堪らない。
ずっと抱いていた期待は、やはり叶うことはないのだ。
絶望に打ちひしがれながら、それよりも大きいのは兄に対しての謝罪の念で……。

こんなにも、苦しめている。

それが、ただただ辛い。
自分の大好きな人は、自分が生まれたせいで一生の憎しみと苦しみを背負ってしまったのだ。
自分はこんなにも好きだというのに……。
自分がいるせいで苦しんでいるのだ。
「…あにき…」
「引き裂いてやりたい……お前など…っ」
怒りによって鮮やかさの増した緑の瞳が、憎悪の全てを込めてククールを見据える。
ククールは堪らなくなって目を閉じた。
「じゃあ…、引き裂けばいい…」
震える声で言えば、すぐ上でハッと息を呑む気配があって…。
一瞬の沈黙が降りる。
「…殺せよ…オレなんか…」
だが、ククールには分かっていた。
兄は自分を殺さないと…。
殺されることはない。
殺してしまっては、ダメなのだから。

だから、きっと…いつか、追い出される…。

「…っ」
その絶望感から涙が溢れる。

「………殺しはしない。貴様など…誰が殺してやるものか…」

一瞬で何もかも終わらせる等…。
全て終わりにして楽にさせてやる等……誰がしてくれよう…。

お前など、一生苦しみ続ければいい…。

「は…んっ、あ、あぁっ!」
突然、質量の増したマルチェロに、ククールの身は跳ねて…。
苦しげに呻きを上げれば、マルチェロはククッと喉を鳴らして笑った。
「全く…バカにしていると思わないかね?私を好きだ等と…」
再び再開された動き…。
もう幾度も、中に放っているというのに、マルチェロの剛直は硬く…熱く…。
それは怒りによっての為なのか……。
ククールの全身が快楽のざわめきでビリビリと痺れる。
それは、痛みすら伴うほどの、嵐のような快感。
「や…ぁ、あっ、あ…ぁ、も、や…め…っ」
「私を嫌え…憎み、恨め……」
「や、だ…っ、あ、あに…き…っ」
フルフルと振られる頭は、兄の言葉に対してなのか、それとも、過ぎる快感に対してなのか…。
必死に力を込め、マルチェロの身体を押しやろうとするククールの腕。
その腕を潰すかのように体重をかけ、マルチェロはズンと己を再奥へ突き入れて……。
そして、その中で……全てを溶かしそうな程の熱が弾けた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−

月曜から何て爽やかじゃないのだろうか…。。。。
流石にちょっぴり反省して、省略したり控えてみたりしつつ……。
それより問題なのは、この話って後2日でカタつくのかな…?とゆー…(汗)
夏休みで1週間も間空いたら、何やってたかなんて忘れちゃうぜ…!(えー)

つか、この話って、こんな流れになる予定はなかったんですが。。。
ただ単に、ククたん女装もいけるよねvvvんで、マルチェロさんがクラクラしちゃってイチャモチャ…いーんじゃな〜い?!♪
とか、そんなおふざけノリだったのに……!(だから、タイトルからしておふざけ調だったのに!)

うーん。。。まーまーまー…。
人生って分からない☆ってことで(そんないい加減な!)

 
 
 
05 (Fri) Aug 2005 [no.53]
 
 
オー!ジーザス!9

 

「あにき…?」
ククールの問いかけに、けれどマルチェロは答えなかった。
じっと見つめていた緑の瞳が静かに閉じられ、また唇が落とされる。
柔らかく温かい唇が触れて…二度、三度…ただ重なり、離れた。
その微かな感触が落とされる度、ドキドキと鼓動が跳ねる。
「あ…に……っん…」
呼ぼうとすれば、その唇の間から舌が入り込んできて…。
歯列を辿り、舌を絡め、口内を探るように…。
「は…っ、ぁ……ン…ッ」
何度も角度を変え、次第に深くなる口付け。
漏れる吐息に混ざる声は甘さと熱を持って…耳を刺激する。

ままならぬ呼吸に覚える苦しさ。

それを遙かに凌駕する快感。

思考は霞がかかったように白く染まって……。
ワケの分からぬまま、それでも絡めてくる舌に応えを返す。
もういいや、とククールは思った。

もうやめよ…。
ゴチャゴチャ考えるの……。
どーせ、抵抗する気なんて最初からなかったんだし…。
兄貴が何でこんなコトすんのか…とか。
考えたって…仕方ないし…。

お金の為って言ったけど……それもあるかも…だけど……、きっと、ホントはオレが憎いから……だもんな。

自分を殺したいと思う迄、また実際に殺そうとする程迄に、マルチェロを追い込んでしまったのは自分なのだ。
そんなつもりなどなくとも、何をしたわけでなくとも、ただククールが側にいるだけで……。
憎しみは憎しみだけでなく、自己嫌悪や苛立ちといったその他諸々の負の感情を呼び起こし、それらは互いに反応しあい、増幅しながらどんどんと蓄積されて…。

そして…彼の歪みを大きくしてしまった…。

ククールはそれを漠然と分かっている。
離れていれば…もしかしたら、成長する過程で憎しみも癒えたかもしれぬと、そう思ったこともある。
それでも、どうしても側にいたかった。
兄を苦しめても…自分が苦しくても…。
それでも、どうしても……期待を捨てられないから…。

いつか、許して貰えるのではないかと…。
いつか、認めて貰えるのではないかと…。
いつか、愛して貰えるのではないかと…。

どんなに辛く当たられても…捨てられなかった希望…。
それを胸に抱えながら、その反面で、いつも限りない絶望を予感していた。

いつか、修道院を追い出される日が来るのではないかと…。
いつか、殺されるのではないかと…。
一生、許して等貰えないのではないかと…。


どうして…好きなんだろう…?


兄の口付けを気持ちいいと思いながら…ククールはぼんやりと考える。

好きじゃなければ…きっとこんなに苦しくないのに……。
自分の兄貴にこんなコトされんの…イヤじゃないとかってのも……おかしいって分かってるし…。
大体、殺される方が追い出されるよりマシだなんて………我ながら笑っちまうぜ…。

ふいに…。
「……ン…ッ?!」
何の前触れもなく、脚の間を指が滑って…ククールはビクリと身を竦めた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

来週はまた紫のアイコン予定です。。。。

てか、来週木曜(11日)から夏休みに入るので、1週間ばかりここの更新もお休みの予定です。
気が向けば何か…と思いますが、まあ、夏コミ期間は間違いなく、何もやらないでしょう(笑)
あ〜、もう来週なんだ〜♪とか思うとウキウキだ!
来週の今頃は、マルクク本いっぱい抱えてたらいいな〜♪とか思いつつ…♪♪
サークルさん達の新刊予定に胸を躍らせる今日この頃なのであった☆
楽しみ〜vvv(><//)
 
 
 
04 (Thr) Aug 2005 [no.52]
 
 
オー!ジーザス!8


 
きめの細かい肌は、撫でる度手に吸い付くようで…。
マルチェロはその滑らかな感触を楽しみながら、
「…女のようだな…」
そう感想を漏らした。
ククールがぎゅうっと瞑っていた目をソロリと開ける。
何処か不安そうに…伺うように自分を見上げる薄い水色の瞳…。
その蠱惑的な表情に、煽られる劣情を自覚しながら、マルチェロはそっと髪を撫でた。

「お前が……女であれば…」

聞こえるか聞こえないか程の小さな呟き…。

ククールがもし妹であれば、自分も母も、屋敷を追い出されることはなかったのだろう。
マルチェロは跡取りとして何不自由なく育てられ、母もまだ存命していたかもしれない。

そう…誰も不幸にはならなかった筈だ。

そして……もし、もしも女だったとしたら…。
自分はきっとククールを可愛がっていただろう。

可愛らしく美しい妹を、誰よりもきっと……。

誰の目にも触れぬように…。
誰の手にも渡らぬように…。
常に自分の側に置き、自分だけの者として育てたに違いない。

弟であり、憎いと思っている今ですら惑わされる程のこの姿…。
女であればさぞかし……と、そう思って…。
「…っ!」
刹那、胸を過ぎった思いに、雷が落ちたかのような衝撃を受ける。

それは…狂おしいまでの愛おしさ。


女であれば、何の躊躇いもなく愛していたと…。


そんな思いに、マジマジとククールを見つめて……。
バカな!と首を振る。
「兄貴…?」
どうしたの?と訊ねるククール。
薄水色の瞳に映る自分の姿…。
「……何を……バカな…」
「え?兄貴?」

「…たとえ女であっても……貴様など…認められるはずが………っ!」

その呟き、その声に、ククールはハッとして身を固くした。
真上から覗く緑の瞳には憎悪の色…。
見慣れたその色に、今は狂気じみたモノが混じって…。
慌てて逃げようとするが、既に遅く…。
マルチェロの手はククールの首を掴んでいた。
「…認めて…いい…わけがない……」
「あ、ぁ…に、き…っ?!」
グッと込められる力。
柔らかな喉笛の上に指先が食い込み、息が止まる。
「ぃ…や、め…っ、あ、に…っ」
苦しさに藻掻き、手を振り解こうとするが、マルチェロの力は強く…。
「ぁ…っ」
ククールは喘ぎにもならぬ音を漏らした。
チカチカする視界。
耳鳴りがして、ジワジワと脳の奥が痺れ出す。
ああ、オレ…殺されるんだ…と。
ククールは何処か冷静にそう思った。

ついに、殺されるんだ…と。

いつか、そんな日が来るかも知れないとは思っていたのだ。
追い出されるか、殺されるか。
きっとどちらかは確実に来る運命なのだと…そう思っていた。
「……っ、……っ」
声にならぬ声で兄を呼んで…。
ククールは、マルチェロの腕を掴んでいた手から力を抜いた。

いいよ。
覚悟してたから。
ごめんね、兄貴…。

そんな思いを胸の内で呟いて…。
もはや見えない瞳でマルチェロを見上げ、最後に見せる顔はとびきり綺麗にしてやろうとばかり、そっと笑いかける。
「!」
途端に…。
パッと手が離されて…身体が軽くなった気がした。
止められていた血と呼吸が一気に通い、再び肺に空気が入ってくる。
ゲホゲホッと咽せ、ククールはベッドの上でくの字に身体を折り曲げた。
口の中もその奥も、血の味がして気持ちが悪い。

「………何故…」

「…ぁ、あ、に…っ」
ゼイゼイと喘ぎ、空気を貪る自分の上で、マルチェロが小さく呟く。
それに目をやれば、自由になったばかりの口を乱暴に塞がれて……。
再び呼吸を奪われる。
「ングッ…、ン、ん…っ」
キスをされていると分かるのには、一瞬の間を要した。

うそ……だろ…?

だが、そんな状況をシッカリと把握する間もなく……。
容赦なく入り込んで来た舌に口内を掻き回され、ククールは苦しさにまた藻掻いた。
夢中でぎゅううっと掴んだのは兄の少し長い黒髪……。
それが痛かったからなのか…唇が離れる。
緑の瞳が無表情に注がれて…。
濡れた唇を見つめながら、混乱した頭を必死に整理しようと思って……。

「…なん…で…?」

出た言葉…。
それは兄と同じ問いかけだった。

−−−−−−−−−−−−−−

エッチなことをする流れの筈だったのに!全然そんな展開じゃない〜!と、今日は普通アイコンで…。

男でも女でも近親相姦は確定なのか!お兄ちゃんったら!とツッコミ入れつつ、首締められて死にそうな状況では、いくら笑いかけたところで、真っ赤かどす黒く膨れ上がってて綺麗には見えまいな…と苦笑いしつつ……。
あー、でも、ククたんは殺される覚悟ってしてそうだな、とか。
本気半分、やけっぱち半分で。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昨日、兄弟オンリのチケが届きました♪
すっごい可愛くて、うわーんvvv何これ〜〜vvvと大喜び♪♪♪
回収されないよね??なんて、そんなことを心配しつつ、一人参加だから人にあげないし、2枚セットで記念に取っておこう〜vvvとか。。。
は・しゃ・ぎ・過・ぎ・だ!(笑)

しかし、自分でオンリやってから、どうも人様のオンリー関係見ると、これはお金かかってるな〜とか、手間かかってる〜!とか、そんなとこ見ちゃったりします(爆)
ホントにねぇ、主催ってのはそのジャンルによっぽどの愛がなきゃやれないよね。
長丁場だし…。
時間と手間とお金…マジでかかるもんな〜。
(…語ると長くなっちゃうからやめよう…(−−;)主催の苦労ってのは、やっぱりやらなきゃ分からないからな…)
主催の方には本当に感謝の一言です!

あ〜♪でも、すっごい楽しみ〜vvv(><///)
オンリーはいいですよね、やっぱね♪
もう、気分はすっかり、夏越えだ!ウキウキだ〜♪


ところで、今、グッコミ合わせの原稿をやっております☆
それが終わったらオンリ合わせだ!
つか、まだ1回もドラクエでイベント出てないとゆーのに、先行して原稿ばかりやっている(笑)
何なんだろうか、このやる気は…。。。

 
 
 
03 (Wed) Aug 2005 [no.51]
 
 
オー!ジーザス!7

 
ゆっくりと傾けられる身体…。
柔らかなベッドに再び身を沈めて…その上にマルチェロの重みを受ける。
「兄貴…」
切なげな色を浮かべて見上げる瞳に口付けを落とし、マルチェロは視線を遮った。
「…本当に…よく似合っている」
軽く押しつけられ、すぐに離れた唇から、ぽつりと洩れる呟き。
「え…?」
「フン…何やら、おかしな気分になってくるな…」
捲れ上がったレースの裾から、かなりの位置まで露わになっている太股…。
ヒタリと押し当てられた手が、肌の感触を確かめるようにそっと脚を撫でる。
「あ、あにき…っ」
思わず身を固くして、ぎゅっと目の前のシャツを掴めば、マルチェロは目を細めてククールを見た。
「…怖いのか?」
「こ……怖い…よ…」
情けないと思いながらも正直に言う。
「ほう?初めてか…」
「あっ、当たり前だろ!男なんか!」
その言葉に、マルチェロはやや驚いたように弟を見つめた。
「何だよ?意外かよ?」
「ああ、意外だ。よくもまあ無事だったな…」
この顔で…この姿で…と呟かれ、今度はククールが目を見開く。
「な……っ」
「ふぅむ、所詮、噂は噂ということか……」
「何だよ、噂って…っつーか、アンタはあるんだ?」

何かスゲーショックかも…。
女でも男でも、つか、そんなこと全然知りません、関係ありません、興味ありませんみたいな顔してるクセに……。

僅かに傷ついた面持ちで唇を尖らせたククールに、マルチェロはフ…と小さく笑う。
「さて、どうだかな。」
「……ずりぃ…」
それはご想像にお任せしよう、等と言われ、ククールはますます唇を尖らせた。

想像しろったって………。

兄貴が誰かと恋愛してるとかって、全然想像つかないんですけど…。

うーん…。
つか、むしろ…排泄……みたいな……そっちのがあるっぽい…?
いや、でも…でもさ、恋愛とかじゃないにしたって………誰相手にんなことしてたんだよ…。

誰かと関係を持っている兄…なんてモノをつい想像し、ズキリと胸に痛みが走る。
それが男でも女でも、誰であっても、面白くない。
というより、認めたくない。
突如、己の心に生じた独占欲…。
それに表情を暗くしたククールを、けれど、マルチェロは気にも留めぬ風で…。
首筋に生暖かい感触が押しつけられるのに、何処か冷静に『ああ、ホントにやるんだ…』等と思う。
頬を擦る黒髪の固い感触…。
鼻腔を擽る香りは、同じ石鹸を使ったはずなのに、何故か違って……。
大きな手が広い襟刳りからスルリと中に潜って、胸を滑るように探るように撫でた。
ビクリと思わず竦む身体…。
鼓動が一気に早まって、全身を血のざわめきが走る。

兄貴の手…ちょっと…冷たい………。
緊張…してる……ワケナイか……。
きっと…これが、この人の『体温』なんだ…。

ドキドキする胸に、ハ…と息を漏らして…。
目を閉じ、兄の与える感覚を追う。

兄の手の感触を…。

兄の唇の感触を…。

あの長くて綺麗な指先が、今自分の身体に触れているのだ。
いつもキリリとひき結ばれたあの唇が、今自分の身体に落とされているのだ。

そう思うと、堪らない。

ジワジワと熱が高まって行く。
兄の全てが媚薬のようだと思う。
マルチェロの手が、慈しむように優しく自分に触れる等、普段ならば絶対にあり得ない。
それを分かっているから…。
いつも欲しくて堪らなかった、いつも焦がれて止まなかった兄の温もりを、ここぞとばかり感じようとして…。
広い背に必死で縋り付く。
だが、
「ぃ…っ?!」
鎖骨に軽く歯を立てられ、ククールは驚きから目を見開いた。
猛禽類を思わせるマルチェロの鋭い瞳は、今、獲物を捕らえたそれで…。

な、何か……食べられそう…なんすけど……。

ククールの心をゾクゾクと危うい戦慄が走った。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

紫のアイコン付けなくても全然平気な感じでしたねぇ……あらま。。。

マル兄様は、どうも噛み付いたりしそうなイメージが強い…。
ガブガブと!
ククたんの肌に噛み痕付けるのよ〜。
でも見えるトコにはつけないのよね。。。
背中には鞭で打たれた痕とかもありそうだよね…ククたん傷だらけ?
血まみれで抱き合う二人とか………うーん。

つか…、あたし好きな子が痛いのってダメなんですけどね…(苦笑)

何か、ククールは別だな……ううむ。
ゲーム自体に拷問とか出てきたからかな…(いや、言ってただけだけど…)
 
 
 
02 (Tue) Aug 2005 [no.50]
 
 
オー!ジーザス!6


 
「…何処の部屋なのかな………」

柔らかなベッドに身を沈め、高い天蓋を眺めながらククールはぼんやりと呟いた。
マルチェロが泊まることになる部屋を、公爵夫人は特に教えてはくれなかった。
まして、兄がわざわざ教えてくれる筈など、勿論あるワケもなく…。
それに…、聞いたところで別にどうしようというわけでもないのだ。
ただ、この屋敷内にマルチェロが居るのだと、そう思うと何故か落ち着かない気持ちになって…。
「…兄貴……」
小さく呼ぶ。
すると…、

「何だ?」

返る筈のない返事が、返ってきた。
「?!」
ガバッと身を起こし、声のした方を見やる。
「あ、兄貴?!えっ?うそ、何でっ?!」
いつの間にやってきたのか…寝室内には確かにマルチェロの姿があって…。
マルチェロはククールの質問に肩をすくめると、ゆっくりとベッドへ歩み寄ってきた。
「…私の部屋に、隠された扉があってな……何処に繋がっているのかと探りに来たのだ」
「え?」
目を丸くする弟に、ニヤリと笑うマルチェロ。
「まあ…、見当はついていたがな…」
言いながら、ベッドに腰掛ける。
ククールは思わず、その場に正座をしてしまったり…。
「え、あの、見当がついてたってのは…また……何で…?」
可笑しそうに笑みを深め、マルチェロは手を伸ばすと、そっとククールの髪に触れた。
降ろされたままの長い銀の髪。
ここへ来てから、ずっとよく手入れをされているのだろう。
修道院に居たときよりも、随分と艶が増したように見える。
「…フン、寝間着までか…」
襟刳りの大きく開いたネグリジェを着ているククールに、マルチェロは小さく呟いた。
ふんわりとした白い生地に小さな薔薇の刺繍が散りばめられたネグリジェは、柔らかくククールの肌を包んでいる。
それを優しげな瞳で見つめながら…。
「夫人は、何ぞ勘違いをされたようでな」
マルチェロは笑みを含んだ声音で、さも可笑しそうにそう言った。
「…か…かんちがい…デスカ……?」
近い距離で見つめる緑の瞳に、何とな〜く状況が分かってくるククール。
その顔が段々と紅く染まってゆく。

「お前が私を好きなようだから…応えてやって欲しいと頼まれた」

ちゅっと軽い口付けが、掬った髪に落とされた。
「なっ?!」
薄い水色の瞳が大きく見開かれる。

お、オレが…兄貴を好き……って…。
応えてやってって……。

奥様、何考えてんだーーーー!!!!!

い、いや、好きってのは…まあ、そう…なんだけど…。
そうなんだけど…っ、つか、兄貴も、驚いたりしてねーってどうなんだよ!
えええっ、もしかして、ば、バレてたのか?!
オレが好きなの知ってたのか?!
んで、なのに、いつもあんな意地悪なのかよ!
こ…コイツ、絶対サドだ!
いや、それも分かってるけど、やっぱ、マジサドなんだ!!!!

「あ、兄貴…、それで…何て言ったの?」
がががーーんとショックを受け、気が遠くなりつつも訊ねれば、
「さて…」
マルチェロは小さく肩を竦めた。
「さて…って、なっ、まさか、ノるつもりなのかよ?!」

「寄付金の額が更に上がるかも知れんしな。まあ、不都合は特にない」

「特にないって!」
ナイの?!マジですか?!と、至って涼し気な兄の顔を凝視するククール。
マルチェロもまた、じっと弟の顔を見つめた。
「…私が相手では…不満かね?」
「!!!!」

きっっったねぇーーーーーっっっ!
そんなん絶対、不満なんかあるわけないって分かってんじゃん!
つか、んな目で見つめるとか、マジ反則なんですけど!!!!
くそっ!逆らえねーーっつの!

「…ぁ、…あ……せん…!」
「聞こえないぞ?聖堂騎士団員ククール」
「…あ、あー……ありま…せん……」
「もっと大きな声で言えんのかね?」
しれっとそう言われて…。
ククールはキッと目の前の兄の顔を睨んだ。

「あ・り・ま・せ・んっ!」

ヤケになって叫べば、フフンと笑われる。
クソーっとギリギリ歯がみして、むくれるククール。
「ふぅん、もうちょっと…いい顔をして欲しいモノだな」
涼しい顔でそんな注文を付けてくる兄に、何とか一矢報いたいとそう思って…。
ちらっと上目遣いに見上げてみる。
「……ねえ、ホントに?マジですんの?」
「言っただろう、私は別に構わんと…。それに、誤解を招くような態度をとったのはお前だ」
「う…っ」
ククールは言葉に詰まった。
いつものように冷たくあしらわれないのが嬉しくて、べったりと張り付いていた自覚はある。
怒られないのが嬉しくて、遠慮なく顔を見ていたのも分かっている。

だって…仕方ナイじゃんか…。
兄貴の側にいて怒られないなんて……そんなの普段はナイんだからさ…。
つか、そうだよ…。
ただ、好きなだけなんだ。
ただ、ちゃんと見て欲しくて……そんで、ちょっと…優しくしてくれたら……そんだけでいいのに…。

ズキズキと痛む胸。
兄は、金の為だけに自分を抱こうとしているのだ。
ククールの気持ちを知りながら、それに応えを返すなど、絶対にあり得ない。
マルチェロは気持ちなどはどうでもいいのだ。

−−−−−−−−−−−−−−−−

どんな流れよ、と自分でも呆れつつ。
モモイロ思考は止められないのさ☆といった感じで。。。(爆)

お兄ちゃんは、ククたんが自分を好きなの知ってて苛めてるよなぁとか思ってるのですが、知らないのもいいよねとも思います。
今度は全く気付いてないの書いてみようかな。

明日から紫アイコンのつもりです〜☆(笑)
 
 
 
01 (Mon) Aug 2005 [no.49]
 
 
オー!ジーザス!5

 
 
あの時、あそこで帰れば良かったのだ。

突然の嵐に見回れた外の様子に、マルチェロは深い溜息をついた。

そう。
あの時、本当ならあのまま帰るはずだったのだ。
ククールは聖堂騎士団の制服に着替える為、別室へと移動して……。
そして、彼が戻り次第、すぐに修道院へと帰るはずだった。
だが、ククールが部屋を出たその後で…。

「そうそう、そうですわ!折角、マルチェロ様がおいでになったのですから、今回寄贈させて頂く絵画のコレクションをご覧になりません?」

公爵夫人はそう持ちかけたのだ。
少しでも滞在時間を長くしたいと、そんな思いからだったのだろうが……。
時間があったこともあり、マルチェロはその申し出を断らなかった。
そして、神も、そんな夫人の願いを聞き届けてくれたらしい。

二人が美術品の展示されたコレクションルームを歩いている数時間の間に、外は近年稀に見る程の大嵐に見舞われていたのだ。


「あらあらまあまあ!大変ですわ!屋敷の前で橋が流れ落ちてしまったそうですの!」

執事から受けた報告を、驚いたように、それでいて何処か嬉しそうな様子を隠せずに告げて…。
公爵夫人は期待に満ちた瞳でマルチェロを見上げた。
「先程まであんなに良いお天気でしたのに…自然という物は全く予測が出来ませんわね」
「……夏特有の雨であればすぐに上がるかと思いますが…」
窓の外は、バケツをひっくり返したような…という形容が、ピタリと当てはまる豪雨。
滝のような轟音を立てている雨を、薄暗い気持ちになりつつ眺めて…マルチェロは微かな期待を込め、呟いた。
「でも、橋が壊れてしまっては……ねえ?」
「他に…迂回路などはないのですか?」
「ええ、それが迂回路もその先にあるものですから……あの橋が流されてしまうなんて、今までは一度もなかったんですけれど……」
本当に不運なことですわねと、そう言いながらニッコリと笑う。
「ああ、勿論、天候が回復次第、復旧作業にかからせますわ!ですから、それまではどうぞごゆっくりなさってね」
語尾にハートマークが付いているようなその言葉。
ソレに己の不運を呪いつつ……。
このどうしようもない状況を甘んじて受け入れなければならないのだと思うと、ククールに対して新たな怒りが沸き起こる。

全く!
あの男がとっとと帰っていればこんな事にはならなかったものを!
私まで足止めされてしまったではないか!!!

橋が流れ、迂回路も使えぬとなれば、この足止めは少なくとも二日以上に渡るだろう。
その間、仕事の一切が止まってしまうのかと思うと、腹立たしさはこの上なく……。
マルチェロがギュッと拳を握り締め、怒りに震えていると…、

「まあ!そうですわ!折角ですから、マルチェロ様もお着替えになったら如何かしら!」

その横から、何とも呑気で何とも楽しげな声が響いた。





「主人の若い頃の物ですけれど…よくお似合いですわ♪ねえ、ククール?」
コロコロと鈴のような笑い声を上げて…。
公爵夫人は嬉しげに楽しげにククールを見た。
ククールは兄から目を離せぬままに、ウンウンと大きく頷く。
今、マルチェロは白いたっぷりとしたブラウスに若草色のパンツとベストといった出で立ちで…。
何処から見ても貴族の家の子息のようだった。
「喜んではいけないのでしょうけど……、正直に申しまして、私は嬉しいですわ♪これも神のご加護かしら…感謝しなくてはなりませんね」
フフフと夫人に本当に嬉しげに笑われ、マルチェロは憮然とした顔でククールを睨んだ。
お前のせいだぞと、ハッキリと言っているその視線が痛いのだが、エヘと誤魔化すように笑いかけてみれば、兄は一瞬顔を顰め、それからフイッと視線を逸らす。

うーん。
ドレス効果健在?
女装してると苛められなくていいかも……って、いや、それもどうよ…(爆)

一度着替えたククールは、今度は薄紫の柔らかなドレス姿になっている。
白い花飾りのついた頭を少し傾げてそんなことを思いつつ…。
甘い紅茶を啜りながら、チラリチラリと兄を盗み見る。
マルチェロはブラウスのヒラヒラした飾りを手持ち無沙汰な様子で弄りながら、窓の外を見つめていた。
降り止む気配のない激しい雨に、その端正な横顔は憂鬱の表情を浮かべ、時折溜息を洩らす。
「……あ…、あの、奥様!」
日頃、仕事に追われ、常に忙しくしている彼である。
何もしないで居ることが苦痛なのだろうと、それを察して…ククールは夫人に声をかけた。
「なあに?ククール」
「あの、図書室を…拝見してもよろしいですか?あに…いえ、団長殿は本がお好きですから…」
「………」
マルチェロの視線がククールを捉える。
驚いたように、物言いたげに、けれど…何も言うことなく…。
「あら、そうでしたのね!でしたらきっと、ご満足頂けると思いますわ!」
夫人はパチンと手を叩くと、すぐに席を立った。

−−−−−−−−−−−−−−−

お兄ちゃんも着せ替え人形に。
いいなぁ、やりてぇ!!!!と、自分で思いつつ(笑)
亡き公爵殿はかなりの大男であったらしいですな。。。
マルククの二人は、二人だけを見てると、さほどでっかい人達だとかは思わないんですが、ククたんが主人公と並んでいたりするのを見ると、そーだよね、この子大きいんだよね〜!と思い、それより更に大きなお兄ちゃんにときめいちゃったりしますvvv
つか、聖堂騎士団はデカイ人達の集まりだよな☆
 
 
 
29 (Fri) Jul 2005 [no.48]
 
 
オー!ジーザス!4



「まあまあまあ!まさか貴方がいらして下さるなんて!」

パチンと高い音を響かせて両手を合わせ、マルチェロの姿を見た公爵夫人は顔を輝かせた。
「ご無沙汰を致しております」
「いいえ、お忙しいのでしょう?お噂は方々より聞き及んでましてよ」
片手を胸に当て、優美にお辞儀をしたマルチェロに、夫人は『お会い出来て嬉しいわ』と懐かしそうに目を細める。
紫水晶のようなその瞳…。

…昔と変わらんな…。

失礼にならぬよう、さりげなく観察し、マルチェロは心の中で呻った。
昔、自分が祈祷に来ていた頃と何ら変わりはないように見える。
公爵夫人は、いわゆる年齢不詳の美人で…。
ククール程の娘を、マルチェロがまだ十代の頃に亡くしているのだから、それなりの年齢であるはずなのだが、その外見は若々しく、容姿の美しさも保たれていて、何よりも受ける印象がパワフルだ。
今日はククールよりも濃いピンク地のドレスをその身に纏い、長いプラチナブロンドの髪を下ろしている。
「お変わりになりませんね、まるで時が止まったかのようだ」
「まあ、嬉しいことを言って下さるのね。マルチェロ様は本当にご立派になられて…聖堂騎士団の団長様ですものね」
当たり障りのない社交辞令を交わしていれば、和やかに談笑しているマルチェロの姿が珍しいのだろう。
ククールはその隣でポケ〜ッと兄を見つめて…。

笑った顔なんて……そういや、ちゃんと見たの初めてかも……。

そう思うと何だかドキドキしてしまう。
公爵夫人の前だからなのか、それともドレスの効果なのか、今日はいつもとは違って邪険にされないので、ククールはこの機を逃してなるものかとばかり、マルチェロの側に寄り添っていた。
勧められてソファに腰掛ける時も、イソイソと隣に並ぶ。
そんなククールを、マルチェロは時折何やら複雑な面持ちで眺めていたが…、特に「あっちへ行け」とも「離れろ」とも言わずに…。

……女の子だったら…可愛がって貰えたんだろうな…。
ちぇ…、ホントに人生ソンしてるよな、オレ……。

そんなことを思って、ククールがちょっぴり暗くなっている間にも、二人の会話は進み、テーブルの上にはお茶の用意が整った。
レースのカーテンが引かれた窓は開いており、室内には紅茶の香りと庭からの風が運ぶ花の香りに満たされている。

「それで…、今日はククールを迎えにいらしたのでしょう?」

「ええ、彼にも任務がありますので…」
確認するかのように訊ねられ、マルチェロが苦笑しながら頷けば、夫人は深々と溜息をついて…。
「…そうでしょうね……、いつまでも私の我が儘に付き合わせるわけには参りませんものね…」
心から残念そうに呟いた。
「ああ、寂しくなってしまうわ……本当に娘が生き返ったようだったのですもの」
「奥様…」
可愛いククール…と、そう呼びかけながら銀の髪をそっと撫でて…そして、公爵夫人はマルチェロをチラリと窺い見た。
そして、
「ねえ、マルチェロ様、本当に可愛らしいでしょう?可愛い子には可愛らしい格好をさせなければならないと思いませんこと?」
フフフと少女のような笑みを浮かべながら、ククールがぎょっとするような内容で同意を求める。
「ええ、そうですね」
それに、自然な笑顔で相づちを打つマルチェロ。
「最初は驚きましたが…」
目を剥くククールに微笑みかけて……。
「実によく似合っている」
優しげな声音でそう言った。
「ぅええ…っ?!あ、あに…いや、団長どの?!?!」

に、似合ってる…って……っ!
え…っ、えええええ〜〜っ?!
うそ〜〜〜っ!!!!

ボボボボッと、音すら立てる勢いで、ククールは真っ赤に顔を染め、慌てて俯く。
夫人は嬉しげに手を叩いた。
「そうでしょう?本当に綺麗で可愛らしい子…ククールが居るだけでこの屋敷も華やかになりますわ」
「ええ、ですが…、彼は我が聖堂騎士団の団員です」
頭上で、冷静な兄の声がする。
途端に、
「…ええ、そう、それは勿論…よく分かってますわ」
先程までとはうって変わって沈んだ声のトーンになって……。
「でも…でも、せめてもう一晩…今日だけでも居て貰ってはダメかしら?」
夫人は縋るようにそう言った。
ククールはチラ…と視線を上げ、二人の顔を交互に見る。
一見穏やかそうな笑みを湛えたままのマルチェロ。
悲しげに顔を曇らせている公爵夫人。

「……祈祷に出てもう5日ですからね…。普通なら考えられぬ長期の滞在に、修道院内の者達も騒ぎ始めておりますし…」

静かで優しい口調の否定に、夫人は溜息を付いた。
「仕方がありませんわね…。ここでごねて、もう二度と来て貰えなくなっても困りますし……諦めますわ」
残念そうな言葉……ククールは内心ホッとして、コッソリと息をつく。
マルチェロがあまりにも穏やかな様子で応対をしているので、もしかしたら夫人の願いを聞いてしまうのではないかと、少し思っていたのだ。


−−−−−−−−−−−−−−

おお。。。
もう少し書きたかったのですが、時間切れです(爆)

公爵夫人…高笑い系の人にしようと思ってたんですが、マルチェロさんとの会話を書いてる内に、少女趣味なふんわり系のおばさんになってしまった(あれ?)
まあ、どっちでもいいけど…。
とりあえず、来週もまたこの話のようです〜(爆)
 
 
 
27 (Wed) Jul 2005 [no.47]
 
 
オー!ジーザス!・3



「死んだ娘に似ている、だと?!?!?!」

ククールの説明に、思わず言われた言葉を繰り返して…マルチェロは改めてマジマジと弟の姿を見つめた。

確かに。
確かに、その昔、娘がいたとは聞いたことがあった。
年頃の時分に不慮の事故で亡くなったのだと…。
聞いてはいたが………。

人形のように美しく飾られた、目の前のククール。
整った顔にはナチュラルなメイクが施され、どこから見ても完全な美少女で…。
いつも後ろで一つにまとめられている長い銀髪は、今は結ばれることなく降ろされ、ヘッドドレスで飾られている。
柔らかに身を包んでいるドレスは、品の良い薄いピンク色で、その生地一面に紅の小さな薔薇が描かれて…。
レースやフリルをふんだんに使ったボリュームたっぷりのスカートはふんわりと広がり、裾は引きずる程に長い。
大きく膨らんだパフスリーブからはレースの袖が手の甲辺りまで伸びており、中央に通された光沢のあるピンクのリボンには所々に真珠があしらわれて…、ピアスやネックレス等の装飾品にも、全て真珠が使われていた。
全体的にピンクと白でまとめられたその装いは、何とも少女らしい雰囲気………。

だが…。

ククールが如何に線が細かろうと、整った顔が美少女に見えようと、所詮は男…。
しかもかなりの長身なのだ。
肩幅とて、それなりにしっかりとある。
わけで…。

「…ここのご令嬢はそんなに大柄だったというのか?」

マルチェロは堪えきれずに笑ってしまいながら…。
「あーーっ!ひっでぇの……オレだってこんなカッコしたくないんだぜ?でも、お願い聞いたら寄付金増やしてくれるって言うからさ…、じゃあ、着せ替え人形くらい我慢するかって思ったのに……」
肩を震わして笑っている兄に、ククールは傷ついた面持ちでそう言った。
寄付金が増えるなら…と思ったのは、何も修道院のためではない。
院長であるオデイロに代わって、修道院を取り仕切っている兄マルチェロが喜ぶかも知れぬと、少しは役に立つと認めて貰えるかも知れぬと、そんな風に思ったから……。
なのに、その当人に笑われるなんて…と、拗ねたように唇を尖らせるククール。
まさに子供そのものといったその様子は、何故か今のドレス姿に奇妙にマッチしていた。
「……ほう、なかなか殊勝な心がけだな…、いや、似合っているぞ、なかなか、な」
麗しき我が妹君…等と言われ、ククールは益々膨れてしまう。
「ちぇ〜っ。もういいですっ!とにかく、いい加減何とかして下さいよ、団長!」
このままじゃ、オレいつになったら帰れるのか…と哀れな様子で訴えるのに、未だ笑いの収まらぬマルチェロは、それでも何とか真面目な顔を取り繕った。
「ふむ…修道院としては、お前のような問題児がいないと、大変落ち着いた静かな毎日を送れて結構なのだが…」
チラリと見やってそう言えば、
「そ、そんなぁ〜、団長殿〜!」
ククールは即座に情けない声を上げて…。
連れて帰ってよ〜!と、必死な様子で縋り付く。
普段ならあり得ぬ…というより、許さないだろうククールのそんな態度に、けれど今日は何故か興が乗って……。
「…まあ、そうも言っていられないだろうな…院長も気にされているし…」
「でしょでしょ〜!お願いしいますよ〜!」
ピタリと張り付かれるのを引き剥がそうともせず、マルチェロはフフンと楽しげに笑った。


−−−−−−−−−−−−−−

おお…ギリギリ…。
月末は忙しいですな…(−−;)

コメント付けるヒマもないぜ(爆)
 
 
 
25 (Mon) Jul 2005 [no.46]
 
 
オー!ジーザス!・2



広大な草原地帯を横目に、長い塀を辿り、優美な曲線を持つ黒い門を3つばかりも通って…馬車はローゼンクイーン家の敷地へと入った。
車寄せを回り込み、屋敷の正面へ馬車を付けて…。
開けられたドアから降りる。
まだ午前中だというのに、夏の日差しは容赦なく照りつけ、既に気温はかなりの高さになっていた。
フワリと吹いた風に心地よさを感じながら、そこに混ざる花の香りに何やら懐かしさを覚えて…。

変わらんな…ここは…。

出迎えた執事に簡単な挨拶をし、マルチェロは心の中で呟いた。
ローゼンクイーン家には、過去に何度か訪れたことがあり、使用人達ともそこそこ面識がある。
そう、それはまだマルチェロが聖堂騎士団の団長に就任する前のことで…。
当時、何かとよくしてくれた公爵夫人を思い出し、マルチェロは少し表情を和らげた。

面白いお方だったが……今も変わりはないだろうか…。
確か、公爵殿は5年前に亡くなられたのだったな…。

今回のことは、寂しさからのことだろうか…等と考えながら…。
案内されて広い屋敷の中を進んでいれば、突き当たりにある階段を駆け下りてくる足音に気が付いて…。
思わず足が止まる。
それは、ちょっと見ないくらいに見目麗しい少女だった。
レースやリボンをふんだんにあしらった、柔らかなピンクのドレスを身に纏い、頭には豪奢なヘッドドレスをつけ、そのリボンを顎の所できゅっと結んで…。
まるで、人形のように綺麗で可愛らしいその様子…。
だが、

「あ、兄貴っ?!」

階下のマルチェロに気付くと、少女は目を真ん丸に見開いて…そして、そう叫んだ。

「………ククール…?」

そんな、まさか…と思いながら…。
それでも、自分を呼んだその声に、思わず呟く弟の名…。

「兄貴!兄貴、迎えに来てくれたんだ?!」

わーん、助かった!と。
ククールは、引きずるほどに長いドレスの裾をものともせず、軽やかに階段を駆け下りてくる。
なかなかどうして様になっているその姿に、呆れるやら感心するやら…。
「…何の冗談だ、貴様その格好は…」
笑ってしまいそうになるのを何とか堪え、マルチェロは訊ねた。
「いや、それが…奥様がさ…」
もごもごと説明しかけ、ククールはハッとして辺りを見回すと、兄の腕を取って…。
「あ、えと…、ここじゃ何だから……」
そして、手近な部屋へと入った。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

今日はちょっと短めで…。

えーと。
ククールの着ているドレスはナナセの愛娘(ドール)のドレスをイメージしております。
私、ヒラヒラビラビラが大好きなので、ウチにいるドールちゃん達もフワフワヒラヒラで着飾らせているのですが、ククールはね絶対似合うと思いますよ〜〜〜vvv
あの銀髪がね、薄い色のドレスにハマるんですよ!!!!!!
(ウチの玖紅で実証済み(笑))

ま、そんなわけで、ただ単にククールにドレスが着せたかっただけの話であります〜★(え)

つか…お兄ちゃんも昔は貴族のお屋敷に祈祷に行ってたりしてたのかなぁとか…。
ちょっと夢を見たりして。
お祈りしてるお兄ちゃん格好いいだろうなぁ……♪
 
 
 
21 (Thr) Jul 2005 [no.45]
 
 
オー!ジーザス!




「最近…ヤツの姿を目にせんな……」

日課であるオデイロとの朝の散歩を済ませた後、朝の祈りのために礼拝堂へと向かったマルチェロは、近付いてきた側近の一人にそう訊ねた。
マルチェロが名前を出さずに『ヤツ』だとか『アレ』だとか呼ぶのは、この修道院内でただ一人しかいない。
それは、彼の部下のほとんど皆が知っていることだったので…。
「は、ククールはローゼンクイーン家に祈祷に行き、未だ戻っておりません」
訊ねられた側近は、簡潔に報告する。
「…何?」
言われた内容に足を止め、マジマジとその男の顔を見つめるマルチェロ。
「ローゼンクイーン家というと…あの丘の上にある屋敷か?」
「は、そちらの奥様が是非にと仰せになって…5日前に祈祷に出かけたのですが……」
「5日前だとっ?!」
何ぃっ?!と、大きく見開かれた緑の瞳…。
思わず叫んだマルチェロの剣幕に、騎士の顔に浮かぶ緊張の色が濃くなる。
「は、はい!」
「バカな!何故、もっと早くに報告をしなかったのだっ!5日も戻らぬなど、あり得んだろうがっ!」
「申し訳ございません!ですが、何分ククールでしたので…………そのようなこともあるかと…」
モゴモゴと言い足された言葉に、マルチェロはスウッと目を細めた。
空気がピンと張り詰められる。
「…ほう?ククールだと、何があるというのだね?」
「いえっ!何もっ!」

『祈祷先で、お祈りだけしているとは限らない』

貴族の屋敷から、高額な寄付金と引き替えに祈祷にと望まれる事の多いククールに、そんな陰口がついて回っているのをマルチェロは勿論知っていた。
それが事実に基づいての事なのか、それともただの憶測なのか…。
敢えて確かめたことはなかったし、マルチェロ自身もそんなつもりで祈祷に行けと命じたことはなかった。
だが、確かに…ククールを招くために提示される金額は、いつも法外な額であると……それはよく分かっていたから…。
「…………」
僅かに顔を顰め、マルチェロは空を仰ぎ見た。
朝日の輝きに、瑞々しく澄んだ薄い空の色…。
それは、ククールの瞳の色のようだった。

…5日もか…。

視線を地上に戻せば、礼拝堂へ続々と集まる騎士団員達の姿…。
その誰もが、同じ青の制服に身を包んで……。
赤いヒラヒラした制服姿が居ない事を殊更に思い知らされる。

「……ミサの後、ローゼンクイーン家に行く。馬車の用意をさせておけ」

緊張の面持ちのまま、ビシリと固まっている騎士にそう命じ、マルチェロは礼拝堂の中へと入っていった。


−−−−−−−−−−−−−−−

ローゼンクイーンというのは、ナナセの好きなゲームに出てくるお嬢様のお名前でございます。
エトワール・ローゼンクイーンというのだ☆(マール王国の人形姫とゆーRPG)

えーと。
この話、暫く続く予定なのですが、明日はナナセ病院へ行くので会社はお休み貰ってるので…、続きは来週になります。
明日の午後からは原稿の追い込みです〜!
月曜に印刷屋さんへ発送するのだぜ!(><)

えー。
無事に上がりましたら、トップイラストを今回発行の表紙に変えようとか思ってます〜。
(って、夏コミに出した所で、全然ジャンル違うからアレなんですが……。。。いいのよ、書きたかったんだもん!)
 
 
 
20 (Wed) Jul 2005 [no.44]
 
 
お・に・い・ちゃ・ん



「聖堂騎士団員ククール!」
ゴゴゴゴゴ…と、地響きでも聞こえてきそうな怒りのオーラを纏って…。
マイエラ修道院を仕切る実際の大ボス・マルチェロは、部屋に入ってきた彼の弟を睨んだ。
「は、今度は何でしょう?団長殿!」
「今度は、だと?!いい度胸だな、貴様…っ」
「だって、さっきも怒られたばっかりじゃないですか…なのに、また呼び出しなんて…」
嘆くように言いながら、その内に兄の顔色が見る間に怒りによって赤く染まって行くのを見て……、慌てて口を噤む。
怒鳴られる!
そう思って一瞬身構えたククールだったが、
「……ククール…」
自分の名を呼ぶ兄の声は、恐ろしい程に静かだった。
空気がピーンと張りつめ、室内の温度が3度は下がったように感じる。

…ほ、本気で怖ぇ……!

「はい、団長殿っ!」
「…ハッキリと言うまでもないことだとは思っているが……私は、お前の顔など見たくもないのだ」
面と向かってキッパリと。
「…はい…」
言われた言葉は、もう何度も聞いているのに、グサリとククールの胸を突き刺して…。
傷ついた顔など見せないようにと思いながら、それでも僅かに揺れてしまう瞳…。
マルチェロの言葉は続く。
「それなのに、こうしてわざわざ呼び出さねばならないのは、どうしてだろうな?」
「……怒られるようなことをするからです」
「その通りだ。分かっているならどうして改めることが出来んのかね?」
「………」
射るような緑の視線に、声も出なくなってくる。
「院長が庇わなければ、お前などとっくの昔に追い出しているものを……」
「……」
謝った所で、機嫌など直るはずもないことは、長年の経験でよく分かっていた。
ククールは神妙な面持ちのまま、そっと視線を俯かせた。

ここでもし、オレが泣いたりしたらどうなるんだろ…?

そんな不謹慎な考えが、チラリと頭に浮かぶ。

もっといびられるかな…。
蔑まれる?
って、んなの元からだし……やってみたら案外面白い反応見れたりしてな…。
いや、でも泣くのは悔しいよな…何か……。
んー…じゃあ……。

ククールは上目使いに兄を見やる。
「そもそもお前は……。何だ、その目は…」
説教を続けていたマルチェロは、ククールの視線に気付くと言葉を切り、僅かに顔を顰めた。
気勢を殺がれたらしい兄の様子に、ククールの方は勢いが付いて…。
今だ!とばかりに一歩踏み込むと、

「…ごめんなさい……お兄ちゃん…」

しおらしい様子でそう言った。
途端、マルチェロが石化の如く固まる。
やや大きめに見開かれた瞳がククールをマジマジと見つめて……。
スグにサッと、顔が逸らされる。
「な……っ、何を…っ、お前…など、弟だと思ったことはないと、いつも言っているだろう!」
アワアワと言われたその言葉、その声は普段より幾分高めだった。

う、ウソ…これって……!
ひょっとしてもしかして、かなり効果アリな模様?!?!?!

「でも…実際、お兄ちゃんだし…」
思う以上の効果を見せた『お兄ちゃん』呼びに、ちょっと面白い…などと調子に乗るククール。
上目遣いに見上げたままでいれば、チラリと視線を寄越したマルチェロが、ウッと一瞬言葉に詰まる。
「お、お兄ちゃんなどと呼ぶなっ!気味が悪いっ!」

気味悪がってるようにゃ見えねーけどなぁ…。
つーか、マジでおもしれ〜♪

「気味が悪いなんて…酷い…」
ククールは傷ついたような顔で、パチパチと二、三回瞬きをした。
見つめれば見つめる程、マルチェロの方は居心地の悪いような様子で…。
動揺している事がハッキリと分かる兄が、ククールには珍しいやら可笑しいやら…。
笑わぬように気を付けながら、視線を逸らさずにいると……やがて…、
「…クソ!もういいっ!部屋に戻って反省していろ!」
マルチェロは、耐えかねたようにダンッと机を叩き、そう叫んだ。


勿論、ククールが嬉々として団長室を後にしたのは、言うまでもないことである。


−−−−−−−−−−−−−−−−

ククたんのお兄ちゃん呼びは、何かこう…プレイ的な匂いを感じますな…。
ホントに兄弟なんだけど…(笑)
お兄ちゃんとかお姉ちゃんって、大きくなってから呼ばれる方が、グッと来る気がする…(笑)
ウチの弟は、子供の頃から私をお姉ちゃんと呼ぶことは殆どなかったのですが、今呼ばれたら照れる気がするわ…ううむ。
そういや、弟が中学生の頃、言うことを聞いて欲しい時に『○○ちゃん』と、ちゃん付けで呼ぶと結構聞いてくれるとゆーのを発見し、乱用してたな…。。。
変なこと思い出してしまった(苦笑)

ところで、今日、宅急便の伝票を書いていた時のこと…。
客先の電話番号の下4桁が 『8231』 でした。
それを書き入れようとした瞬間、頭に浮かんだ語呂合わせが、

『 やっぱり兄さんイイ男 』

ナナセったらマルチェロファンねぇ…と思った一瞬でした……。
(いや、その前に設計屋のオジサンが散々数字の語呂合わせをしてたんですよ……いつもそんなん考えながらやってるわけではないです(笑))
兄さんは格好いいですよねvvv(惚)
 
 
 
14 (Thr) Jul 2005 [no.43]
 
 
・・・ 熱 ・・・

 
 
その日の夜中…ククールは熱を出した。

長い闘いを終えて…マルチェロを見つけて……油断したのか、久々に。

「……ったく…はしゃぎ過ぎたか…?」
情けねぇ…と呟き、フウと溜息をつく。
兄がいた街の宿の一室。
深夜をとうに過ぎた時間。
隣のベッドからは、規則正しい寝息が聞こえて…。

(そういや…こんな風に熱出したことあったっけな……)

ベッドの上の膨らみを見つめながら、ククールはぼんやりと思った。
お坊っちゃま育ちから一転しての修道院暮らし…。
お祈りが中心の慣れぬ生活の中でも、意外と元気だったのは子供ならではの適応力のおかげか……。
ともかく、病気らしい病気などあまりすることなく、元気に過ごしていたククールなのだが、一度だけ高い熱を出した事があった。


そう………。
マルチェロが『お兄ちゃん』だったと分かったその日の夜に……。


思えば、ずっと…何か不思議なものを感じてた。
分からないけど、好きだった。
いつも不機嫌な顔をされて…冷たくされても…何故かずっと好きだった。

修道院に来たあの日に、初めて会ってから……ずっと…。

周囲の全部が灰色に染まった記憶の中で、たった1つ鮮やかな思い出…。

たった数分の会話。
笑顔なんて初めの時のちょっとだけ。

でも、わざわざ膝を折って視線を合わせて…、笑いかけてくれたあの人からは、本当に優しさを感じた。

両親が亡くなった後、オデイロに会うまでで唯一、安心感を覚えた人だったのだ。


(兄貴だって…分かった時のショックと言ったらなぁ……)

苦い思い出に苦い笑いが漏れる。
ただ、普通に生き別れの兄だった…という形なら良かったのだろう…。
だが、二人の間の事情はあまりにも酷いもので……。

自分のせいで…追い出されたのだ…。
自分さえ生まれなければ、マルチェロはあの屋敷で暮らしていたのだ。
屋敷を追い出されさえしなければ、マルチェロのお母さんは死ななかったかもしれない。

自分さえいなければ………。

その事実は、あまりにも重く幼いククールの上にのしかかった。

(そんで………それから…ずっと…)

「!」
ブンブンと、蘇る思い出を振り切るかのように、ククールは頭を振った。

(…やめよう!)
(とにかく、今は寝ねーと…)
(こんな熱、寝りゃすぐ下がんだから…)

「……ふー…」
コッソリと深く息を吐いて…。
少し、布団を下げる。
腕を出すと、籠もった熱がスウッと空気中に取られていくようで…何やらホッとした。

ゴロ…と向きを変えると、隣で眠る兄が見えて…。
ものすごく嬉しいと思う反面、何故か怖いような気分にもなってくる。

(兄貴と…一緒の部屋で寝てるなんて………ウソみたいだ…)

「………ハァ…」
熱のせいか、それとも、マルチェロがいるからなのか、少し早い鼓動…。
どうにも落ち着かず、ククールはまた寝返りを打った。

(何か……よく分かんねーけど…丸く収まった、とか考えてもいいのかな…)
(あんま…怒ってるとかそんな感じにゃ見えなかったけど…)
(明日…起きたらいなかったりして……うわ、それすんげー凹む…)

マルチェロに背を向けながら、考えるのはマルチェロのことばかりで…。
モソリと、また向きを変え、天井を見る……と、
「?!」
突然、汗ばんだ額にヒヤリとした感触が乗って…。
驚きに目を見開けば、マルチェロが顔を覗き込むように、スグ側にいた。
「兄貴?!?!」
「……少し…熱いな…」
「ご、ごめん…起こしちゃった?」
起きあがろうとするのを押さえられて…戸惑う耳に小さな声が届く。

(…え…、呪文…?)

そう思った途端、フワリと金色の光が闇を照らして…。
ククールは、スウッと身体からだるさが抜けるのを感じた。
「あ…」
一瞬だけ、光の中に照らし出された兄の顔…。
けれどそれはまたスグに闇と同化してしまう。
そして、そっと頭を撫でるように……額にあった手が離れて行った。
「あの、あ、ありがと……兄貴…」
「…楽になったか?」
気遣わしげな響きを持つ声。
それに胸の奥から何かがこみ上げてきて……。

(そんな声…聞ける日が来るなんて思わなかったよ…)

「うん」
答える声に涙が混じる。
ククールは布団を顔の半ばまで引き上げた。
再会の時には思わず泣いてしまったりもしたが、あまり涙が多いのは、流石に恥ずかしい。
そんな弟の様子を察してか…マルチェロは自分のベッドには戻らずに…ククールの側で立ちつくしたまま…。
少しの間、奇妙な沈黙が落ちて……。
室内には時を刻む時計の音だけ。
やがて、

「…疲れが出たのだろう……よく休め…」

沈黙を破ったのはマルチェロだった。
布団から出ているククールの頭をポンポンと軽く叩いて、そう言う。
その手が再び離れていく…その間際に…。
「…あ、兄貴…っ!」
ククールはその場に跳ね起きると、叫ぶような勢いで兄を呼び止めた。
「何だ?」
「あの……あのさ…、あの…っ」
思うように声が出ない。
掴んだ手をぎゅうっと握りしめる。
「………」
「何処にも…行かないよな?」
「………」
「いや、あの……寝てる間に…居なくなったりしたら………やだなって…さ…」
暗くて顔など見えるはずもないのに…一生懸命に見上げて…。
モゴモゴしながらも言えば、頭上から小さな溜息の音が聞こえた。
「あっ、で、でも、何処に行っても、また絶対見付け出すけど…っ」
「…寝ろ。また熱が出るぞ…」
必死な様子のククールに、マルチェロは今度はクスリと小さな笑いを漏らしながらそう言った。
「だって…兄貴っ!」
握り締められている手を、逆にギュッと握り返して…。
「いいから寝ろ…」
柔らかい語調。
それに、ククールはドキドキしてしまう。
怒られることには慣れていても、優しくされることには慣れていないから…。
「だから、約束してくれたら寝るってば!」
駄々をこねるなど、以前では考えられなかったこと…。
それでも、マルチェロは怒りはしなかった。
「…子供だな…」
「こ、子供ですよ!どうせ!」
ぷうっと膨れながら、今…マルチェロはどんな顔をして自分を見ているのだろうか…と気になって…。
暗がりを懸命に見つめる。
窓から差し込むぼんやりした光は、けれど表情までは見せてくれない。
じれったいような気持ちで、焦がれるようにただジイッと見上げていれば、マルチェロは僅かに動き、繋いだ手にキスをした。

「約束しよう。何処にも行かない」

「…………」
「これで、気が済んだのかね?」
フッと笑う気配。
ボボボボボッと、ククールの顔が火でもついたような勢いで真っ赤に染まる。
「…………おっ、弟たらしこむってどうよ!」
「何だ、たらしこまれたのか?」
クククと喉で笑ってから…わざとらしく溜息などつくマルチェロ。

「やれやれ、また熱が上がったんじゃないか?全く仕方のないヤツだな…さ、もういいだろう?大人しく寝ろ」

絡めた指をそっと外し、その手でポンポンと頭を叩いて…。
マルチェロは自分のベッドへと戻っていった。
ククールはそのまま背後にパタリと倒れ込む。
「ちゃんとかけろよ」
隣のベッドから掛かる声。
「分かってますって!」
それに返事をして…ククールは枕に顔を埋めた。

(何だよ、急に兄貴らしくなっちゃって……)
(何だよ、何だよ…、もう……!)
(こんな構ってくれていいのかよ…?)

かああああっと、熱くなる顔。
嬉しくて嬉しくて、どうしても笑ってしまう顔…。

(ああ、もう!)
(ホント………捜し出して良かった!!!)
(兄貴、生きてて良かった!!!)

心の底から神に感謝をして…そして、ククールは目を閉じた。
早く朝が来て、もっと沢山マルチェロに構って貰えるようにと…期待に胸を膨らませながら…。


−−−−−−−−−−−−−−−−

ええと、昨日は午後から会議室にプチ監禁状態だったので、アップが出来ませんでした。
今日は今日で、昼頃から出かけなきゃならないため、もうこうなりゃとっととアップだ!と、こんな時間に上がってみました☆
つか、寝なきゃ!!!(爆)

えー。
昨日、何を書こうかな〜とぼんやりしてたら、熱だすククールを解放するマルお兄さまっていーんじゃなーい?!とか思い、こんな話に…。
最初は子供だったのに、何故か途中でED後になってしまいました。
優しげお兄ちゃんに、甘えっ子ククール……。。。
スミマセン、激しくニセモノで…!と、思わず謝ってしまうくらいな感じですが…。
よ、よろしければお付き合い下さいませ☆

−−−−−−−−−−−−−−

会社に来てから見てみたら、上のコメント……介抱が解放になってた…。
解放って何かエロイなぁ……流石夜中2時…!(am2:10にアップしたのです)とか思いつつ…(いやいやいや…)

原稿中なので、連日3時近くの就寝です。
流石に木曜ともなると眠い…!
 
 
 
12 (Tue) Jul 2005 [no.42]
 
 
+ 修道僧の決意 +



これは、マイエラ修道院の日曜のミサにて、一部貴族達の会話を盗み聞いた記録である…。

ミサの始まる前…各々の席へとつく前に、ささやかな談笑を交わす、そんな頃…。
騎士達は所定の位置に着き、ミサの開始を待っている。
そして、そこには青い制服の中、ただ一人真紅の制服を纏った騎士が居て…。
ミサに来た人々の注目を一身に集めているのだが、本人はまるで気付かずに…。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


「いやぁ、見事なものですな…」

貴族の一人がそう声を上げたことから、この会話は始まった。

「全く!年を追う毎…いや、日を追う毎に美しくなっていると言っても過言ではない」
「いやいや、まさしく!あれこそ天上の美しさ!」
「おや、伯爵殿、これは久しいですな…そうですか、お戻りに……そして、やはりククールに目を付けられたか♪」
「ハハ、お恥ずかしいことですが…久しぶりにこちらの大陸へ帰ってきたのですがね…いや、ミサも良いものですな、あんなに美しい騎士が居るとは!」
「ほうほう、そうでしょうそうでしょう♪」
「では、歓迎の意を込めて、特別に特等席を教えて差し上げようか…」
「ほう?そんなものがあるのですか?この礼拝堂に?」
「礼拝堂のみならず、何処でもですよ」
「そうそう、マルチェロ殿の近くにおればよいのです」
「もし、後ろに行ける機会があれば、是非一度はお試しなさい」
「ほう?何故、マルチェロ殿の側が特等席なのです?」
「おや、男爵殿もご存知ないと?」
「あの子、ククールはマルチェロ殿に一方ならぬ思いを寄せているからですよ」

そうそう!と一同揃って。

「ほお!マルチェロ殿にもそんな事が?色事になど興味を持たれる御仁には見えませんが…。そうですか、切れ者と噂はかねがね聞いておりますが…そちらの方面もなかなかどうしてやるものですな…」
「いやいやいや!」
「これが何とも勿体ないことに、ククールの片思いのようでしてねぇ!」
「そうそう、これがまた見事なほどにつれないのですよ」
「あんな美人を袖に出来るとは、マルチェロ殿は大したお方だ…」
「そうそう、とにかく、マルチェロ殿のお側に居てご覧なさい、ククールの視線は欲しいまま!」
「向ける表情がまた何とも心を騒がせるものでねぇ…」

そうそう!とまた、一同揃って。

「おっと、でもこのお話はどうぞ内密に…」
「そう、マルチェロ殿に気取られでもしようものなら、どうなることか…」
「ほう?マルチェロ殿はククールのことは何とも思っていないのでは?」
「それがまた難しいところ…」

そうそう…と、また一同。
けれど、今回はテンション低めに。

「ククールに金を払うと、マルチェロ殿に持ちかけた者がいたのですがね…」
「おお、どうなりました?」
「ひと月もせぬ内に、橋から誤って転落したとか…」
「他にも、力尽くで…などという不届きな輩もおりましたがな、皆、不幸が続きましてな……」
「……それは、マルチェロ殿が…?」
「いやいや、それが分からん所が怖いところなのじゃよ」
「おっと、噂をすれば…!」
「怖い怖い!」
「おお、しかし、ご覧なさい!ほら、ククールのあの顔…先程までとは打って変わって……」
「何と切なく、愛らしいことか…!」
「ああ、可哀想にのう……あれ程に思い詰めた顔をしておるのに…」
「本当に、マルチェロ殿は鬼のごとき御仁じゃ。あれ程の華を…勿体ない……」

頷く一同。
パイプルガンの厳かな音が響き、口を噤んで……。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


…私は、マルチェロ様のお言いつけで、これを盗み聞き、記録しました。
ですが、果たしてこれをこのまま報告して良いのでしょうか…。

おお、神よ…教えて下さい……。

私は…、この貴族の方達の命運を握っているという気がして成りません…。
そう遠くない内に、この中の誰かに不幸が訪れるのかと思うと、不安で眠れません。
ですが、ああ、神よ…。
私もマルチェロ様は怖いのです…。

どうか、どうか小さき者をお守り下さい。
か弱く小さな者を……マルチェロ様からお守り下さい……(祈)


+++++++++++++++++++

何じゃこりゃ!(笑)
いや、やってみたくなっただけです(爆)

愛らしいククたんを狙う好色オヤジ共がいっぱい居るに違いない!みたいなのをね…。
でも、鬼チェロ(笑)の鉄壁防御で、単なる親衛隊止まりみたいな〜♪
しかし、こうもククたんの片想いバレバレだと、マルククラヴ親衛隊が出来ても不思議ではない気がしてくるな!(いや、してこねぇよ…)
『ククたんの恋を応援しようの会』とかさ〜。
オデイロ院長が会長やってるんだよ、きっと(笑)
しかし、こんなんだと早いな…やっぱ…(^-^;)

ところで。
タイトルの『修道僧の決意』はマイエラ修道院やゴルドで流れる音楽です。
何か、修道院の音楽はククたん、大聖堂の音楽はお兄様を思い出します。
どっちもPCに取り込んで、延々流したりしてます(笑)
サントラ買ったのに、ドラクエマーチとこの2曲しか聴いてないってのもどうなのか……ま、そんなもんですかね?
 
 
 
11 (Mon) Jul 2005 [no.41]
 
 
●○ しあわせくるるん ・2−11 ○●

初めて一緒に寝たその夜は、離れることなく朝まで一緒で……。

繰り返す熱の間に間に、いろいろな事を話した。
特に何、と言うわけではなくて…ただ、その時に浮かんだ事を思いつくまま。
幸せだった思い出など、かつての二人の間ではなかったと…そう思っていたはずなのに、改めて思えば、何だ結構楽しかったな等と笑いあったりもして………。
たとえ、心通わす事がなかったとしても…ずっと同じ場所にいたのだから…。
修道院で出会ってから、ずっと同じ時間を生きてきたのだから…。
共通の話題には事欠かなかった。


そして、翌日………。

明け方までもつれ合うように寝ていたというのに、早々と起床した弟は『証拠』を見せる為、キッチンを占拠して……奮闘する事数時間……。

「…それで……?」
「そ、コレが証拠☆」
珍しく戸惑ったように向けられた視線に、満面の笑みを返して…。
ククールはシチューの皿を兄に差し出した。
「ま、とりあえず、何も言わずに食べてみてよ♪」
言いながら、マルチェロの対面に座る。
「………」
マルチェロはスプーンを取ると、シチューを掬って…口に運んだ。
食べて飲み込む…その動作を、じいいっと見つめて…兄の口が感想の言葉を語るのを待つ。

「……成る程、前よりうまくなったな…」

1つ、重々しく頷き、マルチェロはそう言った。
「ホント?!」
ククールはその言葉にキラキラと顔を輝かせる。
「ね、美味しい?」
「まあまあだ」
シチューをスプーンで掬っては口に入れる…を繰り返しながら、短い答え…。
ククールは唇を尖らせ、自分用にもシチューをつけてテーブルに置いた。
「まあまあかよ…兄貴に美味しいって言わせたくて、オレ頑張ったんだぜ?ゼシカんちのコックに教えて貰ってさぁ」

「……お前、料理を習いに行ってたのか?」

驚いたように見つめるマルチェロに、うんと頷いて…。
ぱくっとシチューを口に入れる。
そして、
「…う〜ん…、やっぱ兄貴のヤツのが美味しいな……」
眉根を寄せて、少しだけガッカリしたように…。

そんでも、ちょっとは進歩したから…まあ、いいとするかな……。
前よりうまくなったって言って貰えたし……。

「…うし。オレ、もっと頑張る!」
ぎゅっと拳を握りしめ、決意を新たにするククールだったが、そんな弟の姿に、マルチェロは深々と溜息をついた。
「バカ者…」
「え?」
唐突に言われたその言葉に、きょとんとして…。
ククールはマルチェロを見つめた。
緑の瞳が何とも表現しがたい色をのせ…、スイッと逸らされる。

「……わざわざ、行かなくてもいいだろう…」

ボソリと落とされた呟き。
「え?何処に?」
「………私が教えてやる」
「え……」
ポカンとしているククールに、再び向けられる緑の瞳…。
眉間のシワが深くなって…、何故か、しかめっ面で……。

それって……兄貴が、オレに教えてくれるって……。
てゆか、行かなくていいって………それって……。

「……」
「………へへ…♪」
暫しの間見つめ合い、やがてククールが笑いながら席を立った。
そして、マルチェロの側へ行くと、ぎゅうっと抱きつく。
「何だ突然!」
「だって…、だってさ、嬉しいよ…」

示された独占欲の分だけ、愛されているのだと…。

そう思えば、何やら泣けて来てしまう程嬉しくて…。
んちゅ〜っと、抱き締めた顔に何度もキスを落とし、ククールは満面の笑みを浮かべながら……。
「兄貴〜〜〜vvvへへへへ♪」
「何なんだ……気味の悪い笑い方をするな…全く……」
眉間にシワを寄せたまま、ブツブツと呟くマルチェロ。
だが、それでも顔中に降るキスをやめさせようとはせずに…。
その手はしっかりとククールの背に回されて………。

長い事、触れ合う事のなかった互いの心も体も…。
その長い年月の全てを取り戻そうとするかのようにぎゅうっと…抱き締めあっていつまでも…。

そして…、幸せに……幸せに……。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

暮らしましたとさ☆(ちゃんちゃん)

…ってことで。
何だか続いておりましたこの話もオシマイでございます★
お付き合い下さいました方には、どうもありがとうございます m(_ _)m

しかし…こう、書いて行くと、段々段々……ククールの乙女度が上がっていくな……。。。(今更…)
そして、お兄ちゃんが甘くなっていく……。。。。

うーん。。。もうちょっと、笑える感じにヤバイのがいいんだけど…。

人様のご本の素晴らしい掛け合い漫才的なマルククふれあいとか見る度に、こーゆーの憧れーvvvとか思っております。
お兄ちゃんが可愛かったりするんだ♪♪いいよな♪
つか、ギャグとかセンスある人ってホントにスゴイ!!!
面白いもの書けるようになりたいなぁ。。。ううむ。

今、自分が原稿やってるからか、マルクク本が読みたくてウズウズジタバタであります!(><)
この時期ってちょうどスパーンッ!と空くから飢えますよね〜。。。
(そりゃ、この時期にイベントあってもなぁ……キビシイだろう…)
ああ〜夏コミが待ち遠しいぜ!!!!
どんなマルククが読めるかな♪とか思うとワクワク〜vvv
(まだ、自分で活動してないので、純粋に買い手として楽しい状態なのだった。1日目は張り切ってお買い物に行きますわ〜vvv2日目は売りに行くと言うより、お話しに行くって感じなのですが…(笑)どっちもイベントの醍醐味だよな☆とか)

大きいイベントって、凝った装丁の本とかあったりするのもまた楽しいんですよね♪
夏冬ってのはやっぱ気合い入るし♪♪♪
(と言いつつ、ウチは普通なんだけど…凝ったのやりたいなぁ……たまにそーゆーの力を入れる時期ってのが来るんですよね…。最近いつも〆切ギリギリなので、装丁凝ってる余裕が無いんですけど……;;;)

いくらネットが発達しても、やっぱ紙媒体が一番だよな♪と思うナナセなのでありました。

ところで。
ククたん、三角巾つけてお料理してたら可愛かろうな…とかウッカリ思って萌えてしまいました☆
真っ赤なエプロンなんだぜ!(><//)
お兄様は勿論青でさ♪♪(いや、三角巾はいらないよ…)
 
 
 
08 (Fri) Jul 2005 [no.40]
 
 
●○ しあわせくるるん ・2−10 ○●

 
ドクドクと早い鼓動を聞きながら…。
少し高めの体温に包まれながら…。
弟の声に、言葉に…堪らぬ愛おしさを感じて……。
「………」
マルチェロは顔を上げた。
ククールへの愛おしさと、後悔、そして自分に対しての怒り…。
それらが入り交じった複雑な気持ちのまま…僅かに眉根を寄せて見つめれば、ククールはその視線を受けて、ふわりと花でも舞いそうな笑みを浮かべる。
「兄貴……大好きなんだ…」
「ククール……」

もういいよと言ったその言葉に、ウソ偽りは微塵もない。
ククールは、ただ、マルチェロが好きなのだ。
何もかも許してしまえる程、ただひたすらに…好きなのだ。

それをシッカリと感じ取って…。

マルチェロは、覚えた衝動に従って唇を重ねた。
ちゅ、ちゅ…と、角度を変えて…数度…。
深く深く合わせれば、ククールが小さく呻きを上げる。
額を合わせたまま、唇は離れて……瞳はごくごく近く…。
焦点など合わぬ位置で…けれど、それでも視線を絡めながら…。
名残惜しげに軽く舐め合う。
「…っ、ん、ん…っ」
ぴちゃぴちゃと水音が耳を擽り、熱く息が洩れて…再び重なる唇。
舌先が触れ合う度に背筋をゾクゾクしたものが走る。
それは、体内で燻っていた熱を再び燃え上がらせて…。
マルチェロの手が下へと降り、その指先が入り口を探ると、ククールはビクリと大きく身を竦めた。
「あ、ぁ…っ」
軽く力を入れれば、それだけで……ちゅぷと、いとも容易く指が沈む。
それに唇の端を上げ、一度深く差し込んで…マルチェロはすぐに指を引き抜いた。
「んん…っ、あにき…っ」
切なげに寄せられる眉…。
呼び覚まされた欲望に震える身体を愛おしげに撫でて…。
「…いいか?」
訊ねれば、ククールは僅かに目を見開き、それからス…と横に流した。
紅く染まった目元…。
「……聞かないでよ…」
「確かに…今更だな…」
苦笑しながら頷くと、マルチェロは自らの猛りを押し当てて…。
その熱さにククールは目眩を起こしそうになる。
「…ぁ…っ」
ツプ…と含ませられた先端は、そのままゆっくり内部へと進んだ。
「は…っ、ぁ、あ…ぁ…」

あ、ああ…入ってくる……。
中にいる…兄貴が…オレの中に……。

そう思うと、もうそれだけで堪らなくなり、ククールはきゅうっと眉根を寄せて…。
ズズ…と内壁が擦れるのに、甘い痺れが下肢を昇る。
「ぁあ…っ、い…ぃ…」
マルチェロはゆるゆると動きながら、次第に奥深くへと自身を埋め込み…、やがて全てを収めると、フ…と短く息を吐いた。
瞳を開ければ、目元を僅かに染めた兄の顔が間近にあって…。
ツ…と、その頬を伝う汗…。
かかる息の熱さ…。
身体を通して伝わる早い鼓動…。
マルチェロも感じているのだと思うと、繋がっている快感とはまた違う快感を覚えて、胸がいっぱいになる。
「あ…にき…っ、あにき…っ」
貫かれ、突き上げられる度、ゾクゾクゾクと背筋を走る震え。
今までに沢山の経験を持つククールだが、マルチェロとの行為は格別で…。
知らず、併せるように身体が揺れる。
ともすれば、スグに飛んでしまいそうな意識を何とか繋ぎ留め、マルチェロの与える全ての感覚を感じたくて…覚えたくて……何処か必死に…。

繋がっている…その事が、何よりも幸せだった。
身の内にある兄の熱さ、その鼓動を感じて、嬉しくて…嬉しくて……。

最奥から…甘く熱いものが満ちてくる。
繋がったその部分から、身体は溶けて混ざり合うかのように…。
白く染まってゆく思考…。
快楽に溢れる涙を舐め取って、マルチェロは甘露だなと笑った。
その低く熱い声に脳が麻痺する。
「は…っ、ぁ、あ…も…っ、ぁ…っ」
震える声は意味をなさず、縋る指には力がこもって…。
ふるふると首を振るククール。
「い…っ、あ…ぁっ、い…っちゃ……ぁっ」
限界を迎えるククールの内部に走る震え…それは、マルチェロにも強い快感を与えて…。
「…ククール……っ」
「あ、あ、に…っ、あ…あぁあああっ!」
耳元で熱く名を呼ばれた瞬間、ククールの快楽は大きく弾けた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

エロに始まりエロに終わる今週………ロクなもんじゃねぇ!とか思いつつ(苦笑)
何か続いてしまったこの話も、来週で終わりそうですね。
ククたんの料理話は何処に行っちゃったんだか…って感じなんですが、食べさせなきゃね、お兄ちゃんに!

さて。今週の土日は夏コミ原稿です。
マルククも出すんだ!!!と張り切りつつ…。
来週ドールイベントに遊びに行く為にも、今週は頑張っておかなくては!!!

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がーん…。
設定間違ってしまいました……遊戯王の方のcgi見に行っちゃってるよ…(トップに表示されてる時間)
6日はあっちも更新したの忘れてた……(爆)
家に帰ったら直します〜!スミマセン〜(><)
ーーーーーーーーーーーーー

直りました〜(爆)
つか、ちょっと直しに入っても時間更新されちゃうんだよな……まあ、いいけど……。。。
 
 
 
06 (Wed) Jul 2005 [no.39]
 
 
●○ しあわせくるるん ・2−9 ○●


「は…ぁ、あ…っ」
眉根をきゅっと寄せ、マルチェロが与える快楽を耐えて…。
荒い息を繰り返し、甘い声を零す唇に口付けを落とせば、苦しいのだろう…ククールが口の中で小さく呻く。
離れた唇を舐めれば、うっすらと開く薄水色の瞳。
「ん…、あにき…っ、も…欲し…」
熱に浮かされたようにそうねだる弟に、もう一度口付けて…マルチェロの胸中には穏やかならざるものがあった。

ククールがこんな行為に慣れているのは、マルチェロが原因である。
…といっても、マルチェロ自身がククールを抱くのは初めてのことだった。
汗と涙に濡れた頬をそっと撫でながら……脳裏に蘇るのは、修道院の…長く慣れ親しんだ団長室……。


『ククール、いい子にするのだよ』

ニッコリと笑って…。
優しく頬に触れて…。
そして、子供に話しかけるかのような声音で、マルチェロはゆっくりと残酷にそう言った。

『いい子に。人形のように大人しく、天使のように美しく…望まれるまま、従って…決して失礼のないように』

多額の寄付を貰っていることは、いつも最初に告げていた。
逃げて帰ってくる事など許しはしなかった。
何度……何度売っただろうか…。
多額の寄付と引き替えに、ククールの身体を…。

そのことを…後悔する日が来るなど思いもしないで………。

ずっと、行為に対する嫌悪感だと思っていたのだ。
いつも、いつも胸が重く痛むのを…。
感じていたのは自分への怒りだったなど…気付きもしないで…。
そう、その時は、ククールと貴族達への怒りだと…そう思っていた。
それでも…同じ男の元へ二度とは行かせなかったのは…独占欲の片鱗だったのだろうか…。
もう一度と望む者達には、聖職者を汚したその行為を元に強請をかけて金をせしめた。


ああ、そうだ。
今なら分かる…。
本当は誰にも触れさせ等したくはなかったと……。

だが、自分で触れるのは……怖かったのだ。

「あ、く…っ」
白く滑らかな肌を桜のように淡く染めて…。
自分の下で快楽に打ち震えているククールに、マルチェロは堪らぬ思いを感じていた。
「…何故、許せる?」
訊ねれば、情欲に濡れた瞳がぼんやりと見上げる。
「え…、なに?」
吐息混じりの声。
「私を……お前を売った私を…。他にも…酷い仕打ちばかりだったろう……何故、許せる?」
苦しげに顔を顰め訊ねたマルチェロを、ククールはほんの数秒きょとんとして見上げて…そして、笑った。
ニッコリと…。

「それは…だって……好きだからでしょ…」

少しだけ、はにかんだようにそう言って…それから、困ったように…また笑う。
「もう、いいよ…兄貴」
快楽に痺れたような身体に力を入れ…手を伸ばし、兄の頬に触れて…そっと撫でるように…。
「……ククール…」
「今、幸せだからさ…、平気…」
微笑みながら言うククールに胸が痛んで…マルチェロはその肩口に頭を押しつけた。
歪んでしまった顔を見られたくなかった。
ククールはスグ横にきたマルチェロの頭に口付けて、スリと頬を寄せる。
「それに…さ、修道院いた時だって…それなりに幸せだったんだぜ?まあ、アンタは冷たかったけど……それでも…いつかはって期待しててさ…」

小さな事の1つ1つが嬉しかった。
目があったとか…。
普通に話せたとか…。
そんなささやかな事が、喜びだった。

オデイロが昔言った言葉を励みにして……いつかは…と…。

そんな修道院時代を思い出し、何やら優しい笑みが零れる。
ロクでもない思い出ばかりだと思っていたが、それでも、過ぎ去った今では懐かしさを覚える日々…。
そして、そんな時があったからこそ、今が信じられない程に幸せなのだ。


−−−−−−−−−−−−−−−−−

エッチの最中にこんなやり取りがあったら、それどころじゃなくなってしまう気もしますが…。。。
今危うく、シメに入ろうとしてましたよ(笑)
つか、エッチ系とかゆー程でもないので、普通にSSアイコンでもOKな気がするんだけど……作っちゃってあるし(アイコンをね)と、敢えて紫アイコンで。

えーと。
この続き、明日は研修でお出かけなので、明後日ですかね…。
あ、明後日って内部監査か……。。。
まあ、時間あるでしょう。多分。。。うん。

ところで…、ねだるとゆするは同じ字を書くのですね〜!(強請る、ね)
イメージ全然違うのに、何だか変な感じだ〜。
てか、ねだるはククたん、ゆするはお兄ちゃん…ってな気がしません?(酷!)
 
 
 
05 (Tue) Jul 2005 [no.38]
 
 
●○ しあわせくるるん ・2−8 ○●

 
  
五感全てが麻痺させられたような、甘い痺れ…。
強い快感と深い満足感に包まれ、ククールはハーと大きく息を吐いて…。
目を開ければ、定まらぬ視界いっぱいにマルチェロの顔が広がっている。
「…あにき…」
呟くように呼べば、そっと唇が重ねられた。
甘く優しいそのキスに身体の芯が疼く。
「…ん…」
「さて…ククール…」
小さく声を漏らすククールの耳元に、マルチェロは囁きを落とした。
「次はどうする?」
またそんな意地悪なこと!と思うククールだが、グイと押しつけられた下半身の熱さに一瞬、ギクリとする。
ソロリと視線を落とせば、布を押し上げ存在を主張しているマルチェロの猛りが目に入って………。
「服、脱いで……兄貴を…見せて……」
ドキドキしながらのお願いにマルチェロは黙って従った。
「…っ!」
服の下から現れた肉体に思わず息を呑む。
素材という点から言えば、半分は同じ筈のククールとマルチェロだが、その体付きはまるで違う。
長旅をしてずっと戦ってきたのは自分だと言うのに、何故、ずっと修道院にいたマルチェロの方が、数倍も逞しいのだろうか…と、謎に思いながら…。
鍛え抜かれた胸筋や腹筋の美しさに見惚れる。
触れてもいいのだろうか…なんて思うと、クラクラしてしまいそうだ。
続いて、マルチェロはシュルシュルと紐を解き、ズボンに手をかけた。
ククールはそれが降ろされるのを見守って………。

「ちょ…っ、待った!」

思わずガバッと身を起こす。
「ソレ無理!絶対無理!入らないって!」
バトルロード格闘場のムリーのように『無理』を繰り返すククールに、マルチェロは苦笑して…。
「…お前が煽った結果なんだがな…さて、ならばどうする?」
サラリと訊ねる。
「あ、兄貴も…一度、イッて下さい…」
ククールは赤らんでいた頬を更に真っ赤に染めてそう言った。
すると、
「ほう、それはどうやってだ?」
なんて…ワザと顔を覗き込まれ、ああもうホントにこの人は!と思う。

最近、ずっと意地悪されないから忘れかけてたけど…。
そーだよ、こーゆーヤツだったよ…オレの兄貴は!
ってか、こーゆー時でもやっぱ変わんねーんだな…。
まあ、ベタベタに甘くなったりしてもコエーけどさ………。

愉しげな笑みを浮かべる緑の瞳を憎たらしいと思いながら…。
「……く、口で…」
させて頂きます、と段々小さく呟いて…。
ククールはそそり立っているマルチェロのソレに両手をかけた。
初めて見る兄のソレ…その熱さと硬さに目眩すら覚える。
ククールはドキドキする胸を落ち着かせるように、一回軽く目を閉じ、フーッと息を吐いて……。
それから、包み込むように触れているソレに唇を近づけた。
先端をペロリと舐めると、マルチェロの腹をビクリと震えが走って…。
そのまま口に含めば、頭上で小さく息を呑むのが聞こえ、それにゾクゾクする。

もし…、声…なんか聞いちまったら…何か、またヤバそ……。

そんなことを思いながら…喉の奥まで呑み込んで、一気に先端近くまで出す。
その動作を数度繰り返し…、先端に舌を這わせ、吸い、裏筋を辿って…。
「ン…、ん…ふっ」
手と唇と舌を使い、丁寧にマルチェロを追い立てるククール。
暫くの間、室内には淫らな水音が響いて…。

「……流石に…上手いものだな…」

やがて、面白くなさそうな声がして、グイと顔を上げさせられた。
その声音よりも、そこに含まれた熱に、ククールはチラッと視線を上げる。
口にマルチェロを含んだまま、見上げる様は何とも扇情的で…。
マルチェロはきゅっと唇を噛み締めた。
下腹に力が入り、ククールの口内でマルチェロの質量が増す。
「ぅ…ぅん…ふ…っ」
「…出すぞ…っ」
苦しげに喉を鳴らしたククールに短くそう言って…。
マルチェロの背をブルッと震えが走り抜けた。
そして…。
「ん、ング…ッ!ん、んんっ、カハッ」
口内に吐き出された熱い憤り…。
その全てを呑み込む事は出来なくて…、ククールはゲホゲホと咽せた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−

こんなシーンにコメント付けるってのも何だか…って感じですが。。。

私の話って、物事をあまりハッキリと書いたり説明したりってのがなく、何となく〜なイメージだけ書くってのが多いので、エロシーンもぼかしぼかしであります。
えっちぃ雰囲気が伝わるといいなって思いつつ……。

しかし…、今週一週間紫のアイコン並んだらやだなぁ……流石に……。。。。
 
 
 
04 (Mon) Jul 2005 [no.37]
 
 
●○ しあわせくるるん ・2−7 ○●

 
その言葉に、マルチェロは僅かに片方の眉を上げて…。
少しだけ厳しさが和らぐが、まだ全てを信じたわけではないらしい。
動くことなくジッとククールを見つめ、次の言葉を待つつもりのようだった。
ククールはキュッと小さく唇を噛んで…恨めしげな視線を兄に向ける。

本当にずりぃよな……。
オレにばっか…恥ずかしいこと言わせやがって…。
でもいい。
兄貴がヤキモチやいてるって分かったもんね。
こうなったら全部言ってやるさ。

そう開き直り、ククールは再び口を開いた。
「オレの仲間は…みんな、オレが兄貴のこと好きなの知ってるし…、それに…」
「それに?」
「……修道院追い出されてからは…誰とも…ヤってないよ…。ホントに」
「ほう…?」
マルチェロが更に一歩、前へと踏み出す。
ククールは今度は引き下がりはしなかった。
ぶつかりそうな程に接近した二人の距離。
間近にある顔を怯まず見上げて…。
探る視線を真っ向から受ける。
「…ならば、この2ヶ月、何をしに行っていたと言うのかね?」
「それは、後で教える…ってゆーか、証拠を見せてやるよ☆」
「証拠だと?」
「ああ。覚悟しろよな?」
怪訝な顔をした兄に、ククールはニッと笑ってみせた。
それからマルチェロの袖をきゅっと掴んで…。
「それよりさ、オレ…さっきから、かなり恥ずかしいけど、それでもちゃんと気持ち言ってるんですけど…」
返事とか…聞きたいんですけど!と。
言いながら、かああとまた顔が紅くなる。
「………」
マルチェロは少しの間沈黙した。
厳しい色をたたえていた瞳が、僅かに逸らされ、思案するかのような素振りを見せる。
「オレは兄貴以外は考えられない…けど……兄貴は…?」
ククールは袖を掴んでいる指に力を込め、じいっと兄を見上げた。
どうしても。
どうしても、聞きたかった。
ずっと…、本当は聞きたかったし、確かめたかったのだ。
「…もう、分かっているだろう…?」
「オレはハッキリ聞きたいの!兄貴の口から、ちゃんと…!ずるいぜ!オレにだけ言わせて…って、ちょっ、あにきっ?!」
言葉の途中…イキナリ抱きすくめられて…。
「あ、に…っ、ん…っ」
そのまま降り注ぐようなキスに、息をすることもままならなくなる。
触れるだけの口付けは、次第に深く、長くなり…。
やがて、歯列を割って入り込んだ舌が、口内を探り出すと、ククールが苦しげに声を洩らした。
「は…ん、ぅ…ン・ム…ん、ン…ッ」
ぎゅっと握り締められた手はマルチェロのシャツを掴み、その指先に力がこもるのと反比例して、足下からは力が抜けて行く。
カクンと折れる膝。
崩れ落ちそうになったククールの身体を、マルチェロは腰に腕を回し抱き留めて…。
「は…ぁ…っ!」
長いキスから解放し、空気を貪る弟の顔をジイッと見つめた。
キスによって呼び覚まされた熱に頬を染め、その熱によってか、それとも単純に苦しかったからか、瞳を潤ませているククール。
濡れた唇の艶めかしさに、もう一度…とその形を辿るように舐めれば、
「ん、や…、あにき…っ」
ククールは僅かに身じろぎ、顔を背けようとする。
「イヤか?」
訊ねれば、困ったように…或いは咎めるように眉根を寄せて…。
「ヤじゃ…ねーけど……でも…やだ…」
「…どっちなんだ」
「…だって………っ」

うわ、もう…何だコレ……オレ…。
今のキスだけで…こんなに感じてる……。

これが、本当に好きな人とのキスなのだろうか…と、内心驚きながら…。
ドキドキと早い鼓動に戸惑いさえ覚える。
もっと触れて欲しいと、身体がざわめいているのが分かる。
それはここ暫く忘れて久しい感覚で……一気に目覚めた欲望に、目眩すら起こしそうで…。
しかも、その感覚を呼び覚ましたのは他でもないマルチェロなのだ。
どうにでもして欲しいと思う反面、何故か、何処か…恐れにも似た感覚が生じている。
「…だって…返事……」
視線を伏せ、紅く染まった顔を僅かに逸らしているククール。
その絶妙な首のラインが、とてつもない色気を醸し出しているのだが、本人はまるで気付くことはなく…。
マルチェロは己の衝動に従い、軽々とその身を担ぎ上げた。
そしてそのまま、すぐ側のベッドに降ろし、のし掛かる。
「兄貴…」
言ってよと、訴えて見上げる水色の瞳を真上から覗き込んで…。
「愛している」
短く告げる、その言葉…。
ククールが大きく目を見開くが、その唇が何かを語るより先に、マルチェロはそれを封じた。
「ン…ッ」
「…愛している…」
繰り返されるキスと言葉…。
「ククール……」
自分の名を…こんなに甘く呼ばれたことなんてない。
「あにきっ!」
ククールは手を伸ばすと、ぎゅうっと兄の頭を抱え込むように引き寄せた。
もう、泣いてしまうどころか、それだけでイッてしまいそうと思える程、身体の芯から痺れている。
「…何だ、もうこんな状態か…」
「あっ!」
腕の中、笑みを含んだ声音が聞こえて…マルチェロの指先がククールのソコへ触れた。
布を押し上げ、今にもはち切れんばかりに張り詰めているソコ…。
布越しに数度、軽くなぞられ、ククールはフルフルと頭を振った。
ぎゅうっと眉根を寄せ、紅く染まった目元から涙の珠が左右に散る。
「あ、だめ…っ」
「まだ何もしていないぞ」
甘く低い声に背筋を震えが走った。

だって、ずっと…。
ずっと、夢に見るほど…焦がれてたんだ……。
ホントに…なんて…、も、それだけで…おかしくなっちまう…。

微かな衣擦れの音と共に前がくつろげられ、流れ込む外気。
既に密を溢れさせ、勃ち上がっているソコを見やって…。
「全く…はしたないな……こんなに汚して…」
「あ、あ、や…っ」
直に触れ、与えられる感覚だけでなく…。
咎めるように見つめる視線に…。
窘めるような響きを持つその声に…。
心すら、魂すら犯されているようで…。
「ん…んっ」
ぎゅうっと、縋る指に力が隠る。
そんなククールにマルチェロは笑みを含んだ声をかけながら、
「ほら、いいぞ…一度イッてしまえ…」
唇ではキスを、手では性急な愛撫を与えて…。
「はっ、ん…ぁ、あぁああっ!」
ビクビクンッと大きく身を痙攣させ、ククールは溜まった熱を吐き出した。


−−−−−−−−−−−−−−−−−

月曜日からサカッた話でスミマセン…(爆)
休日中にちょっと考えておこう…なんて思ったら、ついつい…(笑)
H系は控えようなんて言ってたのにね…考え出すと止まらなくなって困ります。。。
だってさ〜、マルチェロさんは顔もエロイけど、声もエロそうだ〜vvvつか、絶対エロイね♪とか考えると楽しいし、ククたんのメロメロ度を考えるのもまた楽しいんだもん〜vvv(><//)


…まあ、そんなわけで、今日はちょっと早めのアップでございます☆
二三日こんなのが続くかと思われますが…よろしければお付き合い下さいませ(^-^;)>
 
 
 
01 (Fri) Jul 2005 [no.36]
 
 
●○ しあわせくるるん ・2−6 ○●



緑の瞳をじっと見上げて……。
「兄貴、兄貴さ…」
ククールは視線を逸らしそうになる自分を心の中で叱りながら、ぎゅっと拳を握りしめる。
「オレの事、好きなの?嫌いなの?」
そして、そう覚悟を決めて訊ねれば、マルチェロはフ…と小さく笑った。
「…嫌いなら、一緒に暮らしたりはしないと思うが…?」
「はぐらかすなよ!オレは真面目に聞いてんの!」
「…お前はどうなんだ?」
「オレは好きだよ。兄貴の事、今も…昔もずっと……そんなの知ってるだろ!」

今日は絶対に逃げないし、諦めない。

そう思って挑むように、睨むように、マルチェロを見つめ続けるククール。
マルチェロは何かを言いかけてやめ、僅かに眉根を寄せた。
それは何処か迷いの感じられる表情で……。
緑の視線がスイと逸らされる。
「兄貴!」
「………何故、私だ?」
詰め寄ったククールに再び向けられた視線…。
それは何処か、昔のマルチェロを思わせるような…冷たさと熱さを合わせ持つ鋭いもので…。
「え?」
一瞬、反射的に身が竦んだ。
「共に旅した仲間達の誰かではなく?」
「何言って…」
「この2ヶ月…ずっと通っている所があるだろう」
戸惑うククールに、マルチェロは詰問する。
「……あ…」
鋭い視線に込められた怒りのような感情…。
それを感じて……。

………ウソ…。
これって…ひょっとして……?
マジで…?

それが何かに思い当たり、ククールはゾクリと喜びが湧き起こるのを感じた。
胸がドキドキと煩く騒ぎ始める。

まさか、兄貴が…ヤキモチ……なんて…?

「私が気付かないとでも思っていたのか?」
「いや、それは…違くて…」
パタパタと手を振ったククールに、マルチェロはフンと冷笑を浮かべた。
「ほんの遊びか?それにしては、随分と足繁く通っているようだが…」
「だから違うってば!」
「何が違う?」
ズイッと身を乗り出すようにして…。
自分よりも大きいマルチェロに体格差で威圧され、ククールはジリッと後退る。
嬉しいのは山々だが、今までの経験上、こーゆーのはちょっと怖い。
「だからぁ、ゼシカは仲間で〜…」
「ゼシカ…ああ、あの女性の所に通っていたわけかね」
ニッコリと…何故か爽やかながら、恐ろしく凄みのある笑顔を向けるマルチェロ。

あ、兄貴!
この状況下でその笑顔は怖いです!
その笑顔は!!!!
てか、誤解なのに〜〜〜っ!

「ゼシカとはそーゆーんじゃねーってば!」
マルチェロの迫力に圧され、ジリジリと部屋の中程まで…。
「そーゆーとはどういうのかね?」
兄の背後に『誤魔化されんぞ』という文字が浮かんで見える気がして、ククールはウウウと呻った。
正直に言った所で、簡単に信用してくれるとは思えない。
何と言えばいいかと迷って…迷って………。
「…そーゆーってのは……だから、つまり………」
キッと睨むようにマルチェロを見上げる。
そして、

「つまり、オレが兄貴となれたらいいなーって思ってる関係!」

顔を真っ赤に染め、そう叫んだ。


−−−−−−−−−−−−−−−

ククたんはマルチェロさんと話してると、墓穴を掘りまくってボロボロになりそうな子ですよね。
普段は立ち回り巧そうなのに。。。
そーゆーのに頭回んなくなる程好きなんだろうな〜可愛いヤツ…♪♪(妄想妄想)

…とか何とか書いてる内に、もうこんな時間なのか!
どうも最近忙しくていけないぜ!(いやいや、会社だから…仕事しろよ、ナナセ!)
 
 
 
30 (Thr) Jun 2005 [no.35]
 
 
●○ しあわせくるるん ・2−5 ○●


言われた言葉に期待で胸が騒ぐ。
そして、そんなククールの反応を見て、マルチェロは楽しげに……それ以上の言葉を継ぐ事もなく、ただ余裕の笑みを浮かべている。
「……ずりぃの…」
ククールは恥ずかしさと悔しさを覚えてボソリと呟き、そっぽを向いた。

二人が一緒に暮らし始めて、まだ2ヶ月半ばかり…。

一緒にいようとは言われた。
自分といて、幸せだと…。
毎日、さほど衝突もなくのんびりと暮らしているし、修道院時代から考えたら、それこそあり得ない程優しくして貰ってる。
甘やかされてると感じる時すらある。

でも…。

『それ以上』はなくて……。

時たま、口付けられたり、抱き締められたり……。
戯れのように与えられるそれに、ククールはいつも翻弄されてしまう。
マルチェロの真意が分からない。

もう、嫌われてるとは思っていない。
それなりに愛されていると思う。

だが、それがどれ位なのか……そこが知りたいのに…。

ククールは、縋るような思いで兄を見やった。
すると、
「……って、何もなかった顔して本に戻ってんなよ!」
マルチェロはもはや涼しい顔で本の続きを読んでいて…。
「何だね?」
不思議そうに訊ねてくるのに腹が立ち、ククールはガタンと音さえ立てて席を立った。
「…何でもないです!」
ふくれっ面でそう言って、そのまま逃げるようにキッチンを飛び出す。

分かってる…。
分かってるよ。
どうせ、オレばっか好きなんだって!

足早に廊下を歩きながら、何だか泣きそうになってしまって…。
ククールは歯を食いしばり、ぎゅうっと目を瞑った。

兄貴にとってはオレなんか、ただの弟だって…。
いや、弟って認めて貰ってるだけ、前よりかは全然マシなんだけど!
それだって、ちゃんと分かってるけど!

…弟以上が…いい……なんて……。

贅沢すぎる望みだって……。
望みすぎてるんだって……。

部屋に入り、ドアをバタンと閉じる。
そのドアの前…ズルズルとしゃがみ込んで…。

「分かってる…はずなのになー………」

漏らした小さな呟き。
それは、自分のものとは到底思えない程情けない声だった。
抱えた膝の上に顎を乗せ、溜息をつく。

どんどん…欲張りになっちまう……。
修道院いた頃は、ただ見て欲しいとか、認めて欲しいとか、そんなで……。
捜してた時は…生きてればいい、とかだったのにな。
一緒に暮らすなんて…夢のまた夢だったのに……。

「ククール?」

ドアの向こうからマルチェロの声がする。
自分の後を追ってくれたのかと思うと、また胸がざわついた。
「………むかつく…」
それは、自分に対してなのか、兄に対してなのか…。
ともかく、それは小さな呟きだったから、ドアの向こうのマルチェロには聞こえてはいない筈だった。
「どうした?入ってもいいか?」
再度、マルチェロが訊ねる。
「ダメ」
「………ほっといて欲しいという事か?」
キッパリと答えてやると、少しの沈黙の後、やや心許ない声がドアの向こうから聞こえた。
それは、普段のマルチェロらしからぬ、迷いの色の濃い声音…。
昔なら、絶対に聞けなかっただろう声。
絶対に、掛けなかっただろう言葉。
いや、そもそも、こんな風に後を追ってきたりという事こそ、してくれなかっただろう。

ダメじゃん…。
期待しないようにって…今ちょっと反省中だったのにさ…。

ドア越しに感じる確かな気配を見上げながら…。
「……しく…ない…」
小さな声で言う。
「ん?何だ?」
ちゃんと聞こえないだろう事など予測済みだ。
訊ねるマルチェロの前、ドアを開けて…。
「ほっといて欲しくない!」
ククールは今度はハッキリとそう言った。


−−−−−−−−−−−−−−−−

昨日はオソロシイ程の忙しさでありました。。。
今日はちょっとマシな感じなので続きなどをちょろりと……。
てか、どうも…最初に予定していた話からどんどんと離れていっているのですが……これ、ちゃんと元に戻るんだろうか…(汗)
(いや、つか戻せよ…(苦笑))

夏生まれの私は、基本的には暑さに強いのですが、どうもこの湿度の高さには辟易しております。。。
ダルダルでバテバテだ〜…(*_*;)
 
 
 
28 (Tue) Jun 2005 [no.34]
 
 
●○ しあわせくるるん ・2−4 ○●




コーヒーの芳ばしい香りが室内を漂う。
二つ並んだマグカップは、色違いのお揃いで…。
薄いブルーがククールの。
薄いグリーンがマルチェロの、と決まっていた。
2つのカップには、今もうもうと湯気をたてている濃褐色の液体が満ち…、ククールは自分のカップには大量の砂糖とミルクを入れ、マルチェロのカップには何も入れないでテーブルへと運ぶ。
コーヒーを入れる前、読み始めたばかりだった筈の本は、もう随分とページが進んでいた。
面白いのだろうか…と思いながら、
「ねえ」
ククールは真剣に本を読んでいる兄に声をかけた。
「何だ?」
「本…他にも借りてきたんだろ?何か見せてよ」
言えば、一心に字を追っていた緑の瞳が、自分を見る。
意外そうな、不思議そうなその顔。
「………専門書だぞ?」
普段、ククールが雑誌の類しか読まないことを知っているマルチェロは、念を押すようにそう言った。
「いーじゃん、見るくらい」
バカにされたと感じ、ククールは唇を尖らせる。

兄貴が何に興味を持ってるのか…ちょっと知りたいだけなんだからさ。

「…まあ、いいが…」
マルチェロは荷物の中から、2冊ほど本を取りだした。
3センチ程度の厚みのある、皮の表紙のその本は見るからに難しそうで…。
ククールはほんの少しだけ、見たいと言ったことを後悔しそうになった。
「えーと…その建物はいかにして建ったのか…?」
1冊、多少なりとも薄そうな方を取り、ペラリとページを捲る。
それは、世界の名だたる建築物を絵付きで紹介している本で…構造、工法等が詳細に記されていた。
厚手の紙に鮮やかな色彩で描かれた建物は、なかなかに見事で…。
面白いかも…?と少し興味をそそられる。
もっともらしい顔でしげしげとイラストを眺め、詳細に目をやって……そこに見知った名前を見付け、ククールは目を見張った。
「おっ、これってライドンのオジサンじゃん!あのオジサンこんなのも作ってたのか…」
へーっと声を上げれば、マルチェロが視線を上げる。
「…知り合いなのか?」
「んにゃ、旅の途中で一回会っただけだけどさ…すんげー高い塔作っててさぁ、仕掛がまー面倒くさいの何のって……」
「ああ…、リブルアーチの北東にある塔か…」
何やら興味を引かれたらしく、碧の瞳に楽しげな色を乗せて…。
「何?ひょっとして会ってみたいとか?やめとけよ、何にもねー塔だぜ?石像動かしてシーソーで上がったり降りたり…」
「ほう…」
面倒だったことを全身で表現し、やめておいた方がいいと勧めるククール。
けれど、マルチェロはもう行ってみることを決意したらしい。
ニヤリとだけ笑うと、再び本に視線を戻した。
何やら楽しげなその様子に、まあいいけど…と心の中で呟いて…。
ククールも再び本に目を戻す。
紹介されている建物の中には、城なども載っていた。
パラリ、パラリとページを捲っていると、色鮮やかに描かれたトロデーン城が出てきて…。
何となく、イバラの呪いが掛かっていた頃を思い出し、不思議な感慨を覚えたり…。

そういや、トロデーンにゃ暫く行ってなかったな…。
久しぶりに行って来ようかな…。
エイトのヤツ元気かな。
姫さんとうまくやってんのかね…。
トロデ王は……元気だろうな、あの人は…うんまあ…。
そういや、ヤンガスにも会ってねーし……ゲルダとはどうなったんだろ…。

トロデーン城のページに目を落としたまま次々とそんな事を考えて…。
どの位の間ぼんやりとしていたのか、気付くと、マルチェロの視線がこちらを見ていた。
「あ…、何か言った?」
ハッとして訊ねれば、スイッと元に戻ってしまう碧の瞳…。
「いや…」
「何だよ、気になるじゃん」
ククールは兄の顔をジイッと見上げた。
普段からあまり無駄に話をする事のないマルチェロは、口よりも目や表情の方が雄弁である事が多い。
まあ、その表情すら、ハッキリと分かる変化があるのは少ないのだが…、長年見てきたたまものか…ククールには多少それが分かるので……。
今の兄の瞳は、何かを言おうとしていたそれであると……気付いて…。
「何?」
再度訊ねれば、マルチェロは溜息をついてククールを見た。
そして、

「……お前はいつも私を見ているクセに、私がたまにお前を見れば、何だ何だと煩いのだな」

呆れたようにそう言って、ニヤリと笑う。
「なっ…」
かああっと紅く染まる頬。
誤魔化されていると分かっているが、それでも言われた内容は嬉しいものだったから…。

ククールが自分を見ているのと同じ意味で、自分もククールを見ていたのだと…そう言ったのだ。


−−−−−−−−−−−−−−

おおお。
お久しぶりの更新であります(><)
ここんトコ、忙しくてなかなかSSに手を付ける事が出来なかったのですが…。
こう間があいてしまうと、何を書きたかったのかちょっと分からなくなってしまって困ります(爆)

つか、もうチャイムが鳴っちゃう〜!わー!(爆)
 
 
 
22 (Wed) Jun 2005 [no.33]
 
 
●○ しあわせくるるん ・2−3 ○●

 

「あ!兄貴っ!」
飛び上がるように立ち上がったククールに、マルチェロは不思議そうな視線を向ける。
「えと、おかえり…」
「ああ、ただいま」
ククールの言葉に短く応え、マルチェロは荷物を床に下ろした。
見るからに重そうな鞄。
恐らく、中には数冊の本が入っているのだろう。

…本が好きなのは知ってるけど…。
でも、コレはカモフラージュなのかも……。

なんて…、今まで考えていた事の続きで何となく疑ってしまい、じじじい〜と観察して…。

うーん…。
香水の匂いとかはしないよな…。
風呂に入ったとかの様子もない。
首にキスマークとかも見当たらない。

ジロジロと眺め回していると、怪訝そうに見つめる兄の視線とぶつかった。
「何だ?」
「えっ?ううん、何でも…っ」
ワタワタと手と首を振りながら…。

やっぱ、ンな事あるわけないか☆
そーだよな〜、兄貴に限ってな〜♪

「うん、何でもないんだ☆」
勝手に疑い、勝手に納得し、勝手に喜ぶ。
自分を見上げ、ニコニコ〜と嬉しげに笑ったククールを、マルチェロは少しの間見つめて…。
「……ああ」
ふいにそう小さな呟きを漏らし、身を屈めると、そのまま流れるような動作でキスをした。
「んなっ?!!」
唇がちょこんと触れただけの、軽い軽いそのキス…。
けれど、それがククールに与えた衝撃は爆弾級で……。
「あ、あにき?な…?」
唇を押さえ、瞳を大きく見開いて、マルチェロを呆然と見上げる。
「…違うのか?」
「違うって、何が…?!」

「ただいまのキスでもして欲しいのかと思ってな」

「んな習慣ねーだろ!」
兄が何の躊躇いもなく、サラリと言ったそのセリフ…。
ククールは真っ赤に顔を染めたまま、すかさずツッコミを入れた。

おはようも、おやすみも、行ってきます&行ってらっしゃいも、ただいま&おかえりも、オレが言わなきゃ言わないクセに!

マルチェロはフ…と小さく笑う。
「人の顔を見上げてぼんやり突っ立っているからだ」
「そんなの理由になるか!っとに!心臓に悪いからイキナリそーゆーことすんなよな!」
「ほう…なら、イキナリでなければいいわけか」
成る程、覚えておいてやろう、と…。
意地悪なのに、憎たらしい程格好いい笑みを浮かべて…。
明らかに自分の反応を楽しんでいるマルチェロの様子に、ククールはウウッと言葉を詰まらせた。
この兄に対しては、何を言っても墓穴にしかならないと、長年の経験でよく分かっている。
反論を諦め、ククールはクルリと身体ごと向きを変えた。
「………コーヒー、飲む?」
チラリとだけ視線を投げ、訊ねれば、マルチェロはもうテーブルに着いていて…。
「ああ、貰おうか」
そう返事をしながら、今日借りてきたらしい本を取り出す。
『彫像のイコノロジー』と書かれている背表紙の厚さに、よく読むよな…と、感心半分呆れ半分の眼差しを向け、ククールはやかんを再び火に掛けた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−

何か、のんびりした日だったのですが、新しいドールのお迎えを迷ったりしている内に、いつの間にやら5時を過ぎていました(爆)
こないだお兄ちゃんをお迎えしたばかりだというのに……ああああ…。
って、それはいいとして。

えー。
和解して一緒に暮らしてる二人ですが、まだ何もない状態ってことで。
チュウされてドギマギのククたんです。
どんだけ経験あったって、お兄様はやっぱ特別なのです☆
 
 
 
20 (Mon) Jun 2005 [no.32]
 
 
●○ しあわせくるるん ・2−2 ○●

 
 

「むー…何で上手くいかないかな…」

ぶつぶつと呟き、今日の料理を反芻しながらククールは家に戻った。
「ただいま〜!」
元気にそう言ってドアを開けるが、玄関にあるコート掛けには、マルチェロの上着もマントも見当たらなくて…。

何だ…出かけてるのか…。

ちょっぴり残念な気分になりつつ、外したマントを掛け、ククールはキッチンへと向かった。
お茶を煎れるためにやかんを火にかけ、グルリと室内を見回すが、テーブルの上にも何処にも、書き置きのメモなんてものは見あたらない。

ちぇ。
何処に行くかくらい、教えて行けよな。

なーんて、自分のことを棚に上げて唇を尖らせて…。
部屋に戻り、服を着替える。
グローブを外し、上着を脱ぎ、ブーツを脱いで…外出用のカッコから、家でのくつろぎファッションへ…。
羽織る程度に着た、少し大きめのシャツの袖をまくりながら、ククールは再びキッチンへと戻った。
そして、お茶の缶を選んでいると…、ふと、コーヒーの瓶が目について……。
たまにはコーヒーにしようかな…なんて、コーヒーの入った瓶を取る。
日頃、コーヒーを好んで飲むのはマルチェロの方だった。
ククールは紅茶党なので、コーヒーはどちらかといえば苦手なのだ。
だが、何故かこの時は、コーヒーが飲みたいような気がして…。
ククールはマグカップに半分くらいの量でコーヒーを作ると、そこに砂糖とミルクを多めに入れる。
そして、
「…うん、美味しい♪」
カフェオレよりも薄いようなそれをチビリと舐め、ニッコリと笑った。
時計の針は夕方の4時を示していて…。
窓からは夕日が射し込み、室内をオレンジがかった暖かな色合いに染めている。

「……また、リブルアーチ行ってんのかな…」

クッキーを囓りながら…ククールはマルチェロの行方を考えた。
仲間達との旅の最中には気付かなかったが、リブルアーチの街には大きな図書館があるのだ。
石像の街という土地柄、美術関係や建築関係といった蔵書が多いのだが、それが珍しいのか面白いのか…ともかく、興味を引かれたようで……。
最近、やたらと頻繁に通っては、何冊もの本を借りて戻ってくる。

昔っから、本好きだったもんな…。
つか、図書館も完全制覇する気だったりして……。

「ありえないこともない…っつーか……かなり、ありかも……?」
マイエラ修道院の蔵書全てに目を通し、全てを頭に入れていたマルチェロだ。
そんな気がなくとも、やってのけてしまうのではないか…と、そんな考えが頭を過ぎって…。
ククールは乾いた笑いを漏らした。

ホント、オレとは大違いだよな……。
ホントに半分でも血ぃ繋がってんのかね…。

少し熱いコーヒーにフウと息を吹きかけて…少し口を付ける。

本読む為にわざわざ行くとかって、オレなら考えらんねーな。
美女の為ってんなら別だけど……………って…案外、兄貴もそんなんだったり……?

手からポロリとクッキーが落ちた。
「…い、いやぁ、まさか……な…」
自分の頭に浮かんだ考え…。
いつもの軽口のように、軽く浮かんだ考えは、けれどククールの心をずううんと重くして……。

「そりゃ、子供じゃないし……女の一人や二人…いたってさ……」

不思議でも何でもないのだと、それを認めながら…。
それでも、イヤだと思ってしまう自分。
ぎゅうっと握りしめたマグカップの中…薄い褐色の液体に、もの凄く暗くなっている自分の顔が映っている。
「…てゆーか、まだそうと決まったワケじゃねーけど!」
それに苦笑しながら軽い調子で呟くが、一度生じた疑惑の種はそう簡単には消えてくれそうになかった。

今まで、兄の女性関係など気にした事はなかったのだ。
というよりも、どうも兄と女性は結びつかなくて…。
自分と違い、修道院で常に上だけを見ていた兄には、浮ついた噂が流れた事など一度もなかったから…。
いつも難しい顔で難しい事を考え、剣を握っているか、仕事をしているか、あるいは自分を怒っているか……そんな姿しか見た事がなかったから…。

今までに……付き合った人とかだって……いるよな、やっぱ……。

ぼんやりと思い、ハッとして…ククールはブンブンと頭を振った。

いや。
この際、過去は忘れよう。過去は。
オレも人の事言えた義理じゃねーし!

「…やっぱ、重要なのは今だよな!今!つか、これから!」
そう言って、うんと頷いた時…、

「何を一人で騒いでいるんだ?」

いつの間に帰ってきたのだろうか…。
呆れたような声と共に…マルチェロがキッチンに入って来た。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

おや…。。。
仕事でバタバタしてる内に、料理から離れてしまいましたね(爆)
ホントはもうちょっとアルバート家での話が続くはずだったんですが、お兄ちゃん絡んでこないと著しくやる気を殺がれるので、すっ飛ばしました(え)
つか、当初の予定ではオシアワセでドタバタなおバカ話の筈だったんですが……雲行きが怪しくなっちゃう模様。。。
ハテサテどうなります事やら…(他人事か!)

まあ、暫くお付き合い下さいませ☆(^−^)
 
 
 
16 (Thr) Jun 2005 [no.31]
 
 
●○ しあわせくるるん ・2 ○●



ガシャーーン!
ガタガタ、ゴトン、バタン☆

賑やかな音がアルバート家のキッチン中に響いて…。
時折、物音の合間に「きゃっ」だの「うわっ」だのと言った、小さな悲鳴が混じる。

「お嬢様!どうしてそこでそれを入れようと思うんですか!」

ぐつぐつと煮立つ鍋の中へ、何かを入れようとしたゼシカを、アルバート家のコックが慌てて止めた。
「えーっ、ダメなの?何で?だって、これじゃ味が全然しないじゃない」
「調味料はこちらに用意してありますでしょう!」
「あ、そうだっけ?」
ケロリと言われ、コックは頭を抱える・
「………何でいつも途中で思いついたものを入れようとなさるんですか!」
「いや、美味しくなりそうな気がして…」
ごめーんと、小さく舌を出して謝るゼシカに、ククールが横からクスクスと笑った。
「ゼシカはあんまり料理の才能ナイよな」
「アンタに言われたくないわよ!」
「オレはまだマシだと思うけどな…」
ボソリとそう言いながら…ククールは自分の鍋の中身を小皿に掬い、味をみて…顔を顰める。
「…おかしい…。ちゃんとレシピの通りにやった筈なのに……何でだ?」
「ククールさん………また何か忘れませんでしたか?何か足りないような…」
横に来て味をみたコックが、同じように顔を顰めて鍋を覗き込んだ。
グルグルとかき混ぜ、何が足りないのかと二人で考える。
「ねえ、私の所にコレ2つあるんだけど…」
自分の方の調味料が載ったトレイを見つめて…。
ゼシカは全く同じ物に見える粉の入った容器を指さした。




ククールがゼシカの家に料理を習う為、週に1度ないし2度程度、通うようになって…早2ヶ月…。
そもそもの切っ掛けは、ククールを知るほとんどの者が想像するであろう通り…、彼の兄…マルチェロに起因している。

別に、マズイと言われたワケではなかった。

ただ、ククールが初めて作った食事を一口食べた時に…一瞬、何とも微妙な…不思議な顔をされた……それだけなのだが……。
何故か、それがククールのやる気を刺激してしまって…。

「絶対、兄貴に美味しいって言わせてみせる!」

だから、教えてくれ!と。
そう言ってリーザス村を訊ねたのだ。
だが、頼られたゼシカも、料理なんて物とは無縁の生活を送ってきた人間だったので……。
じゃあ、ついでに…なんて、二人揃ってアルバート家のお抱えコックに教えを請うことになったのだった。

そして…二ヶ月程も経つわけだが…。

ククールの結構まめまめしい努力と熱意の甲斐もなく……あまり、その腕は上達してはいなかった。


−−−−−−−−−−−−−−−

ありゃ…。
全然、間に合いませんでした(爆)
今日は真面目に仕事に勤しんでいた……ワケでもあんまりナイのですが…(苦笑)

明日もこの続きです。
 
 
 
15 (Wed) Jun 2005 [no.30]
 
 
●○ しあわせくるるん ○●

 
 
※この話は、クリア後、兄弟が一緒に暮らしてるって設定です〜☆ 
 
 
 
それは、ククールが部屋でゴロゴロしながら、雑誌なんかを読んでいた時の事……。
「ん?」
ふいに、ただならぬ気配を感じて顔を上げると、半分開いた扉の向こうから、ギロリと緑の視線が突き刺さった。
条件反射のように、ギクリと身を竦めるククール。
「あ、兄貴?」
ツカツカとこちらへやって来る兄は、右手に包丁を握っている…なんて状態で…。
「ククール…」
眉間にシワを寄せたまま、呼ぶその声はハッキリ言って何か怖い。
しかも、その拍子に、包丁がキラリと光っちゃったりなんかして……。

「ちょっ、兄貴!待てよ!落ち着けって!そんな、いくら何でもイキナリ包丁なんてっ!は、話せば分かる、何事もっ!」

思わずベッドの上を逃げながら、アワアワと叫ぶと、マルチェロは呆れたような視線を送った。
「何を言っている…」
「出来心だったんです!許して…って、え、違うの?」
「…私は…今日の晩飯の事で、意見を求めに来たんだが……」
マルチェロは溜息をつきながら「魚は塩焼きとムニエルどちらがいい?それとも、フライか刺身がいいか?」と訊ねる。
その内容に、一瞬、目をぱちくりとしばたかせて…、
「あ、ば、バンメシ…ね…、魚の…★ハハ、なーんだ…あー、びっくりした〜〜〜…」
ハーーーッと盛大に安堵の息を吐き、胸に手を当てて笑うククール。
心底ホッとしましたと、全身で表している弟をジト目で見やり、
「そんなに慌てるような事をしたのか?」
なんて、訊ねると……。
「へっ?え、え〜…?や〜、やだなぁ、そんな☆アルワケナイジャン、ナニモv」
「……目が泳いでいるぞ」
明らかに、アヤシイ態度。
だが、何のかんのとあったものの、それでも子供の時からずっと一緒にいて、ずっと見てきたマルチェロである。
ククールのやりそうな事くらいは見当が付くので…。

「何をやった?と言っても、ここは修道院ではナイからな…、門限破りは関係ないし…今更酒や女もないだろう。とすると……ギャンブルか…」

鋭い緑の瞳…。
ククールは背の高い兄を、上目遣いに見やり、エヘと誤魔化し笑いを浮かべた。
「ちょっと、ね…ほんのちょっと…だよ?」
「ククール…」
「は、はいっ!」
「正直に言え」
マルチェロは知っている。
ククールの『ちょっと』は、一般で言う所の『かなりたくさん』だという事を…。
「ちょっ、包丁怖いって!兄貴っ!」
「正直に言えば、怖くないし、痛くもないぞ」
ニッコリ。
「!!!!」
カリスマスキルMAXの、天使のような悪魔の微笑みに背筋が凍る。

い、言う前から怒ってんじゃん!
つか、正直に言わなかったら怖くて痛いの決定かよ!
うわーん!兄貴の鬼っ!

「あの、こないだ…みんなと遊びに行ったベルガラックで…ですね……」
ククールはベッドの上に正座をすると、おずおずと語り出した。
「ああ、あそこのカジノは有名だからな」
「う、うん!あそこはマジでスゴイんだぜ☆今度は兄貴も一緒に行こうよ♪」
ニコッと、こちらもまたカリスマスキルMAXの、花でも舞いそうな笑顔…。
(…お色気とかプリティとかゆースキルの方があっている気もするが…)
思わず、ウッカリと騙されそうになる自分を心の中で叱責しつつ、マルチェロはジロリと冷たい視線を向けた。
「バカな事を言っとらんで、一体、いくら負けたんだ?」
「ええ〜…っと……コイン…100枚くらい…カナ…?」
枚数が少なくて済む方で言う所が小賢しい。
というより、語尾の『カナ?』から察すると、恐らくはその倍くらいは行っているのではないだろうか……。
マルチェロは深い溜息をついた。
「…ということは……2000Gくらい、ということになるわけだな?」
「そ、そうなります…かね?」
「このバカ者がっ!」
エヘヘと笑いかけたククールだが、その瞬間、雷の如き兄の咆吼が部屋に響き渡って…。
「で、でも、それだって随分頑張って回収したんだぜ?!一時は600枚もスッちゃってさぁ……あ…っと……!」
慌てて言いつくろおうとして、余計に墓穴を掘ってしまう。
「…………」
マルチェロは無言で少しククールとの距離を空け、ス…と包丁を構えた。
一瞬、ピーンと張りつめる空気…。
それに殺気すら感じ、ククールはワタワタとベッドの上から逃げ出す。
「あああっ、兄貴っ!待って!悪かった!反省してます、反省してますってば!ホント、ホントにっ!」
「煩い!一度死んでその浪費癖を直して来い!」
「一度死んだらそれで終わりじゃないか〜〜っ!わーっ!家の中でグランドクロスはねーだろっ!ちょっ、落ち着けよ、兄貴っ!マジでゴメンってば〜!」
兄の手が明らかに十字を切ろうとしているのを見て取って…。
「問答無用だ!この愚弟がっ!あっ、こら!」
その動きを阻止すべく決死のタックルをかまし、そのままぎゅうっと抱きつくククール。
「離さんか!こら!」
「もうしませんから〜!許して、兄貴〜!」

つか、離したらグランドクロスじゃん!
絶対離れないって…。。。

なーんて、弟が心の中で結構必死にそんな事を思っているとは露知らず…。
「……く…っ!」
思わず、グラグラと心が揺れてしまうマルチェロお兄様…。
こうなって来ると、修道院にいた頃の自分が懐かしい。
あの頃の自分は、この瞳を向けられて、よくそれを無下に出来たものだ。

「………………本当に反省しているのか?」

私も甘くなったものだ…!と、思いながら、張り付いているククールを見やれば、
「してるしてる!もー、すんごく反省してます!」
うんうんと、ククールは何度も頷いてそう言った。
ハッキリ言って、疑わしい事この上ないのだが、それでも……先程覚えた怒りは、もうサッパリと霧散してしまったのだから仕方がない。
マルチェロは溜息をついた。
「…全く…お前というヤツは…!ククール、ギャンブルをするなとは言わん。だが、あまり無駄遣いはするな」
「は〜い!」
元気の良い…というか、調子の良い返事に、もう一度溜め息が出る。
「ホラ、もう離れろ」
「兄貴大好き〜vvv」
「今言われても、ちっとも嬉しくないぞ」
フン、と鼻を鳴らしながら…満更でもない顔で…。

ああ、全く…このままではどんどん甘くなるばかりではないか…!

「…それで、どうするんだ?」
「何が?」
「魚は塩焼きとムニエルどちらがいい?それとも、フライか刺身か?」
きょとんとするククールに、マルチェロはそもそもこの部屋に来た、当初の目的である質問をした。
「ああ、晩飯!」
ククールは、ポンッと手を打って…。
「ん〜と、ムニエルが食べたい!んで、ワインにしよっ♪オレ、ちょっと行って買ってくるよ☆」
こないだアスタンカでいいワイン見つけたんだ♪と嬉しげに言い、サッサと離れて出かける仕度を始める。
そんな弟に呆れつつも……。
マルチェロは「ムニエルだな」と頷くと、キッチンへと戻るのだった。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

オーナー兄妹からのお礼で貰ったコイン600枚を一瞬で消化したバカはウチの弟です(爆)

って、それはいいとして。
マルチェロさんはお料理上手そうな気がしますね、何となく。
何をやってもソツなくこなし、結構凝り性っぽい。。。
ククールはダメっぽいかなぁ…。
味にはうるさそうだけど…作る方は……みたいな感じか?
「もういい、あっちへ行っていろ」とか言われて、ションボリなんだきっと…!(可愛〜vvv)
あ、明日はそれにしよう…(笑)
 
 
 
14 (Tue) Jun 2005 [no.29]
 
 
暗転の舞台裏で

 
※ネタバレ(?)を含みます〜!ご注意下さい!
 


 
薄水色の瞳がじいい、じいいっと後を追ってくる。
何処にいても、何をしてても…。
チラリ、と視線をくれてやれば、その顔は…というより、その姿全体が『かまって』と訴えていて……。

泣かせたい………。

マルチェロは、そんなククールの顔を見る度に、何故か強烈にそう思ってしまう。
今も、昔も…変わらずに……。

子供の頃は、ずっと、それを憎いからだと思っていた。
ククールは自分の不幸の元凶だから、と。
何も疑問に思うことなく、ただ、その気持ちのままに『苛めてやる!』と……信じていたのだ。

それで、嫌われても構わなかった。

憎まれて結構だと…。

傷ついて、二度と姿を見せなければいいとさえ…。
避けてくれればいいのにとさえ…思って…ずっと……。

だが…。

いつからだったか…。
自分がククールに行っていたのは、子供じみた感情の表し方だったのだと……気付いたのは…。

嫌われて、避けられていれば、一生気付かずに済んだ筈の感情……。

けれど、あの薄水色の瞳は、何年経っても…何をされても、決して自分から目を逸らしはしなくて…。
子供の時より、幾分複雑な色を乗せつつも、マルチェロの背を追い掛けていたから……。
ふとした弾みで気付いてしまったのだ。

気にしていたのは自分だったのだと…。
いつも、追い掛けてくる視線を感じながら、同じだけ、自分の目はその視線の主を探していた。
視界の端にはいつも、赤い制服が、銀の髪が、そしてあの薄水色の瞳が……。
そう、ククールがいたのだ……。


「…追い出して…気付くとはな……」

今日、久しぶりに見た時は………昂ぶる気持ちを抑える事が出来ずに足を止め、声をかけてしまった。

サヴェッラへと向かう船の中…。
与えられた一室でくつろぎながら、マルチェロはゆっくりとそれを思い返す。

あの大きな扉が開かれて、あの赤い制服が目に入った、その時を…。
あの時、自分は息が止まるかと思う程の衝撃を受け、全身を駆けめぐる血のざわめきに目眩すら覚えたのだ。

『おやおや。これは珍しい顔に会うものだ』

そう、かけた声に震えなどはなかった。
驚くほど冷静な自分の声…。
喜びが滲み出ぬよう苦心したなど…まさか気付かれてはいないだろう。

『髪の毛ひとすじほども信仰など持ち合わせていないお前が巡礼に来るとは』

見つめ、絡む視線に胸は騒いで…。
ああ、この瞳を一体どれほどの間見ていなかったのか……。

『ふふん。神頼みか?それとも観光気分か?気楽なものだな』

笑ってしまう顔…。
出来るだけ、修道院で見せていた顔になるように、と気を付けて……。

何か言いかけたその顔に、何を言うかと期待する自分が怖くて……思わず、先に言葉を継いでしまった。
『まあいい』と…。
声など聞けば、何を言い出すか分かったものではなかったから…。
もし、一言でも聞いていたら…。
もし、名など呼ばれでもしたら……衝動を抑える自信などなかったのだ。

さらって…。
閉じこめて……もう二度と、何処へも出さぬように……。
誰の目も触れぬように…。
その身も、その心も…永遠に………自分だけのモノに………。

「……ハ…、それが望みか…」

グラスを満たした赤い液体に自身の顔を映し、自嘲気味に笑って…。
口を付ければ、鼻孔を擽る甘い果実とアルコールの香り…。
ゴルドの名産なのだというその酒のアルコール度数は高く、喉を焼くような熱が一気に胃へと降りて行くのを感じる。
味は悪くなかった。

今は…何処へと向かったか……。

「フ…」

追い出して良かったのだ…そう思って、マルチェロは自分の手に視線を落とした。

この手であの赤い制服をむしり取り、その肌を暴く様が目に浮かぶ。
乱れ広がる銀の髪。
抵抗しようと上げられる腕を押さえつけて…。
逃れようと藻掻く身体にのし掛かり…。
露わにされたその胸を、その腹を…隅々まで…触れて、辿って…探り尽くす。

ああ、そうだ…それが望み……。

身の内に生じ、徐々に漲ってゆく熱が苦しくて…マルチェロは小さく息を吐いた。
どうかしている、と思う。
自分は、半分でも本当に血の繋がった弟に劣情を抱いているのだ。
憎んでも憎み足りないと思っていたその相手に…。
そんなバカな事があるものかと、否定はもう幾たびも繰り返して…。
だが、確かにこの胸の内には憎しみでも怒りでもない物が、炎となって燃え上がっている。

あの身を引き裂いて、中に入り込むその時はどんなであろうかと…思いを馳せて…。
だが、その顔に考えが及んだ瞬間、一気に熱は引いた。

自分の欲望を目の当たりにして…その時、弟は…ククールはどんな顔をする?

怯えるだろうか?
泣くのだろうか?
憎しみに満ちた瞳で見上げるだろうか?
それとも………?

あの薄水色の瞳は、二度と自分を追わないかも知れない。

そう思えば、胸には痛みを生じて……。
「…何を…今更……」
マルチェロは苦笑混じりに頭を振って…、グラスの中身を一気に煽った。

院長も…もういない。

だから…そう。
後は…アレさえいなくなれば…もう、何も……。
心を煩わせるものなど、何もなくなるのだ。

「そうだ……だからこそ…追い出してやった」

何処か虚ろに呟いて…窓の外へと視線を向ける。
円い窓ガラスの外には、空と海との境も分からぬ夜の闇。

「…お前は…いつでも邪魔ばかりするな……」

何も映さぬそこに、けれど赤い制服の姿を思い浮かべて…。

やがて…絶えず響く波音に、マルチェロは目を閉じた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ククたんのお目目…正しくは何色なのかしら…と思いながら。。。
ウチでは青と書いたり、薄水色と書いたり、イロイロしてますが…。
(ちなみに、ウチの玖紅にはライトバイオレットが入っております。お兄ちゃんにはグリーングレイ。いや、どうでもいい話ですが…(爆))

途中で入る『』付きのセリフはゴルドイベント(1つめ)のです。
お船を手に入れてスグ、一路ゴルドを目指した、ウチのパーティでございました。。。
マジで死にそう〜とドキドキしつつ、お兄ちゃんに会いたい一心でダッシュ!
滅多に逃げない我がパーティも、この時ばかりは「走れーー!」って感じでした(笑)

つか、船で移動なのかなぁ。。。
ルーラじゃ味気ないよなぁ…とか。

お兄ちゃんがサヴェッラへ向かった後は、勿論ダッシュで追いかけましたので。。。
この頃、ククたんもまたお船で昼間の出来事を思い返したりしてるのでしょうな☆
(戦闘でそれどころじゃなかったりして…(笑))

 
 
 
13 (Mon) Jun 2005 [no.28]
 
 
□ 幸福の不在 ・3 □


「え…あ、兄貴…?」
「謝って…済まされる事ではないが………」
頭の上にある顔…。
兄がどんな表情をしているのか、ククールには見えなかったが…それでも、その声はとても真剣で…。
「…信じられんのも無理はない…」
マルチェロは静かに言葉を続けた。
シッカリとした腕が背中に回って…ぎゅうっと抱き締められる。
自分よりもずっとずっと大きい兄…。
その胸に、顔を押しつけて…。

ずっと、こんな風に抱き締めて貰えたら…と思っていた。

「自分でさえ信じられないからな…お前はもっと…そうだろう…」
「あにき…」
身体を通して聞こえる声に、ククールは再び涙が溢れるのを感じた。
ボロボロと零れる涙をそっと拭ってやりながら、マルチェロは苦笑する。
「…何だ…、酷い扱いを受けている時は涙など見せなかったクセに…」
「だって…だってさ〜……」
今までが今までだったから、と言う言葉は、声にならずに…。
ククールは、マルチェロの胸の中で泣いた。

嫌われる事には慣れていた。
憎まれる事にも慣れていた。
というよりも、もう覚悟が出来ていた。

酷い扱いを受けても、疎まれていても、それでも好きで……本当に、それだけだった。

でも、ここで暮らし始めてからのマルチェロの態度は…もう嫌ってはいないように見えて…。
もう憎んではいないように感じられて…。

もし、違っていたら…と思うと、怖くて聞けもしなかったが…。

それでも、もしかしたら…と思う時はとても幸せだった。

もしかしたら、兄はもう自分を許してくれたのかもしれない。
嫌われてないのかもしれない。
好きになってくれたのかもしれない。

段々と欲張りになる思考…。

優しくされる度、酷く扱われる事への覚悟など、なくなってしまいそうで……。
マルチェロを好きな分、その幸せは大きくて……そして、その反面、不安で堪らなかった。

でも、きっと…もう不安になどならなくて良いのだ。

胸が痛くなる程の幸福感に、溜息をつく。
やっぱり、本当とは思えない…などと思って…。
だが、その時にふと…。

「……時間は、ある…」

マルチェロが呟くように言った。
「え…?」
温かい胸の中…響いた声にきょとんとして、ククールはマルチェロを見上げる。
その上向いた視線の先で…兄の目は穏やかに自分を見つめていた。
「ムダにした時間よりも…ずっと長く……」
「兄貴…?」
そっと、頭を撫でられて…。
その優しさに胸が高鳴る。

「…お前が望む限り……側にいよう…」

それは何処か、誓いのような響きを持った言葉……。
「!」
緑の瞳に映る自分は大きく大きく目を見開いて…。
「あ、あ…に…っ」
兄貴、と…呼ぶ事さえ出来ずに、涙が溢れ出す。
「何だ、また泣くのか」
「だって…」
しゃくり上げるククールに、マルチェロは笑って……そして、涙を掬い取るように…。
そっと、目元に口付けた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ちゅことで。。。
先週の続きでした。
マルククはラブラブは控えめになるように〜!と気を付けているのですが…なっているのかどうなのか…。。。
その内、マルククってラブラブよね〜vvvvとか言い出したりするのかしら………今は、一応違うと思ってるんだけど…。
で、でも、結構ラブラブだよね…?って思ってるのは私だけ?(笑)
S兄にM弟だし、ピッタリじゃん!!!!とかさ。
あんなに、ラブラブ大全開で激カワな弟、苛めるだけじゃ済まないでしょ!喰っちまうでしょ!とかさ。

さて。
写真はウチのNew face、玖紅ちゃんのお兄ちゃん『真流くん』です!
まだDOLL部屋にもアップしていないのに、先にここでお披露目。。。(苦笑)
ついにお迎え出来たので嬉しくて堪らんのでした☆
玖紅ちゃんも喜んでおります♪
つか、Mハゲウィッグは流石に…………なので、今のトコ普通に前髪あります。。。。

 
 
 
10 (Fri) Jun 2005 [no.27]
 
 
□ 幸福の不在 ・2 □

 
額にペタンと手を当てられて…。

「ふむ…熱はナイか…」

小さな呟きと共に、顔を覗き込まれる。
「?!?!?!」
不意打ちのようなそれに、ククールが目をまん丸に見開けば、マルチェロもまた驚いたような顔をして僅かに身を引いた。
「ああ、すまんな…、起こしたか?」
「な、何、一体…っ?」
ドキドキと騒ぎすぎている鼓動に、目眩すら覚えながら訊ねる。
さっき家に駆け込んで…、ククールはそのまま自室へと直行したのだ。
そして、ベッドに身を投げ出し、またしてもグルグルと考えている内にウトウトしてしまったらしい。
マルチェロの手は、もうきれいに洗われていて…。
何となく、触れられた額に温もりが残っている気がして、ククールはカアッとその頬を染めた。
「いや、知恵熱でも出したのかと思ってな…」
頭上から、真面目な声が降ってくる。
心配してくれてんだと嬉しくなりながら、ハッとして…、
「知恵熱って……★それ、子供が出すヤツだろ!」
思わず叫ぶククール。
「ずっと…何か考えているようだったからな…お前なら出しかねんだろう」
マルチェロはクスクスと笑いながら、ベッドに腰掛けた。
ギシリ、と軋むスプリング。
縮まった距離に、心臓が跳ねる。
「どうした?」
一瞬、何を訊ねられたのか分からなくて、視線を上げれば間近で見つめる緑の瞳…。
「え…?」
「この間からずっと何を考えている?」
「……何でも…ねえよ…」
ククールはマルチェロの瞳を避けるようにそっぽを向き、ボソリと言った。
「何でもないようには見えないが………まあ、言いたくないならそれも仕方あるまい…」

おや…随分と物わかりのいい事で…。

兄の言葉に、そんな皮肉な思いがポンと浮かぶ。
その事に、自分で驚くククール。

だが、今本当に一瞬で、過去にさんざんに問い質された事があったのを思い出したのだ。

マイエラ修道院の…地下のあの拷問室で…。
あの時は、何をやった時だろうか…。
もう忘れてしまったが、確か、正直に言ったのに信じて貰えなかったのだ…。
それで、同じ事を何度も何度も…聞かれて……。

思い出すのは憎しみに満ちた緑の瞳……。
いつだって、険しい顔しか向けられなかった。
他人には見せる笑顔も、優しい瞳も、自分には一度たりとて向けられた事はなかった。

そうだよ……兄貴は…オレの事憎んでただろ…。
嫌ってた…。
これ以上ない程、嫌われてただろ…。

ククールは蘇ってしまった過去の記憶を、払うかのようにブンブンと頭を振った。
「どうした?」
「何でも……ホントに…何でもないんだ」
俯いたままの視線…。
マルチェロの顔を見る事が出来なくて、ただそう言う。
「………そうか…」
少しだけトーンが低くなった兄の答え……。
ベッドのスプリングが再び軋み、マルチェロは立ち上がった。
離れる存在感。
足音がゆっくりと遠離ってゆく。

「……あ…っ、兄貴…っ!」

そのまま部屋を出て行きかけた背中に、ククールは呼び掛けた。
何だ?と振り返った視線が問うてくる。

「…兄貴…、あの…さ………今、幸せ?」

訊ねる声が震えてしまいそうで…ぎゅうっとシャツの裾を握りしめながら…。
ククールはやっとの思いでそう訊ねた。
煩い程の鼓動に、段々息が苦しくなってくる。

「ああ」

短い答えは、割とスグに返ってきた。
ククールは縋る思いで兄を見上げる。

「ホントに?オレと二人で?こんなトコにいて……それで……」

それでホントにいいの?とは、聞けなかった。
『それはよくない』と、言われそうな気がして…怖くて…。
だが、マルチェロは今度はすぐには答えなかった。
答えを待つ間の沈黙が耐えられなくて…、顔が俯く。

そうだよ……こんな幸せ、ずっと続くはずがない。

ずっと、もうずっと長い事、報われなかった兄への思い……。
報われる事なんて、一生ないと思っていた兄への思い……。
今、報われてるように見えるけど、そんなのウソかもしれない、と…、どうしてもそう感じてしまって。

きっと、オレはあんまりにも兄貴に焦がれすぎて、優しい兄貴の夢を見てるのかも…。
夢じゃなきゃ考えられないもんな。
こんな風に二人で普通に生活して、普通に接してくれて…、時々、心配までしてくれたりなんて……。

やっぱり…あり得ないこと…だよな…。

考えている内に、泣いてしまいそうになって…ぎゅっと目を瞑ると、

「…お前はどうなんだ?」

すぐ上から声が降ってきた。
「え…?」
その声の近さと、逆に問われた事に驚いて顔を上げれば、マルチェロはいつの間にやらすぐ目の前にいる。

「お前こそ、私と二人でここで暮らして幸せか?」

涙の滲む青い瞳を見つめながら、マルチェロはゆっくりと訊ねた。
穏やかな声…。
けれど、視線は何処か真剣で…。
ククールはコクコクと頷いた。

「うん、そりゃ幸せだよ…!オレ、兄貴といられて…すごく、すごく幸せで……っ」

言いながら、喉が詰まる。
涙は徐々にそのかさを増し、ついにはこぼれ落ちて…。
顔を逸らそうとすると、その両頬をマルチェロの手が包み込んだ。
「幸せなら、何故泣くんだ?」
正面から見つめる緑の瞳…けれど、それは涙でぼやけてよく見えずに…。
「だって、こんなの…夢みたいだから……いつか覚めちゃうんじゃないかって……」

あんまりにも長い事、こんな幸せは知らないでいたから…どうしても、ホントの事とは思えない。

「…………悪かったな…」

ククールを抱き寄せながら、マルチェロは小さく謝罪の言葉を口にした。


−−−−−−−−−−−−−−−−

おお。まだ続くか!って感じですね。
もう少しですが…よろしければ来週もどうぞお付き合い下さいませ★

幸せに懐疑的なククたんです。
幸せに不慣れってイメージは可愛いなぁ…とか思ったのであった。。。(酷)

つか。
やっぱ好きな子は幸せにしたいですよねぇ。
(基本的に幸せな話しか書いてないですし…昔から…)
もうホントはベッタベタに甘やかしたいって感じなんですが。。。
そんな風になるかな…どうかな…うーん。。。
 
 
 
09 (Thr) Jun 2005 [no.26]
 
 
□ 幸福の不在 □



意外と…マメだよなぁ…。
器用だし………。

玄関先に腰掛けて、ぼんやりと…ククールは庭いじりをしている兄を眺めていた。
マルチェロは今、白い花を植え替えていて…。
小さく可憐な花を前に、真剣な顔で作業に勤しんでいる。

修道院にいた頃は…花なんか愛でるタイプにゃ見えなかったけど…。
まあ、そんだけヒマって事かな…?

ぽけーっとその様子を眺めながら、それがいい事なのか悪い事なのか…判断が付かなくて…。

今までずっと、制服姿の兄しか知らない。
今までずっと、仕事をしている兄の姿しか見ていない。

いつだって、ずっと偉い人だった兄…マルチェロ………。

だから、こんな風に普通の家で、普通に家のことをしている姿には、何だか落ち着かないものを感じてしまって………。

これが本当の姿なのだろうか、と…。
これでいいのだろうか、と……。

「……おい」
ふいに、下を向いていた顔が上げられ、ククールの方を向いた。
真っ直ぐな緑の視線…。
「…………」
「おい?」
「え?あ、何?」
穏やかな顔が僅かに顰められたのにハッとして…。
聞けば、じょうろを示される。
「水を…汲んできてくれないか?何だ、ぼーっとして…」
「悪い、水…ね、うん」
いいよ、とモゴモゴ言って、ククールは兄の側へ行くとじょうろを受け取った。
泥の付いた長い指先に視線が行く。

今まで、ペンか剣を持っている所しか見た事の無かった、その指…。

「どうした?具合でも悪いのか?」
訝しげな顔に、ううんと首を振って…。
ククールはバタバタと水を汲みに走った。

『どうした?具合でも悪いのか?』なんて…。
そんなの言われた事なかったから…………何つか、照れるっつの!

家の斜め前にある井戸まで走り、その側でしゃがみ込む。
ガラにもなく赤くなっているらしい、少し火照った顔を隠すように覆って…。
ククールはウウと小さく呻きを漏らした。

どうしていいのか分からないのだ。
どうしたいのかもイマイチよく分からない。

ラプソーンを倒し、みんなと別れてから、ククールはすぐにマルチェロを捜す旅に出た。
捜している間は、ただひたすら兄の無事だけを祈って、願って…。
見つけた後、どうするかなんて考えもせずに………。

だって、ずっと嫌われていたから。

まさか、一緒に暮らしてくれるなんて思わなかったのだ。
二人だけの家を持って…ずっとなんて………。

ここへ移り住んでから、平和に、和やかに、ケンカもなく毎日を過ごしてる。
再会してからのマルチェロは、もう酷いコトを言ったりはしなかった。
何か…何処か達観したような感じで、自分を受け入れてくれている。

それは嬉しい事で、修道院にいた頃の自分がずっと憧れていたような関係で…とても、幸せなはずなのに………。

なのに、どうしてこんなにも不安で落ち着かない……?

「おい、本当に平気か?」
井戸の前でしゃがみ込んだまま考え込んでいたククールは、背後から掛けられた声にハッとして顔を上げた。
いつの間に来たのだろうか…、マルチェロがスグ側にいて…。
「あ、ご、ごめんっ!」
慌てて水を汲もうとすれば、その手を押さえられる。
「家に入っていろ」
「……う…ん…」
大人しく頷いてじょうろを渡すと、ククールは玄関に向かった。
「…………」
背後から聞こえる水を汲む音。
チラリと見れば、マルチェロは井戸から水を汲み上げ、じょうろに移している所で……。
「……っ!」
その姿に、何故かぎゅうっと胸が詰まるような気がして…ククールは家の中に駆け込んだ。


−−−−−−−−−−−−−−−−−

お兄ちゃま、麦わら帽子とか被ってたら笑えるな…とか思いつつ。
麦わらで、軍手で、タオル首にかけて、小さなスコップ持ってて…なんて姿を想像してしまった…。
ククたんは結構似合うような……つか、二人でやってたら微笑ましい〜vvv(笑)

えーと。
今日は、昨日言ってたもう一つって方で……続いてますが…。
時期的には昨日のと同じくらいとか思って下さい。

偉い人が普段やらないような事をしているのは、何だか不思議というか…違和感を覚えるというか、まあ、そんな感じを書きたかったのでした。
(例えば、社長や常務なんてクラスの人が自分でコピー取ってたり、雑務をやってるのを見ると不思議な気分になりません?特に現在60歳オーバーの方々は、何をするのも部下に任せるってタイプが多いですが…何か普段はやらない事をやろうとして悪戦苦闘したりしてるの見ると、微笑ましくなってしまいますよね(笑)←手を貸さずに暫く見守る私…)

ククたんはお兄ちゃんの前に出ると、かなり大人しくなってしまうので(萎縮しちゃうつか…イロイロ考えちゃうんだろうね…繊細だからなぁ…)こっちのがらしいのかもなぁと思ったり…。
修道院イベントの最初の方、みんなが尋問されてるトコに呼ばれてきたトコだけですよね。
普通(?)な感じで会話してるの。
(ククたんの普通な感じはちょっと軽めなやり取りだよね)
アレ、頑張ってるんだなぁ…とか、最近見る度に思ってしまうのでした。
つか、最後のゴルドイベントは超頑張ってる!!!って感じで可愛いよな!!!(><//)


タイトルは銀色夏生さんの『こんなに長い幸福の不在』からです。
最初違うの付けてたんですが、書いてる内にこの詩を思い出して。。。
きっとスグに幸せが、ククたん用のが来るからね〜!と、迂闊にもホロリとしながら…(笑)

 
 
 
08 (Wed) Jun 2005 [no.25]
 
 
* 陽溜まりの歌 *



森の中のその家に、元聖堂騎士の兄弟が暮らし始めて、まだ僅かに6日ばかり…。

引っ越しだ何だのバタバタした日が慌ただしくも過ぎて、やっと落ち着いて…。
生活らしい生活が始まり、静かで長閑な昼下がりを過ごしている時のこと……。


「おい……」

目の前で頬杖を付いているククールに、マルチェロは呆れたようなウンザリしたような声を上げた。
ククールは先程からずっとニコニコニコニコと、実に、実に嬉しそうに自分を眺めている。
「ジロジロ見るな」
「えーっ、いいじゃん〜☆見るくらい、別にさ〜!」
「良くないから言っているのだが……?」
「今まで見れなかった分見てんのに…。いいじゃん、オレのことは気にしないで続き読みなよ」
「…………」
マルチェロは溜息を付くと、席を立った。
そのまま無言で部屋を移動して、二人掛けのソファへと足を伸ばして座り、読みかけの本を開く。
すると…、まだ一行も読まない内に、ククールもまた移動してきて…。
マルチェロの足下にちょこんと腰掛けた。
「……」
チラリと視線を向ければ、嬉しそうな笑みを浮かべる。
「……何故、ついてくる?」
「側にいたいからv」
「鬱陶しい」
ハートマーク付きで可愛らしく答えるのをバッサリ一言で斬り捨てて…マルチェロはシッシと手を振った。
「ひっで〜!いーじゃん、別に!大人しくしてるだろ!」
途端、薄水色の瞳を大きく見開き、抗議するククール。
それにフンと鼻を鳴らして、マルチェロは眼鏡を押し上げた。
「お前は存在自体が煩い」
そうして邪険に言えば、
「ひ、ひど…っ!お兄様〜、それはナイっすよ〜!」
ククールはあんまりだ〜!と大袈裟に嘆いてみせながら、マルチェロの上に倒れ込むようにして抱きついて…。
「なっ、貴様!くっつくな!」
「兄貴、あったかい〜vvv」
そのまま腹の上に頬をすり寄せ、ネコのようにゴロゴロと懐く。
そのあまりにも幸せそうな弟の様子に、マルチェロはどうするかと少し思案して…。

ちからづくで退かすことは簡単で…。
言葉で傷つけることも簡単で……。

特に後者は、今までに散々やってきたことだ。

こんな風な触れ合いは今までにはなかった。
こんな風に幸せそうに笑う顔など、見たことがなかった。
傷つけた記憶ばかりがある。
傷ついた顔ばかりを覚えている。

これから…変わっていくのだろうか……と、ふと思って……。

「…………好きにしろ」

僅かな沈黙の後…。
マルチェロは溜息を付くと本を開いた。


−−−−−−−−−−−−−−−−

今日は終わった後って感じのワンシーンを。。。
ククたんを甘やかしたくなったので、懐きモード全開でお兄ちゃんに絡ませてみました☆
ゲーム中、ちょこちょこと主人公に見せている可愛っぷりを、是非お兄ちゃんにも見せてあげたいものだ!とか思うのですが。
マルチェロさんが黙っていたら、結構やってくれるんじゃないかなぁ…。

明日はこれの続きか、これと同時に思いついたもう一つの和解後をちょろっと書こうかなと思っております。

うーん。
いちゃいちゃラブラブへの道のりは長い……。。。。

ところで、「ちからづく」という言葉は、ひらがなで書くのが本則なのだそうです。
でも、何か……モタモタした感じになるよね…なんて…とりあえずそのままにしたものの、引っかかりを感じているナナセでありました☆

 
 
 
06 (Mon) Jun 2005 [no.24]
 
 
・・・ 神様よりも大切な ・・・



視界の端を『赤いモノ』がウロウロと…ちょろちょろと…。
どういうワケだか、今日はやたらと目に付く…と、そう思って…。
宿舎へと通じるドアの少し手前で立ち止まり、マルチェロは暫くの間その場に佇む。
ソロソロと、背後から近付く者の気配…。

「何の用だ?」

振り返らぬままに声をかければ、ハッと息を呑む音がして…。
「…いや、あの…」
ククールがモゴモゴと答えを返した。
「何だ?また何かやらかしたか?自己申告したくなるようなマズイ事なのか?」
「ち、ちげーよ!オレはただ、その……な、何か…手伝うことないかなぁって…」
溜息をつきながら振り返れば、ククールは何やらモジモジしてそう言う。
「…………」
「仕事…いっぱいあんだろ?何か雑用とかでもさ…オレに出来ることとか…あったら……って…」

「お前、本当に何をやった?」

明らかにおかしいその態度とセリフ…。
マルチェロは鋭い視線を向け、詰問した。
普段から何かと問題を起こしてばかりのククールは、怒られることにも慣れている。
いつも、怒られている時ですら、大して反省した素振りを見せはしないのに、そんな彼が、自分に対してゴキゲン取りのようなマネをするなど……これは余程のことをしでかしたに違いない…そう思って……。
「だっ、だから、そーじゃねーってば!」
完全に疑っている兄の言葉に、ククールは傷ついたような顔で叫んだ。
そして、

「もういいっ!兄貴のバカ!」

子供のようにイーッと口を横に広げると、そのまま走り去ってしまう。
「…何なのだ、一体…」
貴様にバカなどと言われる筋合いはないぞと、少し憤慨を覚えつつ…。
マルチェロは溜息をつくと再び歩き出した。
団長室には仕事が山積みなのだ。
下らないことに気を取られている場合ではない…そう思って……。




「この書状を至急、アスタンカの大臣にお届けしてくれ。それと、こちらは院長に…。これは例年通りでいい」
「は!」
次々と仕事を片付け、部下達に指示を出して…。
マルチェロは溜息をつくと、遅い昼食を取るために机の上を片付けた。
お茶の用意を頼むかと思っていると、
「お茶をお持ちしました〜」
何故かタイミング良く運ばれてくるティーセット…。

「………何だお前は……暇を持て余しているのか?」

運んできた人物を見て、思わずそう訊ねてしまう。
「何だよ!いいタイミングだったろ?!ったくも〜、ホンット可愛げねーんだからさ〜…」
ククールはあんまりな兄の言葉に唇を尖らし、ぶつくさと文句を言いながらも気を付けてティーセットを置いた。
「何を企んでいるのだ?毒でも入れてみたか…?」
「っ!」
「おや…図星かな?随分と怖い顔をして…」
クスクスと笑いながら、意地悪な言葉を続けるマルチェロ。
「…〜っ!」
だが、何か言い返すかと思ったククールは、ぐっと言葉を呑み込んで…。
トレイをズイッと押しやる。
「…何だ?」
トレイの上には、お茶のセット以外に何かが乗っていた。
上にかけられたナプキンを、ククールは無言で取り去る。
「…………?」
その下から出てきたモノ……それは、小さなケーキで……。

「……自分の誕生日くらい…覚えてろよな!」

ムッとしたような顔のままで言われたその言葉に、ああ…と思い出した。
確かに…。
今日はマルチェロの誕生日だ。
「……フン…下らんな…」
「!」
ケーキの皿を奥へとやれば、ククールは明らかにショックを受けた顔をして…。
僅かに項垂れるその姿に、どうしても笑ってしまいそうになる。
子供の頃からずっと…、何一つ変わらないこの弟の反応…。

だからこそ、コイツをからかうのはやめられないのだ、と…そう思ってしまう。

「…私は…昼食がまだなのだがね……」

静かにそう言えば、ハッとしたように顔を上げ、ワタワタと部屋の隅に置かれた昼食のトレイを取ってくるククール。
ケーキの皿を下げ、それなりに見られる手つきでお茶を煎れて、そっと差し出して…。
マルチェロが昼食を食べる間、ただ静かに側に控える。
追い打ちをかける気なら、一言『下がれ』と命じれば良かった。
だが、そうはしないで…。
注がれる視線に答えを返すこともせず…ただ、目の前の食事を片付けるように食べる。
「…お茶のお代わり……いる?」
怖ず怖ずとかけられた声に、チラリと視線を投げて…。
トレイを押しやりながら、こちらを窺う水色の瞳を見つめた。
訴えるような瞳………。

「…デザートを貰おうか…」

そう言ってやれば、パアッとその表情を明るくして…。
単純な男だ、と内心可笑しくなる。
「…っ!」
うんうんと勢いよく頷き、ククールは先ず新しく煎れた紅茶を出すと、スグにケーキのトレイを持ってきた。
「……何だこれは…」

ケーキの上には、先程はなかったはずのロウソクが1本………。

それの言わんとするところを悟り、思わずジト目で訊ねれば…、
「えー、だってほら、誕生日ってゆったらやっぱさー!」
ククールはニコニコ笑って、ロウソクに火を付けた。
「いらん!」
「そんなこと言わずに!ほら、フーって☆」
「お前、私が何歳になったと思っとるのだ?!」
こんな子供のようなことが出来るか!と。
「まあまあ♪たまには童心に戻って♪ささっ、団長殿!」
「…この…っ、調子に乗りおって…!」
軽い調子で言うククールに拳を握り締める。

この私にロウソクの火を吹き消せだと?!
バカも休み休み言え!

「あ、歌も歌って欲しい?じゃあ、ハッピバースデートゥーユ〜♪ハッピバースデー…」
「やめんか!このバカモノが!」
消せばいいのだろう、消せば!と、ケーキに向かえば、
「はい、ちゃんと願い事して☆」
そんな注文を付けられて…。
「貴様!調子に乗るのもいい加減に…っ!」
「いいじゃん…。誕生日くらい…祝わせてよ…」
思わずバンッと机を叩き、立ち上がると、ククールは背の高いマルチェロを見上げて、訴えるようにそう言った。

…ハッキリ言おう。

この弟は可愛い。
ああ、確かに、可愛い。

そんな事を改めて実感してしまった自分に腹を立てつつ…。
「……オレはお前の誕生日を祝いたいと思ったこと等、一度たりとてナイがな」
フンと横を向いてそう言えば、ククールは途端に複雑な顔をして…。
「別にいいよ」
小さく呟いた。
「オレも祝って欲しいとかじゃないんだ……ただ、オレはアンタが生まれた日は特別だって思うんだから…」
きゅ…と唇を噛んで、僅かに俯く。

ク…ッ!おのれ!
何処まで可愛ければ気が済むのだ!

…等と、相当に末期な事を思いながら…、マルチェロはロウソクを吹き消した。
「これで…気が済んだか?」
「兄貴…!」
嬉しげに輝く顔から視線を外し、忌々しげにそう言って、ドカッとイスに座る。
それから無造作にロウソクを取り除き、フォークを手にするとケーキを口に運んで……。

「兄貴…誕生日、おめでと!」

へへへ、と笑ってそう言うククールに、マルチェロはフンと鼻を鳴らした。
「……甘いな…」
不機嫌を装って呟くが、ククールは嬉しげに、減ってゆく固まりを見つめている。
甘いケーキと、嬉しげな弟…。
部屋には穏やかな静寂が満ちて……。
くすぐったくなるような和やかな時間…。

まあ…甘いのもたまには悪くないか…と。

マルチェロは胸の内で呟いた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

神様よりも大切な今日はあなたの誕生日。
ってことで、マルチェロさんのお誕生日は12月な気がします(何の脈絡もないな、おい……)
いや、私が勝手に思っただけですが…(笑)
ククたんは春っぽいかな、とか。

てか、きっと、マルチェロさんは親衛隊の皆さんが盛大にお祝いしてくれたりするんじゃないかなぁ…とか……どうだろう…。
マルチェロ様〜!万歳〜!の皆さんがさ、せっせと準備してるんだ。
ククたんは、みんながお祝いする前におめでとうを言いたかったのよ、きっと!
ぬけがけなのよ!!!!とか…★
つか、みんなに愛されてる団長…いいよなぁ……vvv
(修道士達には嫌われてそうだけどね……(爆))

ちなみに…何でイキナリ誕生日SSかとゆーと、土曜日が遊戯さんのお誕生日だったからなのだったり。。。
誕生日の話考えるか〜って思ってたら、何故かマルチェロさんのお誕生日ってネタが浮かんでしまったのでした(爆)
(で、結局、遊戯の誕生日SSは思いつかなかったとゆー……ダメ過ぎな事に……)

つか、夏コミにドラクエも新刊出しちゃおう☆とか思ってるんですが、その中に入れてもいい感じの話だったかも知れないなーなんて、今思いました(爆)
だってね、予定してる本のタイトル…『ふたりはなかよし』とゆーの……。
もう、そこからして「あり得ない!」って感じなんですが(爆)
ホントにマルククかーーーっっ?!みたいな(笑)
いや、マルククですよ、勿論!
仲良しっぽいの見てみたいんだもん!とゆーことで、自分のために妄想…(^-^;)
同人誌ってそーゆーモンですよね。うむうむ。
まあ、そんなワケで…、修道院時代のちょっと仲良さげな二人の話をいくつか…妄想しようと思っております。はい。
今、絵が描きたい気分なので、マンガも入るかもですが、最近めっきり手が遅くなっているので、早くやらないと……(汗)

ちなみに、1日目は身内のスペースに委託して貰う予定なのですが、ガンパレードマーチとゆーゲームスペースで、西ホールだったりします★
東と西の移動の大変さとか考えると、出してどうする…とゆー気もしなくもナイですが…(爆)
今、描きたいんだもん〜!!今!今!
2日目は遊戯王。
また、詳細が決まったら、インフォメとかにでも載せようと思いますが…。。。。。。
(そう、まだ予定も予定の話ですからね…(爆)ちゃんと出るといいな〜☆)
 
 
 
02 (Thr) Jun 2005 [no.23]
 
 
:: カタコイ side M ・4 ::



蕾は固く閉ざされていた。
手を濡らしているククールの体液を、マルチェロはそこに塗り込むようにして……。
ゆっくりと指を埋め込む。
「な…っ、あ、あに…っ」
ククールが慌てて身を起こそうとするが、それを押さえ込んで…。
「や…ぅ、ぁ…う…っ」
第二間接の辺りまで埋め込み、中でその指を動かせば、ククールは苦しげに呻いた。
「フン…、全く……どこもかしこも…綺麗なものだな……」
今やすっかり前をはだけられ、露わになったその肌に、そのしなやかな肢体に、思わず感嘆の声が漏れる。
根気よく指の抜き差しを繰り返して内部を慣らしていると、ククールの吐息には次第に熱が戻り始めた。
「は…ぅ…っ」
頬に赤みが戻り、小刻みに身体が震え出す。
マルチェロは満足げな笑みを浮かべ、次第に指の数を増やしていった。
「…ん…ん…っ」
濡れた音と、熱い吐息と…そして、時折洩れる悩ましげな声…。
それらは、静かな室内に響いて…。
次第に変わってゆくククールの表情に魅入られている自分に気付く。

自分は、もっと見たいのだ…ククールの乱れる様を…。

マルチェロは指を引き抜くと、己のモノを押しあてた。
散々慣らされた入り口が、マルチェロの熱にわななく。
一瞬、怯えたような顔をして…。
「ぁ…、や…だ…」
ククールは真上にいるマルチェロを見上げ、フルフルと頭を振った。
「いやだ…兄貴…!やめ…っ、ダメだよ、こんな…っ」
懇願するその言葉…。

いやだ?
やめろ?
ダメだ?
何を今更…。

互いにこの状態で……やめられるはずがないだろう。

フンと心の中で笑いながら…僅かに力を込めれば、溶けた入り口は彼を拒むことなく受け入れた。
「あにき…っ!」
ゆっくりと身を沈めてゆく。
熱い内部……指で散々掻き回されたそこは奥へ奥へとマルチェロを誘うように……。
けれど、それも途中までだった。
「…ぁ…っ、ぅ…う…っ」
半分ほども入った頃から、未だ受け入れることを知らぬその器官には無理が生じて…。
ククールが苦悶の表情を浮かべ、呻きを洩らす。
それでも、マルチェロが行為をやめることはなかった。

脂汗の滲む額。
涙を流す瞳。
痛みと苦しさに歪む顔。
浅く速い呼吸。
そして、漏れる喘ぎ……。

その全てに、奇妙な愛おしさを感じた。
苦しみながら、それでも自分を受け入れているこの弟に……。

「は…ぁ…、は…っ」
やがて、全てを収めたマルチェロは、今にも死にそうな顔をしているククールを見つめ、楽しげな笑みを浮かべた。
身を屈め顔を覗き込めば、更に内部へと進む自身。
ククールがパクパクと口を開き、喘ぎを大きくする。
「動くぞ」
耳元でそう囁けば、必死の形相で頭を振った。
「や…っ、む、り…っ!」
恐怖に上擦った声…。
それを無視し、マルチェロは先端近くまで己を引き抜いた。
「ぁ…あっ、は…あぁ…あっ」
そして、再び打ち込む。
抉るように突き入れれば、狭い内部に擦られて、ゾクゾクとした快感が背を走り抜けて…。
思っていた以上に強いそれに、思わず歯を食いしばった。
「くっ…」
「やっ、ひ、あっ、あ…ぁ…っ」
引き抜き、突き入れる…その動作を繰り返す内に…、次第に行為に慣れて来たのだろう。
段々と、中の方からも溶けるような熱を感じて…。
目が眩みそうな歓喜が、繋がるそこから沸き起こる。
「あ…っ、あに…き…っ、あ…に…っ」
喘ぎながらククールは夢中で自分を呼ぶ。
懸命にしがみついて……。
何度も…何度も…。
その声に、頭の中までジンと痺れるようで……。
気が狂いそうだと思う。
「呼ぶな…」
自分を見上げる青い瞳を睨みつけ、マルチェロは短くそう告げた。
「貴様など…誰が、弟だなどと…っ」
「で…も、あに…っ、あっ、あ…ぁあ…っ」
いつものやりとりは、短く、切れ切れになりながら…。
ククールは、もうさほど痛みを感じてはいないらしかった。
吐く息の熱さと内部の動きに、限界の近さを感じて…。
マルチェロはただひたすら…何かを追うように突き上げた。
大きく軋むベッドの音と互いの息づかい、そして、ぐちゅぐちゅという肉の擦れあう淫らな音が響いて……。
「あ、あっ、や…は…ああぁああ…っ…っ!」
絶頂を告げるククールの声は、最後の方が掠れていた。
包み込む内部が震え、マルチェロを締め付ける。
それに搾り取られるままに…マルチェロもまた己の熱を吐き出して……。


「は…っ、ぁ…は…」

荒い息をつきながら…。
互いの早すぎる鼓動と肌の発する熱を感じ、暫くの間、ただじっと……。
ドクドクと余韻に脈打つ身体。
マルチェロは、己の身を包む快感の強さに驚きを隠しきれなかった。
ああ、何故…と思う。

何故、コイツなのだろう…。
そして…何故……。

ククールは意識を手放してしまったらしい。
陶然とした瞳が僅かの間宙を彷徨い、そして、フ…と閉じられた。
上に重なっていたマルチェロは僅かに身をずらして…。

「……何故…」

荒い息に混じって…小さな呟きが漏れる。

何故、あの時に……お前は私を呼んだ?
あの時のアレがなければ…私は…………私は……。

本当は……危惧していたのだ。

もしかしたら、ククールは受け入れてしまうのではないかと…。
襲われて…それを受け入れて…応えてしまうのではないかと…。

だが、お前は私を呼んだ…。

院長でも…神でも……他の誰でもなく……この私に助けを求めた。

「……お前は…悪魔だ……私を…何処までも苦しめる……」

呻くように呟いて…。
眠るその顔を見つめる。
薄青の瞳は長い睫毛に隠されて…上気した頬は涙と汗に濡れている。
額に張り付いた前髪をすくい取り、除けて…ジッと顔を見つめて………マルチェロは、こみ上げる気持ちのままに口付けた。

愛おしくなどない……。
そんなはずはない…。
そんなわけはない。

心の中、念じるように何度も何度も繰り返しながら………。
ぎゅっと…一度だけ抱きしめて…。

そして、全ての思いを捨てるようにククールから顔を背けると、マルチェロは身を起こした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ラブラブなのが見たい……いちゃラブが見たいーー!!!と、とっても思うので、明日辺りからそんなの考えようかな。。。
思えば、カタコイはマルククでエロに挑戦!ってのを目的に書き出したんですよね。
なのでホントに、ここしかないとゆー……わーお☆
 
 
 
01 (Wed) Jun 2005 [no.22]
 
 
:: カタコイ side M ・3 ::

何をしようというのだ…私は…。

部屋に連れてきたククールを前に、マルチェロはほんの少しの混乱を覚えていた。
自分の意図が分からない。
いや、分かってはいるが、分かりたくないのかも知れない。
ただ、もう我慢の限界だった。
そう、そういうことなのだろう。
さっきまでは、いつものように部屋で報告書を読んでいたはずだった。
だが、気が付くと、秘密の抜け穴の前でククールを待っていたのだ。
そして、帰ってきたククールを連れて部屋に戻ってきたわけである。

私は寝不足のせいでどうかしているのだ。

そう思うとムカムカする。
夜毎、ククールが夢に現れ、しかも襲われ続けているせいで自分は寝てもサッパリ寝た気がしないというのに、当の本人はそんなこととは露知らず(当たり前だ)日々遊び呆けているのだ。
こんな理不尽なことがあって良いのだろうか?

コイツは…何処まで私を苦しめるのだ…!
いつもいつもいつも…。
そうだ…何から何まで全て…コイツが悪い…。
大人しく私に利用されていればいいものを!
コイツが…私に助けを求めたりするから悪いのだ…!

チラリと見やれば、ククールは戸惑いと警戒を乗せた顔で自分を見ている。
恐らくはマルチェロの真意を測りかねているのだろう。
マルチェロが自分自身迷っていることなど知りもしないで…。
さてどうしたものか…と思いを巡らせていると…、ふと、襟元に薄い鬱血の跡があるのが目に入った。
それに、何やらスッと胸のつかえが取れたような気がする。

ああ、何だ…。
そうすれば良かったのか。
私は何をもたついていたのだ?
どうせいずれはアイツに奪われるこの身体…。

ならば、いっそ先に奪ってしまえばいい…。

何だ…と、そう思うと後は早かった。
状況をまったく理解していないククールを抱え上げ、ベッドに運び、押さえこんで…。
必死の抵抗にあうかと思っていたが、意外にもククールは大人しかった。
困惑と、少しの恐怖を乗せた瞳でマルチェロを見上げ、状況を理解出来ていないかのようにも見える。
自分よりも随分と線の細いククール。
美しい銀糸のような、細く長い髪が、白いシーツの上に広がっている。
整った…整いすぎた顔……。
この顔に、今まで何人の者が惑わされてきたのだろうか……。
ふと、そんなことを思いながら…。
それでも、口付けなど落とす気にはならなかった。

愛しいわけではない。
私は………忌々しいのだ。
夜毎、夢に現れるコイツが…。
いつも、私の邪魔ばかりをするコイツが…。

そう。愛しいわけではない。

繰り返し、胸の内で念じるように…。
僅かでも動けば、さほど大きくはない備え付けのベッドが、二人分の体重に軋みを上げる。
それは、真夜中を過ぎた室内にやたらと大きく響き、緊張感と興奮とを高めて……。
ドクドクと煩いほどの鼓動…。
手の下のククールもまた、それは同じで…。
形を確かめるように服の上からス…と撫でれば、ビクリと大きく身を竦めた。
「っ!」
途端、朱を散らしたように紅く染まる頬……。
ククールがグルグルと何かを考えているのが分かる。
恐らくは、本気なのか?!と自分の正気を疑っているのだろう。
クス…と、思わず笑みが洩れる。

ああ、勿論正気ではない。
正気のハズがない。
でなければ、お前を相手にこんな事をするハズがあるまい?

マルチェロは手早く、ククールの服の前を開けた。
途端、フワリと…修道院で使われている石鹸の香りとは明らかに違う、甘い花のような香りが昇って…。
今スグにでも洗い流してやりたい衝動に駆られながら、きゅっとソコを握る。
そして、強弱を付けて……緩急をつけて……。
刺激を与えてやれば、スグに反応を見せるその身体。
「…や…、いや…だ…、兄貴…っ!」
口だけの拒絶。
スグに濡れ始めたソコはくちゅくちゅと音すら立て、快感を訴えている。

ああ…本当に我慢というモノを知らんヤツだな……。

苦笑が漏れた。
紅く染まるククールの頬。
呼吸も乱れ、身体は時折ビクビクと震えて…。
ぎゅうっと眉根を寄せて、瞑られている瞳の端には涙が珠となっている。
「…あっ!」
先端を強く擦ってやれば、ククールは大きく身を弾ませた。
そして、バッと口を押さえる。
「…おや…イヤだといいながら……今の声は何だ?ククール」
マルチェロは耳元で囁いた。
ククールの頬が羞恥の為に更に赤みを増す。
「身体というのは不思議なものだな…刺激さえ与えれば…ほら、こんな風に……」
「や…だ…っ、ん…っ、ぅ…う…っ!」
ゆっくりと扱いていた手の動きを早め、先端をぐりぐりと押すようにして…。
マルチェロは、ククールの反応ひとつひとつを楽しんでいた。
「は…っ、ぁ、あ…っ」
長い睫毛の先が震え、涙が溢れる。
撓らせた背筋を震わせ、ククールは限界の近さを訴えて首を振った。
「や、だ…ヤメ…っ、あに、き…っ」
「…本当にイヤなのか?とてもそうは思えないがね…」
懇願するような言葉に、フゥン…と笑って…。
「だが、まあ…そうだな…そんなにイヤならやめてやるか…」
囁きながら、マルチェロは手を止めた。
途端、
「ぁ…っ!」
ククールが切なげな声を上げる。
薄水色の瞳が信じられないというように見開かれた後、今度は頼りなげな表情になって…。
その情けない表情を気に入りながら、それでもそのまま離れようとしてみれば…、
「…あにき…っ」
ククールは必死の様子でぎゅうっとマルチェロの制服を掴んだ。
震える指先が、込められた力によって白くなっている。

「や…め、ない…で…っ!」

切れ切れの声で訴えられ、マルチェロはニヤリと笑った。
ククールの表情に、ククールの声に、自らもまた高ぶっていることを感じる。
それらは、夢の中では一度として見たことも聞いたこともないもので…。
「素直だな…この淫乱め…」
「ち、が…ぅ…っ」
無性に愉しく、無性に腹立たしかった。

「ヤツにもそうしてせがんだのか?」

聞けば、ククールはハッとしたように自分を見た。
ショックを乗せた瞳…。
「そ…なこと…っ、しない…っ!」
必死で頭を振りながら、ククールはそう言う。
「ヤツの手に感じたか?どうだった?」
訊ねながらも手は止めないで…。
悪戯にくびれをなぞる。
「そんなワケ、ない、だろっ!」
「どうだかな…案外、良かったんじゃないのか?」
「違うっ!ちが…っ」
懸命に否定するククール。
勿論、そんなことをしてはいないと、マルチェロは知っている。
あの日、あの部屋で起きたことの一部始終を聞いていた。
そう、自分だけは全てを知っているのだ。
そして、それこそ、自分が望んでいたこと…。

ククールが『あの人』に襲われることを、マルチェロはずっと待っていたのだから…。

「…まったく、ヤツもバカなことをしたモノだ……お前などに惑わされたせいで、ここを出ていくことになったのだからな」
ククク…と笑いながら…。
「…お前は…悪魔だ…ククール……」
耳元に囁く。
「ち、が…っ、ぁ、あっ!」
涙がまた溢れた。
それは過ぎる快感によるものなのか…、それとも、自分の言葉に傷ついているのか……。
やがて、ククールは何かに気付いたようにマルチェロを見つめた。
「まさ…か…っ」
呟いた短い言葉。
瞳に浮かぶ恐怖と絶望の暗い色…。
だが、それも一瞬のことだった。
マルチェロが手の動きを早めると、ククールは背を撓らせて…。
そして…、
「あ、あぁっ、あ、あ…やぁ、ああああっ!」
一際高い声を上げ、大きく身体を跳ねさせて…。
一気に熱を吐き出した。
マルチェロの手をドロリとした熱いモノが濡らす。


知らず、息が上がっていた。
ククールを一方的に追い立てていただけのハズだが、自分もかなり興奮しているらしい。


「…お前は悪魔だ……この私をも…惑わせる…」

マルチェロは呟いた。

そう…。
ククール、お前は悪魔だ…。
あれ以来夜毎私の夢に現れて………ついにはこんな事になってしまった…。

私は惑わされているのだ…。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

マルチェロさん、ククたんを襲うの巻。
どうにも、書いてあるとゆー油断がいけませんな。。。
ぼやぼやして、ついアップが遅くなってしまいます(爆)

 
 
 
31 (Tue) May 2005 [no.21]
 
 
:: カタコイ side M ・2 ::



どうしてくれようか…。

ジリジリと怒りが沸き起こる。
否、その感情は厳密には怒りではなかった。
だが、怒りもまた混ざり、同じように激しく、同じように深く、同じように熱いモノではあった。

本当にどうしてくれよう…。
あのバカモノは…。

目の前には数枚の報告書が広げて置かれている。
それは、日付こそ違うが、いずれも同じ人物のものであり、同じ町の名が登場していた。

人物の名は、ククール。

町の名は、ドニ。

ククールの名の横には15と年齢が書かれているが、その素行の内容は十代半ばの少年にしてはいささか度を超えたものであり、それはマルチェロに頭痛を催させるに十分たる内容だった。

門限を守らない程度ならば、まだ見過ごしもしたが…。

フウ、と溜息が漏れる。
ドニの町には昔からククールをよく知る者達がいる。
修道院での生活の息抜きに、ククールがよくあの町へ遊びに出ていることは知っていた。
だが、その遊びに最近では酒が絡むようになり、イカサマ賭博で旅人から金を巻き上げるわ、それが元でケンカ騒ぎまでおこすわ、更には女遊びまで始めて外泊はしてくるわで……。

アレには自覚が足りん…。
由緒正しき我がマイエラの聖堂騎士団員たる自覚が…!
しかも、アレが騎士になったのはつい数ヶ月前ではないか…!
それを…女遊びの上、外泊だと?!

引っかかってるのはソコか!とツッコミを入れたくなるような事を胸の内で呟き、マルチェロは報告書の一枚をぐしゃりと握りつぶす。
勿論、それは外泊と書かれた報告書で…。
バニーの名から、その外見、外泊に至るまでの様子などが詳細に記されていた。
それは、自分が命じたことだった。
ククールの行動、会っていた人物、会話の様子(内容が分かるときは内容も)、時間など。
今までずっと、ククールに関することはほとんど何でも情報を収集させてきたのだ。
それは、ライバルであった『あの人』がククールに執心だから、という理由で始められた事。
本来ならば、もはや必要のないモノである。
だが、マルチェロは未だその監視の任を解いてはいない。
トントンと指先で苛立たしげに机を叩いて……それから拳を作ると、ドンとひとつ大きく叩いた。

下らん…。
この私が何故、アレの行動をいちいち気にしなくてはならんのだ…。
あんな出来損ないが何をしようと、誰と寝ようと、私には何の関係もないこと……。

まあ、いずれ罰は与えねばならんだろうがな……。

「フン…」
小さく鼻を鳴らし、マルチェロは報告書をまとめて捨てると、そのまま席を立った。




その晩、マルチェロは夢を見た。

金髪のバニーがククールにしなだれかかっている。
紅い唇が笑みの形を作り、細い指がククールの制服をゆっくりと脱がせていた。
一つずつ、金のボタンが外されてゆく。
赤い制服の前がゆっくりと開かれ、内に隠されていた肌が露わになってゆく。
未だ少年らしさを残す細い身体……。
その肌は瑞々しく滑らかそうで……。
思わず、触れたい…と、欲望が目を覚ます。
だが、それは叶わず…代わりに、紅いマニキュアをした細い指がそっと腹の辺りを撫でた。

貴様!この私の目の前で堂々と規律違反とは…!
いい度胸だ!
タダですむとは思っていまいな?!

思わず、そう叫ぼうとした時だった。

「ヤダ、イヤだ!ヤメロ!あに…兄貴…っ!」

ククールが叫んだ。
「?!」
いつの間にやら……。
金髪のバニーの姿はかき消え、違う人物がククールを組み敷いている。
それは『あの人』だった。
マルチェロの策にはまり、ついひと月ほど前に修道院を追い出された………。
驚きに固まるマルチェロの目の前で…『あの人』は愛おしげにククールの身体を撫でる。
唇が首筋に落とされ、紅く跡を残して…。

ワナ…と、身体が震えた。

舌が首筋から鎖骨へと降り、指先が紅く色づく胸の飾りを弄ぶ。
ゆっくりと撫でて…時折摘み、爪で弾くように…。
ククールが必死で首を振り、抵抗する。
その瞳からは涙が溢れ、それは首を振る度に左右に散って…。

「ヤダ、イヤだ!ヤメロ!あに…兄貴…っ!」

再び、声が上がった。
自分を呼ぶ声が…。
自分に助けを求める声が……。


「…っ!」
ガバッと身を起こせば…そこは当然のように自室のベッドの上で……。
勿論、ククールも、『あの人』も、バニーもいはしない。

何故、こんな夢を……?
今更何だというのだ…。

「………ばかばかしい…」

ムスッとしたまま呟いて…マルチェロは再びベッドに潜り込んだ。




だが、翌日も、その翌日も、更にその翌々日も…。
マルチェロは同じ夢を見た。
いや、正確に言えば、まるっきり同じではない。

何故なら、夢は日々少しずつ…進んでいるのだ。

『あの人』の指先は、昨夜にはもう下の方へと伸びて…。
このまま夢が続くのであれば、10日もしない内にククールは完全に犯されるであろう。
それに、ムカムカする…と思いながら…。
更に、夢の中のククールが、与えられる刺激に段々と抵抗できなくなっている事にもイライラとしていて……。

あんな細っこい腕だからいかんのだ!
だからもっと格闘の訓練を積めと言っているのに…!
いや。
イヤだイヤだと言ってるが、実は結構イイんじゃないか?!
大体、昔からアレはアイツに懐いていた…。
そうだ…いつもアイツの側では笑って……。

ムカムカムカムカ……。
日を追う毎に悪くなっていくマルチェロの機嫌。
寝不足のため顔色も悪くなり、そして、日々見せつけられるククールのしなやかな肢体には、確かに欲情を感じて………まあ、要はいい加減溜まっているわけである。
「何故この私が…っ!おのれ…ククールめ…!」
ギリリと唇を噛み締めて…。


そして…。
また今日も、彼の前にはククールの素行調査の報告が届く。


−−−−−−−−−−−−−−

書いてあるものをアップするだけなのに、うかうかしてたら時間を過ぎてました(爆)
ククールサイドより、マルチェロサイドの方が何かエッチっぽいですね。

今日は夜にトップ絵の更新をしようと思います〜★
(って、もう夜じゃん!なのですが……(爆))
 
 
 
30 (Mon) May 2005 [no.20]
 
 
:: カタコイ side M ::



それを狙っていたはずだった。

そう…。
ククールがヤツに襲われる…その時を待っていた。
もう長いことずっと…。


マルチェロが『二人の姿』を初めて目にしたのはいつだったか…。
それはもう随分と昔のことだったような気がする。
ククールがここへ来た、次の年位だっただろうか…。
季節は今と同じくらいだったか……淡い春の日差しに包まれた中庭で…。
『その人』はベンチに座ってククールの勉強を見ているところだった。
楽しげに笑うククールの声で、二人の姿を発見したマルチェロは、何やら複雑な気分になり…、同時に奇妙な焦りを感じた。
院長と一緒の時以外で、ククールが屈託なく笑う姿などほとんど見かけはしない。
ましてや、自分の前では笑顔など見るようなことはなくて…。

ククールが自分の前に出ると、緊張で身を強張らせるようになったのは一体いつからだったろう…?

だが、『その人』と一緒の時、ククールは心からくつろいでいるように見えた。
そう……まるで、兄弟のような姿…。
理想的な兄弟の姿がそこにあった。
「………」
その時…ユラリ、と。
心の中で揺らいだ思いは何であったのか…。
マルチェロは顔を顰め、その場を立ち去った。

チリ…と走った小さな痛みは、いつまでもしこりのように胸に残っていた。



チリリ、チリリと…。
焦げるような痛みが増して行く。

睦まじく、笑いあう二人の姿を見かける度に…。

『その人』がククールに勉強や剣術を教えている姿は…、もしかすれば自分が選んでいたかも知れぬ姿…。
もう一つの道……。
ククールの目には、ハッキリと『その人』への尊敬と思慕の念が見て取れた。
ククールにとって『その人』は明らかに特別な存在だった。
自分が特別だということも、勿論分かっている。
だが、半分とはいえ血の繋がった自分と、全くの他人である『その人』との『特別』は異なるモノで…。
チリリ……と、また痛みが増す。
それが忌々しくて……。
何故痛むのかと、その理由を思う度、それを打ち消そうと憎しみが、怒りが増した。


だが、10年近くの年月の間に……。

ククールに利用価値が出てきた。
聖堂騎士団の団長が病で倒れ、次期団長の候補にマルチェロと『その人』の二人の名が挙がった、その時に……。
その頃、ククールは目に余る生活態度と、規律違反の多さが目立ち始め、また、もともと整っていた容姿には、一層の磨きが掛かって…。
そんなククールに良からぬ思いを抱いている者が騎士団内に多くいるのを、マルチェロはよく分かっていた。
そして、『その人』もまた、その内の一人だと…。

利用しない手はないと、そう思ったのは当然だった。

「……フン、まったく…どんな人間にも使い道はあるモノだな」

自分に付き従っている団員達にククールの見張りを命じて……笑いながら、その胸の片隅では痛みを感じて…。
何故なのか…。
その時、怒りを覚えたのはククールに対してではなかった。



そして……待っていた『その時』は訪れた。


「やだ…何で…っ」

ドアの向こうから、微かに…。
ククールの戸惑いとも怯えとも付かぬ声が聞こえて…。
「愛しているんだ……ずっと前から…」
穏やかな囁きが、もっと微かに聞こえてきた。
団員達には自分の後ろで待機を命じている。
室内の様子を窺い知ることが出来るのは、ドアのすぐ前にいるマルチェロのみのはずである。

ベッドの軋み、衣擦れの音、ククールの驚きと焦りと拒絶の声……。

それらを聞きながら…ギリと唇を噛み締めて……。
ムカムカと、胃から這い昇るような熱い怒りを感じる。
このドアの向こうで、今まさにククールが犯されようとしている…それは、自分が待ち望んでいた瞬間のハズだった。
後は、踏み込んで現場を押さえればいいのだ。
だが、

「ヤダ、イヤだ!ヤメロ!あに…兄貴…っ!」

今この時に…この状況で……ククールが呼んだのは自分……。
マルチェロは思わず息を呑む。
それは…心臓が止まりそうな程の衝撃だった。

「ククール、助けというのは、助けてくれそうな人物に求めるものだよ」

笑みを含んだ声。
マルチェロが来るわけはないと、タカをくくって……。

ああ、そうだ…。
私が来るわけがない……本来ならば。
ククールを助けるなどあり得ない。
あり得るはずがない。

「ああ…可愛いね、ククール…」

声を聞く度にイライラする。
胃が、胸が焼け付く。
目眩がしそうな程の怒りにギュッと拳を握り締めて…。
「っ!」
ククールが息を呑む鋭い音がした。

何をされている?
何をしている?

マルチェロは静かにドアを開け、中に入った。
二人がそれに気付く様子はない。
ククールが懸命に藻掻くのを押さえ込み、胸の辺りをまさぐる様子を見て取って……。
今スグにでも斬り捨てたい気持ちを、何とか抑える。

落ち着け…!
ここで殺してしまっては意味がない。

「…これはこれは……結構な趣味をお持ちのようで…」

唇の端を上げ、笑みの形を作ってそう声をかけてやれば、二人は弾かれたようにマルチェロを見上げた。
ククールの顔が涙で濡れている。
それに胸がざわついて……。

いや、全てはこの時のためだった……。
この後の……そう、この後のための踏み石のような、小さな準備の一つ。

「…ぁ…、あ…兄貴っ!」
「だが、あまり感心は出来ませんな…」
驚くククールの顔を見ぬように、マルチェロは『その人』を睨み付けながら言った。
唇の端だけを上げ、笑みを浮かべてみせる。

そう。
これは勝負だ……。
そして、勝者は私だ。

「失敬じゃないかね、マルチェロ…。これは私とククールのプライベートな問題だ…!部外者は…」
「プライベートな問題?さて…ククールとアナタの行為が合意の上でのもののようには見えないが……」
マルチェロはサッと背後に視線を投げた。
開けたままのドアから、待機していた聖堂騎士達が駆け込んでくる。

「…申し開きは神の御前で行っていただこうか……」

「マルチェロ!貴様っ!」
吠える相手に薄く笑って…。
「連れて行け」
マルチェロは片手を上げて合図した。
バタバタと騎士達が出ていく。
遠離る足音…。
だが、勝利の余韻に浸る気にはなれなかった。

「あ…兄貴…!」

ククールが自分を呼ぶ。
驚きと嬉しさの浮かぶ瞳……。
だが、それは涙に濡れて…。
すっかり前をはだけられ、あられもない姿になっているククール……。
あのまま放っておけば…、もしくは、自分がこの状況を知らずにいれば、このままここで犯されていたのだと…その事実が、今この瞬間に突きつけられたようで…。
その首筋に見付けてしまった紅い鬱血の跡。
それが所有印のようにすら見えた。
ククールはもう他の誰かのモノだと…………。

ドクン、と…鼓動が大きく鳴り響いた。

「………」
「あの…、ありがとう…」
怖ず怖ずと礼を言うククールに向かって、マルチェロは手を伸ばした。
露わになっている薄くて細い肩を掴む。
「あにき…?」
不思議そうに見上げるククール…。
真っ直ぐなその青い瞳…それをこんな間近で見たのは、一体いつ振りだろうか…。

「……バカモノめが…!」

思わず漏れた呟き。

ああ、だが、本当のバカは誰だ?
何も知らぬコイツか?
惑わされて、策にはまったあの男か?

それとも………何処かで後悔している…この私か…?

細い首に唇を寄せて…歯を立てる。
そのまま顎に力を込めれば…薄い肌が裂けるブツッというイヤな音と感触…。
口の中に血の味が広がった。
「っ、テェッ?!な…っ?!」
ククールがビクリと大きく身を竦ませる。
甘く鉄臭い血の味に、何故か奇妙な満足を覚えながら身を離せば、

「な、何すんだよっ?!」

ククールはショックにひきつった顔でマルチェロに噛み付かれた首筋を押さえる…。
「血…?!」
そして、手に着いた血を見て、更に混乱したような顔をして……。
「フン…。風呂に入ってこい…汚らわしい!」
マルチェロは身体ごと向きを変えると、それだけを言って部屋を出た。
呆然と自分を見送るククールの視線を背に感じ、笑みが漏れる。

鬱血の跡などスグに消えよう。
だが、自分の付けた噛み跡は暫くの間ククールの肌に残り、傷口は疼くに違いない。

それは愉快な気がして…。

−−−−−−−−−−−−−−−

え、思いっきり裏バージョンなの?と思われた方もいらっしゃるかもですが。
そうです。
ククたん側のカタコイの丸っきりお兄ちゃんサイド。
いや、考えたかっただけなんですが。

てか…、キスマークの場所に噛み付いたら、間接チューだよねぇ…『あの人』と…。。。。。
と、ククたんの方書いてるときから思っていたのだったりして…。

マルチェロサイドだと『あの人』だの『その人』だのってのが妙に浮いちゃって、名前決めときゃ良かったなぁ…とかなり後悔です(爆)
 
 
 
27 (Fri) May 2005 [no.19]
 
 
ムシムシククたん・11



「………だろうな…」

目を覚ますと同時に、そう呟いて…。
マルチェロはゆっくりと身を起こした。
静かな部屋はまだ薄暗く…。
時計の音だけが響いて…。

浮かされたように交わした熱も……。
洩れる吐息も…、甘く上がった声も…。
柔らかく滑らかな肌も…。
絹のような銀の髪も………。

全て、夢だったのだと…理解し、納得する。

当然だな…。
あんな非現実的なこと…本当に起こるはずがない。
そもそも、何故…、私があんな夢を……。
私が……ククールを…?

馬鹿馬鹿しい、と思いながらも、視線は手に落とされて…。
マルチェロは暫しじっと手の平を見つめていた。
感触が生々しく残っている。
ククールの瑞々しい肌……そして、その発する熱すらも…。

「まあ………な…」

悪くはなかった。
それは認めよう。

「フン…」
ゴロリ、と。
マルチェロは再び横になって…薄暗い天上を見上げた。

今頃は何処ぞの空の下か……。
追い出したのは私だが…。
あれきり、一度も顔を見せに来ないとは……。

「……親に似て…薄情な男だ…」

呟きながら、小さく笑って…。
マルチェロは閉じた瞼の裏に、鮮やかな紅い制服を纏った弟の姿を思い描いていた。


:: :: :: :: :: :: :: :: ::


「………だよなぁっ!」

バチンと目を開けて…、ガバッと身を起こし、周囲を見回してから…。
ククールはそう叫んだ。
男3人で詰め込まれた宿屋の一室…。
周りのベッドでは、エイトもヤンガスもまだ寝息を立てていて……。
ハーーーッと盛大な溜息が洩れる。

そりゃ、夢に決まってるよな〜〜〜!

ありえねーことばっかだったもんな…。
兄貴、優しかったし。
エロかったし。
しかも、エッチ上手かったし…。

自分が羽と触角生えてミニサイズで飛んでたことはありえるのか…と、ツッコミを入れたくなるような事を考えるククール。
「くそーーーっ!もっかい寝たら続き見れねぇかな…。ゼシカにラリホーかけて貰うとか…」
ブツブツと呟きながら、もう一度ベッドに倒れ込み、枕を抱き締めて……。
切なく、溜息をつく。
あんなに近くに居たのに…と、手を見つめる。
この手で、あの頬に触れたのだ。
そんなことをしたのは、夢であっても初めてのこと……。

つか、寝てる間にキスもしちゃったんだっけ…。
ちぇ。
やっぱ夢ならもっといっぱい触っときゃ良かった……。

「………兄貴…」
指先に感じた熱を思い出して…。
ククールは大切そうに手を胸に押し当て、目を閉じた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ちゅことで。。。
ここで切っちゃってもいいかな、って気がするんですが、もしかすると後1日とか書くかもしれないです。

これの次…来週からはカタコイのマルチェロサイドをアップしていく予定です。
4,5日くらいで終わる予定です。
(いや、書いてあるので。。。てか、ムシムシの前に書いたのだった…)

うーーー。。。。
何かこう、お兄ちゃんを格好良く書けるようになりたいなーー(><)と、切実に思いつつ。。。
上手な方のお話しを読むと、やっぱ全然違うよね〜…なんて。
巧くなりたいです。ほんと。
(いや、楽しければそれでいいって話でもあるんだけど…なけなしの向上心ってヤツを刺激されちゃったのでした)
 
 
 
26 (Thr) May 2005 [no.18]
 
 
ムシムシククたん・10

 
いつの間に消えてしまったのか…。
初め感じていた痛みも、違和感も……既になく…。
マルチェロの動きの全てが、嵐のような快感を呼んで…。
突き、抉り、擦る度…痺れるような快楽に、身体はもう形をなくして…内部から溶けて行っているような気さえする。
「は…んっ、ん…ぅ、ぁ、あっ」
弾む甘い声。
ベッドの軋みと、濡れた…いやらしい音。
互いの息づかい。
室内に響くのは、朝のこの時間には似つかわしくない、濃厚な夜の音…。
「ぁ…あ、つ…い…っ」
はあ、と溜息混じりにそう喘げば、マルチェロはニィと笑って…。
「お前の中がな…」
ククールの頬にポタリと、汗が伝い落ちる。
「あにきが、だよ」
唇を尖らせれば、そこに軽く口付けられた。
それに、胸が甘く痛く疼く。

……ああ…、何て夢を見てるんだろう…。

この人に……キスされて、ヤられてる、なんて…。
これってオレが望んでるってこと?

ブラコンだって自覚はあったけどさ、と自分に苦笑が漏れる。
「…やばい、なぁ…っ、も…」
「何だ、もうイきそうなのか?」
見つめてくる緑の瞳…。
これに、ずっと憧れてきた。
憎しみじゃなく、怒りじゃなく…ただ、普通に見て欲しいと……。

…ま、これも普通じゃないけど……。

ククールは手を伸ばし、真上にある兄の頬に触れた。
いつも少し顔色の悪い、少しやつれた薄い頬は、今は上気して……。
指先に感じる、汗ばんだ肌の熱が心地よい。
こんな熱を…感じる日が来るとも思っていなかった。

いや、焦がれてたのは、フツーに温もりのハズだったんだけど……。
これは…ちょっと一気に行き過ぎ?
まあ……悪かないけどさ…。
つか、0か100かって感じで、らしいのかも……?

マルチェロが首を僅かに動かし、頬に触れている手の平に口付ける。
甘く噛むように唇を開けて…舐めて、また口付けて……。
そっと視線を流して寄越す。

ううう、その顔だけでイキそうなんですが…!
兄貴、顔やらしすぎだって!

負けてるなぁ等と、何処か呑気に思いながら……けれど、内部の要求は切迫していって…。
「…は…ぁ…っ、あに、き…も…っ、あ、ぁあ…っ!」
抗えぬ解放への欲求に、背筋をブルルと震えが走った。
「…ク…ッ」
それは、マルチェロを飲み込んだままの内部にも震えを走らせ、小さな呻きがその口から漏れる。
それにゾクゾクして……。
「ぁ、は…っ、や…ぁ…っ」
熱い吐息が首に掛かるのに、意識が飛びそうになってしまう。
ともすれば限界を超えてしまいそうなククールの様子に、マルチェロは動きを早めて…。
「あああっ!あ、あにき、や…っ、い…っちゃ…ぁ、あっ」
逃げるように撓る背を、押さえ込むように抱き締めて…奥へ奥へと己を穿つ。
細く高く、後を引くククールの声。
宙を彷徨う瞳から溢れる涙が汗と混じって流れ落ちる。
揺れて、揺さぶられて、繋がる下肢からビリビリと痺れるような快感が走り抜けて……。

そして、最奥に……。

煮えるような思いを吐き出して…。
二人、重なったままベッドに深く沈み込んだ。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

途中ザクッと省略してしまいました…(爆)
エッチシーンは書くの結構好きなのですが…ちょっと最近思う所がありまして……サイトでは控えるべきなのかな、とか。。。
つか、エロは楽しく気持ちよくってのが信条なもので、どうしてもこう、どんどんマルククのカラーから外れて行っちゃう気がしてならないのですが、いや、同人乙女は夢を見てナンボ!!!ってことで、ええまあ、見逃して下さい★


えー、写真はウチの玖紅ちゃんです☆
つい、着ぐるみなんぞ買ってしまいました……(爆)
ってことで、その内耳付きな話とか書いちゃったりしてるかもしれません…エヘ(死)
つか、ウサ耳付きのウィッグをシルバーとブラックのヤツ、ヤフオクで入札してしまいました…。。。。
早くお兄ちゃんお迎えしたいなぁと思いつつ…(そー、まだお迎えしてないのに!つか、リケに居ないのに!なのに、ウサギ耳を準備!!!あ・ほ・だ!(爆))
 
 
 
25 (Wed) May 2005 [no.17]
 
 
ムシムシククたん・9



「…(あ…)」
取れた触角が、机の上に落ちるか落ちないか…そんな瞬間に……。

ボムン☆

何ともふざけた音がして、気付けばククールは元の大きさで机の上にいた。
「え…、あ…?も、戻った?」
唖然として、自分の身体を見回すククール。
そんなククールを、マルチェロもまた呆然として見つめていたが…。
やがて…、
「…フン、ようやく夢らしくなったのではないかね?ああ、実に都合がよくなった…」
唇の端を上げてニィと笑い、ククールの肩に手をかけた。
「…いや、都合って…あの、団長殿?」

何ですか、そのちょっと爽やかな笑顔は!
明らかに何か狙ってるって顔なんですが!!!

「ってゆーか、抱えないで下さい!軽々とーーーっっ!」
易々と抱き上げられ、そのまま運ばれるのに焦ってそう叫べば、
「騒ぐな、バカ者め」
事も無げに怒られて…。
行きつく先は当然のようにベッドだった。
先程、修道士見習達が新しいシーツに張り替えたばかりのベッドは、綺麗にパリッとしていて…降ろされると、フワリと広がる優しい石鹸の匂い。
「あ、兄貴っ!冗談は…」
「冗談でないことはさっきので分かったはずではないかね?」
ツ…と、手がそこに触れる。
つい先程、舌で…口内でイかされた、その記憶が甦り、ククールはカアッと頬を染めて…。
「…っ!」
きゅっと包むように握り込まれ、ビクリと身を竦める。
抵抗しようなんて気持ちもちょこっと位はあったのだが…それも、最初から裸なのだから、部が悪いったらありゃしない…なんて感じで…。
マルチェロの舌が首筋を降り、鎖骨に甘く歯を立てて、そして、胸の突起をなぶるように舐められると、もうダメだった。
「あぁ…んっ」
目の前の青い制服にしがみつき、思わず甘い声が上がる。
「感度がいいというか…我慢を知らんというか…」
ククッと喉の奥で笑われ、ククールは唇を噛み締めた。

それは、相手が兄貴だからです!!!
つか、やっぱりムッツリだ!
エロ兄貴!
マルチェロのエロエロ兄貴〜〜っ!

心の中で目一杯抗議の叫びを上げつつ…。
我慢をしようにも、既に一度達した身体は刺激に敏感になっていて、再び与えられる快楽を素直に受け入れてしまう。
先端を擦られれば、粘りけのある音が淫らに響いて…。
そこが既に濡れていることを否応なしに知らされ、ククールは羞恥からぎゅうっと目を瞑った。
「…っ、ん……んん…っ」
「声を殺すな。折角、聞こえるようになったというのに…」
「この…っ、えろあにき…っ!」
「…さっきので十分分かった筈だと思うが…?…ああ、お前は昔から物覚えが悪かったな」
フフンと笑うその声は、いつもの調子……けれど、いつものような冷たさや怒りはなかった。
「あ、朝っぱらから…サカリやがって…っ!」
憎まれ口を叩いてしまうのはイヤだからではない。
本当に感じてしまっている恥ずかしさと悔しさからだ。
そして、それをマルチェロは分かっているのだろう。
実に愉しげな余裕の笑みを浮かべて…。
「なら…、今度は夜に来たまえ」
ペロと首筋を舐め上げてから、そう囁いた。
甘く響くその声に、背筋を痺れが走る。

クソ…!
マジでヤバイってば!
つか、このオレがやられっぱなしってのもどーよ?
うーうーうーっ、オレのが絶対遊んでると思ってたのに!!

「は、ぁあ…ぁっ」
限界を感じて、白くチカチカする頭…。
けれど、決定的な快感を与えることはせずに…マルチェロの指はそこから離れていった。


−−−−−−−−−−−−−−−−

今日は昨日の予告通り、桃色な流れで……。。。
お兄ちゃんはきっと巧いだろうなぁ♪と思うのですが(カリスマ100だし!←いや、そーゆースキルじゃないだろう…)そうでなくとも、ククたんはラブラブ過ぎてメロメロになってそうですね☆
手繋いだだけで感じそうだよ!!!とか、ちょっとウヒウヒと思いつつ、明日もこの続きです〜★

 
 
 
24 (Tue) May 2005 [no.16]
 
 
ムシムシククたん・8


マルチェロの視線の先で、ククールの羽がハラハラと抜け落ちてゆく。
「?(え?)」
振り返ってそれを見たククールは、大きく目を見開いて……。
「!!(わわわっ?!な、何だよ?!何でイキナリ…っ!)」
マルチェロの手の上に散った自分の羽を拾い上げた。
今抜け落ちたのは2枚……。
つまり、自分の背に生えているのは後1枚だけということになる。
グルグルと回る思考。
ドキドキと騒ぐ胸。
混乱してしまう頭で、不安に押しつぶされそうになりながら、それでも何とか笑顔を作って…。
「…(あ…、えーと……ご、ごめん、兄貴…オレ、飛べなくなっちゃって…)」
へへ…と、無理をして笑う弟に、マルチェロは短い溜息をついた。
「…(運んでもらわなきゃ、もう何処にも行けないな、こりゃ……団長殿にそんなことして貰うなんてとんでもねーって感じだけど…)」
「………」

あーあ……。
何でオレってこー、兄貴に面倒ばっかかけちまうんだろ……。

マルチェロの沈黙に胸が苦しくなって…ククールは俯いてしまう。
「…(………ごめんなさい…)」
俯きながらの謝罪。
口の動きが見えなければ、マルチェロにはククールの言葉どころか、喋っているかどうかも分からないのだが…。
それでも、言いたくて……。

「………お前が謝ることではないだろう…」

「!」
頭の上からかけられる、静かな声…。
その内容に、ククールは顔を上げ、驚きからマジマジと兄の顔を見つめた。
緑の瞳には怒りの色は見あたらなかった。
ただ静かに自分を見つめているその瞳を見つめて…。
ジワジワと喜びがこみ上げてくる。

お前は悪くない、と………。

それは、兄の口からは絶対に聞けないのではないかと思っていた言葉……。
兄が自分という存在を認めてくれたように感じて…。
「…(兄貴…)」

何かもう、いい夢なのか悪い夢なのか…。
ホントに夢なのか、ウソみたいな本当なのか……。
でも、やっぱ…いい夢だよな…。

現実のサイズだったら、きっと今、自分はマルチェロに抱きついているだろう。
嫌がられても、怒られても…きっとぎゅっと……。
「…泣く奴があるか…まったく聖堂騎士団員のクセに情けないヤツだ。羽が取れたところで死ぬわけではないのだからシャンとしていろ」
「…(へへ…、はい。団長)」
嬉し泣きってホントにするもんだなと、そんなことにちょっぴり感心しながら頷く。
その背中から、最後の羽がハラリと抜け落ちた。
「………」
マルチェロは黙ったまま、スッキリしてしまった背中を撫でて……。
執務スペースの方へ戻ると、机の上にククールを降ろす。
それから、ああ…と呟くと、先程のハンカチを取ってきて被せてやった。
ククールは青いハンカチをキュッと胸元で引き寄せ、それを取られたときのことを思い出して…頬を紅く染める。
「…次はこれが取れるのだろうな…」
「…?(え?)」
指先でちょんと頭をつつかれ、ククールはそれに手を伸ばした。
そこにはぴょこんと生えている、2本の触角……。
「…(あ、そだね…これだけ残っててもマヌケだよなぁ、何か……)」
「こら、むやみに触るな」
取れたらどうする、と言いかけた…その視線の先で………ポロリ、と。
2本の触角が同時に取れた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−

とゆことで…。
今日は会社をお休みしたので、ホントは更新なしにしようかと思ったのですが、書きたかったので書いてしまいました(^-^;)
明日はモモイロ妄想です〜☆
(多分、ご想像の通りかと思いますが、明日はククたん元の大きさになります〜!んで、モモイロ…)
 
 
 
23 (Mon) May 2005 [no.15]
 
 
ムシムシククたん・7



「…(し、信じらんねー…)」

荒い息を繰り返し、鼓動を徐々に納めて…。
ククールはボソリと呟いた。
マルチェロが楽しげに笑う。
「そんなに良かったかね?余韻でヒクついているぞ」
「…!(こ、このエロ兄貴!)」
真っ赤になるククールを見て、更に笑みを深めて…。
楽しげに、愉しげに…。

あ、兄貴ってムッツリだったんだ!
普段はこんな事考えもしないような涼しげな顔してやがるくせに!
ホントはエロエロだったんだ!
クソ〜、何かオレ騙されてたじゃん!!!

クソ〜なんぞと思いつつ、実際はそんなに悔しげでもない様子で…。
けれど、いいようにされてしまったことはちょっと悔しい。
ちぇ〜と、唇を尖らしながら兄の顔を見上げていると…。

「…フゥン、中に入れないのが残念だな…」

手の平にいるククールを見つめ、そんな呟きを漏らすマルチェロ。
「…!(み、見ないで下さい!)」
それにビクリと身を竦めて、緑の瞳から逃げるようにヒョイと宙に飛び上がる。
と、その途端に……。

ひらり…と。

透明なモノが中に舞って……。
ガクン、と身体が傾いた。
「…?!(え、ええっ?!わーーっ!)」
「ククール!」
突如、クルクルクル〜と廻りながら落下したククールを、マルチェロがハシッと受け止めた。
「…!(あ、ありがと……ございます…)」
「…ククール…、羽が…」
「?(へ?羽?)」
僅かに目を見開き、少し驚いた表情で言われて、ククールはきょとんとしながら自分の背後を振り返って……。
「!」
ハッと目を見開く。
そして…。
「!(あーーーーーーっっっ!)」
マルチェロの耳にも聞こえそうな程の声で叫んだ。
「?(な、な、な、な、な…?)」
ククールの背中……。
そこに、さっきまでは確かに生えていた片方の羽の内、上の1枚が、いつのまにやらなくなっていた。 
「?(な、何で?何でなくなっちゃってんの?)」
「今、何か落ちていったが…それか?」
マルチェロがククールを手に持ったまま床に屈む。
普段は鋭い緑の瞳がじっと床の上を見回して……。
洗面器を乗せた台の足下にそれを見つけた。
指先程の大きさの、透明な羽…。
「…(こ、これって…また生えてきたりすんのかな?)」
このままだったらどうしよう…と、抜けてしまった羽を見つめ、ククールは不安げに呟く。

夢だ夢だと思ってはいるが、もしかして、万が一にも本当のことだったら…と思わずにいられない。
これがもしも現実だったら、こんなサイズで、飛べもしなくて、これから一体どうすればいいのか…と…そう思って……。

「……痛くはないのか?」

その裸の背中をそっと撫でて、マルチェロは訊ねた。
「…?(…心配…してくれてんの?)」
「………」
驚いて見上げれば、マルチェロは何とも複雑な顔をして…フイと視線を外してしまう。
そんな兄に少し笑って…。
ククールは自分を包む長い指を、きゅっと抱き締めた。
「……(へへ。何か…こんなんでも…いっかって思っちゃうな……)」

兄貴に心配して貰えるなんてさ、サイコーじゃん。
うわ、不覚にもオレ泣いちゃいそうなんですけど…。

なんて…。
そんなことを思って、じぃんと幸せを噛み締めていると、
「オイ、ククール!」
マルチェロが焦った声を上げた。


−−−−−−−−−−−−−−−

おおお(汗)
終業3分前です!(爆)
今日は健康診断なんかやっておりました。
引っかかったらやだな〜とか思いつつ、昨日ガッツリ呑んでいるので、今更何言ってンの!って感じでもあります(爆)
 
 
 
20 (Fri) May 2005 [no.14]
 
 
ムシムシククたん・6


本当は茶化してしまおうかとも思った。
流すべきなのだろうと…。

だが…。

一度くらい。
夢の中でくらい、素直に伝えてもいいかと…。
そう思った。
そう思ったから……。

「…(オレ…アンタのこと好きだよ)」

そう言ってから、やや目線を伏せて…少し笑って…。
「………(ま、アンタがオレのこと嫌いってのは分かってるんだけどさ……)」
ポリ、と頬を掻きながら付け足すと、その言葉の途中……。
フワリと、マルチェロに掬い上げられた。
「…?(…兄貴…?)」
戸惑って見上げれば、自分を覗き込む緑の、複雑な彩…。
それを何と読んでいいのか分からずに…ただ、見つめる。
「………」
マルチェロは何かを言いかけてやめ、そのままククールに唇を落とした。
「…?!(あ、あに…っ?!)」
ちゅ、と軽く触れた唇はスグに離れて……けれど、またスグに…。
ちゅ、ちゅ…と、繰り返し繰り返し押しつけられる唇。
「!(ん、んんっ、な…っ)」
小さなククールの小さな小さな唇ではそれを受けきることは出来なくて…。
顔全体で受ける為、息が出来ずに…。
苦しさから、小さな手で懸命にマルチェロの鼻先を押すのだが、当然のことながら力で敵うはずがない。
次第に頭がぼうっとなってきて…やがて手の上でクタリとなると、マルチェロはようやく顔へのキスをやめた。
息も絶え絶えといった感じのククールを、マルチェロはじっと見つめる。
僅か14センチの身体には、いささか大きすぎる自分のハンカチ…。
少し捲れたその裾からは、裸の足が覗いて……。
その小さな先に、ちゅと口付けた。
「…!(…ちょ、あ、兄貴?!)」
ペロリと舐めた舌が、そのまま脚の間を進むのにククールが身を竦める。
「!(ま、ま、まっ、マジで?!ちょ…っ、ね、ま、待った!兄貴!兄貴ってばっ!)」
慌てまくって叫ぶククール。
だが、その声は小さすぎてマルチェロには聞こえていない。
身体を押さえ込む長い指はまるで檻のようで…。
「!(あ…っ?!)」
ぴちゃと…。
濡れた音が響き、外気ではなく、身を溶かしそうな熱が下肢を襲う。

す、好きって言ったけど…つか、好きなんだけど…!
い、イヤってワケじゃないけど…!
でもでもでも、これってちょっとあんまりにも急すぎるんですがっ!!!
心の準備ってヤツがーーっ!
わーーんっ!
お兄様、ちょっと待って〜〜っ!

ククールがそんなことを思う内にも、マルチェロによって与えられる刺激に、身体は反応してしまって…。
「!(あ、あ…ぁ、あ…っ)」
温かな口内に前と後をいっぺんに含まれ、ククールはまるで食べられているかのような錯覚を覚えた。

あ…あ、も…ダメ、だってば…。
オレ、おかしくなりそ…。
兄貴だって思うだけでもヤバイのに……マジで、気持ち良過ぎ…って…。

ちょっと、悔しいかもしんない…などと、何処か呑気に思いながらも、強すぎる快感に頭の芯がクラクラしてくる。
ハンカチはいつの間にやら剥がされていた。
マルチェロは片手に収まる小さな身体の感触を楽しむように、指の腹で撫でて…。
前を嬲るように舐めて笑う。
声は聞こえていなくとも、マルチェロはククールの状態がよく分かっているから…。
限界の近さに震える身体を愛おしいとさえ思いながら、ちゅと軽く吸ってやれば、その途端に、ククールは大きく身を跳ねさせて欲望を吐き出した。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

2日程仕事の関係でSSの更新が出来ず、久々に…と思ったら、何だかエロげな事になってしまいました(爆)
14センチなんてサイズのククたんを襲うお兄様。。。
ケダモノですな……(笑)

えーと。
明日、明後日と土日なんでまたお休みであります。
(わー、休みすぎ!(爆))
また来週、よろしければお付き合い下さいませ☆
 
 
 
17 (Tue) May 2005 [no.13]
 
 
ムシムシククたん・5


バサッと一気に布が取り払われ、差し込んだ光の眩しさに目が眩む。
ぎゅっと目をつぶっているククールを鳥籠の中からつまみ上げ、マルチェロは手の平に乗せて覗き込んだ。
「危ない所だったな」
「…!(危ない所だったなじゃないだろ!こんな所に閉じこめるから隠れる場所もなくて、ホントにヒヤヒヤだったんだからな!)」
プーッと膨れて言うククールに、クスと笑って…。
「お前の普段の行いが悪いのだ。大人しくしている等という言葉を、信用出来ると思うか?」
「…(ちぇ。ワザと見つかってやれば良かった…。オレがジッとしてたら人形だとか思われて…アンタの面目丸つぶれだぜ?)」
「それは困ると思ったから、こうして追いかけて来たのだ。まあ、許せ」
フフ…と笑って言ったマルチェロの言葉に、ククールは一瞬目を丸くし、そして俯いた。

許せ、なんて言葉………アンタの口から聞くことがあるなんて思ってなかった…。

「どうした?」
「…(いや、腹減ってさ…)」
「スグに朝食が来る。少し待て」
「…(うん)」
マルチェロはククールを机の上に降ろすと、イスに座った。
そして、そこにあった書類をパラパラと捲り、そのまま何かを考え出す。
まるで、そこにククールがいることなど忘れてしまったかのように……。

………団長殿、だもんな。

静かに文字を追うその瞳を見上げて、ククールは何だか寂しくなった。

コレが普通なんだよな。
今朝から見てる顔なんてのは、今まで全然知らない顔で…珍しいのであって…。
コレが兄貴の…いっつもオレが知ってる……ううん、違うか、他の奴らが知ってる普通の顔だ…。
オレが知ってる兄貴の顔は…いっつももっと冷たいか…怒ってるかだし…。

「…情けない顔をするな。何だ、我慢出来ないのか?」

兄の顔を見上げたまま考え込んでいると、チラリと向けられる緑の視線。
「…(あ、へへ…安心したら急に……)」
誤魔化すように笑い、頭を掻く。
マルチェロは呆れたような視線を向けつつも、唇の端を上げた。
仕方のナイ奴め…とでも言いたげなその表情は、何だか眩しくて…。

機嫌……いいのかな……。
今日はよく笑ってる…よな。
って、オレが知らないだけなのか?
いっつもは結構笑ったりすんのかな…。
オレ以外のヤツには………。

…って、コレ夢だっけ…。

だよなぁ。
兄貴がオレに対してこんな穏やかなのなんて、ホントなら絶対あり得ないし……。

自分の考えに、自分でそう突っ込んで…。
分かり切っているその事実に、ククールはどんよりとした。
そしてブンブンと頭を振る。

や、やめよ!
折角の夢なんだし!
落ち込んでる場合じゃねーよな!
優しい兄貴を満喫しなきゃ!損だよな!損!

「何だ、腹が減っているクセに煩いヤツだな」
じっとしとらんと余計に腹が減るぞ。
そう言うマルチェロに、ククールは笑って見せた。
そして、フワリと飛ぶと膝の上に降り、そこにちょこんと座る。

そーだぜ!
どーせ夢なんだし!
今の内に甘えとこ!
オレは決めたね!うん。

「…(机の上にいてさ、食事持ってきたヤツに見つかったらマズイだろ?)」
なんて、尤もらしい言い訳をして…。
マルチェロは軽く目を瞠ったが、特に何も言いはしなかった。


そして、暫くの間……。

団長室には珍しい程静かで、和やかな時間が流れた。



やがて、先程の騎士が食事を運んでくると、マルチェロは机の上に厚さ2センチ程度の本を一冊置き、そこに座るよう命じて…。
几帳面な彼らしく細かに食事を分けると、皿を側に寄せてやった。
「食べるか…」
「…♪(いっただっきまーす♪)」
短い言葉に大喜びでパンの欠片を取り上げれば…、
「こら、食前の祈りはどうした!全くお前というヤツは…」
すかさず怒られて…。
「…!(あはは、つい〜…)」
「つい、じゃないだろう!旅先でも忘れているのではないか?」
「…!(そ、そんなことねーって!今日はたまたまだよ、たまたま!)」
「本当かどうかアヤシイものだな……。まあ…今回はそう言うことにしておいてやるが…」
「…☆(えへへ…。まあ、じゃあ、そーゆーことで☆)」
「何がそーゆーことで、だ。全く……」
呆れたような溜息を1つつくと、マルチェロは手を組合せ目を閉じた。
ククールもそれに習い、祈りのポーズを取って……。
「………父よ、あなたの慈しみに感謝してこの食事をいただきます…」
ゆったりとした声が祈りの言葉を唱えだすと、ソロリと目を開け、兄の顔を盗み見る。
「…ここに用意されたものを祝福し、わたしたちの心と体を支える糧としてください」

コイツ…毎日ちゃんとやってんだろうな…一人でも…ここでも……。
真面目っつーか…。
…オレも真面目にやろ……明日から…。

妙な感心をしつつ、それでもハマリまくっている(当たり前だ)その姿に、ククールは思わず見惚れて…。
長い指先が十字を切り、祈りを終えるまでの間…。

「…もういいぞ」

やがて、長い睫毛に隠されていた緑の瞳が向けられると、
「!(う、うん)」
ククールはハッとして、殊更大きく頷き、パンを頬張った。
小さくちぎって貰ったそれを、更に小さくちぎって……ククールの手にある塊は、パン屑と言っていいほどのミニサイズ…。
けれど、それでも口に入れるにはまだ大きい位なのである。
食べ物がデカイって何か幸せな気分だなぁ…♪等と思っていると、
「ほら」
短く言って、マルチェロはスープを掬ったスプーンを差し出した。
ククールは、一瞬きょとんとして…目の前の大きなスプーンと、それを差し出している兄の顔とを交互に見つめて……。
スグにその意図を察し、カアッと顔を紅くする。
「…!(ぅえっ?!や、いい!いいよ!)」
ぷるぷると首を振るククールに、マルチェロは笑みを浮かべた。
「いいわけないだろう。その身体のサイズで、どうやって食べる気だ?」
「…!(え?う、いや…ま、それはその…こ、こーやってさ…)」
ククールはマルチェロの視線を避けるようにアセアセとスープ皿を覗きこんだ。
途端…。
「っ!(うわわぁあっ?!)」
お約束通り…とでも言うべきだろうか…。
ツルリと手を滑らせたククールは、頭からスープの中に突っ込んで…。
「アホか貴様は!」
マルチェロは僅かに焦りを滲ませた声でそう言い、それでも冷静にスプーンで弟をすくい上げる。
「…!(ゲホゴホッ)」
「フン…こんなモノにも乗るとは…本当にミニサイズだな…」
濡れネズミでスープに咽せているククールを眺めながら、何故かそんな変な感心をするマルチェロ…。
頭の上に乗っているキャベツを取ってやり、そのまま、絶妙なバランスでククールを部屋の隅へと運んだ。
そこにはいつも水が汲み置かれている水差しと、洗面器がある。
マルチェロはククールを洗面器の中に置くと、頭からザバアと水をかけた。
「!!!」
いささか乱暴なそれに、すかさず抗議の声が上がるが、そんなことはキレイに無視をして…。
「オイ、服を脱げ」
「?!」
「何を紅くなっている…脱がして欲しいのか?生憎だが、そんな細かい作業は私には出来んぞ。それを破かれては困るだろう?」
早く洗わないとシミになると言われ、ククールはモソモソと服を脱いだ。
制服とブーツを脱ぎ、リボンも外して…。
下着姿で解いた髪をゆすいだりしながら、チラリ…と兄を見上げる。
マルチェロは重々しく頷いた。
「それもだ、ククール」
「…(………兄貴のエッチ…)」
「何か言ったか?」
「!(い、いえ、別に!)」
「ほら、身体が綺麗になったらこれでも巻いていろ」
そう言って、示されたのは青いハンカチ…。
きれいにアイロンが掛けられ、シワ1つ見当たらないそれは、やたらと上品な感じで……ご丁寧にも『マルチェロ』と名前の刺繍まであった。

「…?(兄貴…コレ、誰に貰ったの?)」

思わずジト目で訊ねる。
絶対、女からのプレゼントだ!と思っての質問…。
今まで、さして意識したことのなかった感情が、ジワリと湧き起こる。
「ん?ああ、誰だったか…」
弟の明らかに怪しんでいる視線に、けれど、兄はとぼけているのか本当に忘れているのか、どちらともとれない表情で短い返事をした。
「…!(あ・や・し〜いっ!絶対、普通の仲じゃないな?!ちぇ〜。兄貴にそんな相手がいたなんて全然知らねーし……うわ、何かすっげーショック…!こんなのいらないね!裸のままでいい!ふーんだ!)」
ぷううっと膨れてそう言うククール。
水を張った洗面器の中で裸のまま腕を組み、完全に拗ねた顔でそっぽを向く。
マルチェロはそんなククールをひょいと捕まえると、手早くハンカチを巻き付け、きゅっと後ろで大きく縛った。
「…!(何だよ!イラナイって言ってるのに!)」
ククールは背中に手を伸ばして結び目を解こうとするが、上手く行かず…ジタバタと暴れだして…。
「…!(大体、羽も出てないじゃんか!)」
「煩いぞ」
制服を洗い終わったマルチェロが眉間に深くシワを刻み、ジロリと睨む。
だが、怒られることには慣れているククールである。
不機嫌そうな兄の視線を真っ直ぐに見つめ返して…。
「…!(オレの声、聞こえてナイって言った!)」
何やら恨みがましく……。
「お前は行動が煩い」
身も蓋もなくそう言われ、ククールは悔しげに唇を噛むと俯いた。

「……貴様も山ほど貰っているだろう。ハンカチくらいのことで何故そうムキになる?」

マルチェロは溜息をつきながらそう訊ねる。
ハンカチを巻かれむくれているククールは、髪を下ろしているせいもあってかやたらと幼く見えて…。
「…!(アンタとオレじゃ本気の度合いが違う…)」
もごもごと言うのを見ていると、何だか可笑しくなってくる。
「…いい加減な気持ちで人と付き合うのは聖堂騎士としてどうかと思うが…?」
「…!(ほら!そーゆーんだからヤなんだってば…!てゆーか、そうなんだ?本気で愛した人がいるんだ?)」
「いると言った覚えはナイが…」
「…!(じゃあ、いたんだ?あに…団長殿ってば、そんなの全然表に出さないんだもんな…絶対誰も知らないぜ…くそ…!言いふらしてやる!元の姿に戻ったら、アンタの取り巻きみんなに言ってやる!決めた!)」
「ククール…」
マルチェロは呆れたような声音で名を呼び、ククールを目の高さまで持ち上げた。
「お前は何故そう人の話をきちんと聞かないのかね?」
「…!(聞きたくないから!兄貴の好きな人の話なんて聞きたくない!)」

「やれやれ、そんなに私が好きか?」

「っ!」
ククールはハッとしてマルチェロを見た。
緑の瞳がいつになく優しい笑みを浮かべて自分を見つめている。

「………(…好き…だよ…)」

ククールは真っ赤になりながら、それでもマルチェロを見上げて言った。


−−−−−−−−−−−−−−

今日の部分は半分くらい昨夜家で書きました。
ので、サイズ的にこれはどーなの?みたいなことをいろいろとテスト…。。。
我が家のPF・ヤミヤミちゃんにご協力願い、スープ皿に入って貰ったり、スプーンですくい上げられて貰ったり…。
ミニメイをお迎えして随分経ちますが、こんな事試したのは初めてであります(笑)
(下に貼ってあるのがその写真)


ところで。
わたくしのPC(家のもモバイルも会社のも)は、全て海闇仕様であります。
その為、『あか』は全て『紅』と変換されます。
(闇遊さんのお目目は紅玉のような紅とゆーのが海闇界におけるお約束 ←ホントか?!)
たまに気付くと、違うよね…と直しますが、『紅』って字もイメージも好きなので、ま、いっか☆と直さないことも多々……。
まあ、別にどうでもいいことですが……。
 
 
 
16 (Mon) May 2005 [no.12]
 
 
ムシムシククたん・4

 

「クソー!兄貴のやろう…!」

籠の留め金を、散々押したり蹴ったりしてみた後…。
ゼイゼイと息をしながらククールは呟いた。
冷たい金属の床にペタンと腰掛け、布を被せられた上を見上げる。

「ちぇ…。夢の中くらい…ずっと一緒にいさしてくれたっていーじゃんか…ケチ…」

あーあ。
何でオレってこうなのかな……。
幸せなら、うーんと幸せっての…考えられないんだもんな…。

何だか情けない気持ちになって溜息を付くと、ぐううと腹が鳴った。
視界を遮られてしまった為、時間も何も分からない。
朝のミサはもう終わっただろうか、とぼんやり考えて、また溜息を漏らす。

「オレの朝メシなんか……きっと頭にナイよなぁ……うう、団長殿〜、ボクお腹減りました〜!お兄様〜、マルチェロお兄ちゃ〜ん」

呼んではみても、聞こえはしない自分の声。
それでも、黙ってしまえば落ちる静寂は耐えられなくて…。
ククールはブツブツと独り言を続ける。
「腹が減ってるってのは、夢を見てるオレ自身も腹減ってるって事なんだろうな……。くそ〜!オレは絶対目を覚まさねーぞ!せめてもう一度兄貴に会って…それからもうちょっとくらいイイ目をみねーと…」

もう一回キスするとか…いや、される方が良いな……。
さっきのはマジでビックリしたよな…。
うん、アレはマジで自分ナイス!って感じだ。

先程、唐突にマルチェロからされたキスを思い出し、うんうんと頷いていると、その耳に微かな足音が聞こえてきて……。
「兄貴?!」
ぴょこんと飛びはね、ククールは籠の細い柵に掴まった。
「兄貴!いや、団長殿!早くコレ取って下さいよ!こんなトコ閉じこめるとかってマジで酷いとか思うんですけど!」
そのまま、わあわあと訴えるが…。
「失礼します〜」
聞こえてきたのは、期待していたものとは違って………。
「…何だ…見習いか……」
ガッカリするククール。
シーツの取り換えに来たのだなと、再びその場に座り直すと……。

「あれ?コレ…何だろう?」

明らかに何かに目を留めたらしい見習いの少年の声………。
ギクリと身を竦める。

オイオイ?!
まさかコレ(鳥籠)じゃねーだろな?!

「こんなの…いつもないよね?」
「ホントだ!鳥籠…かな?マルチェロ様、小鳥でも飼われたのかな?」
見習いの少年は一人ではないらしい。
二人の子供の声と、その内容にククールはオタオタとして…。

ぎゃー!
やっぱコレ(鳥籠)かよ!
マルチェロのバカ、机の上なんかに置いてくから……!
つか、見られたらどーすんだよ!

一瞬、見せ物小屋に売り払われる自分の姿が頭を過ぎる。

い、いやいやいや!
ガキだからな、そりゃねーだろ…。
でも、見られりゃ相当やっかいなことは変わんねーよな。
布取んじゃねーぞ!
つか、お前ら!マルチェロの私物に触ったら怒られんぞ!

「どんな小鳥なんだろうね?」
「でも、鳴かないね?」
「寝てるのかな?布かかってるしさ、夜だと思ってるのかも…」
「あ、そうかもね!ねえ、ちょっとだけ見てみちゃおうか?」
コソコソと話す声。
好奇心のくすぐられている様子が、ありありと目に浮かぶ。
ククールはブンブンと頭を振った。

ば、ばかばかばか!
怒られるってば!
やめとけ!
わー!神様神様神様〜っ!

懸命…というか、とにもかくにも必死な祈りが通じたのか……。

「えー、でも…もし見つかったら……」
「……怖いね、やめよう…」
修道士見習いの子供達はそう言いあって、机から離れていった。
部屋の奥から寝具を取り換えているのだろう、がさごそという音が聞こえる。
ハーーーーーッ。
ククールは深々と息を吐くと、その場にへたり込んだ。
「…クソ、後で絶対文句言ってやる…!」
ドキドキと煩く騒ぐ胸を押さえて呟くと、再び扉の開く音が聞こえて…。
「!」
今度こそ?!とククールは期待に顔を輝かせた。
だが、
「失礼します…ん?何だお前ら…ああ、洗濯か…ご苦労」
聞こえてきたのは、またもや兄の声ではなくて…。

うわ!またかよ!
いいかー、テメーも覗くんじゃねーぞ〜!

祈りというよりは怨念じみたものを込めて、布越しに相手の気配を探るククール。
騎士団員であろうその相手は、マルチェロの机の上の書類を取り上げた。
スグ側で行われているそれにヒヤヒヤしてしまう。
「ええと……青い表紙…?」
パラパラと書類を捲る音…。
どうやら、騎士はマルチェロの忘れ物を取りに来たらしい。

バカ兄貴!
こんな時に忘れ物なんかするんじゃねぇよ!
ひー!早く出て行け〜!

ドキドキドキドキと緊張しまくりながら…ククールはただひたすら、騎士が出て行くのを待った。
「…ううむ…違うような…」
困ったような呟き。
パサリと置かれた書類に、フワリとささやかな風が起こる。
騎士が沈黙してしまい、部屋は静寂に包まれて……。
暫しの間。
「…どうした?」
ふいに、騎士が訊ねる。
「あ、いえ…」
小さな、控えめな声は、先程の見習いのものだろう。
「小鳥かな、って思って…」
「ん?ああ、これか…」
布越しに視線を感じる。
「そういや…昨日まではなかったな……」

だーーーっ!
バカバカバカ!
鳥じゃねえ!鳥じゃねえんだよ!
寄るな!触るな!見るな!
ダメだって〜〜!

布が掴まれる気配に、ククールは慌てふためいて…。
騎士達のいる反対側の籠の真ん中あたりへ移動すると、柵に掴まって丸くなる。
そして、布が数センチ程浮き上がった時だった。
小さな咳払いが、やたらと静かなこの部屋に響き渡った。
ハッと、その場の全員が緊張するのが分かる。

「……人の私物に触れるのはあまり良いこととは思えないが…」

今度こそ。
今度こそ、聞こえた声はククールが待ち侘びたものだった。
「も、申し訳ございません!マルチェロ様!」
「お赦し下さい!」
「申し訳ございませんでした!」
「…まあ、いいだろう。ご苦労だった」
静かで、堂々として、そして何処か甘い声がそう告げ、小さな足音が二つパタパタと部屋から出て行く。
マルチェロがゆっくりと室内を移動して、その気配がスグ側へとやって来た。

「…ファイルを…夕べ片づけたことを思い出してね…」

そう言いながら、引き出しを開ける音がする。
続けて何かを取り出し、それを渡す音…。
それらのやり取りを聞きながら、ククールはホッとして下に降りた。
「これを院長に…それと、食事は部屋で取る」
「は!スグにお持ち致します!」
焦りまくっているのであろう…。
返答と敬礼という、僅かな動作からそれを感じ取って…、ククールは少し笑ってしまう。

ま、無理もねぇな…。
オレだって散々焦ったんだから、あいこだよな☆
あ〜、良かった…ホント焦った…。

フウ…と息をついたククールの耳に、ドアの閉じる音と、遠離る足音が聞こえた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

続けるつもりは全くなかったのに、何故か続いているムシムシククたん。

ホントは、この話を書かなければ、今頃続けているのはこないだまでやってた『カタコイ』のマルチェロバージョンだったのですが…。
まあ、別にいつでもイイですね。
ムシムシのお話し終わったら、アップしていこうと思っております。
よろしければ、お付き合いしてやって下さいませ☆

このCGI、一日に何本もアップすると、見る時ちょっと面倒(ダイレクトに見れないから…同じ日にアップしたものみんな表示しちゃうので……)なので、一日一本ずつにしよう…とか思ってしまいます。。。
カレンダー表示は気に入ってるんだけど、遊戯王の方で使ってるヤツのが使いいいのかなぁ……うーん、でも、それだとエロ話もドーンと表示されちゃうんだよな……。。。
海闇はエロ必須って感じなのであまり気にしてないんですが(え)さすがに、活動始めたばっかりのトコでは遠慮もするよねぇ…なーんて……。

今週はイラストの更新とかもしたいなぁと思っております(…って、いや、週末に遊戯王のオンリーあるんで…原稿やらなきゃなんですが……マルククにかまけて全然進んでないなんて……い…いえな……ゴホゴホ(爆))
 
 
 
13 (Fri) May 2005 [no.11]
 
 
ムシムシククたん・3



目を覚ますと、何やら妙なモノがベッドの中にいた。

マルチェロは黙ったままそれをしげしげと眺めて……考える。
それは、人形のように見えた。
長い銀の髪のその人形は眠っているように瞳を閉じていて…、赤い服を着て、白いブーツを履いている。
何処かで見たようなその格好…。
そう、それはククールにそっくりな外見をしていた。
だが、大きさは14センチくらいで…何故か背中には虫のような透明な羽が付いており、頭にはぴょこんと触角まであって……。
「………何の冗談だ?これは…」
マルチェロはそれを摘み上げ、目の高さまで持ち上げた。
すると、
「…?」
ぱちぱちと、人形が瞬きをして…目を覚ます。
ククールと同じ薄い青の瞳は、マルチェロを見て大きく見開かれた。
そして、何事かを言うが、それはあまりにも小さい声であるらしく、マルチェロの耳には言葉として聞こえなくて…。
ただ、その小さな唇の動きから『兄貴』だの『夢』だのと言っているらしいことが分かる。

「…成る程…夢だろうな、確かに……」

マルチェロは溜息混じりに呟いた。

まったく…疲れているのか?
何てロクでもない夢を見ているのだ……私としたことが…。
ククールが…こんな姿で現れるとは………。

もう一度、手の中の存在をしげしげと見つめて…。
「まあ、いい……夢なら夢で…」
「…?」
呟けば、ククールが再び何かを言う。
不思議そうに小首を傾げて自分を見上げるその仕草…。
それは、サイズのせいもあってか、恐ろしいまでの愛らしさで……。
思わず、口付けた。
すると、途端にククールは耳まで真っ赤に染めて…。
真ん丸に開いた目がおかしくて、マルチェロは笑ってしまう。
「何だ…貴様、キスぐらいで赤くなるなど……」
「…!(イキナリだからだろ!ってか、アンタにキスされるなんて思うわけないじゃん!)」
「何を言っているのか分からんな……夢の割に変なところで不便なものだ…」
「…?(え…分からないのか?オレの声聞こえてないのか?)」
「分からないのかだと?お前の声は小さすぎて聞こえないのだ…」
「…?(あれ?聞こえてないのに何で分かるんだ?)」
「読唇術の心得くらい多少はある」
「…!(スゲー!兄貴!)」
「フン、お前が何も出来んだけだ」
賞賛の眼差しを向けられ、得意げにそう言って…。
不思議なものだ…と、マルチェロは思った。
ククールとこんな風に会話を交わすなど、普通ならばあり得ない事である。

…まあ、夢…だからな…。
それに、こんな姿では…とてもアイツなどとは思えんし……。

ククク…と笑うマルチェロを、ククールは物珍しそうに、そして何やら嬉しそうに見上げた。
「……む?もうこんな時間か…」
マルチェロは時計に目をやると、ククールをベッドの上に置き、自分は身支度を始める。
ククールはブーンと飛ぶと、マルチェロのスグ側へと近寄った。
そして、同じように髪を直し、顔を洗い、服を整えて…。
「……オイ、まさか付いてくるつもりじゃないだろうな?」
その様子に思わず訊ねれば、ククールはコクコクと頷く。
ニコニコと嬉しげに人懐こそうな笑みを浮かべるククール。
「………」
マルチェロは無言でその小さな身体を摘むと、執務スペースの方へと歩いて…。
そして、何処からか…、小さな鳥籠を取り出した。
「…?(兄貴?)」
キイ、と。
マルチェロは蓋を開け、その中にポイ☆とククールを投入。
そして、パタン、カチャン、と。
「!!!!」
蓋を閉め、更に留め金までシッカリと掛けて…。
「…!(兄貴?!)」
「連れて歩けるわけナイだろう…。そこで大人しくしていろ」
「…!(イヤだよ!出してよ!大人しくしてるから!)」
ガチャガチャと檻の中で暴れるククール。
だが、その声は聞こえてはいないので……。
「フン…掃除の者に見られてもやっかいだからな…」
と、マルチェロは素知らぬ顔で布まで掛けて…。
「…しかし…リアルなのかリアルでないのか…イマイチワケの分からない夢だな…」
「…!(待って!待てってば!兄貴!)」

そして、視界を遮られたククールの耳には、ドアの閉まる音がやけに重く響いたのだった。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ムシムシククたんの大きさは14センチ☆

まさにポケットフェアリーであります!(笑)
(PFについてはウチのドール部屋よりBlueFairy社のサイトへどうぞ。『ポケットの中の小さな妖精』とかゆー謳い文句のお人形さんで、イメージとしては片手に収まる位です。ミニミニで可愛いのですよー♪)
ちょっとだけ、ウチのヤミヤミ(ウチにいるPFの名前)をククたん仕様に変更しちゃおうか…とか思ってしまいました…(爆)
デフォアイがブルーだったからウチにあるんだもん〜★
まあ、でも、お顔はそれっぽくないので、うーん…って感じかな…。
ピーターかチョコくん使った方が良いんだろうな…。。。

って、ドール話は置いておいて…。
ひとまず、次回に続く!であります☆
 
 
 
12 (Thr) May 2005 [no.10]
 
 
ムシムシククたん・2

 

目を覚ますと、ククールは何やらよく分からないところにいた。

「…あれ?何処だここ?……っつか、何だ…これ…?」

眠い目をゴシゴシと擦り、ククールは目の前にある謎の物体をしげしげと眺めた。
それは、何かの建造物のようだが、随分とおかしな形をしていて…。
柱にしては、その角度はかなり傾斜をしていて…、太さも均一ではなく、上に行く程細くなっているように見える。
そしてまた、その材質は金のように見えて……。
んん〜?と呻りながら上へ上へと視線を上げれば、かなり上の方にはワサワサと…鳥の羽のようなものが見えた。

「何じゃこりゃ…?」

怪訝な顔で呟いて…もっとよく見たいなと思うと、途端に、フワリと浮遊感を感じて……。
羽が近付く。
ブブーンと耳元で鳴る羽音と、振動…。
「え?な、何だ???」
どうもおかしい…と、ククールが背後に視線を投げると…そこには、忙しなく動く透明の羽があった。

…………ハ…?
ハネ?????

一瞬、目の前が真っ暗になる。

ちょ、ちょ、ちょっっっっと待て…。
いや、あの……これ…オレ……あれ?

床はどんどんと離れて…。
見たいと思っていた羽はアッという間に眼下のモノとなった。

お…オレ…飛んでる…?
つか、は、は、羽生えてる!!
羽生えてるよ!背中に!

「ウソだろーーーっっっっ?!」

何じゃこりゃーっと、思わず大絶叫をすれば、部屋の奥から微かに呻きが聞こえた。
ハッとしてそちらに目をやる。
言葉にすらなっていない、不明瞭な音……。
けれど、それだけでもハッキリと分かる…分かってしまう、その声の主……。
ドクンと胸が高鳴った。

「あ…あにき…?」

そういえば…と、ククールはそこで初めて気が付いた。
この部屋に充満する、懐かしい兄の香りに……。
そして、この部屋はマイエラ修道院の聖堂騎士団長の部屋であることに…。
ククールが初めに目にしていたのは、兄の愛用している羽ペンとペン立てだったのだ。

お、オレ…ひょっとして、何かすっごい小さくなってる?!
つか、背中に羽生えてって…虫か?!
昼間の話じゃねーけど、ホントに虫になったってのか?!
マジかよーーー?!?!?!
あ、ありえねーーーー!!!

「…って、それよりも!!!兄貴…!」

高鳴る胸の望むまま、ククールはプイーーンとついたての奥へ飛んでいった。
そこから先は兄の私的な空間で…恐らく今は、眠っているはずで…。
ベッドの盛り上がりに、確かにそこにいるのだ…と。
そう思うだけで妙にドキドキしてしまい、何故かなかなか顔を覗くことが出来ない。

「……う、くそう。兄貴が寝てるだけだってのに、何でオレこんなドキドキしてんだよ…。つか、ヤベーだろ…、ヤローでしかも兄貴とかってさぁ……まあ、いーけど……」

ブツブツと呟き、そろそろと視線を向ける。

「っつーーか、デカ!」

いや、アンタが小さくなってるだけだから!と、ゼシカあたりがいたら絶対に突っ込まれるであろう感想を漏らして…。
ククールはマルチェロの顔のスグ側…布団の上へと降りた。
規則正しい寝息を立て、ピシリとまるで固まっているかの如き格好で眠っているマルチェロ。
その顔を眺めて…。

「あーあ…寝てても眉間にシワ寄ってやんの……もう取れなくなっちゃってんのかね…」

眠ってる時くらい楽しそうにしててもいいのにな…。
いや、笑ってても怖いか…。

「睫毛…結構長いんだ……」
こんな機会も滅多にないとばかり、しげしげと兄の顔を眺めて…。
1つ1つ、焼き付けるように観察して……。
何やら溜息が洩れる。
こんなに落ち着いて兄の顔を見たことがあっただろうか…。
多分、無いはずだ。

…ホントは…起きてる時にゆっくり見たいけど………。
怒るしな〜…絶対黙ってねぇよな……。

「ちぇ。キスしてやれ!こーなりゃもうやったモン勝ちだよな!」

誰ともなしに呟いて…。
ククールはヒラリとマルチェロの顔に降りた。

折角だからいっぱいしてやろ!
まずは……。

「デコだな!うーん。やっぱ、段々広くなってる気がするよなぁ……まあ、ツルツルになってもオレは別に気にしねぇよ。うん。安心しろ、兄貴!」

等と…失礼すぎる事を言いながら…。
ククールはマルチェロの額に膝をつき、そこへチュッと軽いキスをする。
「…む……」
すると、途端にきゅっと眉間のシワが深くなって…。
目を覚ますのか?!と思わず固まったククールだが、それだけで…マルチェロは起きる気配を見せなかった。
ハーーッと息が洩れる。
「脅かすなよ…ったく…。やっぱ、飛んでよ。そしたら気付かれねーよな☆えーと、じゃあ、次は……」

閉じた瞼に…。

高い鼻の先に…。

薄い頬に…。

「そして…いよいよ大本命!」

じゃじゃーん☆と、ドキドキする胸を誤魔化すようにおちゃらけて…。

そっと……唇に……。

温かな寝息を漏らす唇に、ちょんと軽く口付けた…その時だった。
マルチェロの身体が動いて…、ヒュと、僅かな風音がしたと思ったら……。
次の瞬間。

スパーーーーン☆

マルチェロの手に払われて…。
小さなククールの身体はクルクルと回りながら壁の方まで飛んでいった。
そして、
「わ、わ、わ、わ…っぶ!」
ベチ!と、結構な勢いを残したまま、ククールは壁に掛けられた鏡にぶつかる。
そのまま下に落ちそうになり、慌てて鏡の縁に捕まって……。
そして、初めて自分の姿を見た。

……虫…っつーより、妖精さん?

そこに映っていたのは、人の時の姿のまま随分と小さくなってしまった自分だった。
背中には透明な羽が4枚生えており、頭には2本の触覚のようなものが付いている。

うーん。
虫になっても可愛いねぇ…流石オレ!
いや、つーか、夢だな、こりゃ。
うん、絶対に夢だわ。

「…じゃなくて!痛ぇーじゃねーか!思いっきり払い飛ばしやがって〜〜っ!」

酷いぜ!兄貴のバカ!とプリプリ怒りながら、ククールは再びマルチェロの元に飛んでいった。
兄は変わらず、眉間にシワを寄せて眠っている。

「ちぇ。寝てても邪険なんだもんな……つか、起きてたら潰されてるな…うん、絶対。容赦なくプチ!だぜ、きっと…」

あーあ…と溜息を付いて……。
ククールはマルチェロのスグ側に降りた。
相変わらず、ぴしっと固まったような状態で寝ている兄…。
それを、見上げて…。
どうせなら、もちっとイイ夢見れないモンかねぇ…と、損な性格の自分を嘆く。

夢なんだからさ、もっとオレが幸せでもいいと思うんだけどな…。
兄貴があり得ないくらい甘いとかさー!
オレにラブラブとかさー!
いや、むしろ逆パターンとかどうだろう?!
兄貴が虫になってたら、オレ絶対可愛がるよなー…。
籠とか入れてさ…エサとかも食べさせてやってさ。

「ハハ、ありえねー」

苦笑しながら、ちょこちょこと歩いて布団の中に潜り込む。
マルチェロのスグ横に…。
温もりと呼吸を感じられるその場所にククールはコロンと寝転がった。

これくらいなら……イイよな…。

夜明けまではまだ後数時間ある。
きっと、それまではこの夢も続くのだろうと…そう思って……。
マルチェロの肩に額をすり寄せ、ククールはくすぐったそうに笑った。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ムシムシククたんは独り言が多すぎですね(爆)

いや、つか…続く予定なんて全く無かったのですが、昨夜寝る前にラクガキをしていたら、こんなんもありじゃない?!と…。。。。。。
でも、眠かったので、昨日はラクガキだけしてSSは書きませんでした。
なので、今日はこっち(DQ)では初めての会社で書いたSSであります(爆)
下につけたラクガキも、着色は会社で……(苦笑)
(オンリーの準備を散々会社でやってたので、今更絵の加工くらいでドキドキしたりなんてしませんわ☆ ←どうなのか…その慣れわ…。。。//いや、流石にチマ絵までだけど…)

いや、今日はですね、上司がみーんなお出かけで、遊びたい放題じゃん♪って思ってたので。
ええもう、心おきなく、遊ばせて頂いちゃったのでした☆

※ちなみに、こちら(ドラクエ)の方だけいらして下さってる方にご説明申し上げますと、ウチのCGIでアップする系のモノは、ほとんどみんな会社で書いております。なので、土日・祝日には大体、更新がありません(爆)平日の12時以降〜17時半くらいにアップしております。
 
 
 
11 (Wed) May 2005 [no.9]
 
 
ムシムシククたん☆

それは、月影のハープを探しているときだった。
イシュマウリの言葉に従って、今までの出会いを順に追っている最中のこと…。

アスタンカ城近くの川沿いにある小さな教会で、ククールは知り合いの修道士に会った。

「お前がいないと修道院は静かでねぇ、何とも寂しいモンだよ」
「問題児で悪ぅございました」
「はは。なあ、たまには…顔を見せに来たらどうだ?」
笑いながらにそう言われ、ククールは曖昧な笑みを返した。
「いやぁ、でもさ、ほら…団長殿はオレの顔なんか見たくないだろうし…さ」
院長の敵討ちなどという衣を着せられ、実際は体よく追い出されたことを、結構気にしているのである。

マルチェロのヤツ……院長がいなくなった途端にオレのこと放り出しやがって…。
あーあ…クソ……今頃何してんのかな……。

寂しさの色濃く表れたその呟きに、修道士はふと何かを思い出したような顔になって……。
「そうでもないんじゃないか?時々思い出しているよ」
「えっ?!ナニナニ?!そうなの?あに…いや、マルチェロ団長ってば、オレのこと何か言ってたりするワケ?」
修道士の言葉に、飛びつかんばかりの勢いで訊ねるククール。
マジで?マジで?と詰め寄るその顔はキラキラと輝いている。
そんな嬉しさ大全開のククールに、今度は仲間達が曖昧な笑みを浮かべているが、本人はまったく気付くことなく……。
だが、
「ん、いや、それがこの間…団長のお部屋に虫が入ってきた時にね…」
修道士がクスクスとおかしそうに話を始めると、ククールは途端に顔を顰めた。

「………虫…?」

「小さな羽虫だったんだが…これがなかなか捕れなくてね…。マルチェロ様の周りを飛ぶものだから、かなり苛立たしげにされてたんだが…」
「う、うん…?」
「その時にふと、まるでお前のようだと…」
「はぁ?!」

「『私の視界にちょろちょろと入り込んでは邪魔をする…貴様はあのククールのヤツにそっくりだな…』ってさ」

マルチェロの声音を真似てか、少し声のトーンを抑えて言った修道士の言葉に、ククールは一瞬その動きを止めて…。
「な、何だよそれっ!虫扱いかよ?!ひでぇーーーっっ!」
それから、弾かれたように不平の声を上げた。

「でもね、そう言ってそれっきり…その虫を捕ることはおやめになったのだよ。本当にお前を思い出したのだろうね」

「嬉しくねえっ!嬉しくねーだろ!くっそーーーっ!マルチェロのヤツ〜!何がオレにそっくりだ!」
グググッと拳を握りしめて…グルンと勢いよく仲間達を振り返る。
「エイト!今すぐマイエラ行くぞ!一言言ってやらなきゃぜってーーー気が済まねぇっ!あんのクソ兄貴ーーっっ!」
そして、キーーーッと叫んだククールに、一同は思うのであった。

絶対言えないクセに…と。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

とゆことで。
ムシムシククたんのお話しです(何じゃそりゃ)

これはですねえ、先日某Sさんのお宅へお泊まりに行った時。
何処からか入り込んだ虫くんがいたのですね。
で、なかなか捕まえられないでいたのですが、ひょんなことから名前が『ククたん』に…(酷)

その時…ナナセの目にはハッキリと見えました……見えましたとも!

「クッ!忌々しい!」とイライラしながら虫を殺そうとしているマルチェロお兄様の姿と、虫の姿でありながら、それでも嬉しげにお兄ちゃんの周りを飛んでいるククたんの姿が………!!!!

か……可愛い……!!!!!!(大間違い)

まあ、そんなわけで、このSSが出来たのでありました☆
つか、帰宅してスグに書いたのがコレって……どうよ…(爆)
 
 
 
10 (Tue) May 2005 [no.8]
 
 
:: カタコイ ・ 8 ::


それは、一瞬のことだったのかも知れない。
だが、ククールにとっては永遠のような一瞬…。
やがて、マルチェロは僅かに顔を顰め、フイと視線を外すと、ククールは詰めていた息を吐き出して…。

「…………」

その場にへたり込む。
「何だよ……何で…見てんだよ…」
ドキドキと煩い鼓動の合間、小さな呟きが漏れた。

顔を顰めたってことは、目があったのは気のせいじゃないってことだよな…。
何で…何で……こんなトコ見てたんだよ?

期待しないように、期待しないようにと、何か他の理由を探す。
マルチェロが自分を気にかけたなんて、思ってしまう事が怖くて…。

絶対違う…そんなわけない。

バカだな、オレ……。
たまたまだ。
たまたま、こっちに視線が向いてただけだ……。

必死でそう納得しようと思う心…。
けれど、もう一方では、幸せな思考が甘い言葉を囁く。

でも、わざわざ顔を上向けて見てたんだぜ?
こんな時間にここに残ってるのなんてオレだけだし…それは兄貴は当然知ってることだし……。
兄貴はこの部屋を見てたんだ……オレがいるこの部屋を……。
だから、やっぱり……………。

「わーーーーーっっ!」

どんどんと進んでいく自分の考えを、ククールは大声を出して中断させた。

よそう。やめよう。
もう考えない。
たまたま、目があった。
それだけでいいじゃん。うん。

「うんうん!」

力一杯頷いて……、ふと、そんなことを一人でしている自分に気付く。
ただ、目があっただけなのに…。
ただそれだけのことで、こんなにも大騒ぎしてしまう。
それ程に、自分はマルチェロのことが好きなのだ。
子供のように、ただただ、ひたすらに…。
もう何度も身体を重ねているのに……何故、未だにこんなにも純粋な想いを持ち続けていられるのかと、自分自身不思議にさえ思う。

憎まれていると知っている。
疎まれていると知っている。
酷いこともいっぱいされた。
利用された事も知っている。
いつだって傷つけられてばかりで……優しくされたことなんてない…。
初めて会ったあの時以来、一度も……。

けれど、そんな相手を…自分は好きで好きで仕方ないのだ。

「………ホント…バカみてぇ…」

呟いて…笑ってしまう。

「まったく…恥ずかしいったらないね。このオレがこんなずーーっと片思いなんてさ……」

もう一度、窓の外を見やるが、そこにはもうマルチェロの姿はなかった。
食堂へ移動したか、あの部屋へ戻って来るのか…。
どちらにしろ、今日はもう彼の姿を見ることは叶わぬだろう。
それに切なさを感じて…ククールはまた、苦笑する。

「ほんと…仕方ねぇなぁ…」

いつまで、この関係は続くのだろう?
心の距離は…いつまで離れたままなのだろう?
近付く事なんて、もしかしたらないのかも知れない…。

それでも……。

それでも自分は、ずっとずっとこの先も、マルチェロを好きでいるのだろう。

「……兄貴…」

切なさから小さく呼んで…ボスッとベッドに倒れ込む。
その拍子に、フワリと香るマルチェロの匂い…。
溜息と共に小さな笑みを浮かべて…。
ククールはそっと目を閉じた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−

スパコミ前日にドラクエ8のサントラが届いたので、最近BGMはずーーーーーっと、修道院と大聖堂であります(苦笑)
PCに入れてエンドレスですよ!
あ、あと序曲(ドラクエマーチね)も☆
てか、大聖堂は始まりのトランペットにかなり驚いてしまうのだった。
いや、音押さえようよ、夜中はさ!ってことなんですが…(爆)

つか、アレで目覚まし掛けたら心臓止まりかねんな………(いや、大好きなんですがね…)
 
 
 
09 (Mon) May 2005 [no.7]
 
 
:: カタコイ ・ 7 ::



そう…それが最初だった…。

よく分からないままに抱かれて…。
よく分からない内に終わって……。
結局、何もかも…よく分からなかった。

マルチェロが何故、そんなことをしようと思ったのか……。

あの時、兄から感じたのは、怒りや憎悪ではないようで…。
普段向けられるその手の感情とは違う、けれど同じように強い何かを感じていた。
勿論、それが愛情であるハズはない。
ただ、恐ろしいほどの激しさと勢いで、貪られた…そんな感じで…。
気付けば、部屋にただ一人……。
身体は綺麗にされていて…ククールは…何故か涙ではなく笑いが漏れたのだった。

こんなことをされて…それでもまだ、兄を嫌うことが出来ない自分が可笑しかった。
『あの人』の時は触られただけであんなにもイヤだと感じたのに…。
自分の兄であるマルチェロには、嫌悪など欠片も感じずに……ただ、突然のことに驚き、戸惑っただけ…。

そうだ…。
あの手を、あの熱を…あの匂いを……。
身近に感じて…自分は何処か幸福だとさえ感じていた。
普段は顔を見ることさえ自由にならない兄と…一つになった…。
優しさなどナイ。
愛情などナイ。
睦言も、愛撫も、キスも……何もナイ…。
ただ、引き裂かれただけの行為に……けれど、何故だか心は満たされたのだ。

ずっと、ずっと…子供の頃からずっと…もう本当に長いこと、ふれ合いを求めて来た。

温もりに飢えていた。

優しさに飢えていた。

それが…こんな行為で、多少なりとも満たされたのだ………。

間違っているのだと分かっている。
目が眩んでいるのだと。
愚かな考えだと……分かっている…。

だが、それでも………。


「…こーゆーのも……惚れた弱味…とかゆーのかね…」
小さく呟き、そのセリフに笑う。
末期だと思った。
きっと、焦がれ過ぎて、もう爛れてしまっているのだ。
そんなような兄への気持ち…。
最初がどうであれ、今となってはマルチェロが自分を抱くのはきっと排泄のレベルなのだろう。
怒りからでも、憎しみからでもなく……ただの性欲処理として…。
それでも、相手にされるのは自分だけだから…。
ククールはそこに一縷の望みを見て……想いを捨てることが出来ずにいる。

どうしても…。


「……バカだなぁ…」
苦笑混じりに溜息をつくと、ほぼ同時に鐘が鳴った。
朝の祈りを終えて…皆が一日の活動を始める為、礼拝堂から溢れ出す。
気怠い体を起こし、ククールは窓辺へと移動した。
広場には直立不動で頭を下げ、道を空ける騎士達……。
マルチェロが出てくるのだろう…と、入り口を見つめて…。
探す姿とは別の姿を見付けた。


オディロ院長……!

院長は…オレ達の仲は時間が解決してくれると仰いました…。
でも………何だか余計にこじれてしまった気がします。
ごめんなさい。
オレ達が仲良くなれる日なんて……もう来ないんじゃないかって……思います。


礼拝堂の入り口から出てきた父親代わりのその人を目で追って…。
苦笑混じりの溜息を落として………。
そして、ふと横にずらした視界に…飛び込んでくるマルチェロの姿。

「!」

え……こっち……見て………?

青い騎士団長の制服をきっちりと着込み、いつもと同じく堂々とした出で立ちでオディロの斜め後ろに付き従うマルチェロ…。
けれど、その緑の瞳は宿舎を見上げて………ククールを真っ直ぐに捉えていた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ククたんときめきで次へ続く。
つか、この話は次で一応オシマイです。


しかし、それにつけても眠い…です…。。。(=_=)zzz

連休明けだから気が緩んで…とかではなく。
2泊3日泊まりがけで遊んで昨夜9時頃帰宅して、何故かその後6時間ぶっ続けでSSを書き散らかしていたという…………(爆)
ゲンコーじゃないのにね、しかも今日から仕事なのにね、何やってるんだ…と自分で思いつつ、それでもマルクク妄想が止まらなかったのよ〜!!!
しかも、まだビシッとキャラ固まってるわけでもないので、探りながらバラバラとホントに書き散らかし(つまり、完成してないもの)ばっかで……すげタチ悪いよ、あたし…!
でも、コレはマンガで描きたいかなぁとか、コレまとめてシリーズにしようかな…とか、イロイロ思ってるのも面白いのだった☆
マルククでのイベント初参加って8月のグッコミを予定しているのですが、初めてなのに本がいっぱいあったら笑っちゃうなぁとか思っていたり……。
でもありそうだよね〜(苦笑)
いやいや、9月のオンリに回そうよ!って感じだけどさ。
(9月のオンリ、受付確認来たので、もうただただひたすら楽しみ!って感じ☆頑張って新刊作るのだ〜♪)

つか、スパコミで山程本買ったから、満足してちょっと収まるかな〜とか思ってたんですが、火に油を注いじゃったみたい(爆)
足りない!足りナイよ!!!もっと見たいよ!読みたいよ!(><//)と、ジタバタしております。
でも、素敵なのいっぱい読んだ〜♪萌えもいっぱいだった〜♪♪(幸)
あたしも頑張りたい〜!きゃー! ←全ての愛がやる気に変換状態

…ああ……マルクク語れるお友達が欲しいなぁ……。
 
 
 
06 (Fri) May 2005 [no.6]
 
 
:: カタコイ ・ 6 ::


グッタリとベッドに沈み込んだまま荒い呼吸を繰り返していると、ふいに下肢を襲う奇妙な感触…。
何かが、ググ…とめり込み、入り込んでくる。
「な…っ、何して…っ!やめ、あ、あに…っ」
マルチェロのしていることを悟ったククールは慌てて身を起こそうとするが、それはアッサリと押さえ込まれて…。
「や…ぅ、ぁ…う…っ」
自分の内部で異物が蠢いている…そのことに覚える、猛烈な違和感に呻きが洩れた。
「フン…、全く……どこもかしこも…綺麗なものだな……」
譫言のような賞賛の言葉。
何でこんな事を…と思うが、その問いは声にならずに…。
「は…ぅ…っ」
マルチェロが指の抜き差しを繰り返す内に、段々と内部が熱くなるような気がして…。
違和感は徐々に薄れ、すり替わるように目を覚ました快感が、思考を溶かして行く。
そして、内部を探るその指は、一本が二本になり…二本が三本になり…と、次第にその数を増やしていった。
「…ん…ん…っ」
濡れた音と、熱い吐息と…そして、時折洩れる悩ましげな声…。
それらは、静かな室内に響いて…。
一体、どのくらいの間続いていたのか…。
「ぁ…?」
ふいに指が引き抜かれた。
そして、次にソコにあてがわれたもの……その熱さに、ギクリとする。
ククールは咄嗟に逃げようと思った。
けれど、快楽に囚われた身体は言うことを聞かずに…。
「ぁ…、や…だ…」
真上にいるマルチェロを見上げ、フルフルと頭を振る。
「いやだ…兄貴…!やめ…っ、ダメだよ、こんな…っ」
懇願する弟の言葉を、マルチェロが聞き入れることはなく…。
ツプ…と。
溶けた入り口に先端が含ませられる。
「あにき…っ!」
意外なほど入念に解されたソコは…、さして痛みを感じずに、ゆっくりとマルチェロを呑み込んで…。
だが、それも途中までだった。
「…ぁ…っ、ぅ…う…っ」
マルチェロが奥へ進むに従い、未だ受け入れることを知らぬその器官には無理が生じて…。
引き裂かれるような痛みと、内蔵が押し上げられるような得体の知れない気持ち悪さに呻きが洩れる。
指等とは比べものにならない質量と、熱…。
ぎちぎちといっぱいに入り込み、自分の内を苛むそれに感じるものは苦しみだけで…。
「は…ぁ…、は…っ」
全てを収めたマルチェロは、苦しさに喘ぐ弟を見つめ、楽しげな笑みを浮かべた。
身を屈め、顔を覗き込まれて…そのせいで苦しさの増す内部に、喘ぎは更に大きくなる。
耳元に熱い息が掛かった。
その感触にククールが瞳を開ければ、
「動くぞ」
短い言葉を囁かれて…。
その内容に慌てて頭を振るククール。
「や…っ、む、り…っ!」
だが、その短い返答の途中で、既に兄は動きを開始していた。
「ぁ…あっ、は…あぁ…あっ」
ズズ…と引き抜かれて行く、気が抜けるような感覚。
そして、再び打ち込まれる強い衝撃。
目の前がチカチカする。
「やっ、ひ、あっ、あ…ぁ…っ」
繰り返されるその動作に、揺れる身体と揺れる視界…。
初めに感じていた引っかかるような、ひきつれるような感覚は、次第になくなっていくった。
だが…気持ちいいなどとはまだ到底思えずに…。
ただ、奥へ奥へと入り込もうとするマルチェロに恐怖すら覚えて…。
「あ…っ、あに…き…っ、あ…に…っ」
喘ぎながら夢中で呼ぶ。
不思議と、嫌悪感はなかった。
やめて欲しいのかどうかも分からない。
ただ、ワケが分からなくて…。
痛くて、苦しくて、熱くて…。
けれど、何故か懸命にしがみついて……。
「呼ぶな…」
いつもとは違う熱い瞳で睨み、マルチェロは短くそう告げる。
「貴様など…誰が、弟だなどと…っ」
「で…も、あに…っ、あっ、あ…ぁあ…っ」
短く、切れ切れに言われるいつものセリフ…。
だが、いつもとは違う熱い声…。
熱い息…。
熱い…視線…。
そして、何より内部に感じる灼熱の塊が…。
マルチェロの状態を伝えて……。

……兄貴……気持ちいいのかな…?

意識が白く溶ける寸前に…ククールが思ったのはそんなことだった。
そして、後はもう何も分からずに…。
ただ、揺れて、揺さぶられて…痛みと快感がない交ぜになった状態で……。




気が付けば、呆然と天上を見上げていた。
嵐の去った直後。
全ての感覚が未だざわついて…薄れ行く意識の中…。
上に重なっていたマルチェロが身じろぐ。

「……何故…」

荒い息に混じって…耳元にポツリと落とされた、小さな呟き…。
けれど、その後に続いた言葉を、ククールは聞き取ることが出来なかった。


−−−−−−−−−−−−

ククたん15歳、マルチェロ22歳くらいで…。
何となく、7歳くらい違う感じかな?って思っているのですが、もっと離れてるのかな…?
最初の出会いの時が、ククたん5歳くらいでおにいちゃんは12歳くらいに見えるなぁとか思ったもので、ウチはそんなくらいでいこうかな。とか。。。
(あ、でも何かビデオ見直したら、ククたん4歳、マル兄14歳とかもありな気がしてきた……やー、14だともっと反発出そうかな…12くらいでいいのか…?あんまり年齢差あると、あんなに感情激しくぶつけるマル兄は相当の大人げなさだしな……(迷))

うーむ。
マルチェロ17位で若さ大暴走!とかもありだったか!とか、今ちょろっと思ってしまった……(爆)

ゲームの段階で、マルチェロさんは30を越えてるか越えてないかってトコが微妙な感じですよね。
今時、その辺りの年齢って大した差はないからな…。
経験的にいろいろ苦労が多かったり、修道院内部でもまれたり、責任ある立場にいたり…って事を考えると、彼は実年齢より見た目老けてるだろうと思うので、27・8が妥当なトコかな。
ククたんは19〜22ってイメージであります。

今夜からまた泊まりで出かけるので居ないのですが……またこんなトコでストップなのかよ!みたいな…。。。
まあ、表示はリスト表示を選択してるからね!
遊戯王の方みたいにどーんっとエロが出っぱなしってことはないんで、いいよね…なんて。

 
 
 
02 (Mon) May 2005 [no.5]
 
 
弟と一緒★2



「いいと言ってるだろう!」

ただでも音のよく響く浴室…。
そこに、大音量で響くマルチェロの声。
「何で?!だって、オディロ院長にはしてあげてるのに!」
それに負けじと、ククールもまた声を張り上げる。
「院長は院長、ボクはボクだ!余計なことをしないでとっとと湯につかれ!」
腕を掴み、ビシリと命令するが、

「いーやーだーっ!あーらーうーーっ!」

その手をブンブンと振り回して、ククールが叫んだ。
まだ声変わりにはほど遠い、女の子と大して違いもないような高い声に耳がキーンとする。
「煩い!喚くなっ!」
それに一声怒鳴ってから、マルチェロはパッと手を離すと、ククールに背を向けた。
「だから、お前と風呂に入るのはイヤだといつも言ってるのに…!」
ブツブツと言って、サッサと浴槽へ向かう。
背後で、うー…と小さな呻きが上がった。
それにチラッとだけ視線を投げて…。
「泣いてもムダだぞ。いや…、いっそ泣きわめいてでも貰えば、もう二度とお前の面倒は見ないで済むかもしれないな」
いい案だ、泣いてみろと言うと、ククールはぷううっと大きく頬を膨らませてマルチェロを睨んだ。
大きな瞳に今にも溢れそうな程涙が堪り、ユラユラと揺れている。
「…マルチェロの意地悪…」
への字に曲がった口から、涙混じりの小さな声…。
「ああ、その通りだ。だから、ボクの顔はもう二度と見たくないとでも院長に言え」

ボクはお前なんか見たくもないんだ…。
なのに、いつもいつも…!
先輩達も懐いているからと言って、ククールはボクに押しつけて寄越すし……。
見てろ?!
いつか絶対、そんなコトしなくて済むように偉くなってやる!

「やだ…」
マルチェロがいい…と、懸命に縋り付きながら、涙をいっぱいに溜めた瞳で見上げるククール。
ハッキリ言って、ちょっと危険な程の可愛らしさだが、この時のマルチェロには別の思いが胸に浮かんで…。

分からない…。
何故、こいつはこんなにボクに懐いているのだろう……。
毎度邪険に扱われて、さぞ傷ついてるだろうと思うのに……。

くすぐったいような、甘いような…何とも言いがたい気持ちに、思わず手が伸びた。
洗ったばかりのククールの頭に……。
そのまま、撫でようとしてハッと我に返る。

「………っとに、鬱陶しいヤツだな!お前は!」

その手でゴンと軽く頭を叩いて…マルチェロは早口にそう言った。
誤魔化し切れていないとは思うが、相手は子供だ。
何とかなるだろうと、そうも思って…。
ククールの横をすり抜け、洗い場のイスの上に腰掛ける。
「ほら、とっとと洗えよ。今日だけ付き合ってやる」
「!」
マルチェロの言葉に、パアッと顔を輝かせるククール。
「今日だけだからな!」
その表情の変化はあまりにも急で…。
こういうの、泣いたカラスがもう笑ったとか言うんだったな…等と感心してしまいながら…。

「かゆい所があったら言ってね!」

背中越しに聞こえる嬉しげな声も…。
背中に触れる小さな手の温もりも…。
なかなかどうして悪いモノではないと…そう思って……。

暫くの間……石鹸の何処か懐かしく甘い香りに包まれた…二人だけの時間を……。


−−−−−−−−−−−−−−−−−

書いてみちゃった…(爆)
マル兄様の背中を流すククたん☆

お子様お風呂ネタパート2ですな…。。。
いや、ホント好きなんだ、風呂。
可愛いよなぁ、二人で風呂…。

ククたんは院長と一緒にお風呂入って背中洗ってあげたりするんだよーとか、ほのぼのしたモノ考えてちょっと幸せ気分になっちゃいました★
んで、「ククールは上手じゃなぁ。ああ、気持ちがいいわい」(あれ?院長ってどんなしゃべり方だったっけ(爆))とか言われてるモンだから、大好きなマルチェロお兄ちゃんの背中も洗ってあげよう!とかね、思うんだと思うの!!!!!!!(妄想爆走)
可愛いヤツめ!!!(><)

ククたんは…出会った当時から、マルチェロの生い立ちを知る迄ってのは結構無邪気に好きだったんじゃないかな…とか。
ちょっと大きくなって、マルチェロが自分のせいで追い出されたこととか知った時は、やっぱり暫く顔もまともに見れないとかあっただろうな…。

切ないねぇ………クスン。

(つか、どうでもいいけど、一体一日に何回アップしようとかゆーのだ…落ち着け、私!(笑))
 
 
 
02 (Mon) May 2005 [no.4]
 
 
:: カタコイ ・ 5 ::



「わっ?!」
自分の身を襲った衝撃に、一瞬息が詰まる。
「な、何すんだよ?!」
涙目になりながらも睨み付ければ、兄は先程と同じく無表情のままで…。
覆い被さるように威圧され、何となく身を引くと、マルチェロは更にズイッと距離を詰めてきた。
まだ、少年らしいほっそりとした体付きのククールと違い、兄のマルチェロはもう完成された大人の身体をしている。
それは間近で見ると一層の迫力を持って…。
「…な、何だよ?」
掴まれる肩…。
頭の中で警鐘が鳴り響く。
この展開は…『あの人』の時と同じだと…。
逃げた方がいいと…そう思っているのに。
何故か、逃げることも、抵抗も、しようとはせず…。
押し倒されるまま…ゆっくりと、傾いていく視界。
間近に兄の顔を見ながら、ククールの胸はドキドキと高鳴って…。

ウソだ…。
まさか…そんな……。
兄貴が…ホントに?
だって…何で…、オレなんかを…そんな…?

「っ!」
こんがらがりそうな思考に固まっていると、マルチェロの手は何の迷いもみせずに、ククールのソコに触れた。
突然のその刺激に、ビクッと身体が跳ねる。
息を呑めば、マルチェロは唇だけで笑って…手早くズボンの前を開けてしまった。

こ、コイツ…っ!
ウソだろ?!
何でそんなの上手いんだよ?!
イメージ違うって……つか、やばいだろ!これ!この状況!
いや、ってか、ホントに?
兄貴、ホントに本気でオレのこと…ヤる気なのかよ?!

グルグルと思う内にも、与えられる刺激に身体は反応を始めて…。
体内に抗いがたい熱が生まれる。
「…や…、いや…だ…、兄貴…っ!」
喉からかろうじて出た声は、とても小さく、掠れていて…。
ククールは懸命に頭を振った。
目を覚ました快感に、混乱と焦燥とが強まる。
そして、何故かそれらの中に混じって…ほんの少しの期待のようなものがあって…。
今、自分に触れているのはマルチェロの手だから…。
ずっと、ずっと望んでいたふれ合いは、勿論こんなものではなかった。
だが、それでも…。
マルチェロの視線を、手を、体温をスグ間近に感じて…心には確かに満たされるものがある。

本当は、ただギュッと抱き締めて欲しかっただけの筈なのだが……。

「…あっ!」
先端を擦られ、ククールは大きく身を弾ませた。
思わず上がった声に慌てて口を押さえるが、時は既に遅く…。
「…おや…イヤだといいながら……今の声は何だ?ククール」
耳元に流し込まれる、楽しげで妙に優しい声…。
自分とは違う低く落ち着いたその声は、いつもの恫喝や嫌味の時とは違って甘い響きを持って…。
その声にゾクリとする。
「身体というのは不思議なものだな…刺激さえ与えれば…ほら、こんな風に……」
「や…だ…っ、ん…っ、ぅ…う…っ!」
マルチェロの手が動く度、下肢から昇る痺れるような快感。
自分のそんなところを、兄が触っているのが信じられなかった。
息が上がる。
熱も上がる。
目眩すら覚える…。
「は…っ、ぁ、あ…っ」
くちゅくちゅと粘りけのある音をわざと立てて…マルチェロが責め立てる。
撓らせた背筋を震わせ、ククールは限界の近さを訴えて首を振った。
「や、だ…も…っ、ヤメ…っ、あに、き…っ」
「…本当にイヤなのか?とてもそうは思えないがね…」
フゥン…と、笑って…。
「だが、まあ…そうだな…そんなにイヤならやめてやるか…」
意地悪な囁きと共に離れる指先。
「ぁ…っ!」
思わず声を上げて…ククールは兄を見やった。
見下ろす緑の瞳の中…眉根を寄せて切なげに、ねだるような表情を浮かべる自分が映っている。
そのまま、離れようとする体温…。
「…あにき…っ」
咄嗟に、ぎゅうっと青い制服を掴む。

離れないで。

行かないで。

「や…め、ない…で…っ!」

ククールは切れ切れに訴えた。
マルチェロがニヤリと笑う。
「素直だな…この淫乱め…」
「ち、が…ぅ…っ」

「ヤツにもそうしてせがんだのか?」

その言葉にハッとしてククールはマルチェロを見た。
緑の瞳が探るような色を載せて自分を見下ろしている。
マルチェロの言う『ヤツ』が誰であるか…そんな心当たりは一人しかいない…。
「そ…なこと…っ、しない…っ!」
ククールは必死で頭を振った。
「ヤツの手に感じたか?どうだった?」
「そんなワケ、ない、だろっ!」
「どうだかな…案外、良かったんじゃないのか?」
「違うっ!ちが…っ」
執拗に問われ、懸命に否定しながら、その間にもマルチェロの手はククールを追いつめて行く。
「…まったく、ヤツもバカなことをしたものだ……お前などに惑わされたせいで、ここを出ていくことになったのだからな」
ククク…と笑いながら…。
「…お前は…悪魔だ…ククール……」
耳元に甘く囁かれる。
「ち、が…っ、ぁ、あっ!」

助けてくれたじゃないか!
兄貴が助けに来てくれたんじゃないか!
オレが、嫌がってたの知ってるクセに…っ!

そう思いながら、ふと…頭の片隅であることに気付く。

兄貴は…もしかして、知ってたのか?

ああなることを…ああなる可能性があったことを……?
オレ達の会話を何処から聞いていた?
もしかして…いつも、ずっと、様子を窺っていたのだろうか?

次期団長になるために……目障りなあの人を蹴落とそうとして…?

オレが…襲われているのを……見ていた…?
襲われるのを…待っていた…のか…?

「まさ…か…っ!」
ゾクリと恐怖を覚えるのと同時に、苦い絶望感が胸に広がる。
だが、それはスグに下肢から這い昇る歓喜に呑み込まれてしまって……。
マルチェロの手の動きが激しくなった。
強い刺激に、背筋をビリビリと快感が走る。
そして…、
「あ、あぁっ、あ、あ…やぁ、ああああっ!」
ククールの意識は真っ白に染まって…。
大きく、ドクンと脈打つ身体。

「…お前は悪魔だ……この私をも…惑わせる…」

耳の奥、早鐘のように鳴り響く鼓動に、紛れるような小さな呟き…。
けれど、ククールは確かにそれを聞いていた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

マルチェロさんはデカイですよね〜!(いや、ガタイの話ですよ…)
ククたんと並ぶと、ククたんちっちゃくて可愛いな〜♪とか思うんですが、いやいや、ククールも普通からしたらかなりデカイから!と。。。
しかし、お兄ちゃんったら…態度も身体もデカくて、いつも眉間にシワ寄せて……近寄りがたいだろうなぁ…(苦笑)

ハッ!
いかんいかん…。。。
何でか、お兄ちゃんの広い背中を洗っているククたん♪なんつーありえない妄想が浮かんじゃったよ…(爆)

…しかし、明日明後日とイベントで更新しないのに、こんな所で切れてるSS……。
わー恥ずかし!
 
 
 
02 (Mon) May 2005 [no.3]
 
 
:: カタコイ ・ 4 ::


そうそう……。
あれが…発端だった気がする…。

今思えば、あの時マルチェロが噛み付いた場所には、きっとあの人が付けた跡があったに違いない。
マルチェロはそれが面白くなかったのだろう。

「……一応…独占欲みたいなモノはある…ってのか…?」

まあ、オレは兄貴にとって『人』じゃなく『モノ』なんだろうけど…。

ククールはゴロリと寝返りを打った。
眠気はどこかへ遠のいてしまったらしい。
朝の礼拝はまだまだ暫くの間掛かる。
弱ったな…と思いながらも、ククールの頭の中は昔の記憶が甦ってくるのを止めることが出来ずに……。


マルチェロが初めてククールを抱いたのは、『その人』のことがあって、数ヶ月もしない内だった…。


思えばその直前まで、マルチェロは今まで以上に不機嫌で…。
それなのに、ククールを避けているかのような所があって…。
そう…。
あれ以来、二人きりになることがほとんどなかった。
辛辣な言葉を聞くこともなく…、凍てつくような視線を投げられることもなく…毎日がただ過ぎていく…。
平和なようなその日々は…けれど、妙に寂しくて…。
優しい言葉どころか、普通の会話すらなくても、いつもひどく傷つけられる結果になっていても…それでも、ククールはそれだけが兄との特別な繋がりのような気がしていたのだ。
だから、たとえ言いがかりを付けられるだけのことであっても、そのやりとりの機会自体がなくなってしまうのは、傷つくよりももっと辛くて…。

そう…それは、そんな折りだったのだ。

クサクサした気分を晴らすために、その頃のククールは以前よりも頻繁にドニの酒場へと足を運んでいた。
イカサマ賭博をやったり、バニー達と恋愛の真似事をしたり、酒に手を出してみたり…。
まだ十代も半ばを過ぎたばかりのククールは、子供の遊びとは到底言えない遊びをして…そして、夜更けにふらりと宿舎へ戻った。
秘密の抜け穴から、コッソリと内部に入り込むと、その入った先……。
何故か、マルチェロが一人で立っていた。
「!」
ククールの姿を捕らえたマルチェロは、その目に怒りの炎を宿して…。
「……ククール…」
「は…い…っ!」
いつも以上のその迫力に、思わず返事の声が裏返る。
「ついて来い」
「は…」

イヤです!
ついていきたくありません!
今スグ逃げ出したいです!

そう思いながらも、ククールは大人しくマルチェロの後に付いて……。
向かった先はマルチェロの部屋だった。
その頃、『あの人』のいなくなった聖堂騎士団では、マルチェロが唯一の次期団長候補で…。
既に他の団員達とは区別され、個室が与えられていた。
「…へえ…」
初めて入ったマルチェロの部屋に、思わず感心の声を漏らすと、またジロリと睨まれる。
「ここの所…規律違反が多いそうだな…。宿舎を抜け出した回数、外泊、賭博、飲酒などの報告を受けているが…本当のことかね?」
「……もう団長のお仕事ですか?」
冷たい視線と質問に、負けじとそう返してみれば…、
「…本当のことかね?」
そんな言葉など耳に入らなかったかのように、キレイに無視をされて…。
再び問われた質問に、ククールは溜息をつきながら頷いた。
「本当です」
アナタが構ってくれないので、暇を持て余しているんです、なんて言ったらどんな顔をするだろう…。
きっと、酷く驚くに違いない。
なんて…そんなことをコッソリと考え、ククールは俯いて小さく笑った。
すると…。
「……成る程。お前は暇と体力を持て余しているようだな…」
まるで、心を読んだかのような、マルチェロのセリフ。

…って、体力???
何で体力???

マルチェロの言葉に、ククールがきょとんとしていると…フワリ、と身体が浮いた。
「へっ?」
そして、いつの間にそんなことになったのか…。
気付いたときには、ククールはマルチェロに抱え上げられていた。
「え?え?え?」
いとも軽々と自分を抱え、室内を移動するマルチェロ。
無表情に前を向いたままの兄の顔をポカンとしたまま見上げて…。
ククールが自分の状況を把握出来ずにいると…。
ドサッと。
今度は乱暴に投げ出された。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ククたんはマゾッ子だよね☆
いや、別に「もっと苛めてv」とかなワケじゃないけど…今日も兄貴に何か言われるかなぁ…とか毎日思ってそうだ(笑)

苛められても、すっげーひでぇ…と思うような仕打ちをされても(煉獄島に連れて行かれる辺りなんかホントに酷いよな…ククたん先頭でやったらなんか泣けちゃったよ)それを受け止めて、お兄ちゃんを思い続けてる健気ってのが、このカプの魅力ですな。。。
「それでも…忘れたことはなかったよ」とかなんかさーーー、マジ、愛だよぉ…愛〜!!!とか言っちゃうもの。

さて。
次からマルククエロに挑戦〜!であります☆
苦手な方はお気をつけ下さいませ。
 
 
 
01 (Sun) May 2005 [no.2]
 
 
:: カタコイ ・ 3 ::


何で、何でこんなことになってる?
何でこの人はオレに……。

ゆっくりと撫で続けている手を振り払おうとするが、その途端、ガシッと手を掴まれて…。
「愛しているんだ……ずっと前から…」
その手にそっと口付けながら…『その人』は囁いた。
「ウソだ…!」
「ウソじゃない…」
「こんなの…、ヤダよ……!何で?オレだって、ずっとアナタが好きだった…でも…」
「でもこれは違う?そうだね…、最初は君の寄せてくれるその好意だけで私も満足だったよ…」
「じゃあ…っ」
「でも……もっと…。そう、もっと…欲しいんだ……」
「うわっ?!」
ドンッと突き飛ばされて、ベッドの上に倒れ込む。
そして、直ぐさまのし掛かられ、ククールは呻きを上げた。
話に聞いたことはあった。
修道院は閉鎖された場所だから。
男ばかりの世界だから。
男同士で『そういった関係』になることも珍しくはないのだと……。
知ってはいたが…まさか、自分がその対象になるとは思いもしなかった。
「やっ!ヤメ…っ」
下へと伸びる手に必死で藻掻く。
首筋に唇が落とされて…その生暖かい感触に、また寒気が走って……。

「ヤダ、イヤだ!ヤメロ!あに…兄貴…っ!」

思わず呼んだのは兄だった。
『その人』が小さな笑みを浮かべる。
「ククール、助けというのは、助けてくれそうな人物に求めるものだよ」
マルチェロは絶対に来ない。
来るわけがない。
自分でも分かっていることを諭すように言われて…。
絶望と悔しさが胸に広がる。
そして、その会話の間にもシャツが捲り上げられ、手が入り込んできて…。
いつもは制服に隠された白い肌を、慈しむように撫でながら…。
「ああ…可愛いね、ククール…」
「っざ、けんな…っ!離せっ!冗談ヤメロよ!」
「そんな言葉遣いはよくないな…君には似合わないよ」
「っ!」
胸の突起を摘まれて息を詰める。
押さえ込まれた手をぎゅうっと握り締めて…。
涙が溢れてくる。

気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い…!
こんなの…こんなの…ウソだ…。

悲しくて、悔しくて…本当に気持ちが悪かった。
「…い、やだ…っ!イヤだっ!」
苦しさに喘ぎながらそう叫んだ時だった…。


「…これはこれは……結構な趣味をお持ちのようで…」


冷たい声が上から降ってきたのは…。
「?!」
「…ぁ…、あ…兄貴っ!」
いつ部屋に入ってきたのか…。
マルチェロがベッドのすぐ側にいて二人を見下ろしていた。
「だが、あまり感心は出来ませんな…」
唇の端を上げて、いつものイヤミな笑顔を浮かべてそう言う。
「失敬じゃないかね、マルチェロ…。これは私とククールのプライベートな問題だ…!部外者は…」
「プライベートな問題?さて…ククールとアナタの行為が合意の上でのもののようには見えないが……」
マルチェロはサッと背後に視線を投げた。
ワラワラワラと数名の聖堂騎士達が駆け込んでくる。

「…申し開きは神の御前で行っていただこうか……」

「マルチェロ!貴様っ!」
取り押さえられた『その人』はマルチェロに向かって吠えたが…。
それにただ薄く笑って…。
「連れて行け」
マルチェロは片手を上げて合図した。
バタバタと騎士達が出ていく。
そして、全てはあっという間の出来事で……。
バタバタと足音が遠離った後…部屋に残ったのはククールとマルチェロの二人だけだった。
「あ…兄貴…!」
来てくれた!と、その事が驚きで…嬉しくて……。
ドキドキしながら声をかければ、マルチェロはギロッと睨み付けるように視線を向けた。
そして、すっかり前をはだけられ、あらぬ姿になっている弟の姿を何とも不機嫌そうに見ていたが…やがて、ある一点に吸い寄せられるように視線が止まる。
「………」
「あの…、ありがとう…」
それを訝しく思いながら、怖ず怖ずと礼を言えば、マルチェロはククールに向かって手を伸ばした。
少し冷たいその手が肩を掴んで…。
「あにき…?」
段々と近付く顔…。
こんなに間近で兄の顔を見たことはなくて…ククールはドギマギしてしまう。

心配してくれたのかな…?
気遣ってくれてるのか?
いつもみたく怒られるのかな…?

だが、
「……バカモノめが…!」
そう小さな呟きが聞こえたと思った次の瞬間…。
首筋に痛みが走って……。
「っ、テェッ?!な…っ?!」
ククールは、サッと離れた兄の顔を凝視した。

か…噛み付いた?!
今…ガブッて……ガブッていったぞ?!?!?!

「な、何すんだよっ?!」
痛みの走った場所を抑えれば、手にはヌルリとした感触…。
「血…?!」
「フン…」
手に付いた血を見て更に混乱してしまうククールに、けれど、マルチェロは何も説明をしないまま…身を翻して…。
「…風呂に入ってこい…汚らわしい!」
短くそうとだけ告げ、部屋を出ていった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−

噛み付くの…最初はなかったんですが…。。。
マルチェロさん噛み付いたりしそうだなぁ…とか、ふと思ったら、何か萌えを感じてしまい追加してみちゃいました(爆)

「いっ!やめっ、ちょ…噛むなよっ!」
マジ食われそうだ!とか、身の危険(貞操に非ず、生命の(笑))を感じるククール。
マルチェロさんいつでも眉間にシワよってそうだから、怖いだろうなぁ…(笑)
 
 
 
01 (Sun) May 2005 [no.1]
 
 
ククール、姫計画☆

玖紅流(ウチのドール。詳しくはドール部屋をご覧下さい)に、シルバーのウィッグを購入!
前髪はあるモノの、ククたん化計画一歩前進?!と思ってウヒウヒしております。
(前髪なしウィッグは自分で作らないとダメだろうか…自信ないんだけど……)
細くてサラサラで肌触りの良い銀髪…ああ、ステキだーー!
愛らしいなぁ、もーっvvvとか、大喜びしつつシミジミと眺めていたら、何か段々………クク子もありだな…とか思ってしまった……(爆)

そんなわけで。
いつか、ククール妹話を書くかもしれないです…(爆)

いや、クク子美人よーー!!!
そんで、お兄ちゃんぜったい溺愛だよね!そうなったら!!!とか思ってしまったらね……萌!って…。
何でそんなダメな妄想をハマってスグに……って感じなんですが…(末期だよな…)
あーーだって可愛いんだモンよー!(爆)

ところで、一昨日の夜中に我慢できなくなってサヴェッラとゴルドのイベントを見てしまいました…あああ、マルチェロかっこいい……vvv
今回は、一回全滅しようって決めてたので、一戦目の時は遊びまくり、天使の眼差しとか使ってみちゃいました♪

『ククールは天使の眼差しでマルチェロを見つめた!
 マルチェロに19のダメージ! 』

ときめいた!
ときめいちゃったよ!
見つめた!っていいなぁ!良い表記だ!!!!
ダメージが19とかゆーのがまた可愛いし!!!

くっ…おのれ!真面目にやれ!とか思っただろうか…(ほんわか)
ククール先頭にしてたんですが、あまり攻撃されなくて、ちょっと愛を感じましたvvv
つか、お兄ちゃんベホイミしか使わなくて……あんた回復は得意じゃないワケね…とか。。。
ベホマとかかけてやりたかったぜ…クスン。

世界中探したら、どこかに居たりしないんだろうか……。
ククたんも探してるっぽいのが、泣けると思ってしまった。

−−−−−−−−−−−−−−−

☆本日の萌えゼリフ☆

『 たしかこの町には普通の町にはいられなくなったような
 罪人や悪党が流れ着くんだよな……。
 ん?誰か探してるのかって?
 ……いや 何でもないんだ。
 あのプライドの高い男が
 いくら落ちぶれたからって
 こんな所で大人しくしてるわけないからな…。  』


パルミドにて。
探してる!!!!
探してるんだよ!!!!
もーーーーー!!!(><。)
泣かしてくれるぜ!スクエニ!!!ありがとう!(爆)

 
 
 
Script : CGI-Style